
EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)のもとで、尿素(CNコード 3102 10 19)のデフォルト値は、エジプトの製品1トン当たり1.390 tCO2e(CO2換算トン)から、独自の表を持たない国に適用される2.720までの幅があります。日本の値は1.520で、デフォルトのベンチマークは0.902です。
2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で計算すると、2026年にデフォルト値で輸入した尿素のCBAM証書のコストは、エジプト産で製品1トン当たり43.17ユーロ、日本産で53.98ユーロ、「その他の国と地域」の表で153.75ユーロです。
根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページでは、これらの数値の出どころ、無償割当の段階的廃止によるコストの変化、日本の輸出者にとっての意味を順に説明します。
キャプション:CBAMの尿素のデフォルト値は、エジプトの製品1トン当たり1.390 tCO2eから、独自の表を持たない国の2.720までの幅があります。
CBAMにおける尿素の排出係数はいくつですか
尿素のCBAMの排出係数は1つではなく、CNコード 3102 10 19のデフォルト値は原産国によって異なり、エジプトの製品1トン当たり1.390 tCO2eから「その他の国と地域」の表の2.720までです。
肥料は規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられていないため、生産時の直接排出量と、生産工程で使う電力による間接排出量の両方が算定に含まれます(第7条第1項)。間接排出量を含めない鉄鋼やアルミニウムとは、この点で異なります。エジプトの合計1.390には、間接排出量0.080が含まれます。日本の合計1.520は、直接排出量1.410と間接排出量0.110の合計です。
主な原産国のデフォルト値と、そこから求めた2026年の義務は次の表のとおりです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の「総排出量」の値で、計算は2026年11月4日に、規則(EU)2023/956第31条と実施規則(EU)2025/2620の算定方法で行いました。
| 原産国 | デフォルト値(tCO2e/t) | マークアップ1%を加えた値 | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(82.32ユーロ、製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|
| エジプト | 1.390 | 1.4039 | 0.52445 | 43.17ユーロ |
| アルジェリア | 1.410 | 1.4241 | 0.54465 | 44.84ユーロ |
| ロシア | 1.470 | 1.4847 | 0.60525 | 49.82ユーロ |
| 日本 | 1.520 | 1.5352 | 0.65575 | 53.98ユーロ |
| トリニダード・トバゴ | 1.610 | 1.6261 | 0.74665 | 61.46ユーロ |
| その他の国と地域 | 2.720 | 2.7472 | 1.86775 | 153.75ユーロ |
デフォルト値には、生産工程の2つの排出源が反映されています。1つは、ハーバー・ボッシュ法の原料となる水素を天然ガスの改質で作るときに出るCO2です。もう1つは、合成の段階で尿素の分子に取り込まれ、農地に施用された後に放出されるCO2で、CBAMの算定では生産段階で計上されます。施用後に農地から出るN2Oは、CBAMの対象に含まれません。
尿素の排出量の算定は、ハーバー・ボッシュ法によるアンモニア合成(N2 + 3H2 → 2NH3)と、それに続く尿素合成の反応(CO2 + 2NH3 → CO(NH2)2 + H2O)に基づいています。義務の全体像はEU CBAMの基礎で説明しています。
尿素の4つのCNコードと濃度別のデフォルト値
付属書Iの尿素は、窒素含有量と水溶液の濃度によって4つのCNコードに分かれ、日本のデフォルト値は製品1トン当たり0.500から1.520 tCO2eまでです。
日本産の尿素について、4つのコードごとの2026年の義務は次の表のとおりです(実施規則(EU)2025/2621および2025/2620、82.32ユーロ、2026年11月4日計算)。
| CNコード | 製品 | 日本のデフォルト値(tCO2e/t) | ベンチマーク(Column B) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|
| 3102 10 12 | 尿素水溶液(尿素31.8%以上33.2%以下) | 0.500 | 0.304 | 0.2086 | 17.17ユーロ |
| 3102 10 15 | 尿素水溶液(尿素33.2%超55%以下) | 0.810 | 0.503 | 0.327675 | 26.97ユーロ |
| 3102 10 19 | 尿素(窒素45%超、上記の水溶液を除く) | 1.520 | 0.902 | 0.65575 | 53.98ユーロ |
| 3102 10 90 | 尿素(窒素45%以下) | 1.480 | 0.882 | 0.63485 | 52.26ユーロ |
いずれのコードも、総重量10kg以下の包装品は除かれます。CNコード 3102 10 12の濃度帯(31.8%以上33.2%以下)は、ディーゼル車の排ガス浄化に使う高品位尿素水の規格であるISO 22241の尿素濃度の範囲と同じです。個々の製品がどのコードに当たるかは、EU側の税関で確認してください。CNコードの全体は肥料のCNコードにまとめています。
尿素と他の窒素肥料の比較:CBAMのデフォルト値とコスト
付属書Iのデフォルト値で比べると、尿素は製品1トン当たりで最も炭素集約的な窒素肥料ではありません。
尿素のデフォルト値の水準を左右する要因は、窒素濃度、生産工程の化学反応、算定に含まれる排出量の範囲の3つです。
- 重量比46%の窒素濃度:製品1トン当たりに必要なアンモニアが多く、その分、天然ガスの改質で作る水素原料も多く必要になります。
- CO2の取り込み:合成の段階で、改質工程のCO2が尿素の分子に固定されます。CBAMの算定では、このCO2を生産段階で計上します。
- 直接排出量と間接排出量の両方:鉄鋼やアルミニウムと異なり、肥料はすべて間接排出量も算定の対象です。そのため、エネルギー多消費型の尿素プラントの電力消費にも価格がかかります。
エジプトのデフォルト値は、硝酸アンモニウム(CNコード 3102 30 90)が2.390、尿素アンモニウム硝酸液(UAN、CNコード 3102 80 00)が1.510で、尿素の1.390を上回ります。硝酸アンモニウム系の製品には、アンモニアの排出に加えて硝酸製造で出るN2Oが含まれ、これがデフォルト値の高い理由の一つです。
エジプト産と日本産の窒素肥料を、2026年にデフォルト値で輸入した場合のコストは次の表のとおりです。肥料部門の対象コードと算定ルールの全体はCBAM肥料部門ガイドで説明しています。
| 製品(CNコード) | ベンチマーク(Column B) | エジプトのデフォルト値 | エジプト産のコスト(製品1トン当たり) | 日本のデフォルト値 | 日本産の証書数(製品1トン当たり) | 日本産のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 尿素(3102 10 19) | 0.902 | 1.390 | 43.17ユーロ | 1.520 | 0.65575 | 53.98ユーロ |
| 硝酸アンモニウム(3102 30 90) | 0.767 | 2.390 | 137.15ユーロ | 2.210 | 1.484275 | 122.19ユーロ |
| UAN(3102 80 00) | 0.625 | 1.510 | 75.38ユーロ | 1.470 | 0.875325 | 72.06ユーロ |
| 無水アンモニア(2814 10 00) | 1.522 | 2.050 | 48.28ユーロ | 2.190 | 0.72795 | 59.92ユーロ |
| 硫酸アンモニウム(3102 21 00) | 0.414 | 0.630 | 19.15ユーロ | 0.690 | 0.29325 | 24.14ユーロ |
証書数(製品1トン当たり)=デフォルト値×1.01(肥料のマークアップ)-0.975×Column Bのベンチマーク(2026年の無償割当調整、部門横断補正係数100%)。コスト=証書数×2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロ。エジプトの証書数は、尿素0.52445、硝酸アンモニウム1.666075、UAN 0.915725、無水アンモニア0.58655、硫酸アンモニウム0.23265です。
輸入する尿素の体化排出量はどのように算定しますか
尿素の算定方法は実施規則(EU)2025/2547に従い、窒素含有量で量る製品には同規則の式65と式66が適用され、排出量は製品1トン当たりの窒素含有量(kg)に比例して配分されます。
EUの尿素の輸入者が体化排出量を決める方法は2つあります。1つは、輸出側の施設から、認定検証機関の検証報告書を添えて提供される検証済みの実排出量です。もう1つは、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のデフォルト値です。両方の方法の詳細は体化排出量の算定で説明しています。
尿素のデフォルト値のマークアップは、総排出量のデフォルト値に対して毎年1%です。鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素は2026年10%、2027年20%で、2028年から30%に上がります。マークアップは無償割当調整の前に加算され、全額が証書の対象です。マークアップ分は、日本産の尿素で製品1トン当たり0.0152 tCO2e(約1.25ユーロ)、エジプト産で0.0139 tCO2e(約1.14ユーロ)です。
マークアップが小さいため、尿素で検証済みの実測値が有利かどうかは、マークアップではなく、施設の実際の排出量とデフォルト値の差で決まります。
日本産の尿素を2026年に輸入した場合の計算例は次のとおりです。デフォルト値1.520 × 1.01 = 1.5352、無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×Column Bのベンチマーク)0.975 × 1.00 × 0.902 = 0.87945(規則(EU)2023/956第31条、実施規則(EU)2025/2620)、差し引き製品1トン当たり0.65575枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり53.98ユーロです。エジプト産では1.4039-0.87945=0.52445枚、43.17ユーロです。
貴社の製品とトン数での推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
キャプション:エジプトのデフォルト値と82.32ユーロ一定の価格で計算すると、尿素の製品1トン当たりのコストは2026年輸入分の43.17ユーロから、2034年以降は115.57ユーロに上がります。
尿素のCBAMコストは2034年までどう推移しますか
尿素のCBAMコストは、EU ETSの無償割当が段階的に廃止されるにつれて2034年まで毎年上がります。
CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年97.5%、2027年95%、2028年90%、2029年77.5%、2030年51.5%、2031年39%、2032年26.5%、2033年14%で、2034年からは適用されません(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。ベンチマークを上回る排出量は、初年度から全額が証書の対象です。
エジプト産と日本産の尿素(CNコード 3102 10 19)をデフォルト値で輸入した場合の推移は次の表のとおりです。マークアップは毎年1%、ベンチマークは0.902、価格は82.32ユーロで一定としています(2026年11月4日計算)。
| 輸入年 | CBAM係数 | エジプト産の証書数 | エジプト産のコスト | 日本産の証書数 | 日本産のコスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 97.5% | 0.52445 | 43.17ユーロ | 0.65575 | 53.98ユーロ |
| 2027年 | 95% | 0.547 | 45.03ユーロ | 0.6783 | 55.84ユーロ |
| 2028年 | 90% | 0.5921 | 48.74ユーロ | 0.7234 | 59.55ユーロ |
| 2030年 | 51.5% | 0.93937 | 77.33ユーロ | 1.07067 | 88.14ユーロ |
| 2034年以降 | 適用なし | 1.4039 | 115.57ユーロ | 1.5352 | 126.38ユーロ |
証書数とコストはいずれも製品1トン当たりです。2027年以降の数値はベンチマークの更新により変わる可能性があります。
最も大きく上がるのは2029年から2030年にかけてです。2034年以降は、マークアップを含むデフォルト値の全量に価格がかかります。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は変わる可能性があります。
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EUの尿素の主な原産国とロシア産への影響
2025年にEUが輸入した尿素(CNコード 3102 10)の最大の原産国はエジプトで、329万トン、EU域外からの輸入の44.3%(数量ベース)を占めました。
2位はロシアで190万トン(25.7%)、3位はアルジェリアで117万トン(15.8%)です。ウズベキスタン、ナイジェリア、トルクメニスタンがそれぞれ約3%を供給しました(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。
ロシア産の尿素には、CBAMのほかに規則(EU)2025/1227の関税がかかります。同規則は2025年7月1日から、ロシアとベラルーシの第3102項の肥料に、従価6.5%と1トン当たりの定額の2つの部分からなる関税を課しています。定額部分は当初40ユーロで、2026年7月1日から60ユーロ、2027年7月1日から80ユーロ、2028年7月1日から315ユーロです(同規則第1条第2項)。
2026年1月1日以降に輸入された製品のCBAM証書のコストがこれに加わり、証書の販売は2027年2月1日に始まります。ユーロスタットの月次データでは、2026年1月から7月のロシア産尿素は11万4,000トンで、前年同期の139万トンから92%減りました。暦年で見ると、2025年はまだ2024年の172万トンから190万トンへと増えていました。
エジプトのシェアは、2023年の34.7%から2025年の44.3%に上がりました。エジプトの生産は天然ガスを原料としていますが、エジプトには炭素価格がありません。そのため、エジプト産尿素の輸入者が第9条に基づいて控除を請求できる、実際に支払われた炭素価格はありません。
日本からEUへの尿素輸出の規模
EUが2025年に日本から輸入した尿素(CNコード 3102 10)は31.8トン、6万4,964ユーロで、EU域外からの輸入に占める割合は金額、数量ともに0.01%未満です(Eurostat Comext、2025年)。
日本からの尿素は、2023年の5,020.1トン(256万3,948ユーロ)、2024年の561.6トン(26万9,785ユーロ)から大きく減りました。2025年の日本は、数量ベースで39の供給国のうち29位です。金額を数量で割った単価は、日本産が製品1トン当たり約2,043ユーロ、EU域外全体が約392ユーロです。データからは製品の等級はわかりませんが、小口の取引が中心であることがうかがえます。
日本の対EUの肥料輸出は、2025年に254万352ユーロ、1,431.2トンでした。このうち95%以上(242万2,704ユーロ)は第3105項の複合肥料で、尿素は約2.6%にとどまります(Eurostat Comext、2025年)。JETROも2026年9月18日の記事で、日本の肥料、セメント、水素のCBAM対象品目の輸出額は限定的だと指摘しています。
輸出量が少ないため、EUの買い手にとっては50トン基準が重要になります。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。この50トンは鉄鋼やアルミニウムを含むすべてのCBAM対象製品の合計で、尿素だけで判断することはできません。
尿素のCBAM対応:輸入者と輸出者の実務
日本の炭素価格は尿素のCBAMで控除されますか
2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。
第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)に関する実施規則案は2026年5月13日に公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で採択されていません。どの国の炭素価格もまだ認められていません。控除の対象は実際に支払われた炭素価格に限られ、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。
日本の地球温暖化対策のための税(温対税)は、天然ガスを含む化石燃料全般に、CO2 1トン当たり289円の負担となるよう課されます(環境省)。排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度(2026年4月から2027年3月)から、CO2の直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者を対象に義務化されました(経済産業省)。
ただし、GX-ETSは無償割当が中心で、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。上流で課され燃料価格に転嫁される温対税が、尿素プラントの事業者が支払ったものとみなされるかも未解決です。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。
エジプト産の尿素は炭素価格の控除を受けられますか
エジプト産の尿素は控除を受けられません。エジプトには炭素価格がなく、規則(EU)2023/956第9条は、原産国で実際に支払われた炭素価格についてのみ減額を認めています。2026年11月4日時点で第9条の実施規則は案の段階で、どの国の炭素価格も認められていません。
エジプトから調達するEUの輸入者は、無償割当調整後の体化排出量について証書のコストを負担します。デフォルト値で計算すると、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり43.17ユーロです。デフォルト値の詳細はCBAMのデフォルト値をご覧ください。
CBAMの尿素とアンモニアはどう違いますか
アンモニアは、それ自体がCBAMの対象製品(無水アンモニアはCNコード 2814 10 00)であり、尿素の直接の前駆体でもあります。エジプト産のデフォルト値は無水アンモニアが2.050、尿素(CNコード 3102 10 19)が1.390で、デフォルトのベンチマークはそれぞれ1.522と0.902です。82.32ユーロで計算すると、2026年にデフォルト値で輸入した場合、アンモニアは製品1トン当たり48.28ユーロ、尿素は43.17ユーロです。
日本産では、無水アンモニアのデフォルト値が2.190、尿素が1.520で、2026年のコストは製品1トン当たり59.92ユーロと53.98ユーロです。窒素含有量は、無水アンモニアが約82%、尿素が約46%です。アンモニアの算定とCNコードの詳細はCBAMとアンモニアで説明しています。
尿素にはデフォルト値と実排出量のどちらが適用されますか
尿素の輸入者には、どちらの方法も使えます。生産施設の検証済み実排出量は、CBAM登録簿に登録した認定検証機関の検証報告書が添えられていれば認められます(検証機関の登録は2026年9月1日に開始)。実際のデータがない場合は、実施規則(EU)2025/2621付属書Iのデフォルト値に、肥料に固有の1%のマークアップを加えて使います。
検証済みデータによる節約額は、マークアップを加えたデフォルト値と施設の実排出量の差に証書価格を掛けたもので、ベンチマークの基準の違い(デフォルト値ではColumn B、実排出量ではColumn Aと前駆体に含まれる無償割当)で調整されます。尿素のColumn Aのベンチマークは0.053です。デフォルト値を大きく下回る施設から調達する輸入者ほど、節約が大きくなります。
検証が必要なのは実排出量で申告する場合だけです(第8条第1項)。CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関だけです。国家認定機関の登録簿で確認できる認定は2026年10月13日時点で5件で、日本の法人は含まれず、2026年10月23日時点で欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。詳しくはCBAMの検証とCBAM認定検証機関をご覧ください。
肥料の輸入者はCBAMで何をする必要がありますか
肥料の輸入者は、認可CBAM申告者の標準的な手続きに従います。主な義務を時系列で並べると、次の4つです。
- 2026年3月31日までに認可を申請する:設立地のEU加盟国の管轄当局に、認可CBAM申告者の資格を申請します(規則(EU)2023/956第17条第7a項、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)による改正)。
- 2026年1月1日から体化排出量を記録する:輸入した尿素の出荷ごとに、供給者の検証済みデータかデフォルト値で、製品1トン当たりの体化排出量を記録します。
- 2027年から四半期末に証書を保有する:2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はなく、証書の販売は2027年2月1日に始まります。
- 2027年9月30日までに申告し、納付する:2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(第6条第1項、第22条第1項)。納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項)。
輸入者向けの手続きの詳細は肥料の輸入者向けCBAMガイド(英語)にあります。
EU域外の尿素輸出者は何を知っておくべきですか
EU域外の尿素生産者にCBAMの法的義務はありませんが、EUの顧客を通じて間接的な影響を受けます。証書のコストを法的に負うのはEUの輸入者(またはその間接的通関代理人)ですが、EUの買い手はCBAMのコストを価格交渉に織り込みます。デフォルト値を下回る排出係数で操業する輸出者は、検証済みの実排出量を提供することで買い手の証書コストを下げ、競争上の優位を得られます。
2025年のEUの尿素輸入の上位5原産国であるエジプト、ロシア、アルジェリア、ウズベキスタン、ナイジェリアの輸出者は、いずれもこうした取引上の圧力を受けています(Eurostat Comext)。日本の生産者も同様で、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録すれば、施設のデータを提供できます。事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します。
輸出者がとれる対応策は肥料輸出者のためのCBAMで、日本の状況はCBAMと日本で説明しています。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。
尿素はCBAMで最もコストの高い部門ですか
尿素は最もコストの高い部門ではありません。デフォルト値で比べると水素のほうがはるかに高く、「その他の国と地域」のデフォルト値17.740 tCO2eを使うと、2026年輸入分のコストは82.32ユーロで製品1トン当たり1,197.94ユーロです。同じ方法で計算すると、トルコ産の半製品(CNコード 7207 11 14)は製品1トン当たり99.70ユーロです。
尿素は、エジプト産の43.17ユーロから「その他の国と地域」の153.75ユーロまでです。肥料部門の中でも尿素は最も高い製品ではなく、エジプト産では硝酸アンモニウム(CNコード 3102 30 90)が製品1トン当たり137.15ユーロ、尿素が43.17ユーロです。水素の詳細はCBAMと水素をご覧ください。
アジアの原産国で尿素のデフォルト値はどう違いますか
尿素(CNコード 3102 10 19)のデフォルト値は、日本が1.520、韓国が1.540、インドネシアが1.580、中国が2.850です。2026年にデフォルト値で輸入した場合のコストは、製品1トン当たり日本53.98ユーロ、韓国55.64ユーロ、インドネシア58.97ユーロ、中国164.56ユーロです(82.32ユーロ、2026年11月4日計算)。
中国の値2.850は、「その他の国と地域」の2.720を上回ります。デフォルト値は国ごとの表の値を使い、独自の表がない場合や表の値が空欄の場合だけ「その他の国と地域」の値を使うため、中国産には2.850が適用されます。