
EU炭素国境調整措置(CBAM)のデフォルト値(既定値)には、2026年に10%、2027年に20%、2028年から30%のマークアップが上乗せされます。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で輸入すると、2026年は製品1トン当たり80.20ユーロのCBAM証書コストになります(2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算)。
デフォルト値は原産国ごとに定められ、日本には独自の表があります。日本からEUへのCBAM対象製品(付属書Iのコード)の輸入は2025年に14億4,820万ユーロで、金額ベースで86%が鉄鋼、13.5%がアルミニウムでした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。このページでは、日本の主要品目の値と2034年までのコスト推移、実排出量に切り替える手順、日本の炭素価格との関係を、条文番号と出典付きで説明します。
CBAMのデフォルト値とは何ですか
CBAMのデフォルト値とは、欧州委員会が原産国と製品の組み合わせごとに公表する排出原単位で、輸入者が生産施設の実排出量を入手できない場合に、マークアップを加えて使う値です。
定義は、炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956の第3条第27号にあります。使用の根拠は第7条第2項(b)と付属書IV第4.1項、実施権限は第7条第7項です。本格実施期間の具体的な数値とマークアップは、2025年12月31日に公表された実施規則(EU)2025/2621に定められています。
CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。デフォルト値は、この体化排出量(第3条第22号)を施設ごとの実測値ではなく、国の平均的な排出原単位で決める仕組みです。
国の平均値に基づくため、日本国内で排出量の少ない製鉄所から調達しても、デフォルト値を使う限り日本の表の値が割り当てられます。欧州委員会はこの値を、実排出量と同じ算定方法(実施規則(EU)2025/2547)を施設単位ではなく国単位で当てはめて算出しています。
付属書はその後訂正されました。2026年7月20日に採択され、7月31日にEU官報に掲載された実施規則(EU)2026/1740は、実施規則(EU)2025/2621の付属書IとIVにあった数値と品目コードの誤りを訂正しました。訂正は2026年1月1日に遡って適用されるため、2026年の輸入全体に訂正後の付属書を使います。算定方法は変わっていません。
訂正後の値はExcel形式でも公開されています。欧州委員会の税制・関税同盟総局(DG TAXUD)は2026年8月10日、訂正版のExcelファイル「Default values definitive period」をCBAMの法令・ガイダンスのページに掲載し、実施規則(EU)2025/2621の統合版を近く公表するとしています。フィンランド税関は2026年8月3日に訂正に関する国内通知を出しました。詳細は実施規則2026/1740によるデフォルト値の訂正(英語)にあります。
訂正が値を上げたのか下げたのかについても分析があります。steelnews.bizに2026年8月13日に掲載された市場ブリーフィング「Stainless Espresso」によると、実質的な数値の置き換え46件はすべてデフォルト値を引き下げるもので、実質的な引き上げは付属書IVのアルミニウム前駆体(約47.5%増)だけでした。1月の数値で2026年のコストを見積もった輸入者は、引当額が多すぎた可能性が高いと言えます。
デフォルト値を使うかどうかを決め、CBAM申告書で申告するのはEUの輸入者(または間接的通関代理人)です。日本の生産者にはCBAM上の義務はありませんが、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録し、検証済みの実排出量を輸入者に提供できます。その提供がない場合に、日本のデフォルト値が使われます。
マークアップの段階:10%、20%、30%
デフォルト値のマークアップは、鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素では2026年10%、2027年20%、2028年から30%に上がり、肥料だけは毎年1%です。
マークアップの率は、実施規則(EU)2025/2621の付属書I(実施規則(EU)2026/1740による差し替え後)の導入部に定められ、「総排出量(total emissions)」の列の値に加算されます。3年間の段階は次の表のとおりです。
| 年 | 鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素 | 肥料 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | 総排出量のデフォルト値に+10% | +1% | 付属書I導入部、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740による差し替え後) |
| 2027年 | 総排出量のデフォルト値に+20% | +1% | 同上 |
| 2028年以降 | 総排出量のデフォルト値に+30% | +1% | 同上 |
肥料の率は、同じ導入部の一文が定めています。"For goods in the fertiliser sector, the mark-up shall be 1 % for the year 2026 and onwards."「肥料部門の製品については、マークアップは2026年以降1%とする。」(当サイト仮訳)付属書は理由を示していません。
付属書に記載されているのはマークアップ前の値で、マークアップを加えた値はCBAM登録簿で計算されます。日本の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)のデフォルト値は製品1トン当たり2.100 tCO2e(CO2換算トン)で、2026年は2.310、2027年は2.520、2028年からは2.730になります。
どの年にも共通する注意点があります。デフォルト値を使う場合、無償割当調整には実施規則(EU)2025/2620の列B(デフォルト値用ベンチマーク)を使います。実排出量を使う場合は、列A(工程ベンチマーク)に前駆体に含まれる無償割当を加えたものを使います。差し引く量が異なるため、両方の方法を試算してから選ぶ必要があります。

このインフォグラフィックのテキスト版
デフォルト値とは
1. 供給元の数値ではなく、国別の平均値:CNコードと原産国ごとに、製品1トン当たりのtCO₂eで設定
2. EUの法令で設定:実施規則(EU)2025/2621付属書I(2026年1月1日から実施規則(EU)2026/1740で差し替え)。原産国の行がない場合は「その他の国・地域」の値を適用
3. 供給元のデータがなくても申告可能:検証は不要。検証の対象は実排出量だけです(第8条第1項)
デフォルト値にマークアップを上乗せ
鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素のデフォルト値に加算されます。
- +10%:2026年
- +20%:2027年
- +30%:2028年以降
肥料:毎年1%。電力:マークアップなし。
計算例(2026年)
トルコ産の半製品鋼材 (CNコード 7207 11 14、デフォルト値、2026年輸入、鋼材1トン当たり)
- デフォルト値(付属書I): 2.310 tCO₂e
- 10%のマークアップ後(× 1.10): 2.541 tCO₂e
- 無償割当調整(0.975 × 1.00 × 1.364): − 1.3299 tCO₂e
- 1トン当たりのCBAM証書数: 1.2111
1トン当たりのコスト(2026年第3四半期の価格82.32ユーロ): €99.70
マークアップ分だけのコスト(1トン当たり)
無償割当調整はマークアップに合わせて増えないため、マークアップ分は全量がCBAM証書の対象になります。
- 2026年:+10%:€19.02
- 2027年:+20%:€38.03
- 2028年以降:+30%:€57.05
同じトルコ産鋼材:1トン当たり0.231、0.462、0.693 tCO₂e × 82.32ユーロ(2026年第3四半期の価格で一定と仮定)。
検証済みの実排出量を使えばマークアップはかからず、施設の実際の数値が適用されるため、排出の少ない製鉄所ではコストが下がることが多くあります。その場合は無償割当調整の計算も変わるため、両方の方法で試算してください。
日本のデフォルト値:主要品目と2026年のコスト
日本は付属書Iに独自の表を持ち、熱延鋼板(CNコード 7208)のデフォルト値は製品1トン当たり2.100 tCO2e、未加工アルミニウム(CNコード 7601)は0.360 tCO2eです。
日本の表は283行(見出し行を含む)で、254行に値があり、6行はダッシュ(記載なし)です(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2026/1740による差し替え後)。ダッシュの行には「その他の国・地域(Other countries and territories)」の値が適用されます。日本でダッシュになっているのは、焼成粘土、白色クリンカー、白色ポルトランドセメント、白色水硬性セメント、フェロクロム(CNコード 7202 49)、直接還元鉄(CNコード 7203)です。
次の表は、日本からEUへの輸出が多い品目について、日本のデフォルト値、2026年の証書数と製品1トン当たりのコストをまとめたものです。証書数は「デフォルト値×1.10」から「0.975(2026年のCBAM係数)×1.00(部門横断補正係数)×列Bベンチマーク」を差し引いて求め、規則(EU)2023/956の算定方法を実装した当サイトの計算モジュールで2026年11月4日に算出しました。
| CNコード | 品目 | 日本のデフォルト値(マークアップ前、tCO2e/t) | ルート | 2026年の値(+10%) | 列Bベンチマーク | 製品1トン当たりの証書数 | 製品1トン当たりのコスト(EUR 82.32) | 2025年の対EU輸出額(4桁の項) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7208 51 20 | 熱延鋼板(非合金、幅600mm以上、コイル以外) | 2.100 | C | 2.310 | 1.370 | 0.97425 | EUR 80.20 | EUR 2億1,670万(7208) |
| 7209 16 90 | 冷延鋼板(非合金、コイル) | 2.143 | C | 2.3573 | 1.458 | 0.93575 | EUR 77.03 | EUR 1億1,890万(7209) |
| 7210 49 00 | めっき鋼板(非合金) | 2.130 | C | 2.343 | 1.491 | 0.889275 | EUR 73.21 | EUR 9,440万(7210) |
| 7225 19 90 | 無方向性電磁鋼板(冷延) | 3.530 | C | 3.883 | 1.488 | 2.4322 | EUR 200.22 | EUR 1億7,760万(7225) |
| 7318 15 42 | ねじ・ボルト(鉄鋼製、ステンレス以外) | 2.800 | C | 3.080 | 1.364 | 1.7501 | EUR 144.07 | EUR 1億7,640万(7318) |
| 7304 19 10 | 継目無しラインパイプ(外径168.3mm以下) | 2.110 | C | 2.321 | 1.383 | 0.972575 | EUR 80.06 | EUR 5,740万(7304) |
| 7606 12 99 | アルミニウム合金の板(厚さ6mm以上) | 1.730 | L | 1.903 | 0.148 | 1.7587 | EUR 144.78 | EUR 1億1,360万(7606) |
| 7607 11 90 | アルミニウム箔(裏張りなし) | 1.730 | L | 1.903 | 0.258 | 1.65145 | EUR 135.95 | EUR 3,010万(7607) |
| 7601 10 90 | 未加工アルミニウム(非合金、スラブ以外) | 0.360 | L | 0.396 | 0.091 | 0.307275 | EUR 25.29 | EUR 210万(7601) |
| 2523 29 00 | ポルトランドセメント(白色以外) | 0.890(直接0.83、間接0.06) | なし | 0.979 | 0.666 | 0.32965 | EUR 27.14 | EUR 480万(セメント全体) |
デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740による差し替え後)。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項の列B。ルート:C=高炉・転炉法(BF-BOF)、L=二次アルミニウム。輸出額:ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出)。コストは端数処理前の証書数から計算しています。
計算例:日本産熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)、2026年
日本産熱延鋼板1トンに必要なCBAM証書は、2026年の輸入で0.97425枚です。計算は次の4段階です。
- 総排出量のデフォルト値にマークアップを加えます:2.100 × 1.10 = 2.310 tCO2e
- 無償割当調整を求めます:0.975(CBAM係数)× 1.00(部門横断補正係数)× 1.370(列Bベンチマーク、高炉・転炉法)= 1.33575
- 差し引きます:2.310から1.33575を引いた0.97425枚が、製品1トン当たりのCBAM証書数です
- 価格を掛けます:0.97425 × 82.32ユーロ(2026年第3四半期の公式価格)= 製品1トン当たり80.20ユーロ
CBAM計算ツール(日本、CNコード 7208 51 20、1,000トン)(英語)でも同じ計算を確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
当サイトの計算は、経済産業省のガイドラインの数値とも一致します。「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)は、CNコード 7318 15 42について2026年の証書数を1.750としており、当サイトの1.7501と同じです。同ガイドラインの円建て額(2026年29,139円、2034年60,606円)は、EU ETSの価格90ユーロ、1ユーロ185円という前提によるもので、公式の証書価格による額ではありません。
日本と主要原産国の比較
日本の鉄鋼のデフォルト値は中国、インド、トルコより低く、2026年のコストも低くなりますが、アルミニウム製品では必ずしもそうなりません。
次の表は、同じCNコードについて5か国のデフォルト値(マークアップ前)と2026年の製品1トン当たりのコストを比べたものです。条件は前の表と同じで、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロを使っています。
| CNコード | 日本 | 韓国 | 中国 | インド | トルコ |
|---|---|---|---|---|---|
| 7208 51 20(熱延鋼板) | 2.100、EUR 80.20 | 2.118、EUR 81.83 | 3.187、EUR 178.63 | 4.280、EUR 277.60 | 2.428、EUR 109.90 |
| 7318 15 42(ねじ・ボルト) | 2.800、EUR 144.07 | 3.474、EUR 205.10 | 6.375、EUR 467.79 | 5.720、EUR 408.48 | 5.430、EUR 382.22 |
| 7601 10 90(未加工アルミニウム) | 0.360(L)、EUR 25.29 | 0.360(L)、EUR 25.29 | 3.000(K)、EUR 157.44 | 1.870(K)、EUR 55.12 | 1.700(K)、EUR 39.73 |
| 7606 12 99(アルミニウム合金の板) | 1.730(L)、EUR 144.78 | 1.950(L)、EUR 164.70 | 4.120(K)、EUR 253.89 | 4.126(K)、EUR 254.43 | 2.714(K)、EUR 126.57 |
K=一次アルミニウム、L=二次アルミニウム。値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740による差し替え後)の各国の表、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項の列Bです。
アルミニウム合金の板では、日本のデフォルト値1.730はトルコの2.714より低いのに、コストは日本のほうが高くなります。理由はルートです。デフォルト値を使う場合、輸入者はルートを選べず、各国の行に記載されたルート記号がベンチマークを決めます(実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項)。日本の行はL(二次アルミニウム)で、差し引かれるベンチマークは0.148と小さく、トルコの行はK(一次アルミニウム)で1.485です。
鉄鋼とアルミニウムのデフォルト値は間接排出量を含みません
日本の主要品目のうち、鉄鋼とアルミニウムのデフォルト値は直接排出量だけです。両部門は規則(EU)2023/956の付属書IIに掲げられ、電力消費による間接排出量はCBAM証書の対象になりません(鉄鋼のうち、付属書IIにない凝結鉄鉱石、CNコード 2601 12 00を除く)。セメントと肥料は間接排出量を含み、日本のポルトランドセメントの0.890は直接0.83と間接0.06の合計です。
アルミニウムのデフォルト値には、ホール・エルー法の電解で生じるパーフルオロカーボン(CF4、地球温暖化係数6,630、C2F6、同11,100)も直接排出量として含まれます。日本の対EU輸出は未加工アルミニウムが2025年に210万ユーロ(121.5トン)とわずかで、圧延品などのアルミニウム製品が1億9,280万ユーロを占めます(Eurostat Comext、2025年)。
熱延鋼板の輸出減少はCBAMコストとは別の問題です
日本からEUへの熱延鋼板(CNコード 7208)の輸入量は、2023年の134万1,700トンから2025年の34万6,721トンへ74%減りました(Eurostat Comext、2025年)。一因として考えられるのは、EUが2025年9月26日に日本産熱延鋼板に6.9%から30%の確定アンチダンピング関税を課したことですが、データだけでは証明できません。アンチダンピング関税はCBAMのコストではなく、別の制度です。
2027年以降、日本製品のコストはどう変わりますか
日本産熱延鋼板のデフォルト値によるコストは、2026年の製品1トン当たり80.20ユーロから、2028年に123.23ユーロ、2034年に224.73ユーロへ上がります(価格82.32ユーロで一定とした場合)。
コストが上がる理由は二つあります。マークアップが30%まで上がることと、CBAM係数(無償割当のうち維持される割合)が2026年の97.5%から下がり、2034年からは適用されなくなることです(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。次の表は日本の3品目の推移です。
| 年 | マークアップ | CBAM係数 | 7208 51 20 熱延鋼板(証書数、EUR/t) | 7318 15 42 ねじ・ボルト(証書数、EUR/t) | 7601 10 90 未加工アルミニウム(証書数、EUR/t) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 10% | 97.5% | 0.97425、EUR 80.20 | 1.7501、EUR 144.07 | 0.307275、EUR 25.29 |
| 2027年 | 20% | 95% | 1.2185、EUR 100.31 | 2.0642、EUR 169.92 | 0.34555、EUR 28.45 |
| 2028年 | 30% | 90% | 1.497、EUR 123.23 | 2.4124、EUR 198.59 | 0.3861、EUR 31.78 |
| 2030年 | 30% | 51.5% | 2.02445、EUR 166.65 | 2.93754、EUR 241.82 | 0.421135、EUR 34.67 |
| 2034年 | 30% | 適用なし | 2.73、EUR 224.73 | 3.64、EUR 299.64 | 0.468、EUR 38.53 |
前提:証書価格は2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで一定、デフォルト値とベンチマークは現行値のまま(ベンチマークは2027年から更新される可能性があります)、部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%(実施決定(EU)2026/1862)。2034年からは体化排出量の全量が証書の対象です。
2026年の義務は、体化排出量に一律の小さな割合を掛けて求めるものではありません。2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象で、無償割当調整そのものも2034年まで毎年小さくなります。無償割当調整の方法はCBAMの計算方法で詳しく説明しています。
CBAMの公式デフォルト値をすべて1つのスプレッドシートに収録しています。マークアップ、ベンチマーク、2026年の製品1トン当たりのコスト付きで、英語版をすぐにダウンロードできます。
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デフォルト値から実排出量に切り替えるには
実排出量に切り替えるには、日本の生産施設がモニタリング計画に基づいて体化排出量を算定し、EU加盟国の国家認定機関が認定した検証機関の検証を受け、その数値を輸入者がCBAM申告書に記載します。
切り替えには三つの要素が必要です。施設のモニタリング計画、実施規則(EU)2025/2547の方法による算定、そして委任規則(EU)2025/2551に基づき認定された検証機関による実施規則(EU)2025/2546の第三者検証です。デフォルト値から実排出量へ移る4つの手順は次のとおりです。
- 生産施設に依頼します:EUの輸入者が日本の施設に、実施規則(EU)2025/2547に基づく体化排出量のモニタリングと、事業者の排出量報告書およびそのサマリー(同規則付属書IV)の作成を依頼します。日本の事業者にはCBAM上の義務がないため、輸入者が依頼し、協力の意思を確認します。
- 第三者検証を依頼します:EU加盟国の国家認定機関が委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らして認定した検証機関に依頼します。施設が初めて検証を受ける年は現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条)。CBAM登録簿への検証機関の登録は、規則(EU)2023/956第10a条に基づき2026年9月1日に始まりました。
- 検証報告書を受け取ります:検証機関が、製品1トン当たりの特定体化排出量(tCO2e)を確認する検証報告書を発行します。アルミニウムではパーフルオロカーボン、肥料では亜酸化窒素(N2O)も含みます。
- CBAM申告書に実排出量を記載します:2026年の輸入分のCBAM申告書(提出期限は2027年9月30日、規則(EU)2023/956第6条第1項)に、国のデフォルト値ではなく検証済みの数値を記載します。デフォルト値の場合と比べて減った証書数が、そのまま節減分になります。
日本の施設が輸入者に渡すデータは、排出量報告書のサマリー(16項目、実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)です。2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で、英語で提供します(同規則第10条第4項)。必要なデータの詳細は日本の輸出者向けデータ要件にまとめています。
体化排出量の算定方法(直接排出量と間接排出量の区別を含む)はCBAMの体化排出量で説明しています。2026年8月14日には欧州委員会が部門別ガイダンス5aから5f(セメント、水素、肥料、鉄鋼、アルミニウム、電力)を公表し、各部門の生産ルートへの算定方法の当てはめを示しました。
日本語の資料としては、日本貿易振興機構(JETRO)の「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応する排出量の算定実務マニュアル」(2026年3月)と、経済産業省のねじ・ボルト向けガイドライン(2026年3月)があります。いずれも数値を引用する前に、本ページの出典と照合することをお勧めします。
2026年の輸入については、輸入者と供給者の調整に時間的な余裕があまりありません。EUの輸入者の認可申請期限は2026年3月31日でした(第17条第7a項、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)で追加)。期限までに申請した輸入者と間接的通関代理人は、管轄当局の決定まで暫定的に輸入を続けられます。申告期限が2027年9月30日のため、2026年の生産分のデータ収集と検証は実質的に2027年前半までに行う必要があります。
日本の施設では、実排出量でどれだけ下がりますか
日本のデフォルト値は中国やインドより低いため、日本の施設の実排出量がデフォルト値に近い場合、節減の中心はマークアップ分です。熱延鋼板では、マークアップ分は2026年に製品1トン当たり0.21 tCO2e(82.32ユーロで17.29ユーロ)、2028年に0.63 tCO2e(51.86ユーロ)です。実際の節減額は、列Aと列Bのベンチマークの違いによって増減します。
デフォルト値の使用が義務になるのはどのような場合ですか
デフォルト値しか使えないのは、生産施設が排出データを提供しない場合と、提供されたデータが第三者検証を通らない場合の二つです。
電力では関係が逆になります。電力ではデフォルト値が標準で、実排出量は例外です。実排出量を使えるのは、規則(EU)2023/956付属書IV第5項の5つの条件をすべて同時に満たす場合だけです。条件には、第三国の発電事業者との電力購入契約、1時間以内の期間での指定容量と発電量の一致、1kWh当たり化石由来CO2が550g以下の施設であることが含まれます。日本からEUへの電力輸入は2025年にゼロでした(Eurostat Comext、2025年)。
データを出さない供給者に対して、輸入者が取れる対応は三つです。デフォルト値とそのコストを受け入れること、検証済みデータを出す供給者に切り替えること、デフォルト値のコストを輸出者との価格交渉に織り込むことです。証書を十分に納付しなかった場合、納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項)。これは証書コストとは別にかかります。
日本の炭素価格でデフォルト値は下がりますか
デフォルト値そのものは原産国の炭素価格では変わらず、2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。
デフォルト値は、原産国に炭素価格制度があるかどうかに関係なく定められています。原産国で実効的に支払われた炭素価格は、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)により、デフォルト値ではなく納付する証書数を減らす仕組みです。根拠は、実排出量を使う場合は第9条第1項です。デフォルト値を使う場合は第9条第4項で、2027年から欧州委員会が定めることができる年次のデフォルト炭素価格を参照するときに限られます。日本についてデフォルト炭素価格はまだ定められていません。
控除には、リベートその他の補償を差し引いた後に実効的に支払われた炭素価格が必要です。欧州委員会は2026年5月13日に控除の実施規則案(未採択)を公表し、意見募集は6月10日に終わりましたが、2026年10月23日時点で採択されていません。韓国のK-ETS、中国の全国ETS、インドのCCTS、英国のUK ETSを含め、どの国の炭素価格も第9条で認められていません。
日本の三つの制度は、次のように位置づけられます。
- 排出量取引制度(GX-ETS):直接CO2排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者を対象に、2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化されました(経済産業省)。鉄鋼とセメントには排出枠がベンチマーク方式で無償割当されます(ICAP)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「無償割当はリベートとみなされる」としており、実効的に支払われた額になり得るのは無償割当を超えて購入した分などに限られます。
- 地球温暖化対策のための税:CO2排出量1トン当たり289円に相当する税率で、2012年10月1日から段階的に導入されました(環境省)。ただし、鉄鋼、コークス、セメントの製造に使う輸入特定石炭は免税で、高炉製鋼とセメントの排出の大部分を占める石炭には課税されていません。
- 化石燃料賦課金:2028年度から導入予定で、まだ施行されていません。2026年と2027年の輸入について控除の対象になるものはありません。
英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せました。英国CBAMは税で、EU CBAMの扱いとは別です。GX-ETSがEUから実効的な炭素価格と認められるか、無償割当部分をどう扱うか、排出枠の価格をどう証明するか、日本の年度(4月から3月)をCBAMの暦年にどう対応させるかは、2026年11月4日時点で未解決です。詳しくは第三国で支払われた炭素価格の控除をご覧ください。
主な製品・原産国別のデフォルト値によるコスト
デフォルト値によるコストは、国別のデフォルト値とベンチマークの差、マークアップの段階、証書価格の三つで決まります。
次の表は、EUの輸入量が多い製品と原産国の組み合わせについて、2026年のデフォルト値によるコストを示したものです。価格は2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで、証書数は「デフォルト値+マークアップ」から「0.975×1.00×ベンチマーク」を差し引いた値です。
| 製品 | 原産国 | デフォルト値(付属書Iの総排出量、tCO2e/t) | 2026年のマークアップ後 | 列Bベンチマーク | 製品1トン当たりの証書数 | 製品1トン当たりのコスト(EUR 82.32) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 鋼片(CNコード 7207 12 10) | 中国 | 3.169 | 3.486 | 1.364 | 2.156 | EUR 177.48 |
| 鋼片(CNコード 7207 12 10) | インド | 4.270 | 4.697 | 1.364 | 3.367 | EUR 277.18 |
| 鋼片(CNコード 7207 12 10) | 日本 | 2.100 | 2.310 | 1.364 | 0.980 | EUR 80.68 |
| グレーポルトランドセメント(CNコード 2523 29 00) | トルコ(「その他の国・地域」の値) | 1.440 | 1.584 | 0.666 | 0.935 | EUR 76.94 |
| 未加工アルミニウム(CNコード 7601) | アラブ首長国連邦 | 1.870 | 2.057 | 1.423 | 0.670 | EUR 55.12 |
| 尿素(CNコード 3102 10 19) | エジプト | 1.390 | 1.404(マークアップ1%) | 0.902 | 0.524 | EUR 43.17 |
デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740による差し替え後)。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項の列B(鋼片の行は高炉・転炉法(C)、アルミニウムは一次アルミニウム(K))。コストは端数処理前の証書数から計算しています。
中国産の鋼片(CNコード 7207 12 10)では、デフォルト値3.169が2028年に30%のマークアップで4.120になります。2028年の無償割当調整は0.90×1.364=1.228で、証書数は製品1トン当たり2.892、価格82.32ユーロのままなら238.08ユーロです。CBAM係数がなくなる2034年からは4.120 tCO2e全体が対象となり、同じ価格で339.13ユーロです。
デフォルト値が設定されていない国はありますか
CBAMの適用除外国を原産とする製品は規則(EU)2023/956の対象外のため、これらの国にはデフォルト値がありません。
付属書IIIの適用除外国は、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー(いずれもEEA)とスイス(EU ETSと連結)です。これらの国を原産とする製品にはCBAM証書が不要で、デフォルト値も適用されません。日本は付属書IIIに含まれておらず、日本からの対象製品には日本の表のデフォルト値が適用されます。
英国は、同等の炭素価格制度(UK ETS)を持ちながら付属書IIIに含まれていないため、EU CBAMの対象です。2026年5月13日の実施規則案(2026年10月23日時点で未採択)は、ETS、点源の炭素税、燃料ベースの炭素税、混合型の4つの承認経路を示しており、採択されればUK ETSはETSの経路に該当することになります。輸出者側からの対応は輸出者向けのCBAMデフォルト値で説明しています。
CBAM対応全体におけるデフォルト値の位置づけ
デフォルト値は、認可を受けた後、CBAM申告書を提出する前の算定段階で使う、CBAMコンプライアンスの一要素です。
EU CBAMのデフォルト値は英国CBAMには使えません。英国CBAMは英国財務省の告示で独自の値を定め、英国歳入関税庁(HMRC)は2026年10月16日に、2027年と2028年について製品ごとに1つの貿易加重値を公表しました。英国CBAMは税のため、HMRCへの登録と納税申告で対応します。詳細は英国CBAMのデフォルト値(英語)にあります。
デフォルト値と実排出量のどちらを使うかを決める要因
デフォルト値と実排出量の選択を左右する要因は三つです。供給者がモニタリング計画を作る意思があるか、施設を検証できる認定検証機関があるか、施設が実施規則(EU)2025/2547の方法論上の要件を満たすかです。
検証機関の数がボトルネックです。各国の国家認定機関の登録簿で確認できた認定は2026年10月13日時点で5件で、EmiCert S.A.(ギリシャのESYDが認定)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccrediaが認定)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedacが認定)です。それぞれ認定された活動グループに限られ、日本の法人は含まれません。欧州委員会の認定検証機関リストは2026年10月23日時点で未公表です。一覧は認定検証機関にあります。
CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関だけです。GX-ETSの登録確認機関やGXリーグの登録検証機関は国内制度の役割で、それだけではCBAMの検証はできません。日本の検証機関は、域外からの申請を受け付ける7つの国家認定機関のいずれかに申請します。
デフォルト値を使うことはCBAM違反ですか
違反ではありません。規則(EU)2023/956第7条第2項(b)は、デフォルト値による体化排出量の決定を明示的に認めています。第26条第1項の罰金は証書の納付不足に科されるもので、デフォルト値の使用に科されるものではありません。デフォルト値で証書数を正しく計算し、必要な証書を納付した輸入者は義務を果たしています。
2026年以降にデフォルト値は変わりますか
変わります。実施規則(EU)2025/2621は2026年1月1日からの本格実施期間のデフォルト値を定めていますが、欧州委員会は生産データの改善に応じて定期的に見直します。最初の変更は見直しではなく訂正で、実施規則(EU)2026/1740が2026年1月1日に遡って付属書IとIVの誤りを直しました。
検証済みの実排出量が多く登録される国と部門では、将来の再計算で国の平均値がどちらの方向にも動き得ます。実排出量の検証を済ませた輸入者は見直しの影響を受けませんが、デフォルト値に頼る輸入者は不利な改定のリスクを負います。
50トン基準はデフォルト値の義務に影響しますか
影響します。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。基準は輸入者単位で、日本の輸出者単位ではないため、少量のボルトを多数の輸入者に出荷する場合も、各輸入者の年間合計で判断されます。50トンを超える輸入者は、すべての対象輸入についてデフォルト値か実排出量で計算します。
よくある質問
2028年の鉄鋼のデフォルト値のマークアップは何%ですか
2028年以降の鉄鋼(およびセメント、アルミニウム、水素)のデフォルト値のマークアップは30%で、実施規則(EU)2025/2621に定められています。2026年10%、2027年20%、2028年から30%の3段階の最後の段階です。肥料は毎年1%のままです。
日本の輸出者にデフォルト値を使う義務はありますか
ありません。CBAMの義務を負うのはEUの輸入者(または間接的通関代理人)で、デフォルト値を使うか実排出量を使うかもCBAM申告書を出す輸入者が決めます。日本の生産者はCBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録し、検証済みの実排出量を提供することで、輸入者がデフォルト値を使わずに済むようにできます。
1年間デフォルト値を使った後、実排出量に切り替えられますか
切り替えられます。生産施設が検証済みのモニタリング計画と認定検証機関の検証報告書を備えれば、以後の申告期間から実排出量を使えます。過去にデフォルト値で出した申告を修正する必要はありません。ただし、実排出量を入手した後は一貫して使う必要があり、データ欠落について文書化された理由なく、同じ施設でデフォルト値と実排出量を行き来することはできません。
本格実施期間のデフォルト値は移行期間のデフォルト値と同じですか
同じではありません。移行期間(2023年10月から2025年12月、実施規則(EU)2023/1773による報告)のデフォルト値は算定方法も数値も異なり、本格実施期間の実施規則(EU)2025/2621の値は原産国とCNコードごとに定められています。日本産熱延鋼板(CNコード 7208)の本格実施期間のデフォルト値はマークアップ前で2.100 tCO2eです。移行期間の値でコストを見積もった輸入者は、訂正後の付属書ですべての数値を確認し直す必要があります。
複雑な製品に含まれる前駆体にもデフォルト値は適用されますか
適用されます。鋼管、アルミニウム構造物、肥料混合物などの複雑な製品を輸入する場合、含まれる前駆体の体化排出量も合計に含まれます。前駆体の実排出量がなければ、その前駆体の国別デフォルト値が使われます。日本のボルトメーカーが検証データのない輸入鋼材を使っている場合、その鋼材の原産国のデフォルト値がボルトの体化排出量に含まれます。