
CBAMの検証は、認可CBAM申告者が実排出量で申告する場合に必須となる第三者検証です。費用は、検証サービス各社の市場推計で生産施設1か所当たり5,000ユーロから5万ユーロです。デフォルト値で申告する場合、検証は不要です。検証機関は、データの完全性、排出係数の正確さ、算定方法、データ管理の4つの領域を確認します。
根拠は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」第8条第1項です。実排出量に基づく体化排出量は、生産施設ごとに認定検証機関の検証を受ける必要があります。2026年分を対象とする最初のCBAM申告書の期限は2027年9月30日で、日本の鉄鋼やアルミニウムの施設にとっても、検証機関の確保は最優先の準備課題です。
日本の施設にCBAM上の法的義務はありませんが、検証済みの実排出量がなければ、EUの買い手はマークアップ付きのデフォルト値で必要な証書数を計算します。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で申告すると、2026年輸入分のコストは、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。本ページでは、検証の対象、5つの段階、認定検証機関の要件、費用、日本の施設の準備を順に説明します。
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CBAM検証とは:どのような場合に必要ですか
CBAMの検証が必要になるのは、認可CBAM申告者が、公表されたデフォルト値ではなく実排出量のデータを年次のCBAM申告書に使う場合です。
規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)で改正された規則(EU)2023/956第8条により、EU域外の生産施設から得た実排出量は、申告に使う前に、認定を受けた第三者の検証を受ける必要があります。EU炭素国境調整措置(CBAM)は、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。
実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値を使う輸入者は、第三者検証が免除されます。デフォルト値は国と製品ごとの平均的な排出原単位に、2026年10%、2027年20%、2028年以降30%のマークアップを加えたものです。検証が不要な代わりにコストが上乗せされる仕組みで、マークアップは実測と検証への投資を促すために設けられています。
最初のCBAM申告書は2026暦年(1月から12月)の輸入を対象とし、期限は2027年9月30日です(第6条第1項)。CBAM登録簿への検証機関の登録は、規則(EU)2025/2083により2026年9月1日に始まりました(第10a条)。登録開始から申告期限までは13か月で、その間に世界中の数千のEU域外施設が初めての現地訪問を受ける必要があります。
キャプション:CBAMの検証は、検証機関の登録が始まった2026年9月1日から、最初の申告期限である2027年9月30日までに終える必要があります。
CBAM検証では何を確認しますか
CBAMの検証は4つの領域を対象とし、検証報告書でそのすべてが確認されて初めて、認可申告者はその施設のデータを申告書に使えます。
検証の対象となる4つの領域は次のとおりです。
- データの完全性:実施規則(EU)2025/2547が定めるシステム境界の中のすべての排出源を特定し、算定に含めていること。根拠を記録しないまま排出源を除くことはできません。
- 排出係数の正確さ:施設で使う燃料、原料、工程投入物ごとの排出係数を、実施規則(EU)2025/2547付属書IIの第G項の標準係数、または施設自身の分析結果と照合します。
- 算定方法:付属書IIの方法を正しく適用しているかを評価します。第B.2項は、計算に基づく方法(燃焼排出と工程排出の式を分ける標準法、またはマスバランス法)と、連続測定による測定に基づく方法を認めており、N2Oには測定に基づく方法が必須です。セメントの機能単位は製品に含まれるクリンカーのトン数、肥料は窒素含有量またはCNコードの補足単位で(第4条)、付属書IIIが特定体化排出量をそれに合わせて換算します。
- データ管理の仕組み:施設のモニタリング計画が守られ、計測機器が校正され、記録が管轄当局の監査に耐える形で保存されていることを確認します。
検証は誤りがゼロであることを保証するものではありません。委任規則(EU)2025/2551と実施規則(EU)2025/2546の基準は合理的保証で、検証機関は申告値に重大な虚偽表示がないことを確認します。重大な虚偽表示とは、単独または合計で、報告された体化排出量に対する一定のしきい値を超える誤りです。
実施規則(EU)2025/2546では、重要性の水準は製品ごとに、特定体化排出量と単位当たり無償割当相当量(SEFA)のそれぞれ5%で、虚偽表示はこの範囲内に収まる必要があります。日本の施設にとっては、燃料の購入量、原料の投入量、生産量の記録をこの精度で説明できるかが、検証の中心的な論点になります。
CBAM検証の流れ:5つの段階
CBAMの検証は、施設の範囲の確定から検証報告書の発行まで5つの段階で進みます。
検証機関が不足しているため、検証済みのデータを提出する認可CBAM申告者(英語)である輸入者も、データを作成する日本の施設も、各段階を早めに計画する必要があります。5つの段階は次のとおりです。
段階1:検証機関を選び、契約する
排出量データを集め始める前に、認定検証機関を選んで契約します。検証機関は、委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らしてEU加盟国の国家認定機関(NAB)の認定を受け、2026年9月1日に登録が始まったCBAM登録簿に登録している必要があります。検証機関は検証する施設から独立し、申告の結果に経済的な利害を持たないことが求められます。
データ収集の完了を待たずに契約しても、早すぎることはありません。検証機関は、システム境界を定め、排出源を特定し、施設のモニタリング計画が実施規則(EU)2025/2547の要件を満たすかを確認する範囲確定の作業を必要とします。この作業なしにデータを集め始めると、欠落が見つかり、費用のかかる再測定につながることが少なくありません。
段階2:生産施設で排出量データを集める
EU域外の生産施設から、特定体化排出量のデータを集めます。必要なデータは、特定直接体化排出量(製品1トン当たりのtCO2e(CO2換算トン))、セメントと肥料の施設では特定間接体化排出量、生産ルートの区分、モニタリング計画の参照先、裏付けとなる測定記録です。
実排出量を報告する事業者は、事業者の排出量報告書とそのサマリーを英語で作成します(実施規則(EU)2025/2547付属書IV、第10条第4項)。この必須の構成は、移行期間の任意様式だったコミュニケーションテンプレートに代わるもので、サマリーにはEUの認可申告者が必要とする16項目が含まれます。移行期間(2023年10月から2025年12月)に実施規則(EU)2023/1773に基づく報告に関わった施設は、既存のモニタリング計画を出発点にできます。
日本の施設では、燃料と原料のデータは購買部門、燃料使用量は生産管理部門、排出量は環境部門と、データが部署ごとに分かれていることが少なくありません。JETROは2026年10月27日の記事で、部門間で継続的に情報を共有することを勧めています。報告書は英語なので、日本語の社内記録との対応表も用意しておくと検証が進めやすくなります。
段階3:現地訪問(初回の検証期間は必須)
検証機関は、施設が初めて検証を受ける年に、EU域外の生産施設を実際に訪問します(実施規則(EU)2025/2546第2条)。多くの施設では、2026年の輸入を対象とする期間がこれに当たります。初年度のバーチャル訪問は、事業者の管理が及ばない、重大かつ例外的で予見できない事情により現地訪問ができない場合に限られます(第4条)。
現地訪問では、施設の見学、生産工程の観察、計測機器と校正記録の確認、書類のサンプリング、事業者の技術担当者への聞き取りが行われます。この義務は施設の所在国を問わず適用されるため、中国、インド、トルコ、ロシア、UAE、エジプトの施設から調達するEUの輸入者には、それぞれの国での現地訪問が必要です。日本の施設も同様で、EUの検証機関の担当者が日本を訪れることになります。
各国の国家認定機関でつくる欧州認定協力機構(EA)は、2026年3月初めにEU CBAMのタスクフォースを立ち上げ、検証機関の認定を調和させる指針づくりを始めました(EAのニュース、2026年2月26日)。欧州委員会の2026年10月21日付の状況表では、24の国家認定機関がCBAM検証機関の認定に同意し(うち20が申請受付の準備済み)、7つが第三国の検証機関の認定に同意し、7つすべてが申請を受け付けています。
国家認定機関の文書で認定が確認できる検証機関は、2026年10月13日時点で5件です。EmiCert S.A.(ギリシャのESYD)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccredia)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedac)で、すべてEUに設立された法人です。2026年10月23日時点で欧州委員会の公式リストは未公表で、欧州以外の市場での検証能力は実務上まだ確かめられていません。
段階4:書類審査と算定の監査
現地訪問の後、検証機関は提出された算定データをすべて書類審査します。活動量データ(燃料の量、投入物の質量、生産量)をモニタリング計画と照合し、実施規則(EU)2025/2547の正しい式が使われたかを確認し、排出係数の値の整合性を確かめます。施設で使われている生産ルートに対して、モニタリング計画のシステム境界が正しいかも評価します。
書類審査で見つかった不一致は、指摘事項として示されます。事業者は、検証機関が結論を確定する前に、回答し、訂正し、追加の証拠を出すことができます。
段階5:検証報告書の発行
検証機関は、実施規則(EU)2025/2546の基準を満たす検証報告書を発行します。結論は「重大な虚偽表示はなく検証済み」か、「申告値に影響する問題を限定事項として付したうえで検証済み」のいずれかです。認可申告者はCBAM登録簿で提出する年次のCBAM申告書に検証報告書の参照を記載し、管轄当局は申告書を審査し、検査の際に元の検証報告書を求めることがあります。
欧州委員会は2026年8月24日、CBAM登録簿内での検証報告書の発行を2027年1月から始めると発表しました。日本の施設がCBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録していれば、検証済みのデータを一度登録し、複数のEUの買い手(認可申告者)と共有できます。詳しくはO3CI(事業者用ポータル)の解説をご覧ください。
認定検証機関の要件:誰がCBAM検証を行えますか
CBAMの認定検証機関は、EN ISO/IEC 17029:2019(妥当性確認・検証機関の規格)に照らして、EU加盟国の国家認定機関(NAB)の認定を受けた法人です。
認定の要件は規則(EU)2023/956第18条と、2026年1月1日から適用される委任規則(EU)2025/2551に定められています。検証機関として認められるには、次の3つの条件を同時に満たす必要があります。
- 委任規則(EU)2025/2551に基づくEU加盟国の国家認定機関の認定を受けていること。EU域外の認定機関はCBAM検証機関を認定できません。
- CBAM登録簿に登録していること。登録は2026年9月1日に始まり、認定機関がある加盟国の管轄当局に申請します(第10a条)。未登録の検証機関は、認定を受けていても有効なCBAM検証報告書を発行できません。
- 検証する施設から独立していること。施設の事業者自身、事業者と同じ企業グループの会社、利益相反を生む取引関係のある者は除かれます。
EU域外に設立された検証機関は、自国の認定機関の認定には頼れず、域外からの申請を受け付けるEUの国家認定機関に申請します。欧州委員会の2026年10月21日の状況表では7つが該当し、7つすべてが申請を受け付けています:COFRAC(フランス)、ESYD(ギリシャ)、Accredia(イタリア)、RvA(オランダ)、PCA(ポーランド)、SNAS(スロバキア)、Swedac(スウェーデン)。
欧州認定協力機構の情報文書EA-6/05 INF(2026年10月5日)は、こうしたEUの認定機関が検証機関の自国の認定機関とどのように協力できるかを説明しています。中国、インド、トルコの検証機関も、日本の検証機関も同じ経路をとります。日本適合性認定協会(JAB)などの日本の認定機関は、CBAM検証機関を認定できません。
経済産業省は2025年5月の「CBAMへの対応に関する委員会」の資料で、EU域外の認定機関の活用をEUへの要望の一つに挙げていますが、2026年11月4日時点で制度は変わっていません。JETROは2026年10月27日、日本で活動する検証機関の一部が事前検証(プレ検証)を提供し、認定の取得を目指していると報じています。2026年10月13日時点で、日本の法人のCBAM認定は確認できません。
同じJETROの記事は「Bureau Veritas(フランス)」「SGS(スイス)」がCBAMの認定を取得したと、グループ名で紹介しています。認定を受けたのはイタリアの法人Bureau Veritas Italia S.p.A.とSGS ICS Italia S.r.l.で、日本のグループ会社が認定を受けたわけではありません。契約の前に、認定を受けた法人そのものと契約するのか、その法人が日本の拠点をどう使うのかを確認してください。
認定範囲(活動グループ)と日本からの輸出品
認定は委任規則(EU)2025/2551付属書Iの11の活動グループごとに与えられ、検証機関は依頼ごとに認定範囲を確認します(付属書II第2.2項)。
EUの日本からのCBAM対象製品(付属書Iのコード)の輸入額は2025年に14億4,820万ユーロで、金額ベースで鉄鋼が12億4,590万ユーロ(約86%)、アルミニウムが1億9,500万ユーロ(13.5%)を占めます(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。その大部分は鉄鋼製品とアルミニウム製品で、活動グループVIIIに当たります。2026年10月19日に各認定機関の登録簿で確認した時点で、5つの認定検証機関はいずれもVIIIを認定範囲に含みます。
| 活動グループ | 対象 | 日本からのEU輸入(2025年、Eurostat Comext) | 認定範囲に含まない機関(2026年10月19日確認) |
|---|---|---|---|
| V | 焼結鉱、銑鉄、直接還元鉄、粗鋼 | 粗鋼と半製品 730万ユーロ、銑鉄と直接還元鉄 30万ユーロ | SGS ICS Italia S.r.l. |
| VI | 合金鉄 | 合金鉄 441万ユーロ | なし |
| VII | アルミニウムの塊 | 210万ユーロ(CNコード 7601) | SGS ICS Italia S.r.l. |
| VIII | 鉄鋼製品とアルミニウム製品 | 第72類の完成品 8億810万ユーロ、第73類 4億2,580万ユーロ、アルミ製品 1億9,280万ユーロ | なし |
| LII | 間接排出量 | セメント 480万ユーロ、肥料 250万ユーロ | なし |
高炉・転炉法(BF-BOF)の一貫製鉄所のように、施設内で銑鉄や粗鋼を前駆体として生産する場合は、製品と前駆体の両方の活動グループが認定範囲に含まれるかを契約前に確認してください。各機関の詳しい認定範囲はCBAM認定検証機関一覧にまとめています。
欧州委員会の検証制度の整備:2026年6月から10月
欧州委員会は2026年6月30日、DG TAXUDの専用ページ「Verification of CBAM emissions」を公開し、検証の規則と検証機関の認定の経路を一か所にまとめました。
続いて2026年7月10日に「State-of-play CBAM accreditation」(最新版は2026年10月21日付)を公表し、2026年7月16日には認定の申請者向けに「Become a CBAM verifier」ウェビナーを開きました。対象には既存のEU ETSの検証機関も明示的に含まれていました。
2026年7月31日、DG TAXUDは録画と資料を公開し、登録の手順を初めて示しました。それによると、検証機関は2026年9月1日からEUログイン(EU Login)のアカウントを作成し、CBAM登録簿で管轄当局に登録を申請します。認定検証機関がCBAM登録簿を実務で利用できるのは2026年9月30日以降とされました。この手順どおり、2026年9月1日に登録が始まっています。
国家認定機関による5件の認定の日付は次のとおりです。EmiCertはESYDの認定範囲付属書の日付で2026年9月14日、Bureau Veritas Italia、RINA Services、SGS ICS ItaliaはAccrediaの2026年9月28日の決定、Intertek Certification ABはSwedacの2026年10月13日です。2026年10月23日時点で、欧州委員会の公式リストは未公表です。
2026年夏に予告されていた検証と認定の手引きは、2026年8月24日に「Guidance on CBAM verification and accreditation for verifiers and National Accreditation Bodies」として公表されました。2026年8月28日には、検証機関が登録簿を利用するための手順が示されました。検証機関はEU Accessで技術アクセスを申請して欧州委員会の承認を受け、O3CIのモジュールで登録を申請し、認定を行った加盟国の管轄当局が登録を決定します。
それに先立つ2026年8月14日、欧州委員会は本格実施期間のCBAMガイダンス10文書(英語)を公表しました。体化排出量の算定方法に関するガイダンス第3号は、検証機関が申告データを照合する方法論です。経緯は検証機関の認定ウェビナーと検証ページ(英語)と9月の登録簿への登録開始(英語)の記事で詳しく報じています。
キャプション:CBAMの検証機関は、EUの国家認定機関からEN ISO/IEC 17029:2019に基づく認定を受け、2026年9月1日に登録が始まったCBAM登録簿に登録する必要があります。
CBAM検証の費用の目安
CBAM検証の費用は、検証サービス各社の市場推計で生産施設1か所当たり5,000ユーロから5万ユーロで、欧州委員会は費用の数字を公表していません。
費用の幅を決める主な要因は、施設の複雑さ、施設で生産する製品の数、施設の規模、現地訪問の移動の要否です。次の表は、この市場推計の幅を、これらの要因をもとに当サイトが施設の種類別に整理した目安です。公表された料金表ではなく、実際の見積もりは異なります。
| 施設の種類 | 検証費用の目安 | 主な費用要因 |
|---|---|---|
| 単一製品の単純な施設(例:1製品の電炉製鋼所) | 5,000~1万2,000ユーロ | 複雑さが低く、計算式が単純 |
| 複数製品の複雑な施設(例:3製品以上の一貫製鉄所) | 1万5,000~3万ユーロ | 複数の計算式、システム境界の複雑さ |
| 大規模な一貫施設(例:クリンカーを含むセメント工場) | 2万~4万ユーロ | 複数の前駆体、間接排出量の算定 |
| 複雑な肥料工場(例:アンモニア、硝酸、窒素肥料) | 3万~5万ユーロ | N2Oの測定、間接排出量、広い範囲 |
| 複数日の国際移動が必要な遠隔地 | 3,000~8,000ユーロを加算 | 現地訪問チームの移動、宿泊、日当 |
20か所の生産施設から調達する大規模なEUの輸入者では、初回の検証費用は施設の複雑さと地理的な分散によって10万ユーロから100万ユーロになります。日本の施設の場合、EUから担当者を派遣すれば移動費が加わるため、検証機関に日本国内の拠点や提携先があるかが費用に影響します。
初回の期間は現地訪問があるため最も費用がかかります。2回目以降は、直前の報告期間に現地訪問があり、重要な変更がなければバーチャル訪問が認められ、直前の2つの報告期間に現地訪問があれば訪問を省略できます(実施規則(EU)2025/2546第3条)。
申告期限までに記録しておくべき事項を、各項目の根拠規定とともにまとめています。英語版をすぐにダウンロードできます。
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CBAMの検証機関の探し方:4つのステップ
2026年にCBAMの検証機関を見つけるには4つのステップがあり、初めての検証を必要とする施設の数に比べて検証機関が大きく不足しているため、2026年11月の今から始める必要があります。
CBAM登録簿への検証機関の登録は2026年9月1日に始まり、認定検証機関は2026年9月30日から登録簿を実務で利用できます。2026年10月13日までに認定が確認できたのは5件で、ギリシャのESYDが1件、イタリアのAccrediaが3件、スウェーデンのSwedacが1件です。検証機関を見つけて契約する4つのステップは次のとおりです。
- 国家認定機関を確認する。 各EU加盟国に国家認定機関が1つあります。ドイツはDAkkS、フランスはCOFRAC、オランダはRvA、スペインはENAC、イタリアはAccrediaです。欧州委員会の2026年10月21日の状況表では24がCBAMの認定に同意し、キプロス、エストニア、アイルランド、マルタは同意していません。各機関は認定した機関の公開登録簿を持ち、EN ISO/IEC 17029:2019に基づくCBAMの認定はそこで確認できます。
- CBAM登録簿の検証機関リストを確認する。 検証機関は、EUログインのアカウントを作り、EU Accessで技術アクセスを申請して欧州委員会の承認を受け、O3CIのモジュールで登録を申請し、認定した加盟国の管轄当局が決定します。DG TAXUDは登録済みの検証機関のリストをCBAM登録簿で公表します。国家認定機関の登録簿と照らし合わせ、認定と登録の両方が有効であることを確認してください。
- 検証機関の対応地域を施設の国に合わせる。 現地訪問の実績がある国、初回の検証の受注残、現地の提携先や下請けの有無を直接たずねます。日本の施設であれば、日本語での聞き取りに対応できるか、日本の拠点の担当者が検証チームに入れるかも確認します。
- 範囲と時期を契約で決める。 2027年9月30日の申告期限までに指摘事項を解決できるよう、2027年6月より前に現地訪問ができるか、料金の方式(固定価格か作業時間か)、指摘事項の解決に追加の訪問が必要になった場合の扱いを確認します。
国別の国家認定機関の一覧を含む輸入者向けの手順はCBAM検証機関の探し方(輸入者向け)(英語)に、日本の施設の側から見た準備は輸出者向けCBAM検証ガイドにまとめています。日本で相談できる支援事業者は日本のCBAMコンサルタントで紹介しています。
検証機関の不足:2026年と2027年の課題
CBAMの検証市場には、検証機関の供給と、2027年9月30日までに初めての検証を必要とする施設の数との間に構造的な差があります。
欧州委員会の2026年10月21日の状況表では、24の国家認定機関がCBAM検証機関の認定に同意し、20が申請受付の準備を終えています。2026年3月から活動するEAのタスクフォースが、認定の調和の指針でこれを支えています。認定が確認できる検証機関は2026年10月13日時点で5件で、欧州委員会の公式リストは2026年10月23日時点で未公表です。
DG TAXUDは候補者の確保を進めています。2026年7月16日のウェビナーは既存のEU ETSの検証機関を含む申請者を対象とし、2026年7月31日の資料は登録の手順を示し、2026年8月28日の手順書はEU AccessとO3CIのモジュールによる登録簿アクセスを定めました。CBAM登録簿内での最初の検証報告書は2027年1月からの予定です。
この差が実務に与える影響は小さくありません。中国、インド、トルコの10か所の生産施設から調達する輸入者は、3つの国で10回の現地訪問を必要とし、それぞれに鉄鋼やセメントなどの生産工程に詳しい担当者、移動の手配、書類の翻訳、現地との調整が必要です。日本の施設も、同じ検証機関の限られた担当者を他国の施設と取り合うことになります。
規則には、検証機関の不足を理由とする不可抗力条項も、善意による免除も、適用除外もありません。期限までに検証を終えられない輸入者は、2026年分を10%のマークアップ付きのデフォルト値で申告して追加費用を受け入れるか、検証機関が確保できるまで実排出量の使用を先送りするかのどちらかになります。
2026年11月の時点で検証機関と契約する輸入者や事業者は、期限の約11か月前にサービスを確保することになります。これは早すぎる準備ではなく、複雑な施設で初回の範囲確定、現地訪問、書類審査、報告を終えるのに実際に必要な期間です。
CBAM検証とCBAM申告書の関係
CBAMの検証と年次のCBAM申告書は検証報告書の参照でつながり、認可申告者はCBAM登録簿で申告書を提出する際にその参照を記載します。
2027年9月30日が期限のCBAM申告書には、改正後の規則(EU)2023/956第6条により、輸入したCBAM製品の総量、製品の種類と原産国ごとの体化排出量の合計、納付するCBAM証書の数、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)、実排出量を申告するすべての施設の検証報告書の参照が含まれます。
CBAM登録簿に登録された検証機関と一致しない検証報告書の参照は受理されません。管轄当局は申告の処理の際に参照を登録簿と照合し、照合できない申告書は訂正されるまで不完全なものとして扱われます。検証機関の登録の遅れは、そのまま申告の遵守リスクになります。
提出前には、無料のCBAM内部監査チェックリストのテンプレート(英語)を使えば、抽出した排出量の数値を供給者のファイルや検証報告書までさかのぼって確認できます。申告の手続きはCBAM申告(英語)で、体化排出量の考え方はCBAMの体化排出量で詳しく説明しています。
検証を受けずにデフォルト値を使う場合のコスト
デフォルト値を使う輸入者は、その施設について第三者検証を受ける必要がなく、管轄当局は検証報告書なしでデフォルト値をそのまま受け入れます。
その代わり、コストが上乗せされます。デフォルト値には、国別の平均的な排出原単位に2026年10%、2027年20%、2028年以降30%のマークアップが加わります(実施規則(EU)2025/2621)。実排出量がデフォルト値を大きく下回る施設では、初年度からその差が大きなコストになります。
中国産のスラブ(CNコード 7207 12 10)のデフォルト値は製品1トン当たり3.169 tCO2eで、2026年のマークアップを加えると3.4859です。無償割当調整0.975 × 1.00 × 1.364 = 1.3299を差し引くと、デフォルト値では製品1トン当たり2.156枚の証書が必要で、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで製品1トン当たり177.48ユーロです。
仮に検証済みの排出量が製品1トン当たり1.8 tCO2eの生産者(仮定の数値)であれば、申告する排出量は1.686 tCO2e少なくなります。節約額は、この差に証書価格を掛けた額が基本です。ただし実排出量で申告する場合はベンチマークの基準が異なる(Column Aのプロセスベンチマークと前駆体の無償割当)ため、その分を調整します。
日本製品をデフォルト値で申告した場合のコスト
日本の主な輸出品について、2026年の輸入をデフォルト値で申告した場合の証書数とコストは次の表のとおりです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の日本の表の「総排出量」、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620のColumn Bの値で、2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算しました。
| 製品(CNコード) | 日本のデフォルト値(tCO2e/t) | 2026年(マークアップ10%) | 無償割当調整 | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱延鋼板(7208 51 20) | 2.100 | 2.310 | 0.975 × 1.370 = 1.33575 | 0.97425 | 80.20ユーロ |
| ボルト・ねじ(7318 15 42) | 2.800 | 3.080 | 0.975 × 1.364 = 1.3299 | 1.7501 | 144.07ユーロ |
| 無方向性電磁鋼板(7225 19 90) | 3.530 | 3.883 | 0.975 × 1.488 = 1.4508 | 2.4322 | 200.22ユーロ |
| アルミ板(7606 12 99) | 1.730 | 1.903 | 0.975 × 0.148 = 0.1443 | 1.7587 | 144.78ユーロ |
熱延鋼板は、同じ価格82.32ユーロで比べると製品1トン当たり2027年100.31ユーロ、2028年123.23ユーロに上がります。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項が2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は目安です。貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
日本の電炉メーカーにとって、検証の意味は特に大きくなります。日本の表の鉄鋼の行に記載されたルートは高炉・転炉法(C、F、C/F)だけで、電炉法(D、E)の行はありません。スクラップを使う電炉法の製品も、検証済みの実排出量を出すまでは高炉材と同じデフォルト値2.100(熱延鋼板)で評価されます。ベンチマークの違いは日本の鉄鋼輸出とEU CBAMで説明しています。
デフォルト値は年を追うごとに不利になります。CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年97.5%、2027年95%、2028年90%、2029年77.5%、2030年51.5%です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。CBAM係数は差し引くベンチマークに掛かる係数で、課される排出量に掛かるものではないため、差し引き分を超える排出量はマークアップ分も含めて毎年全額が証書の対象です。
実測と検証の仕組みづくりを2028年や2029年まで遅らせる輸入者や施設は、最も高いマークアップ(30%)を負い、同時に差し引き分が最も速く縮みます。算定の枠組みはCBAMのデフォルト値とCBAM規則の解説(英語)で詳しく説明しています。
CBAM検証とEU ETS・日本の制度の検証との違い
CBAMの検証とEU ETSの検証は同じ種類の認定機関が行いますが、認定、法的根拠、報告書の様式が異なる別々の手続きです。
CBAMの認定は委任規則(EU)2025/2551に基づきEN ISO/IEC 17029:2019に照らして与えられ、EU ETSの認定は実施規則(EU)2018/2067に基づいて与えられます。日本のGX-ETSやGXリーグの検証も、CBAMとは別の制度です。
CBAMの検証機関はEU ETSの検証機関と同じですか
実施規則(EU)2018/2067に基づきEU ETSの認定を受けた検証機関はCBAMの検証機関になれますが、EU ETSの認定が自動的にCBAMに移るわけではありません。国家認定機関からCBAMの認定を受ける必要があり、その審査では既存のEU ETSの認定が考慮されます(規則(EU)2023/956第18条第2項)。その後、CBAM登録簿に登録します。
実務では、CBAM検証機関の最も有力な供給源は、EUとEEAの施設でEU ETSの検証を行ってきた検証機関です。一方、CBAM検証の対象である第三国の施設での検証の市場はまだ育っておらず、これが前述の不足の一因になっています。
EU域内の施設のEU ETS検証で、EU域外の施設のCBAM検証を代えられますか
EUの国内生産者のEU ETS検証は、EU域外の生産施設のCBAM検証の代わりになりません。2つの手続きは対象者、規制上の義務、排出の境界が異なります。EUの鉄鋼メーカーがEU ETSで検証を受けても、EUの認可申告者が輸入するトルコやインド、日本の鉄鋼メーカーの製品の検証にはなりません。
GX-ETSの登録確認機関やGXリーグの登録検証機関はCBAM検証を行えますか
行えません。GX-ETSの登録確認機関(経済産業省のリスト)とGXリーグの登録検証機関は、日本の国内制度の役割で、CBAMの検証資格にはなりません。CBAMの検証機関は、委任規則(EU)2025/2551に基づきEU加盟国の国家認定機関に認定された法人で、認定された活動グループの範囲でのみ検証できます。
日本の施設がGX-ETSで受ける検証の記録は、燃料や生産量のデータ管理の土台としては役立ちますが、CBAMの検証報告書の代わりにはなりません。GX-ETSと第9条の炭素価格控除の関係はCBAMの炭素価格控除で説明しています。2026年11月4日時点で、日本の炭素価格は第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。
日本で参照できる公的な資料はありますか
経済産業省は「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)で概要を公開し、「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)には検証に関するQ&Aがあります。JETROは2026年10月27日に「EU CBAM排出量検証制度 日本企業は検証にどう備えるか」を公開し、貿易投資相談の窓口も設けています。日本の状況の全体はCBAMと日本にまとめています。
CBAM検証についてよくある質問
すべてのCBAM輸入者に検証機関が必要ですか
CBAMの輸入者に検証機関が必要なのは、デフォルト値ではなく実排出量を申告する場合だけです。実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値を使う輸入者は、第三者検証を必要としません。検証の義務は生産施設ごとに生じ、出荷ごとや輸入年ごとではありません。
検証機関はいつからCBAM登録簿に登録できますか
CBAM登録簿への検証機関の登録は、規則(EU)2025/2083により2026年9月1日に始まりました。欧州委員会が2026年8月28日に公表した手順では、検証機関はEUログインのアカウントを作り、EU Accessで技術アクセスを申請して欧州委員会の承認を受け、O3CIのモジュールで登録を申請し、認定した加盟国の管轄当局が決定します。
認定検証機関の登録簿の実務アクセスは2026年9月30日から可能で、CBAM登録簿内での最初の検証報告書は2027年1月からの予定です。CBAM登録簿に登録していない検証機関の検証報告書は、CBAM申告には使えません。
CBAM検証の費用はいくらですか
検証サービス各社の市場推計では、CBAM検証の費用は生産施設1か所当たり5,000ユーロから5万ユーロで、欧州委員会は費用の数字を公表していません。費用は、施設の複雑さ、施設で生産するCBAM製品の数、部門(間接排出量を含む肥料とセメントの施設は複雑)、現地訪問の移動費に影響する施設の所在地で変わります。
EU域外(日本)の検証機関はCBAM検証機関になれますか
なれます。EU域外に設立された検証機関もCBAM検証機関になれますが、EUの国家認定機関の認定を受ける場合に限られ、自国の認定機関はCBAMの認定を行えません。欧州委員会の2026年10月21日の状況表では、COFRAC(フランス)、ESYD(ギリシャ)、Accredia(イタリア)、RvA(オランダ)、PCA(ポーランド)、SNAS(スロバキア)、Swedac(スウェーデン)の7つが域外からの申請を受け付けています。検証機関はCBAM登録簿への登録も必要です。
施設の国に認定検証機関がいない場合はどうなりますか
規則(EU)2023/956には、輸入者が認定検証機関を確保できない場合の適用除外も善意による免除もありません。輸入者はデフォルト値を使ってマークアップの追加費用を受け入れるか、資格のある検証機関が確保できるまで実排出量の使用を先送りします。検証機関の不足を対象とする不可抗力条項もありません。
現地訪問は毎年必要ですか
毎年ではありません。現地訪問が必要なのは、施設が初めて検証を受ける年です(実施規則(EU)2025/2546第2条)。多くの施設では、2026年の輸入を対象とする期間がこれに当たります。
2回目以降は、直前の報告期間に現地訪問があり、重要な変更がなければバーチャル訪問が認められ、直前の2つの報告期間に現地訪問があれば訪問を省略できます(第3条)。第4条は、事業者の管理が及ばない、重大かつ例外的で予見できない事情により現地訪問ができない場合に、バーチャル訪問を認めています。