CBAMの計算方法:証書数の算定式、6つの手順、日本産製品と6部門の計算例

CBAM証書の数は、特定体化排出量から無償割当調整を差し引き、製品の質量を掛けて求めます。

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図:CBAMの算定式。体化排出量(施設の検証済みデータ、またはデフォルト値+マークアップ)から無償割当調整と原産国で支払った炭素価格を差し引くと必要な証書の数になり、証書の価格を掛けるとコストになります。

CBAMの計算は、EUの輸入者が輸入品1トンごとに購入し納付するCBAM証書の数を決めるものです。算定式は、CBAM証書の数=max[0,特定体化排出量(SEE)-無償割当調整(SEFA)-炭素価格分]×質量(トン)、コストはCBAM証書の数×CBAM証書の価格(1 CO2換算トン当たりのユーロ)です。 SEEは製品の特定体化排出量、SEFAは製品1トン当たりの無償割当調整、炭素価格分は第9条の減額で、いずれも製品1トン当たりのtCO2e(CO2換算トン)で表します。

日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で2026年第3四半期に輸入した場合、製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書が必要で、コストは製品1トン当たり80.20ユーロです。2026年の公式価格は、第1四半期が1 CO2換算トン当たり75.36ユーロ、第2四半期が75.28ユーロ、第3四半期が82.32ユーロ(2026年10月5日公表)で、いずれも規則(EU)2023/956第21条第1a項に基づくEU ETSのオークション価格の四半期平均です。

根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」と、それを改正した規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)です。対象は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6部門です。最初の申告期限は2027年9月30日で、それまでに計算方法を正しく理解しておけば、第26条第1項の罰金(納付しなかったCBAM証書1枚につき、インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ)を避けられます。

このページでは、EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の計算を6つの手順で説明し、日本産の主要品目と6部門すべての計算例、コスト一覧、よくある質問への答えをまとめます。制度の全体像はEU CBAMの解説をご覧ください。

キャプション:6部門に共通するCBAMの計算は、体化排出量から無償割当調整を差し引き、四半期ごとの公式価格を掛けて求めます。


CBAMの計算は何を求めるのか

CBAMの計算は、輸入品の体化排出量を測り、EU ETSの炭素価格で評価される金銭上の義務に換算するものです。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。計算の結果は関税額や売上への課税額ではなく、証書の枚数です。無償割当調整と第9条の減額を差し引いた後に残る1 CO2換算トンごとに、1枚のCBAM証書が必要になります。

体化排出量の算定方法の法的根拠は規則(EU)2023/956第7条で、技術的な詳細は実施規則(EU)2025/2547に定められています。計算を左右するのは、CBAMの体化排出量に関わる2つの量、つまり製品1トン当たりの特定体化排出量(SEE)と輸入品の正味質量(トン)です。これに、第31条と実施規則(EU)2025/2620が定める3つ目の量として、無償割当調整が加わります。

部門によって、計算に入る排出量の種類は次の3つに分かれます。

  • 直接体化排出量:生産工程そのものから出る温室効果ガスで、生産中に消費する熱と冷却を含みます(規則(EU)2023/956第3条第21号)。6部門すべてで対象です。
  • 間接体化排出量:生産中に消費する電力による排出です(第3条第34号)。対象はセメントと肥料、および鉄鋼のうち凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)だけです。
  • 前駆体の体化排出量:複雑な製品の生産に使う付属書Iの投入物から引き継がれる体化排出量です。熱延コイルを前駆体とする鋼管や、クリンカーを前駆体とするセメントで問題になります。

無償割当調整は、同じ製品を作るEUの生産者がまだ受け取っているEU ETSの無償割当の分だけ、証書の数を減らす仕組みです(規則(EU)2023/956第31条)。2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。2026年に廃止される無償割当は2.5%にとどまります。製品1トン当たりの無償割当調整(SEFA)は、CBAM係数×部門横断補正係数×CBAMベンチマークで求め、SEEから差し引きます。

したがって、2026年の義務は総コストの一定割合ではありません。総コストのちょうど2.5%になるのは、排出量がベンチマークと等しい製品だけです。ベンチマークを上回る1 CO2換算トンはすべて全額が証書の対象になり、ベンチマークの97.5%以下の製品には証書が必要ありません。

それでも、総コスト(SEE×質量×価格)は中長期の計画を立てるうえで重要な数字です。CBAM係数が下がるにつれてコストはこの上限に近づき、2034年からはCBAM係数そのものが適用されなくなるためです。


CBAM証書の数を計算する6つの手順

以下の6つの手順は、規則(EU)2023/956と実施規則(EU)2025/2547が定める輸入者の手続きの流れに沿っており、各手順の結果が次の手順の入力になります。

6つの手順をすべて終えると、年次のCBAM申告書に記載する最終的なCBAM証書の数が求まります。日本の輸出者は申告者ではありませんが、ステップ2とステップ3で使うデータを用意するのは輸出者側です。

ステップ1:CNコードと対象部門を特定する

CBAMの計算は、輸入品のCNコード(EUの関税分類コード)から始まります。CNコードによって、製品が規則(EU)2023/956付属書Iの対象かどうか、6部門のどれに当たるかが決まります。

付属書Iには6部門で42項目があり、内訳は次の表のとおりです。類や項(4桁)の単位で記載された項目は、その下のすべての8桁のCNコードを含みます。各項目の品名はCBAM対象製品リストにまとめています。付属書Iにない製品には、炭素含有量にかかわらずCBAMの義務はありません。

部門 付属書Iの項目 直接排出量 間接排出量
鉄鋼(15項目) 第72類(鉄スクラップ(7204)と、フェロマンガン、フェロクロム、フェロニッケル以外の7202の合金鉄を除く)、2601 12 00(凝結させた鉄鉱石)、7301、7302、7303 00、7304、7305、7306、7307、7308、7309 00、7310、7311 00、7318、7326 対象 対象外(2601 12 00を除く)
セメント(6項目) ex 2507 00 80(焼成粘土のみ)、2523 10 00、2523 21 00、2523 29 00、2523 30 00、2523 90 00 対象 対象
アルミニウム(14項目) 7601、7603、7604、7605、7606、7607、7608、7609 00 00、7610、7611 00 00、7612、7613 00 00、7614、7616 対象 対象外
肥料(5項目) 2808 00 00、2814、2834 21 00、3102、3105(3105 60 00を除く) 対象 対象
電力(1項目) 2716 00 00のみ 対象 該当なし
水素(1項目) 2804 10 00のみ 対象 対象外

CNコードが一致しても、2つの免除によって義務がなくなる場合があります。1つ目は第2a条の50トン基準です。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。

2つ目は、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを原産とする製品で、EU ETSが適用されるか、EU ETSと完全に連結した制度があるため対象外です(第2条第4項、付属書III第1項、条件は第2条第6項)。日本は免除国に含まれません。

ステップ2:生産ルートを確認する

生産ルートが計算に与える影響は、実排出量とデフォルト値のどちらを使うかによって異なります。

実排出量を使う場合、生産ルートは、施設が実施規則(EU)2025/2547に従って適用するシステム境界とモニタリングの規則を決め、事業者の排出量報告書に記載されます。デフォルト値を使う場合、輸入者はルートを選べません。実施規則(EU)2025/2621付属書Iの原産国の行に記載されたルート記号が、ステップ4の無償割当調整に使うCBAMベンチマークを決めます(実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項)。

ルートによる差は、ベンチマークに表れます。次の表は、各部門の主要製品について、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn B(デフォルト値用)のベンチマークを示したものです。

部門 製品(CNコード) ルート Column Bのベンチマーク(tCO2e/t)
鉄鋼 炭素鋼の半製品(7207 11 14) (C)高炉・転炉法(BF-BOF) 1.364
鉄鋼 炭素鋼の半製品(7207 11 14) (D)直接還元鉄(DRI)を使う電炉法 0.475
鉄鋼 炭素鋼の半製品(7207 11 14) (E)スクラップ電炉法 0.066
セメント 灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) なし 0.666
セメント 白色ポルトランドセメント(2523 21 00) なし 0.859
アルミニウム アルミニウムの塊(7601) (K)一次 1.423
アルミニウム アルミニウムの塊(7601) (L)二次 0.091
肥料 尿素(3102 10 19) なし 0.902
肥料 無水アンモニア(2814 10 00) なし 1.522
水素 水素(2804 10 00) なし 5.089
電力 電力(2716 00 00) なし ベンチマークなし(無償割当調整はゼロ)

ベンチマークは無償割当調整で差し引く値であり、実際の工場の排出原単位ではありません。SEEはステップ3で決まり、施設の検証済みの実排出量か、原産国とCNコードに対応する付属書Iのデフォルト値を使います。

日本の表の鉄鋼の行に記載されているルート記号は、高炉・転炉法(C、F、またはC/F)だけで、電炉法(D、E)の記号はありません。このため、ルート別のベンチマークがある炭素鋼と低合金鋼の製品では、スクラップを使う日本の電炉メーカーの製品も、デフォルト値で申告する限り高炉・転炉法のベンチマークで計算されます。電炉の低い排出量を計算に反映させるには、検証済みの実排出量が必要です。詳しくは電炉法(EAF)とCBAMをご覧ください。

ステップ3:特定体化排出量(実排出量またはデフォルト値)を入手する

特定体化排出量(SEE)は製品1トン当たりのtCO2eで表し、CBAM証書の計算の出発点になる量です。

輸入者がSEEのデータを得る経路は2つあります。

経路A:検証済みの実排出量は、EU域外の生産施設が提供するデータです。生産者はモニタリング計画を作成し、実施規則(EU)2025/2547に従って排出量を測定または計算したうえで、根拠資料とともにSEEを提供します。このデータは、委任規則(EU)2025/2551に基づく認定検証機関の検証を受ける必要があります。デフォルト値には割高なマークアップが上乗せされるため、検証済みの実排出量を使える方が有利です。

経路B:デフォルト値は、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により2026年1月1日に遡って修正)に定められ、実際のデータがない場合に使います。デフォルト値は原産国とCNコードごとに定められています。「総排出量」の値に、2026年は10%、2027年は20%、2028年以降は30%のマークアップを加えます(肥料は毎年1%)。マークアップは無償割当調整を差し引く前に加え、ベンチマークには付かないため、上乗せされた排出量はすべて証書価格の満額で課されます。

経路Aの方法論について、欧州委員会の支援資料が出そろっています。欧州委員会税制・関税同盟総局(DG TAXUD)は2026年8月14日、本格実施期間向けのガイダンス文書10本を公表しました。体化排出量の算定方法を扱うガイダンス第3号と、セメント、水素、肥料、鉄鋼、アルミニウム、電力の部門別ガイダンス第5a号から第5f号が含まれます。

いずれも2026年報告年(最初の申告期限は2027年9月30日)向けの拘束力のない資料です。10本の概要はガイダンス文書10本の解説(英語)にあります。

日本語の資料としては、JETROの「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応する排出量の算定実務マニュアル」(2026年3月)と、経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)があります。JETROの2026年9月18日の記事は、CNコードの特定から前駆体の排出量を含む特定体化排出量の算出までを8段階で示していますが、無償割当調整を含む証書数の計算式は扱っていません。

計画上の重要な注意点として、2つの経路では無償割当調整に使うベンチマークが異なります。デフォルト値では、実施規則(EU)2025/2620付属書第5項のColumn Bのデフォルト用ベンチマークを差し引きます。実排出量では、Column Aのプロセスベンチマークに、前駆体に含まれる無償割当を加えたものを差し引きます。このため、純額の差は排出量の差より大きくなることも、小さくなることもあります。輸入者は、どちらの経路を使うか決める前に、両方で試算してください。

ステップ4:算定式を当てはめる

CBAMの算定式は、第6条第2項(c)が求めるとおり、規則(EU)2023/956の第7条、第9条、第31条を組み合わせたものです。

欧州委員会の2026年8月14日のガイダンス第1号(拘束力なし、第2.4.2節)は、算定式を次のように示しています。

CBAM証書の数=max[0,SEE-SEFA-炭素価格分]×質量(トン)

CBAMの義務(ユーロ)=CBAM証書の数×CBAM証書の価格(1 CO2換算トン当たりのユーロ)

算定式の各項は、次のとおりです。

  • SEE:製品1トン当たりの特定体化排出量(tCO2e)。実排出量、またはマークアップを加えたデフォルト値です(第7条)。
  • SEFA:製品1トン当たりの無償割当調整(tCO2e)(第31条、実施規則(EU)2025/2620付属書の式1から式6)。デフォルト値では、SEFA=CBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×第5項Column Bのデフォルト用CBAMベンチマークです(式6)。実排出量では、Column Aのプロセスベンチマークに、前駆体に含まれる調整分を加えます(式2から式4)。
  • CBAM係数:2026年は97.5%で、無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。
  • 部門横断補正係数(CSCF):2026年から2030年まで各年100%です(実施決定(EU)2026/1862第1条)。
  • 炭素価格分:原産国で実際に支払われた製品1トン当たりの炭素価格を、CBAM証書の価格で割った値です(第9条。この換算に関する実施規則は2026年11月4日時点で未採択の案です)。
  • max[0,…]:結果がマイナスの場合はゼロとみなします。2026年は、ベンチマークの97.5%以下の製品に証書は必要ありません。

電力の無償割当調整はゼロです(実施規則(EU)2025/2620第1条第2項)。このため、輸入電力には体化排出量の全量が課されます。

2026年の排出分のCBAM証書の価格は、輸入した四半期について、オークションプラットフォームでのEU ETSの排出枠(EUA)の終値を平均したものです(第21条第1a項、実施規則(EU)2025/2548)。2027年からは週平均になります(第21条第1項)。これまでの公式価格は、2026年第1四半期75.36ユーロ、第2四半期75.28ユーロ、第3四半期82.32ユーロ(2026年10月5日公表)で、第4四半期の価格は2027年1月4日に公表される予定です。

デフォルト値を使う6つの製品について、2026年の製品1トン当たりの総コストと純コストを次の表に示します。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の「総排出量」、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620のColumn Bの値です。総コストは、無償割当調整を差し引く前の「デフォルト値+マークアップ」×価格、純コストは公表済みの各四半期の公式価格による法定の義務額です。

原産国と製品(CNコード) デフォルト値+2026年のマークアップ(tCO2e/t) ベンチマーク 証書数(製品1トン当たり) 総コスト(82.32ユーロ) 純コスト(第1四半期75.36ユーロ) 純コスト(第2四半期75.28ユーロ) 純コスト(第3四半期82.32ユーロ)
日本、熱延鋼板(7208 51 20) 2.310 1.370 0.97425 190.16ユーロ 73.42ユーロ 73.34ユーロ 80.20ユーロ
トルコ、半製品(7207 11 14) 2.541 1.364 1.2111 209.18ユーロ 91.27ユーロ 91.17ユーロ 99.70ユーロ
エジプト、灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) 1.419 0.666 0.76965 116.81ユーロ 58.00ユーロ 57.94ユーロ 63.36ユーロ
アラブ首長国連邦、アルミニウムの塊(一次、7601) 2.057 1.423 0.669575 169.33ユーロ 50.46ユーロ 50.41ユーロ 55.12ユーロ
エジプト、尿素(3102 10 19) 1.4039 0.902 0.52445 115.57ユーロ 39.52ユーロ 39.48ユーロ 43.17ユーロ
トルコ、水素(2804 10 00) 11.902 5.089 6.940225 979.77ユーロ 523.02ユーロ 522.46ユーロ 571.32ユーロ

証書数(製品1トン当たり)=デフォルト値+マークアップ-0.975×1.00×ベンチマーク。コストは端数処理前の証書数から計算しています。純コストは総コストの一定割合ではありません。電力には付属書Iのデフォルト値も無償割当調整もありません。日本の行は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算しました。

日本産の熱延鋼板(高炉・転炉法、CNコード 7208 51 20)を2026年第3四半期にデフォルト値で輸入した場合の計算は、次のとおりです。

  • デフォルト値:製品1トン当たり2.100 tCO2e(実施規則(EU)2026/1740付属書I、日本、生産ルート(C))
  • マークアップ10%を加えたSEE:2.100 × 1.10 = 2.310 tCO2e
  • デフォルト用CBAMベンチマーク:1.370 tCO2e(実施規則(EU)2025/2620第5.3項、Column B、ルート(C))
  • SEFA:0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575 tCO2e
  • 製品1トン当たりの証書数:2.310 - 1.33575 = 0.97425枚
  • 質量:500トン、したがって487.125枚
  • CBAM証書の価格:1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ(2026年第3四半期の公式価格)
  • 総コスト:2.310 × 500 × 82.32 = 9万5,079.60ユーロ
  • 2026年の純義務額:487.125 × 82.32 = 4万100.13ユーロ、製品1トン当たり80.20ユーロ

純額は総額の42.2%で、2.5%ではありません。総額の2.5%で計算すると製品1トン当たり4.75ユーロとなり、実際の80.20ユーロの約17分の1にとどまる大幅な過小評価になります。トルコ産の半製品(CNコード 7207 11 14、デフォルト値2.310、500トン)では、総コスト10万4,587.56ユーロに対し、純義務額は4万9,848.88ユーロ(製品1トン当たり99.70ユーロ)で、総額の47.7%です。2.5%で計算した5.23ユーロとは約19倍の差があります。

同じデフォルト値、ベンチマーク、価格で計算すると、2030年の輸入分(マークアップ30%、CBAM係数51.5%)のコストは、日本産熱延鋼板で製品1トン当たり166.65ユーロ、トルコ産半製品で189.38ユーロに上がります。EUの鉄鋼輸入者にとっては、2029年から2030年にかけての無償割当の急減にどう備えるかが、財務面で最も重要な判断になります。

貴社の製品とトン数に合わせた推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

ステップ5:四半期末の証書保有義務を計算する

規則(EU)2025/2083で改正された規則(EU)2023/956第22条第2項の四半期末の証書保有義務は、2027年から適用されます。

2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。体化排出量は、次の2つの基準のいずれかで求めます。

  • 基準(a):マークアップを加えないデフォルト値
  • 基準(b):同じCNコードと原産国の製品について、前暦年に納付したCBAM証書の数

この義務により、輸入者は購入のすべてを年次申告の期限まで先送りできなくなります。口座の証書が不足している場合は管轄当局から通知があり、輸入者は1か月以内に必要な数を保有しなければなりません(第22条第3項)。四半期の不足に対するトン当たりの罰金はありません。

基準(a)による四半期末の保有数の計算方法は、次の4段階です。

  1. 1月1日から該当する四半期(第1四半期から第4四半期)の末日までに輸入した各CBAM対象製品の質量を合計します。
  2. 各質量に、マークアップなしのデフォルト値からその年のSEFAを差し引いた値を掛けます。
  3. 0.50を掛けて、50%の基準量を求めます。
  4. CBAM登録簿の口座の保有数と比べ、不足分を四半期末までに購入します。

計算例として、輸入者が日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を2027年第1四半期に1,000トン、第2四半期に800トン輸入したとします。マークアップなしのデフォルト値は2.100 tCO2eです。2027年のCBAM係数95%では、SEFA=0.95 × 1.00 × 1.370 = 1.3015 tCO2eで、差し引き製品1トン当たり0.7985 tCO2eが残ります。第2四半期末までに1,800トン × 0.7985 = 1,437.3 tCO2eとなり、その50%の718.65を切り上げた719枚のCBAM証書を2027年6月30日までに保有する必要があります。

比較のため、トルコ産の半製品(デフォルト値2.310、同じ1,800トン)で計算すると、SEFA=0.95 × 1.00 × 1.364 = 1.2958、製品1トン当たり1.0142、1,825.56 tCO2eで、保有義務は913枚です。ベンチマークは2027年1月1日以降の輸入品について更新される可能性があるため(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)、2027年の数値は目安です。

ステップ6:CBAM証書を購入し、申告時に納付する

CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します(第20条第1項)。

CBAM証書は取引所で売買されず、1枚が1 CO2換算トンに当たります。2026年の排出分の証書には、製品を輸入した四半期の公式価格が適用されます(第21条第1a項)。2027年からは週平均の価格です(第21条第1項)。

2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。納付する証書の数は、ステップ4で計算した、第9条の減額と第31条の無償割当調整を差し引いた後の体化排出量です(第6条第2項(c)、第22条第1項)。JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となる場合もあると指摘しています。

第6条第2項とその細則に基づき、申告書に必要な6つの情報は次のとおりです。

  1. 暦年中に輸入したCBAM対象製品の総量(CNコード別、原産国別)
  2. 体化排出量の合計(tCO2e)。実排出量を使う場合は検証済みのもので、製品の種類別、原産国別に示します。
  3. 第9条の減額と無償割当調整を差し引いた後に納付するCBAM証書の総数
  4. 第9条の控除を請求する場合、原産国で支払われた炭素価格
  5. 実排出量の数値を裏付ける検証報告書
  6. 無償割当調整の根拠となるSEFAの数値(製品ごとに使ったCBAMベンチマークを含む)

買い戻しの請求期限は証書を納付した年の10月31日で、上限はその暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数です(第23条第1項、第2項)。買い戻し価格は購入時の価格です(第23条第3項)。2026年分として2027年に購入した証書は2027年中に限り買い戻し可能です(第23条第2a項)。買い戻しは、輸入量が見込みを下回り、証書を買いすぎた場合の備えになります。証書の仕組みはCBAM証書の解説にまとめています。


CBAMのコストの計算方法を、2026年にデフォルト値で輸入したトルコ産の鉄鋼半製品(CNコード 7207 11 14)で5つの手順に分けて示した図です。手順1、マークアップを含む体化排出量:2.310 × 1.10 = 製品1トン当たり2.541 tCO2e。手順2、無償割当調整を差し引く:ベンチマーク1.364 × CBAM係数97.5% × 部門横断補正係数100% = 1.3299。手順3、原産国で支払った炭素価格を差し引く:トルコの試行的な排出量取引制度は2026年は報告のみで排出枠は100%無償割当のため0。手順4、CBAM証書の数:2.541 − 1.3299 − 0 = 製品1トン当たり1.2111枚、1,000トンでは1,211.1枚。手順5、四半期の価格を掛ける:1.2111 × 82.32ユーロ(2026年第3四半期)= 製品1トン当たり99.70ユーロ、1,000トンで99,697.75ユーロ。総額に2.5%を掛ける旧来の簡便法では製品1トン当たり5.23ユーロとなり誤りです。差し引けるのはベンチマークまでで、それを超える排出量はマークアップ分も含めて全額が証書の対象です。
出典:規則(EU)2023/956第9条、第21条第1a項、第31条。デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621(同2026/1740による差し替え後)。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620。CBAM係数:指令2003/87/EC第10a条第1a項。部門横断補正係数:実施決定(EU)2026/1862。cbamguide.comの計算ツールの方法で算出 · 2026年10月26日時点
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5つの手順と計算例

1. 製品1トン当たりの体化排出量:デフォルト値2.310 × 1.10(2026年のマークアップ10%)= 2.541 tCO₂e

2. 無償割当調整を差し引く:ベンチマーク1.364 × CBAM係数97.5% × 部門横断補正係数100% = 1.3299

3. 原産国で支払った炭素価格を差し引く:トルコの試行ETSは2026年は報告のみ、排出枠は100%無償:0

4. 残りが製品1トン当たりの証書の数:2.541 − 1.3299 − 0 = 1.2111枚

5. 四半期の価格を掛ける:1.2111 × 82.32ユーロ(2026年第3四半期の価格)= 製品1トン当たり99.70ユーロ

1件の輸入で計算すると

トルコ産1,000トン (CNコード 7207 11 14、デフォルト値、2026年の輸入)

- 製品1トン当たりの証書の数: 1.2111枚

- × 1,000トン: CBAM証書1,211.1枚

2026年第3四半期の価格82.32ユーロでのコスト: €99,697.75

「総額 × 2.5%」が誤りである理由

差し引けるのはベンチマークまでです。それを超える排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。

- 法令に基づく正味コスト方式:€99.70

- 旧来の2.5%の簡便法:€5.23

製品1トン当たり。簡便法は2.541 × 82.32ユーロ × 2.5% = 5.23ユーロで、正しい額の約19分の1です。

日本産の主要製品のCBAM計算例(2026年、デフォルト値)

日本産の主要な鉄鋼製品とアルミニウム製品をデフォルト値で2026年に輸入した場合、CBAM証書のコストは製品1トン当たり73.21ユーロから200.22ユーロです(2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロ)。

鉄鋼はEUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)14億4,820万ユーロのうち12億4,590万ユーロ(86%)、アルミニウムは1億9,500万ユーロ(13.5%)を占めます(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。次の表は、輸出額の大きい品目について、日本の表のデフォルト値で計算した結果です(2026年11月4日、当サイトの計算ツール)。

製品(CNコード) 2025年のEU輸入額(4桁、Eurostat Comext) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年のSEE(マークアップ10%) ベンチマーク(Column B、ルート) SEFA 証書数(製品1トン当たり) コスト(製品1トン当たり)
熱延鋼板(7208 51 20) 2億1,673万ユーロ 2.100 2.310 1.370(C) 1.33575 0.97425 80.20ユーロ
無方向性電磁鋼板(7225 19 90) 1億7,762万ユーロ 3.530 3.883 1.488(C) 1.4508 2.4322 200.22ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 1億7,643万ユーロ 2.800 3.080 1.364(C) 1.3299 1.7501 144.07ユーロ
冷延鋼板(7209 16 90) 1億1,888万ユーロ 2.143 2.3573 1.458(C) 1.42155 0.93575 77.03ユーロ
アルミニウム板(7606 12 99) 1億1,364万ユーロ 1.730 1.903 0.148(L) 0.1443 1.7587 144.78ユーロ
めっき鋼板(7210 49 00) 9,436万ユーロ 2.130 2.343 1.491(C) 1.453725 0.889275 73.21ユーロ
ラインパイプ用継目無鋼管(7304 19 10) 5,737万ユーロ 2.110 2.321 1.383(C) 1.348425 0.972575 80.06ユーロ

輸入額は4桁の項(7208、7225、7318、7209、7606、7210、7304)全体の値です。8桁のコードは計算例として選んだもので、同じ項の中でもデフォルト値やベンチマークが異なるコードがあります。

ボルト・ねじ(CNコード 7318 15 42)の証書数1.7501枚は、経済産業省のガイドライン第3版(2026年3月)の付属書IVにある2026年の値「1.750」(CBAM係数97.5%、ベンチマーク1.364)と一致します。同ガイドラインの円建ての数値(製品1トン当たり29,139円)は、EU ETSの価格90ユーロ、1ユーロ185円を前提にした値で、公式価格82.32ユーロでのユーロ建てのコストは144.07ユーロです。

アルミニウム板(7606 12 99)では、日本の表のルートが二次(L)のため、差し引くベンチマークは0.148と小さく、純コストは総コスト(156.65ユーロ)の92.4%に達します。日本産の電磁鋼板は、デフォルト値がベンチマークを大きく上回るため、表の中で最もコストが高くなります。製品別の詳細は日本の鉄鋼輸出とEU CBAMと日本のアルミニウム輸出とEU CBAMをご覧ください。


デフォルト値ワークシート(英語)

CBAMの公式デフォルト値をすべて1つのスプレッドシートに収録しています。マークアップ、ベンチマーク、2026年の製品1トン当たりのコスト付きで、英語版をすぐにダウンロードできます。

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6部門のCBAM計算例

以下の計算例は、1,000トン(電力は1,000 MWh)を2026年第3四半期にデフォルト値で輸入した場合の総コストと2026年の純コストを、公式価格82.32ユーロで示したものです。

各デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の「総排出量」、各ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn Bの値で、SEFA=0.975 × 1.00 × ベンチマークです。まず、日本を原産国とする計算例を次の表に示します(2026年11月4日、当サイトの計算ツール)。

部門と製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) マークアップ後のSEE ベンチマーク SEFA 証書数(1,000トン当たり) 総コスト 2026年の純コスト 純額の割合
鉄鋼:熱延鋼板(7208 51 20、ルートC) 2.100 2.310(10%) 1.370 1.33575 974.25 19万159.20ユーロ 8万200.26ユーロ 42.2%
セメント:灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) 0.890(直接0.83、間接0.06) 0.979(10%) 0.666 0.64935 329.65 8万591.28ユーロ 2万7,136.79ユーロ 33.7%
アルミニウム:塊(7601、ルートL) 0.360 0.396(10%) 0.091 0.088725 307.275 3万2,598.72ユーロ 2万5,294.88ユーロ 77.6%
肥料:尿素(3102 10 19) 1.520(直接1.41、間接0.11) 1.5352(1%) 0.902 0.87945 655.75 12万6,377.66ユーロ 5万3,981.34ユーロ 42.7%
水素(2804 10 00) 14.030 15.433(10%) 5.089 4.961775 1万471.225 127万444.56ユーロ 86万1,991.24ユーロ 67.8%

日本からEUへのセメント(2025年に480万ユーロ)と肥料(250万ユーロ)の輸入は少額で(Eurostat Comext、2025年)、これらの行は計算方法を示すための例です。2025年の日本からの電力輸入は0ユーロ、0 MWhでした。

比較のため、他の原産国の計算例(1,000トン、2026年第3四半期)を次の表に示します。

部門と製品(CNコード) デフォルト値(tCO2e/t) マークアップ後のSEE ベンチマーク SEFA 証書数 総コスト 2026年の純コスト
鉄鋼:トルコ産の高炉・転炉法ビレット(7207 11 14、ルートC) 2.310 2.541 1.364 1.3299 1,211.1 20万9,175.12ユーロ 9万9,697.75ユーロ
セメント:エジプト産の灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) 1.290 1.419 0.666 0.6494 769.65 11万6,812.08ユーロ 6万3,357.59ユーロ
アルミニウム:アラブ首長国連邦産の一次アルミニウムの塊(7601、ルートK) 1.870 2.057 1.423 1.3874 669.58 16万9,332.24ユーロ 5万5,119.41ユーロ
肥料:エジプト産の尿素(3102 10 19) 1.390 1.4039 0.902 0.8795 524.45 11万5,569.05ユーロ 4万3,172.72ユーロ
水素:トルコ産(2804 10 00) 10.820 11.902 5.089 4.9618 6,940.23 97万9,772.64ユーロ 57万1,319.32ユーロ

セメントと肥料は直接排出量と間接排出量の両方が対象です。アルミニウムは直接排出量だけで、電力消費による間接排出量はCBAMの対象になりません。

電力の義務は製品1トン当たりではなく1 MWh当たりで表し、無償割当調整はゼロのため(実施規則(EU)2025/2620第1条第2項)、総額と純額は同じです。例示として1,000 MWhを排出係数0.5 tCO2/MWhで計算すると、500枚のCBAM証書、500 × 82.32 = 4万1,160ユーロになります。

水素は、実排出量を使う場合もベンチマーク(Column A)が5.089です。このため、検証済みのSEEが4.962 tCO2e以下の水素は、グリーン水素を含め、2026年に証書は必要ありません。他の原産国の計算例では純額は総額の33%から58%、日本の計算例(鉄鋼、セメント、アルミニウムの塊、肥料、水素)では33.7%から77.6%です。割合は、申告する排出量がCNコードと生産ルートのベンチマークをどれだけ上回るかで決まります。


実排出量のデータがない場合の計算

EU域外の供給者から実際の体化排出量を入手できない輸入者は、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により修正)のデフォルト値を使います。

CBAMのデフォルト値は、原産国と製品ごとの排出原単位で、検証済みの実際のデータがない場合に算定式のSEEとして使います。日本には独自の表があります。

デフォルト値は、原産国におけるその製品の平均排出原単位に設定され、これにマークアップが加わります。マークアップは年ごとに上がり、2026年10%、2027年20%、2028年以降30%です。肥料のデフォルト値には、付属書Iの序文に基づき2026年以降毎年1%のマークアップが付きます。結果として、デフォルト値でCBAMのコストを払う輸入者は、検証済みの実際のデータを使う輸入者より、年を追うごとに多く支払うことになります。

実排出量が国別のデフォルト値を下回る輸出者には、モニタリングの仕組みを整え、検証済みのデータをEUの顧客に提供し、体化排出量を減らす強い経済的な動機があります。無償割当調整は申告する排出量に応じて増えないため、マークアップ分は全額が課されます。

日本産の熱延鋼板(CNコード 7208、デフォルト値2.100)では、2026年のマークアップが製品1トン当たり0.21 tCO2e、82.32ユーロで17.29ユーロを上乗せします。2028年からは30%のマークアップで0.63 tCO2e、製品1トン当たり51.86ユーロです。比較例のトルコ産ビレット(CNコード 7207 11 14、デフォルト値2.310)では、2026年0.231 tCO2e(19.02ユーロ)、2028年から0.693 tCO2e(57.05ユーロ)です。


CBAMの計算とEU ETS、無償割当との関係

CBAMの計算はEU ETSと密接に結びついており、無償割当の段階的廃止と第9条の炭素価格控除という2つの仕組みが、輸入者の純コストに直接影響します。

無償割当の段階的廃止

CBAM対象部門へのEU ETSの無償割当は、規則(EU)2023/956第31条により、実施規則(EU)2025/2620のSEFAの方法で計算され、CBAM証書の義務を減らします。CBAM係数は、EUの生産者が維持する無償割当の割合で、指令2003/87/EC第10a条第1a項が定めます。CBAM係数が下がるにつれてSEFAが縮小し、必要な証書の数が増えます。

次の表は、日本産熱延鋼板(CNコード 7208 51 20、ベンチマーク1.370)と比較例のトルコ産ビレット(CNコード 7207 11 14、ベンチマーク1.364)に、82.32ユーロ一定、CSCF 100%で廃止の日程を当てはめたものです。CSCFは2030年までしか定められていないため、2031年から2033年のSEFAはまだ計算できません。

年 CBAM係数(維持される無償割当) 廃止される割合 マークアップ 日本:SEFA 日本:証書数(製品1トン当たり) 日本:純コスト(製品1トン当たり) トルコ:SEFA トルコ:証書数 トルコ:純コスト
2026 97.5% 2.5% 10% 1.33575 0.97425 80.20ユーロ 1.3299 1.2111 99.70ユーロ
2027 95% 5% 20% 1.3015 1.2185 100.31ユーロ 1.2958 1.4762 121.52ユーロ
2028 90% 10% 30% 1.233 1.497 123.23ユーロ 1.2276 1.7754 146.15ユーロ
2029 77.5% 22.5% 30% 1.06175 1.66825 137.33ユーロ 1.0571 1.9459 160.19ユーロ
2030 51.5% 48.5% 30% 0.70555 2.02445 166.65ユーロ 0.7025 2.3005 189.38ユーロ
2031 39% 61% 30% 未設定 該当なし 該当なし 未設定 該当なし 該当なし
2032 26.5% 73.5% 30% 未設定 該当なし 該当なし 未設定 該当なし 該当なし
2033 14% 86% 30% 未設定 該当なし 該当なし 未設定 該当なし 該当なし
2034年から 適用なし 100% 30% 0 2.730 224.73ユーロ 0 3.0030 247.21ユーロ

実施規則(EU)2025/2620前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は目安です。

最も急な上昇は、CBAM係数が77.5%から51.5%に下がる2029年から2030年にかけて起こります。日本産熱延鋼板を年1万トン輸入する場合、年間の純コストは2026年輸入分の約80万2,000ユーロから、2030年輸入分の約166万7,000ユーロに増えます。トルコ産ビレットでは約99万7,000ユーロから約189万ユーロです。輸入量や証書価格が変わらなくても、この増加は起こります。

廃止される割合が、総額に対する純額の割合と一致するのは、体化排出量がベンチマークとちょうど等しい製品の場合だけです。そうした製品は2026年に総額の2.5%、2030年に48.5%を支払います。ベンチマークを上回る排出量は、デフォルト値のマークアップ分も含め、どの年も全額が課されます。CBAMコストモデルのテンプレート(英語)では、この法定の方法と、原産国とCNコードを選んで公式のデフォルト値とベンチマークで計算するコスト計算ツールを紹介しています。

無償割当調整の計算に関する欧州委員会の参照文書は、ガイダンス第4号「納付する証書に対する無償割当調整の計算」で、本格実施期間向けのガイダンス文書10本の一つとして2026年8月14日に公表されました。2026年報告年向けの拘束力のない資料です。

第9条の炭素価格控除と日本の炭素価格

認可申告者は、申告した体化排出量について生産時に第三国で実際に支払われた炭素価格の分だけ、CBAM証書の数の減額を請求できます(規則(EU)2023/956第9条第1項)。

その国で受けられるリベートなどの補償は差し引かれるため、無償で割り当てられた排出枠は支払われた価格になりません。欧州委員会の日本語ガイダンスも「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。

規則は書類の義務も定めています。申告者は、価格が実際に支払われたことを示す記録を、申告者からも第三国の当局からも独立した者の認証を受けたうえで(第9条第2項)、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第9条第3項)。デフォルト値を使う場合、2027年から欧州委員会が定めることのできる年次のデフォルト炭素価格を参照してのみ減額を請求できます(第9条第4項)。

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。欧州委員会は2026年5月13日に、4つの認定経路(排出量取引制度、排出源に課す炭素税、燃料に課す炭素税、複合的な制度)を定める実施規則案を公表し、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で未採択です。

2026年11月4日時点で、韓国、英国、中国、インド、トルコを含め、どの国の炭素価格も認められていません。スイス原産の製品は付属書IIIによりCBAMの対象外のため、控除は必要ありません。

日本の制度と第9条の関係は、次の4点に整理できます(各制度の詳細はCBAMと日本)。

  • 排出量取引制度(GX-ETS):2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化され、直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者が対象です(経済産業省)。鉄鋼とセメントにはベンチマーク方式で無償割当されるため(ICAP)、無償割当分は実際に支払われた価格になりません。
  • 地球温暖化対策のための税(温対税):CO2 1トン当たり289円です(環境省)。ただし、鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は石油石炭税が免税で、高炉とセメントの排出の大部分を占める石炭には課されていません。
  • 化石燃料賦課金:2028年度から導入される予定で、まだ施行されていません。2026年と2027年の輸入について、控除を請求できるものはありません。
  • 英国CBAM:英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せました。英国CBAMは別の税制度で、EU CBAMの扱いとは別です。

欧州委員会がGX-ETSを「実際に支払われた」炭素価格として扱うか、日本の年度(4月から3月)をCBAMの暦年にどう対応させるか、上流で課される温対税が施設の事業者の支払いとみなされるかは、まだ答えの出ていない論点です(JETRO、2026年9月18日も同じ論点を挙げています)。詳しくは第三国で支払われた炭素価格の控除と第9条の解説をご覧ください。

CBAM規則(英語)の法的根拠はEU機能条約第192条第1項で、CBAMは通商措置ではなく環境措置に位置づけられます。この区別は、第9条の控除とWTO協定上の義務の関係に影響し、ロシアがEUを訴えたWTO紛争(DS639、2026年9月25日にパネル設置)で決着していない論点です。

キャプション:CBAM係数が2026年の97.5%から下がり、2034年から適用されなくなるにつれて、高炉・転炉法の鉄鋼の純コストは上がります。82.32ユーロ一定のデフォルト値で、日本産熱延鋼板は製品1トン当たり80.20ユーロから224.73ユーロ、トルコ産ビレットは99.70ユーロから247.21ユーロに上がります。


CBAMの計算に関するよくある質問

CBAMの計算式は何ですか

CBAMの計算式は、**CBAM証書の数=max[0,SEE-SEFA-炭素価格分]×質量(トン)**で、ユーロ建ての義務は証書の数×CBAM証書の価格(1 CO2換算トン当たりのユーロ)です。SEEは特定体化排出量で、生産施設の検証済みの実排出量、それがなければ実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により修正)の欧州委員会のデフォルト値を使います。

SEFAは製品1トン当たりの無償割当調整で、CBAM係数(2026年は97.5%)×部門横断補正係数(2026年から2030年は100%)×実施規則(EU)2025/2620付属書に定める製品のCBAMベンチマークです。炭素価格分は第9条の減額です。

CBAMの計算では、すべての国に同じ排出係数を使いますか

使いません。CBAMの計算は、国の平均ではなく生産施設ごとの体化排出量を使います。デフォルト値は国別に定められていますが(実施規則(EU)2025/2621)、特定の施設の検証済みの実際のデータは国の平均より優先されます。日本の熱延鋼板のデフォルト値は2.100で、トルコの2.428、中国の3.187より低い値ですが、効率の高い施設の実排出量は、それをさらに下回る可能性があります。

鉄鋼とセメントでCBAMの計算は異なりますか

異なります。鉄鋼のCBAMの計算は直接排出量(CO2)だけを対象にします。セメントは直接排出量と、生産工程の電力消費による間接排出量の両方を対象にします。間接排出量が対象になるのは、セメントと肥料の2部門と、鉄鋼のうち凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)だけです。このため、セメントのSEEのデータはより複雑で、輸入者は生産施設から直接排出量と電力消費量の両方を入手する必要があります。

輸入者はCBAMの計算にデフォルト値を使えますか

使えますが、経済的には不利になります。実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値は、検証済みの実際のデータを入手できない場合に使えます。マークアップは2026年が10%で、2028年以降は30%に上がります(肥料は1%)。デフォルト値と実排出量の差が、無償割当の廃止とともにどれだけのコスト差になるかは、CBAM鉄鋼部門ガイドの例で確認できます。

50トンの適用除外はCBAMの計算に影響しますか

50トン基準は、小規模な輸入者をCBAMの義務から完全に免除します。電力と水素を除くすべてのCBAM対象製品の年間輸入量が、輸入者ごとに暦年の累積正味重量で50トン以下であれば、計算は必要ありません(第2a条、付属書VII第1項)。基準は出荷ごとや品目ごとではなく輸入者ごとに適用され、免除は税関申告で申告する必要があります。基準を超える輸入者は、すべての対象輸入について完全な計算を行います。

CBAMの計算は四半期ごとに変わりますか

年次申告に使う体化排出量の数値は、四半期ごとに変わりません。2027年からは、第22条第2項の四半期末の証書保有義務により、輸入者は年間を通じて輸入を把握し、各四半期末に1月1日以降の輸入品の体化排出量(無償割当調整後)の50%以上の証書を保有します。2026年は価格が四半期ごとに変わり、2026年の排出分の証書には、輸入した四半期の公式平均価格が適用されます(第21条第1a項、実施規則(EU)2025/2548)。

日本の輸出者はCBAMの計算で何をすればよいですか

日本の輸出者にCBAMの法的義務はなく、証書の購入、申告、納付の義務はEUの輸入者またはその間接的通関代理人が負います。ただし、算定式のSEEは輸出者の施設のデータで決まります。CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録すれば、検証済みの施設データを複数のEUの買い手と共有できます。事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します。

提供するデータの詳細は輸出者が用意するCBAMのデータ、検証の手順はCBAMの検証にあります。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


6部門でCBAMの計算はどう違いますか

CBAMの対象6部門は同じ算定式を使いますが、SEEに含める排出量の種類と、数える温室効果ガスが異なります。鉄鋼の詳しい計算は鉄鋼のCBAM計算、各部門の要件はCBAM対象部門にまとめています。

アルミニウムのCBAM計算にはPFCも含まれますか

含まれます。アルミニウムのSEEには、陽極の消費によるCO2と、ホール・エルー法の製錬で陽極効果が起きたときに出るPFC(地球温暖化係数6,630のCF4と11,100のC2F6)の両方が含まれます。PFCは地球温暖化係数でCO2eに換算します。陽極効果の多い一次アルミニウムの生産者ほどSEEが高く、必要なCBAM証書も多くなります。ベンチマークは一次の塊が1.423、二次の塊が0.091です(Column B、実施規則(EU)2025/2620)。詳しくはアルミニウムのPFC排出をご覧ください。

グリーン水素のCBAM計算はゼロになりますか

検証済みの実排出量であれば、ゼロになり得ます。水素は規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられているため直接排出量だけが対象で、電解に使う電力はSEEに含まれません。2026年の水素の無償割当調整は、どちらの経路でも0.975 × 5.089 = 4.962 tCO2eで、検証済みのSEEがこれ以下の水素に証書は必要ありません。検証済みのデータがなければ、製造方法にかかわらず国のデフォルト値が適用され、マークアップ前でトルコは10.820、日本は14.030 tCO2eです。詳しくはグリーン水素とCBAMをご覧ください。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。