CBAM アンモニア 2026年:CNコード 2814、デフォルト値、体化排出量の計算

CBAMのアンモニア(CNコード 2814)を解説します。

このページの内容
図:天然ガスまたは石炭の改質・ガス化で得た水素と空気中の窒素からアンモニアを合成。CBAMは直接排出のCO2と電力の間接排出量を算定し、他の施設で製造した水素は前駆体として扱う。アンモニアは尿素、硝酸、NPKの前駆体。

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の対象となるアンモニアは、無水アンモニアのCNコード 2814 10 00と、アンモニア水(水溶液)のCNコード 2814 20 00の2つです。どちらも2026年1月1日から本格実施期間の義務の対象で、EUの輸入者は直接排出量と間接排出量の両方を含む体化排出量に応じてCBAM証書を納付します。

日本産の無水アンモニアのデフォルト値は、製品1トン当たり2.190 tCO2e(CO2換算トン)です。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で計算すると、デフォルト値で輸入した場合の2026年輸入分のコストは、日本産で製品1トン当たり59.92ユーロ、エジプト産(デフォルト値2.050)で48.28ユーロです。

根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」で、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)により改正されています。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。

2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。本ページでは、CNコードの区分、体化排出量の算定、原産国別のデフォルト値とコスト、実排出量を使う場合の効果、日本企業への影響の順に説明します。

キャプション:天然ガスの水蒸気改質や石炭のガス化で得た水素を使うハーバー・ボッシュ法のアンモニア合成が、CBAMの対象となる体化排出量を生みます。


CBAMの対象となるアンモニア:CNコード 2814の2区分

CBAMの対象となるアンモニアは、規則(EU)2023/956付属書Iの肥料部門に掲げられたCNコード 2814(無水アンモニアとアンモニア水)の製品で、EUに輸入される際に体化排出量に応じた義務が生じます。

項2814は物理的な状態の異なる2つのCNコードに分かれますが、CBAMでの扱いは同じです。対象となる温室効果ガスはCO2だけで、N2O(一酸化二窒素)は含まれません。アンモニア水は水で希釈されているため、製品の重量1トン当たりの体化排出量は無水アンモニアより小さくなります。

項2814の2つのCNコードは、次の表のとおりです。

CNコード 品名 物理的な状態 窒素含有量
2814 10 00 無水アンモニア 加圧した液体または気体 重量比で約82%
2814 20 00 アンモニア水(水溶液) 水溶液 濃度によって異なる

アンモニアは、尿素(CNコード 3102 10)、硝安(CNコード 3102 30)、UAN(尿素と硝安の混合物、CNコード 3102 80)など、すべての窒素肥料の上流の前駆体です。完成した肥料として輸入される場合、アンモニアの体化排出量はその肥料の体化排出量に引き継がれます。アンモニアを直接調達する輸入者は、上流の排出量の全量を項2814の段階で負担します。

施設のモニタリングでは、CNコード 2814の機能単位は窒素のキログラムです(実施規則(EU)2025/2547第4条)。一方、付属書Iのデフォルト値とベンチマークは製品1トン当たりで示されます。肥料部門全体の仕組みはCBAMの肥料部門、証書制度とEU ETSの関係はEU CBAMの基礎で説明しています。


アンモニアの体化排出量の算定方法

無水アンモニアの体化排出量は、ハーバー・ボッシュ法の合成に伴う直接排出量と、施設で消費する電力による間接排出量の合計で、製品1トン当たりのtCO2eで表します。

無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)のデフォルト値は、実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)に原産国ごとに定められています。製品1トン当たり、エジプト2.050 tCO2e、アルジェリア2.080、日本2.190、ロシア連邦2.260、トリニダード・トバゴ2.420、国別の値がない国(付属書Iの「その他の国と地域」)3.130で、いずれも間接排出量を含む総排出量です。エジプトの2.050のうち0.100、日本の2.190のうち0.140が間接排出量です。

アンモニアの体化排出量を生む2つの排出源は、次のとおりです。

  1. 水蒸気改質に伴うCO2の直接排出量:天然ガスを改質炉で水蒸気と反応させて合成ガスを作り(CH4 + H2O → CO + 3H2)、続くシフト反応でCOをCO2と追加の水素に変えます。この反応で出るCO2が直接排出量の中心で、原料ガスの組成、改質炉の効率、プラントの年数によって変わります。
  2. 電力消費による間接排出量:肥料は規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられていないため、肥料部門では直接排出量と間接排出量の両方が証書の対象になります。圧縮機、冷凍設備、補機で使う電力から、生産国の電力の排出係数に比例した間接排出量が生じます。

アンモニア1トン当たりの特定体化排出量は、実施規則(EU)2025/2547の式65で求めます。天然ガスの消費量に実測またはデフォルトの排出係数を掛け、施設の電力消費量と国または地域の電力の排出係数から求めた間接排出量を加えて、製品1トン当たりのtCO2eで合計します。

水素はアンモニアの前駆体でもあります。原料の水素の製造に伴う排出がアンモニアの体化排出量に含まれる仕組みは、CBAMの水素とグレー水素のCBAMで説明しています。全部門に共通する算定の基礎は体化排出量の算定方法にあります。


アンモニアのデフォルト値とマークアップ1%

供給者から検証済みの実排出量を得られないEUの輸入者は、原産国の付属書Iのデフォルト値に1%のマークアップを加えた値で申告します。

デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項にあります。無水アンモニアのベンチマークは1.522で、2026年の無償割当調整は0.975 × 1.00 × 1.522 = 1.48395です。

無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)を2026年にデフォルト値で輸入した場合の原産国別の義務を、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると次のとおりです(2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算)。

原産国 デフォルト値(tCO2e/t) マークアップ1%後 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 2030年のコスト(製品1トン当たり)
エジプト 2.050 2.0705 0.58655 48.28ユーロ 105.92ユーロ
カタール 2.070 2.0907 0.60675 49.95ユーロ 107.58ユーロ
アルジェリア 2.080 2.1008 0.61685 50.78ユーロ 108.41ユーロ
サウジアラビア 2.100 2.1210 0.63705 52.44ユーロ 110.08ユーロ
日本 2.190 2.2119 0.72795 59.92ユーロ 117.56ユーロ
台湾 2.200 2.2220 0.73805 60.76ユーロ 118.39ユーロ
マレーシア 2.220 2.2422 0.75825 62.42ユーロ 120.05ユーロ
ロシア連邦 2.260 2.2826 0.79865 65.74ユーロ 123.38ユーロ
インドネシア 2.280 2.3028 0.81885 67.41ユーロ 125.04ユーロ
トリニダード・トバゴ 2.420 2.4442 0.96025 79.05ユーロ 136.68ユーロ
その他の国と地域(韓国を含む) 3.130 3.1613 1.67735 138.08ユーロ 195.71ユーロ
インド 3.280 3.3128 1.82885 150.55ユーロ 208.18ユーロ
米国 3.410 3.4441 1.96015 161.36ユーロ 218.99ユーロ
中国 4.360 4.4036 2.91965 240.35ユーロ 297.98ユーロ

韓国の表では無水アンモニアの欄が「-」のため、付属書Iの導入部により「その他の国と地域(Other Countries and Territories)」の3.130が適用されます。2030年の列は、CBAM係数51.5%、価格は82.32ユーロで一定として計算しています。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は目安です。

肥料部門のマークアップは、2026年、2027年、2028年以降のいずれも1%です。鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素のマークアップ(2026年10%、2027年20%、2028年以降30%)とは大きく異なります。JETROも2026年9月18日の記事で「肥料セクターのみマークアップ率は各年1%」と説明しています。

マークアップは無償割当調整を差し引く前のデフォルト値に加わるため、その全量が証書の対象になります。マークアップ分は、エジプト産で製品1トン当たり0.0205 tCO2e(82.32ユーロで約1.69ユーロ)、日本産で0.0219 tCO2e(約1.80ユーロ)です。

計算例:エジプト産と日本産の無水アンモニア

デフォルト値で輸入するエジプト産の無水アンモニアには、2026年輸入分で製品1トン当たり0.58655枚のCBAM証書が必要で、82.32ユーロで換算すると48.28ユーロです。

計算は、2.050 × 1.01 = 2.0705、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.522 = 1.48395、差し引き製品1トン当たり0.58655枚のCBAM証書です。無償割当調整を差し引く前のコストは、製品1トン当たり170.44ユーロ(2.0705 × 82.32ユーロ)です。

日本産では、2.190 × 1.01 = 2.2119から無償割当調整1.48395を差し引いて製品1トン当たり0.72795枚、82.32ユーロで59.92ユーロです。1,000トンを輸入する場合は727.95 CO2換算トン分の証書が必要で、コストは5万9,924.84ユーロです。2026年第1四半期(75.36ユーロ)の輸入なら5万4,858.31ユーロ、第2四半期(75.28ユーロ)なら5万4,800.08ユーロです。

2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。必要な証書数は、体化排出量から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引いて求めます。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。

日本産の無水アンモニアのコスト推移(2026年から2034年まで)

証書価格が変わらなくても、日本産の無水アンモニアのコストは、無償割当の縮小によって2026年の製品1トン当たり59.92ユーロから2034年以降の182.08ユーロに上がります。

日本産の無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)をデフォルト値で輸入した場合の推移を、価格を82.32ユーロで一定として示すと次のとおりです。

年 CBAM係数(維持される無償割当の割合) 無償割当調整(tCO2e/t) 証書数(製品1トン当たり) コスト(製品1トン当たり)
2026年 97.5% 1.48395 0.72795 59.92ユーロ
2027年 95% 1.44590 0.76600 63.06ユーロ
2028年 90% 1.36980 0.84210 69.32ユーロ
2029年 77.5% 1.17955 1.03235 84.98ユーロ
2030年 51.5% 0.78383 1.42807 117.56ユーロ
2031年~2033年 39%、26.5%、14% 2030年より後の部門横断補正係数が定められていないため、数値なし 数値なし 数値なし
2034年以降 CBAM係数の適用なし 0 2.21190 182.08ユーロ

計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。デフォルト値は日本2.190、マークアップ1%、ベンチマーク1.522です。2027年以降の数値は、ベンチマークの更新により変わる可能性があります。

2026年の輸入に適用される証書価格は、EU ETSの排出枠のオークション価格の四半期平均です(第21条第1a項)。週次価格は2027年の輸入からです(第21条第1項)。貴社の製品とトン数での推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

アンモニア水(CNコード 2814 20 00)のデフォルト値

アンモニア水のベンチマークは0.457で、日本のデフォルト値0.660で輸入する場合、2026年輸入分の証書は製品1トン当たり0.221025枚、82.32ユーロで換算すると18.19ユーロです。

計算は、0.660 × 1.01 = 0.6666、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 0.457 = 0.445575、差し引き0.221025です。エジプト産(0.620)では製品1トン当たり0.180625枚で14.87ユーロ、その他の国と地域(0.960)では0.524025枚で43.14ユーロです。日本産のアンモニア水は、2030年には同じ価格で製品1トン当たり35.50ユーロになります(2027年以降はベンチマークの更新により変わる可能性があります)。


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実排出量を使う場合:ベンチマーク1.522との比較

検証済みの実排出量が製品1トン当たり1.48395 tCO2e以下の無水アンモニアは、2026年輸入分ではCBAM証書が不要です。

無水アンモニアでは、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn A(実排出量で申告する場合のプロセスベンチマーク)とColumn B(デフォルト値用)がどちらも1.522です。実排出量で申告する場合、マークアップは加わりません。差し引く量はColumn Aのベンチマークに、前駆体に含まれる無償割当を加えたものです。

下の表は、前駆体を購入しない施設を仮定し、実排出量の水準ごとの義務を示した試算です(82.32ユーロ、2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算)。

検証済みの実排出量(tCO2e/t) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト 2030年のコスト
2.2119(日本のデフォルト値とマークアップの合計と同じ) 0.72795 59.92ユーロ 117.56ユーロ
1.800 0.31605 26.02ユーロ 83.65ユーロ
1.600 0.11605 9.55ユーロ 67.19ユーロ
1.48395 0 0ユーロ 57.63ユーロ
1.200 0 0ユーロ 34.26ユーロ

1.800、1.600、1.200は説明のための仮定の値で、特定の施設の数値ではありません。2030年の列は目安です。

2026年には証書がほとんど要らない水準でも、2030年にはCBAM係数が51.5%に下がるため、1.200の施設でも製品1トン当たり34.26ユーロかかります(ベンチマークの更新により変わる可能性がある目安です)。排出量の低さを長期的な価格競争力につなげるには、毎年検証を受け続ける必要があります。

検証は実排出量で申告する場合に必須で(第8条第1項)、デフォルト値での申告には不要です。CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関(NAB)だけで、委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らして認定します。同委任規則付属書Iの11の活動グループのうち、アンモニアは水素と同じグループIIです。

国家認定機関の登録簿で確認できる認定は、2026年10月13日までの5件です(2026年10月19日確認)。EmiCert S.A.(ギリシャのESYD)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccredia)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedac)で、5件ともグループIIを含みますが、日本の法人は含まれません。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。

施設が初めて検証を受ける年には現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条)。GX-ETSの登録確認機関であることは、CBAMの検証資格になりません。認定済みの機関はCBAM認定検証機関、施設が用意するデータはCBAMのデータ要件(輸出者向け)にまとめています。

キャプション:輸出国のアンモニアの貯蔵・積出ターミナルは、製造段階の排出量を測定し、検証してCBAM申告につなげる起点です。


日本から見たCBAMのアンモニア:輸出の実態と影響を受ける企業

EUが2025年に日本から輸入したアンモニア(CNコード 2814)は、金額で384ユーロ、数量で0.1トン未満でした。

出典はユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出)です。2023年は1,068ユーロ(0.1トン)、2024年は461ユーロ(0.1トン未満)で、日本はEU向けアンモニアの供給国としてはほぼ存在感がありません。JETROも2026年9月18日の記事で、日本の肥料などのCBAM対象品目の対EU輸出額は「限定的だ」としています。

それでも、日本の企業がアンモニアのCBAMと無関係とは言えません。影響が生じる場面は、次の3つです。

  • 第三国産のアンモニアを扱う日本の商社やEU子会社:CBAMのデフォルト値は原産国の表で決まり、取引を手配する企業の国籍では決まりません。インドネシア産なら2.280、米国産なら3.410が適用されます。日系企業のEU子会社が認可CBAM申告者となる場合もあります(JETRO、2026年9月18日)。
  • 第三国のアンモニア製造事業に出資する日本の企業:その施設の検証済みの実排出量が、EUの買い手のコストを決めます。米国のデフォルト値3.410は日本の2.190より高く、低炭素のアンモニアほど検証の効果が大きくなります。
  • 少量の特殊なアンモニアをEUに送る日本の化学メーカー:輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下なら義務は免除されますが、EUの買い手が他のCBAM対象製品と合わせて50トンを超えれば、少量の出荷にも義務が生じます。

アジアからの供給は増えています。インドネシア産は2023年と2024年にはゼロでしたが、2025年には4万251トン(EU域外からの輸入の1.5%、数量ベース)になりました。台湾産は2025年に2,846トンです(Eurostat Comext、2025年)。日本の輸出者には、CBAM証書の購入、CBAM申告、証書の納付の法的義務はありません。義務を負うのは、EUの輸入者またはその間接的通関代理人です。

日本産の無水アンモニアのデフォルト値2.190は、台湾の2.200、マレーシアの2.220、インドネシアの2.280と近く、中国の4.360、インドの3.280より低い水準です。日本の肥料輸出全体の内訳は日本の肥料輸出とEU CBAM、日本の状況全般はCBAMと日本にまとめています。

日本の炭素価格はアンモニアのCBAMで控除されますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)に関する実施規則案は2026年5月13日に公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で未採択です。控除の対象は実際に支払われた炭素価格に限られ、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。

日本の制度とアンモニアのCBAMとの関係は、次の3点です(2026年11月4日確認)。

  • 排出量取引制度(GX-ETS):直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者が対象で(経済産業省)、2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化されました。排出枠は無償で割り当てられ(ICAP)、無償割当分は実際に支払われた炭素価格に当たりません。
  • 地球温暖化対策のための税(温対税):化石燃料にCO2 1トン当たり289円を上流で課す税です(環境省)。燃料価格に転嫁された税を施設の事業者が支払ったとみなせるかは未解決の論点で、実施規則案で整理される必要があります。
  • 化石燃料賦課金:2028年度から導入される予定で、未施行です。2026年と2027年の輸入について控除を請求する根拠にはなりません。

欧州委員会は、2027年から国ごとに年次のデフォルト炭素価格を定めることができます。デフォルト値で申告する場合は、これを参照して控除を請求できます(第9条第4項)。2026年11月4日時点で、日本についてはまだ定められていません。英国は2026年8月27日にGX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せましたが、EU CBAMの扱いとは別です。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。

英国CBAMではアンモニアはどう扱われますか

英国CBAMは、肥料を含む5部門を対象に2027年1月1日から始まる税で、EU CBAMとは別の制度です。2026年10月16日に公表された肥料の試算税率は1 CO2換算トン当たり1.45ポンドで、納税義務を生じない参考値です。同日公表のデフォルト値の通知案では、無水アンモニアは全原産国共通で2.434で、肥料にはマークアップがありません。

英国の税率は無償割当を差し引いた後の値で、EUのCBAM証書の価格とは直接比べられません。デフォルト値で納税申告をすると、後から実排出量で修正できません。詳しくは英国CBAM(英語)をご覧ください。


EUへのアンモニアの主な供給国

2025年にEUへのアンモニア(CNコード 2814)の最大の輸入元はロシアで、68万2,482トン、EU域外からの輸入の25.5%(数量ベース)を占めました。

続いてアルジェリアが64万7,839トン(24.2%)、トリニダード・トバゴが60万1,562トン(22.5%)で、米国(11.1%)、エジプト(5.5%)、トルコ(5.0%)が続きます。EU域外からの輸入の合計は267万7,160トン、14億2,238万ユーロでした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

ロシア産の数量は、2023年の24万4,679トンから2025年には68万2,482トンに増えました。2025年7月1日からロシアとベラルーシの肥料に課されている追加の関税(規則(EU)2025/1227)の対象は項3102と項3105の大部分で、項2814のアンモニアは含まれません。この関税はCBAMのコストではありません。

主な供給国の2025年の数量と、無水アンモニアのデフォルト値は次のとおりです(Eurostat Comext、2025年)。施設の実際の排出量がデフォルト値より少なくても、自社の数値を使えるのは検証済みの実排出量がある場合に限られます。

  • ロシア:68万2,482トン、デフォルト値2.260 tCO2e
  • アルジェリア:64万7,839トン、デフォルト値2.080 tCO2e
  • トリニダード・トバゴ:60万1,562トン、デフォルト値2.420 tCO2e
  • 米国:29万7,840トン、デフォルト値3.410 tCO2e
  • エジプト:14万6,852トン、デフォルト値2.050 tCO2e、炭素価格の制度は未施行

2026年11月4日時点で、どの国の炭素価格も第9条で認められていません。原産国別のCBAMの影響はCBAMとロシア(英語)とWTO紛争DS639でも説明しています。


アンモニアと川下の窒素肥料:よくある質問

アンモニアの排出は尿素などの肥料にどう引き継がれますか

アンモニアは、CBAMの対象となるすべての窒素肥料の化学的な基礎です。EUの輸入者が無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)を購入し、EU域内で生産に使う場合、CBAMの義務はアンモニアの輸入の段階で生じます。完成品の尿素(CNコード 3102 10)や硝安(CNコード 3102 30)を購入する場合は、その製造に使われたアンモニアの体化排出量が完成品の体化排出量に含まれます。

アンモニアと川下の肥料の両方を供給する輸出国の生産者は、合成段階のアンモニアの排出を追跡し、その値を完成品の窒素肥料の申告データに引き継ぎます。排出量は窒素の流れに沿って配分されます。窒素を重量比で約82%含むアンモニアが窒素含有量46%の尿素に転換されても、アンモニアの排出は全量が引き継がれ、実施規則(EU)2025/2547の式65に従って換算されます。

アンモニアの製造に伴うN2OはCBAMの対象ですか

アンモニアの製造に伴うN2Oは、CBAMの算定に実質的に含まれません。アンモニアの合成ではN2Oが副生しないためで、付属書Iでも項2814の対象ガスはCO2だけです。N2Oが関係するのは、硝安やUANの製造に用いる硝酸の工程です。施設が中間品として硝酸を製造する場合、そのN2Oは直接排出量に含まれます。農家が窒素肥料を施用したときに土壌から出るN2Oは、CBAMの対象外です。

アンモニアの輸入に50トン基準は適用されますか

適用されます。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。50トンは、すべてのCBAM対象製品とすべての原産国を合算した量で、国ごとの量ではありません。免除は税関申告で申告する必要があります。合算のルールはCBAMの50トン基準(英語)で説明しています。

アンモニアと尿素のCBAMコストはどう違いますか

アンモニアと尿素は、CNコードごとにデフォルト値とベンチマークが異なるため、製品1トン当たりのCBAMコストも異なります。2026年輸入分をデフォルト値と82.32ユーロで比べると、エジプト産の無水アンモニア(デフォルト値2.050、ベンチマーク1.522)は製品1トン当たり0.58655枚、48.28ユーロ、エジプト産の尿素(CNコード 3102 10 19、デフォルト値1.390、ベンチマーク0.902)は0.52445枚、43.17ユーロです。

日本産では、無水アンモニア(2.190)が0.72795枚、59.92ユーロ、尿素(1.520)が0.65575枚、53.98ユーロです。いずれもマークアップ1%と2026年のCBAM係数97.5%を当てはめています。尿素の計算は尿素のCBAM、肥料のCNコードの分類はCBAM 肥料のCNコード、デフォルト値の仕組みはCBAMのデフォルト値をご覧ください。

アンモニアのCBAMの義務を負うのは誰ですか

義務を負うのは、EUの認可CBAM申告者(輸入者またはその間接的通関代理人)で、日本や第三国のアンモニアの生産者や輸出者ではありません。2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。

CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します。輸入者向けの手順は肥料の輸入者向けCBAMガイド(英語)にあります。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。