CBAMの対象6分野(2026年):鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素のデフォルト値とコスト

EU CBAMの対象は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6分野です。

このページの内容

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の対象となる6分野は、2026年1月1日に本格実施期間に入りました。EUの輸入者は、輸入品の体化排出量1 CO2換算トンごとに、EU排出量取引制度(EU ETS)の価格に連動したCBAM証書を購入し、納付します。

コストは製品と原産国によって大きく異なります。本ページでデフォルト値を用いて計算した2026年の例では、2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で、製品1トン当たりのコストはエジプト産尿素の43.17ユーロから、自国の表がない国の水素の1,197.94ユーロまで開きがあります。検証済みの直接排出量が製品1トン当たり4.962 tCO2e以下のグリーン水素であれば、2026年輸入分の証書は不要です。

日本産の製品では、熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)が製品1トン当たり80.20ユーロ、アルミニウムの板(CNコード 7606 12 99)が144.78ユーロ、ねずみ色ポルトランドセメント(CNコード 2523 29 00)が27.14ユーロです(いずれもデフォルト値、2026年輸入分、当サイトの計算ツールで2026年11月4日に計算)。

根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。

本ページでは、規則(EU)2023/956付属書Iの6分野について、デフォルト値、1 CO2換算トン当たり75ユーロの参考価格での総コスト、2026年の正味コスト、各分野の義務を左右する特徴を比較し、あわせて日本からの輸出額と日本の表に基づく数値を紹介します。制度の全体像はEU CBAMの解説で説明しています。

キャプション:2026年のデフォルト値で計算すると、製品1トン当たりのCBAM証書の総コストは、1 CO2換算トン当たり75ユーロの参考価格で、エジプト産尿素の約105ユーロから水素の約1,464ユーロまで開きがあります。


CBAMの対象分野とは何ですか

CBAMの対象分野は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6つで、炭素集約度と貿易依存度が高く、EU排出量取引制度(EU ETS)からのカーボンリーケージ(炭素漏出)のリスクが最も高い分野として選ばれています。

6分野は規則(EU)2023/956付属書Iに定められており、分野ごとにCNコード(EUの関税分類コード)、体化排出量の算定方法、デフォルト値の表があります。付属書Iは42項目で、鉄鋼15、セメント6、アルミニウム14、肥料5、電力1、水素1です。各項目と除外品目はCBAM対象製品リストにまとめています。

分野間の最大の違いは、間接排出量(生産で使う電力の発電に伴う排出)に価格がつくかどうかです。セメントと肥料は直接排出量と間接排出量の両方が対象で、鉄鋼(凝結させた鉄鉱石、CNコード 2601 12 00を除く)、アルミニウム、水素、電力は直接排出量だけが対象です(規則(EU)2023/956付属書II)。

6分野の基本的な違いは、次の表のとおりです。

分野 付属書Iの項目数 直接排出量 間接排出量 主な温室効果ガス 2026年のデフォルト用ベンチマーク(Column B、tCO2e/t)
鉄鋼 15 対象 対象外(CNコード 2601 12 00を除く) CO2 半製品(CNコード 7207 11 14)1.364、熱延鋼板(CNコード 7208)1.370、いずれも高炉・転炉法(C)
セメント 6 対象 対象 CO2 ねずみ色クリンカーとねずみ色ポルトランドセメント0.666、白色0.859
アルミニウム 14 対象 対象外 CO2とPFC 一次(K)1.423、二次(L)0.091(CNコード 7601)
肥料 5 対象 対象 CO2とN2O(アンモニアはCO2のみ) 無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)1.522、尿素(CNコード 3102 10 19)0.902
電力 1 対象 対象外(付属書II) CO2 なし(無償割当調整はゼロ)
水素 1 対象 対象外 CO2 5.089(CNコード 2804 10 00)

ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項(2026年10月12日確認)。


日本からEUへのCBAM対象製品の輸出:分野別の金額

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、そのうち鉄鋼が約86%、アルミニウムが約13.5%を占めます。

EU域外からの輸入に占める日本の割合は、金額ベースで1.30%、数量ベースで0.72%で、順位は金額で第22位、数量で第24位です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。2023年の24億4,810万ユーロ、190万4,514トンと比べると、金額で41%、数量で55%減少しています。

分野別の内訳は、次の表のとおりです(Eurostat Comext、2025年)。表の鉄鋼は、鉄鉱石を除く第72類と第73類の付属書I製品です。

分野 EU域外からの輸入(2025年) 日本からの輸入(2025年) 日本の割合(金額/数量) 日本の順位(金額/数量)
鉄鋼(第72類、第73類) 約609.5億ユーロ 12億4,590万ユーロ、80万9,223トン 2.04%/1.40% 13位/16位
アルミニウム 約303.4億ユーロ 1億9,497万ユーロ、4万2,260トン 0.64%/0.46% 23位/29位
セメント 約10.8億ユーロ 480万ユーロ、5,701トン 0.45%/0.04% 19位/23位
肥料 約83.3億ユーロ 254万ユーロ、1,431トン 0.03%/0.01% 35位/35位
電力 約84.3億ユーロ、約8,621万MWh 0ユーロ、0 MWh 0% なし
水素 約679万ユーロ 0ユーロ(2024年は89ユーロ、2023年は3,000ユーロ) 0% なし

日本からのアルミニウムは、ほぼすべてが板やはくなどの製品(1億9,283万ユーロ、4万2,139トン)で、塊(CNコード 7601)は214万ユーロ、約122トンにとどまります。肥料の大部分は複合肥料(CNコード 3105、242万ユーロ、1,397トン)です。日本の分野別の詳しい状況はCBAMと日本にまとめています。


CBAM対象6分野の排出係数とコスト比較:1 CO2換算トン当たり75ユーロの場合

下の表は、6分野それぞれについて2026年にデフォルト値で輸入する例を1つずつ取り上げ、マークアップ後のデフォルト値、1 CO2換算トン当たり75ユーロの参考価格での総コスト、正味コスト、義務を左右する特徴を比べたものです。

総コストは、無償割当調整を差し引く前のコストです。正味コストは、総コストに一定の割合を掛けて求めるのではなく、マークアップ後のデフォルト値から無償割当調整(2026年はCBAMベンチマークの97.5%)を差し引いた量に価格を掛けて求めます。表では、75ユーロと2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロの両方で示しています。

分野・製品(原産国、CNコード) 2026年のマークアップ後のデフォルト値(tCO2e/t) 総コスト(75ユーロ) 2026年の正味コスト(75ユーロ) 2026年の正味コスト(82.32ユーロ) 義務を左右する特徴
鉄鋼、高炉・転炉法:トルコ産ビレット(7207 11 14) 2.541 190.58ユーロ 90.83ユーロ 99.70ユーロ 直接排出量のみ。ルートとベンチマークは国別の表で決まる
鉄鋼、スクラップ電炉法:北マケドニア産棒鋼(7213) 1.683 126.23ユーロ 121.40ユーロ 133.25ユーロ 直接排出量のみ。スクラップ電炉法のベンチマークが低く、差し引く量が小さい
セメント、ねずみ色ポルトランド、「その他の国・地域」のデフォルト値(2523 29 00) 1.584 118.80ユーロ 70.10ユーロ 76.94ユーロ 直接排出量と間接排出量の両方が対象
一次アルミニウム:中国産(7601) 3.300 247.50ユーロ 143.44ユーロ 157.44ユーロ CO2に加えてPFC(CF4、C2F6)が対象
尿素肥料:エジプト産(3102 10 19) 1.4039 105.29ユーロ 39.33ユーロ 43.17ユーロ 直接排出量と間接排出量の両方が対象。N2Oも対象
水素、「その他の国・地域」のデフォルト値(2804 10 00) 19.514 1,463.55ユーロ 1,091.42ユーロ 1,197.94ユーロ 対象分野の中で製品1トン当たりのコストが最も高い
グリーン水素、検証済みの実排出量 約0(直接) 約0ユーロ 0ユーロ 0ユーロ 2026年は4.962 tCO2e/t以下なら証書不要
電力(2716 00 00) 国別、MWh当たり 変動 総コストと同じ 総コストと同じ 無償割当調整がない。送電線による物理的な輸入にのみ適用

デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)、マークアップ10%(肥料は1%)。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620のColumn B(鉄鋼の2行は1.364と0.066、セメント0.666、一次アルミニウム1.423、尿素0.902、水素5.089)。75ユーロは切りのよい参考価格で、82.32ユーロは2026年第3四半期に輸入された製品の公式価格です。コストはすべて製品1トン当たりです。

日本の表で計算した6分野のコスト

実施規則(EU)2025/2621付属書Iには日本独自のデフォルト値の表があり、同じ方法で計算すると、日本産製品の2026年のコストは製品1トン当たり25.29ユーロ(二次アルミニウムの塊)から861.99ユーロ(水素)までです。

日本の表のデフォルト値で、各分野の代表的な製品を計算した結果は次のとおりです(82.32ユーロ、実施規則(EU)2025/2621および2025/2620、当サイトの計算ツールで2026年11月4日に計算)。

分野・製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年のマークアップ後 ベンチマーク(Column B) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 2030年のコスト(製品1トン当たり)
鉄鋼:熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 2.310 1.370(C) 0.97425 80.20ユーロ 166.65ユーロ
セメント:ねずみ色ポルトランドセメント(2523 29 00) 0.890 0.979 0.666 0.32965 27.14ユーロ 67.01ユーロ
アルミニウム:塊(7601) 0.360 0.396 0.091(L) 0.307275 25.29ユーロ 34.67ユーロ
アルミニウム:板(7606 12 99) 1.730 1.903 0.148(L) 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ
肥料:尿素(3102 10 19) 1.520 1.5352 0.902 0.65575 53.98ユーロ 88.14ユーロ
肥料:無水アンモニア(2814 10 00) 2.190 2.2119 1.522 0.72795 59.92ユーロ 117.56ユーロ
水素(2804 10 00) 14.030 15.433 5.089 10.471225 861.99ユーロ 1,285.69ユーロ
電力(2716 00 00) 付属書IIIに日本の値なし なし なし なし なし なし

2030年の列は、同じデフォルト値と価格(82.32ユーロで一定)に、2030年輸入分のマークアップ30%(肥料は1%)とCBAM係数51.5%、2028年から2030年のベンチマークを当てはめた数値です。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は目安です。

日本の表では、アルミニウムの塊と板に二次アルミニウム(L)のルートが記載されているため、差し引くベンチマークも二次アルミニウムの値になります。貴社の製品とトン数に応じた推計はCBAM計算ツールで確認できます。計算結果は、規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。


鉄鋼:2つの生産ルートで大きく異なるコスト

鉄鋼はEUの輸入額で最大のCBAM分野で、EUが2025年にEU域外から輸入したCBAM対象の鉄鋼製品(第72類と第73類)は約609.5億ユーロでした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

高炉・転炉法(BF-BOF)による鉄鋼は、リサイクルスクラップを使う電炉法(EAF)の鉄鋼に比べ、排出量がはるかに多くなります。この差は半製品のデフォルト用ベンチマークにも表れており、高炉・転炉法は製品1トン当たり1.364 tCO2e(CO2換算トン)、スクラップ電炉法は0.066です。製鉄所の実際の排出量が輸入者のコストに反映されるのは、検証済みの実排出量を使う場合だけです。

デフォルト値を使う場合は、国別の表がコストを左右します。トルコ産ビレット(CNコード 7207 11 14)は、表に高炉・転炉法のルートでデフォルト値2.310 tCO2e/tが記載されているため、実際にどの炉で製造されたかにかかわらず、2026年輸入分のコストは製品1トン当たり99.70ユーロです。一方、スクラップ電炉法のルートが記載された6か国の1つである北マケドニアの棒鋼は、デフォルト値が1.530と低いものの、差し引く量がはるかに小さいため、133.25ユーロになります。

日本の表の鉄鋼の行に記載されたルートは高炉・転炉法(C、F、C/F)だけで、電炉法(D、E)のルートはありません。このため、スクラップを使う日本の電炉メーカーの炭素鋼製品も、検証済みの実排出量を提供するまでは高炉材と同じデフォルト値と高炉・転炉法(C)のベンチマークで評価されます(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項)。日本の熱延鋼板の2026年のコストは製品1トン当たり80.20ユーロです。

鉄鋼で価格がつくのは直接排出量だけで、生産で消費する電力は含まれません。例外は、付属書IIに記載のない凝結させた鉄鉱石(焼結鉱やペレットなど、CNコード 2601 12 00)です。スクラップの投入比率が高いことを記録で示せる輸出者は、国のデフォルト値を下回る検証済みの実排出量を提供することで、CBAMのコストを下げられます。詳しくはCBAM鉄鋼部門ガイドと、日本の輸出者向けの日本の鉄鋼輸出とEU CBAMをご覧ください。

鉄鋼の詳細ページは次の5つです。


CBAMニュースレター(英語)

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セメント:化学反応に由来する削減しにくい排出

ねずみ色ポルトランドセメント(CNコード 2523 29 00)のデフォルト値は、トルコにも適用される「その他の国・地域」の表で製品1トン当たり1.440 tCO2e、デフォルト用ベンチマークは0.666です。

マークアップ10%を加えると、1 CO2換算トン当たり75ユーロでの総コストは製品1トン当たり118.80ユーロ、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロでの2026年の正味コストは76.94ユーロです。日本の表のデフォルト値は0.890で、2026年のコストは製品1トン当たり27.14ユーロです。ただし、EUが2025年に日本から輸入したセメントは480万ユーロにとどまります(Eurostat Comext、2025年)。

石灰石の脱炭酸(CaCO3 → CaO + CO2)によるCO2は、燃料の燃焼ではなく化学反応そのものから発生するため、省エネだけでは減らせません。セメントは、肥料とともに直接排出量と間接排出量の両方に価格がつく2分野の1つです。これは、EUのセメント生産者が間接的な炭素コストの補償の対象外だったためです。高炉スラグやフライアッシュを使う混合セメントは、クリンカーの比率が低い分、排出係数も低くなります。

日本の炭素価格との関係では、鉄鋼、コークス、セメントの製造に使う輸入特定石炭は、石油石炭税と地球温暖化対策のための税(温対税)が免税となっています(経済産業省の2027年度(令和9年度)税制改正要望)。2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。詳しくはCBAMセメント部門ガイドと日本のセメント輸出とCBAMをご覧ください。

セメントの詳細ページは次の2つです。


アルミニウム:算定を複雑にするPFC排出

一次アルミニウムの塊(CNコード 7601)のデフォルト用ベンチマークは製品1トン当たり1.423 tCO2eで、中国のデフォルト値3.000にマークアップ10%を加えると、1 CO2換算トン当たり75ユーロでの総コストは247.50ユーロ、82.32ユーロでの2026年の正味コストは157.44ユーロです。

アルミニウムの製錬では、アノードの消費によるCO2と、パーフルオロカーボン(PFC)の2種類の温室効果ガスが発生します。PFCはCF4(地球温暖化係数6,630)とC2F6(同11,100、いずれもIPCC第5次評価報告書の100年値)で、「アノード効果」の発生時に排出され、CBAMの算定に含まれます。

製錬では大量の電力を使いますが、アルミニウムの間接排出量には価格がつきません。付属書Iのアルミニウムのデフォルト値は間接排出量の欄が「N/A」で、直接排出量だけを対象にしています。日本からEUへの輸出は板(CNコード 7606)やはく(CNコード 7607)などの製品が中心です。日本の表の板のデフォルト値1.730で計算すると、2026年のコストは製品1トン当たり144.78ユーロです。詳しくはCBAMアルミニウム部門ガイドと日本のアルミニウム輸出とCBAMをご覧ください。

アルミニウムの詳細ページは次の3つです。


肥料:農業資材の中で最も高いコスト

尿素(CNコード 3102 10 19)のデフォルト用ベンチマークは製品1トン当たり0.902 tCO2eで、国別のデフォルト値はエジプトの1.390から「その他の国・地域」の2.720まで大きく異なります。

肥料に適用されるマークアップ1%を加えると、エジプト産尿素の総コストは1 CO2換算トン当たり75ユーロで製品1トン当たり105.29ユーロ、2026年の正味コストは82.32ユーロで43.17ユーロです。日本の表の尿素のデフォルト値は1.520で、2026年のコストは製品1トン当たり53.98ユーロです。

窒素肥料はいずれも、主に天然ガス由来の水素を原料とするハーバー・ボッシュ法で合成したアンモニアから作られます。肥料は直接排出量と間接排出量の両方に価格がつく2分野の1つです。「その他の国・地域」の表では、硝酸アンモニウム(CNコード 3102 30 90)が2.750 tCO2e/t、尿素硝安(UAN)溶液(CNコード 3102 80 00)が1.960です。施肥後に土壌から出るN2OはCBAMの算定に含まれません。詳しくはCBAM肥料部門ガイドと日本の肥料輸出とCBAMをご覧ください。

肥料の詳細ページは次の3つです。


電力:国別のデフォルト値で算定

電力(CNコード 2716 00 00)は、水素とともにCNコードが1つだけの分野で、算定は送電線による物理的な輸入と国別の炭素強度に基づきます。

電力はMWh単位で申告し、デフォルト値には実施規則(EU)2025/2621付属書IIIの国別のCO2排出係数を使います。この係数は、化石燃料発電のCO2強度を、信頼できるデータのある直近5年で平均したものです(同付属書に掲載のIEAのデータ。例:セルビア1.041、英国0.430 tCO2/MWh。記載のない国にはEUの係数0.612を適用)。

デフォルト値の代わりに実排出量を使えるのは、規則(EU)2023/956付属書IV第5項の5つの累積条件をすべて満たす場合だけです。条件には、第三国の発電事業者との電力購入契約や、連系線容量の確定した時間単位の指名などが含まれます。2025年のEUの電力輸入では、適用除外国以外で最大の輸入元は英国(10.73 TWh)とセルビア(9.67 TWh)でした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

日本とEUの間には送電網の接続がなく、EUの日本からの電力輸入は2023年から2025年まで0 MWhです(Eurostat Comext)。日本の輸出者にとって、電力分野が問題になることは事実上ありません。詳しくはCBAM電力部門ガイド(英語)をご覧ください。

電力の詳細ページ(英語)は次の2つです。


水素:対象分野で最も大きいコストの幅

水素は6分野の中でコストの幅が最も広く、デフォルト値では、自国の表がない国の水素が2026年輸入分で製品1トン当たり1,197.94ユーロ、最も多くの国に共通するデフォルト値10.820 tCO2e/tでは571.32ユーロです。

検証済みの直接排出量が製品1トン当たり4.962 tCO2e以下の水素は、再生可能電力による電気分解を含め、2026年輸入分では証書が不要です。この基準値は、CBAM係数の低下に伴って毎年下がります。日本の表の水素のデフォルト値は14.030で、2026年のコストは製品1トン当たり861.99ユーロです。EUの日本からの水素輸入は2025年に0ユーロでした(Eurostat Comext、2025年)。

炭素回収を伴わない水蒸気メタン改質(SMR)で製造するグレー水素の排出量は、CBAMベンチマーク5.089 tCO2e/tを大きく上回ります。一方、電気分解による水素は直接排出量がほぼゼロで、水素は付属書IIの製品であるため消費電力も算入されません。この構造的な差が、モロッコ、チリ、オーストラリア、サウジアラビアの輸出者にとって、検証済みの排出量を持つグリーン水素のサプライチェーンを整える商業上の動機になっています。なお、EUの非生物由来の再生可能燃料(RFNBO)の規則は別の制度です。

水素の詳細はCBAM 水素部門ガイドのほか、次の2つのページで説明しています。


2026年の正味コストは総コストとどう違いますか

2026年の正味CBAMコストは、体化排出量から無償割当調整を差し引いた量に、CBAM証書の価格を掛けたものです。

総コストは無償割当調整を差し引く前の証書の全額です。製品1トン当たりの無償割当調整は、CBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×製品のCBAMベンチマークです(規則(EU)2023/956第31条、実施規則(EU)2025/2620)。CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年は97.5%です。つまり、2026年の削減分は2.5%です。

トルコ産ビレットをデフォルト値で輸入すると、総コストは82.32ユーロで製品1トン当たり209.18ユーロ、正味コストは99.70ユーロです。正味コストは、総コストに一定の割合を掛けて求めるものではありません。

2026年の支払いがその2.5%分にとどまるのは、排出量がベンチマークとちょうど同じ製品だけです。ベンチマークを上回る排出量は、デフォルト値のマークアップ分も含めて全額が証書の対象となります。電力には無償割当調整がまったくありません。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。

無償割当の削減は、今後急速に進みます。CBAM係数は2030年に51.5%まで下がり、2034年からは適用されません(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。複数年の調達契約を結ぶ輸入者は、2026年の正味コストだけでなく、この上昇を織り込む必要があります。

2026年の正味CBAMコストに関する5つの要点は、次のとおりです。

  • 製品1トン当たりの正味の証書数=体化排出量-97.5%×CBAMベンチマーク(下限はゼロ)
  • 例:トルコ産ビレット(CNコード 7207 11 14)、デフォルト値2.310+10%=2.541、0.975×1.364を差し引いて1.2111枚、82.32ユーロで製品1トン当たり99.70ユーロ
  • 例:日本産熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)、2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロ
  • 例:「その他の国・地域」のデフォルト値の水素、17.740+10%=19.514、0.975×5.089を差し引いて14.552枚、82.32ユーロで製品1トン当たり1,197.94ユーロ
  • 2034年からはCBAM係数が適用されず、総コストと正味コストが等しくなります

計算式には、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)の項もあります。2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。日本の排出量取引制度(GX-ETS)は鉄鋼とセメントにベンチマーク方式で無償割当を行っており(ICAP)、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。

キャプション:無償割当のうち維持される割合であるCBAM係数は、2026年の97.5%から2030年には51.5%に下がり、2034年からは適用されず、総コストと正味コストが等しくなります。


CBAM対象分野に関するよくある質問

CBAMで間接排出量が対象になる分野はどれですか

6分野のうち、直接排出量と間接排出量の両方に価格がつくのはセメントと肥料の2分野です。残りの4分野(鉄鋼、アルミニウム、水素、電力)は直接排出量だけが対象です。セメントと肥料で間接排出量が対象になるのは、欧州委員会の見直し報告書COM(2025)783が説明するとおり、EUのこれらの分野の生産者が間接コストの補償の対象外だったためです。なお、鉄鋼のうち凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)は例外で、間接排出量も対象です。

すべてのCBAM製品に50トンの適用除外基準が適用されますか

年間50トンの質量基準で小規模な輸入者は義務を免除されますが、電力と水素はこの適用除外の対象外です(規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)で挿入された第2a条第4項)。

電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。基準は輸入者単位で判断されるため、日本からの出荷量が少なくても、EUの輸入者が他の原産国を含めて50トンを超えれば、その輸入者は義務を負います。

CBAM証書のコストはいつから実際に発生しますか

CBAM証書の販売は2027年2月1日に始まり(第20条第1項)、2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。デフォルト値で申告する製品では、初年度からコストが発生します。2026年第3四半期の価格82.32ユーロで計算すると、トルコ産ビレットは製品1トン当たり99.70ユーロ、「その他の国・地域」のデフォルト値のねずみ色ポルトランドセメントは76.94ユーロ、日本産熱延鋼板は80.20ユーロです。

コストは2028年から2030年にかけてさらに上がります。デフォルト値のマークアップが2028年に30%に達し、CBAM係数が2028年の90%から2030年の51.5%に下がるためです。分野横断の情報は次の2つのページにあります。

日本の輸出者にCBAMの義務はありますか

日本の輸出者にCBAMの法的義務はありません。証書の購入、CBAM申告、納付の義務は、EUの輸入者またはその間接的通関代理人である認可CBAM申告者が負います。日本の事業者は、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に施設を登録し、検証済みのデータをEUの買い手に提供できます。検証済みのデータがなければ、買い手はマークアップ付きのデフォルト値を使います。

対象分野は今後広がりますか

川下製品への対象拡大は欧州委員会提案(COM(2025)989、法律ではありません)で、適用開始を2028年1月1日としています。対象品目数は欧州委員会案が約180、理事会案が約200、欧州議会案が約457(推計)で、いずれも鉄鋼とアルミニウムの製品だけです。化学品や樹脂はどの案にも含まれていません。詳しくは川下製品への対象拡大をご覧ください。

JETROは2026年9月18日、電力中央研究所の分析として、提案された川下製品のコードが日本の対EU輸出の5.0%を占め、現在のCBAM対象製品の2.9%を上回ると紹介しています。2026年10月20日の第1回三者協議(トリローグ)では全体合意に至らず、2026年11月4日時点で、第2回は2026年11月30日に開かれると報じられています。

英国CBAMの対象分野はEUと同じですか

英国CBAMはEU CBAMとは別の税制度で、2027年1月1日から5部門(アルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼)の直接排出量に課税します。電力は含まれません。英国が2026年10月16日に公表した試算税率は、鉄鋼がCO2換算トン当たり9.69ポンドなどで、納税義務は生じない参考値です。詳しくは英国CBAM(英語)をご覧ください。

分野別のCBAM対応について日本で参照できる資料はありますか

経済産業省は「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)で概要を公開し、鉄鋼製品向けに「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)を出しています。JETROは算定実務マニュアル(2026年3月)と貿易投資相談を提供しています。2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は確認できません。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。