
CBAM事業者用ポータル(O3CI)は、CBAM登録簿(CBAMレジストリ)の中で、日本などEU域外の施設事業者が施設を登録し、検証済みの体化排出量データをEUの買い手と共有するための区画です。欧州委員会は、Operators of Third Country Installationsの頭文字からO3CIと呼んでいます。手順は、アクセス申請、事業者と施設の登録、排出量報告書の作成、検証、買い手への開示、毎年の繰り返しの6つです。
EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の根拠は、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。O3CIへの登録は任意で、登録しない生産者も同じ報告書を買い手ごとに直接送れます。検証済みのデータを何も提供しなければ、EUの買い手はデフォルト値を使います。デフォルト値には、2026年に10%、2028年以降は30%のマークアップが付きます(実施規則(EU)2025/2621)。
金額で見ると、日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で輸入する場合、2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。比較のために挙げると、トルコ産の半製品(CNコード 7207 11 14)は、同じ方法で計算して製品1トン当たり99.70ユーロです。
EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、うち鉄鋼が12億4,590万ユーロ、アルミニウムが1億9,500万ユーロです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。
検証済みの低い排出量を示せる生産者は、デフォルト値ではなく自社の数値で評価されます。買い手がどれだけ節約できるかは、その検証済みの数値と、実排出量の計算方法(Column Aのベンチマークと前駆体の無償割当を差し引く方法)で決まります。O3CIの仕組みを理解しておくことが、利幅を守る近道です。
キャプション:欧州委員会が運営するCBAM登録簿のO3CIで、EU域外の生産者は施設を登録し、検証に回す排出量データをアップロードします。
CBAM事業者用ポータル(O3CI)とは何ですか
CBAM事業者用ポータル(O3CI)は、EU域外の施設の事業者のためのCBAM登録簿内の区画で、施設と排出量のデータを一度アップロードすれば、その製品を輸入する申告者全員と共有できます。
データを申告者ごとに送り直す必要はありません(欧州委員会のCBAM登録簿のページ、2026年10月12日確認)。データを受け取るのは、規則(EU)2023/956第3条第17号に定める認可CBAM申告者です。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。
O3CIはCBAM登録簿とは別のシステムではありません。第14条第3項により、登録された事業者と施設の情報は、申告者の口座と証書を管理するのと同じ登録簿の中の、独立した区画に置かれます。事業者はO3CIから、申告者は申告者用の区画からログインします。認定検証機関もO3CIを使い、登録の申請、事業者との連携、排出量データの確認、検証報告書の発行を行います。
法的根拠は規則(EU)2023/956第10条です。欧州委員会は事業者の申請に基づき、事業者と施設の情報をCBAM登録簿に登録し、登録は通知から5年間有効です(第10条第1項、第3項)。事業者とは「第三国(すなわち非EU加盟国)において施設を運営または管理する者」をいい(第3条第31号、欧州委員会の日本語ガイダンスの訳)、施設を管理する親会社も含まれます。
データは生産施設の単位で管理します。第3条第30号は施設を「生産工程が行われる定置式の技術的設備」と定義しているため、3か所に製鉄所を持つ日本の会社は、住所と座標の異なる3つの施設を登録します。特定体化排出量の単位は、CBAM申告書と同じ製品1トン当たりのtCO2e(CO2換算トン)です。
O3CIの登録から利用までの6つの手順
O3CIの利用は、欧州委員会の登録手順、規則(EU)2023/956第10条、実施規則(EU)2025/2547に沿った6つの手順で進みます。
手順4は省略できません。認定検証機関の検証を受けていないデータは、CBAM申告書で実排出量として使えないからです(第8条第1項)。各手順で日本の事業者が注意すべき点も併せて説明します。
手順1:EUログインのアカウントを作成し、アクセスを申請する
O3CIを利用するには、欧州委員会の認証サービスであるEUログイン(EU Login)のアカウントが必要で、二要素認証も求められます。アカウントは利用者が1人ずつ個別に作成し、欧州委員会は会社のメールアドレスの使用を強く推奨しています。その後、O3CI(cbam.ec.europa.eu/o3cinstallation)にログインし、会社の情報、登録番号、メールアドレスとウェブサイト、利用者の役割(Admin OperatorまたはSimple Operator)を申請フォームに入力します。
フォームには、3つの書類をまとめた1つのPDFを添付します。同じ登録番号が記載された会社の登記証明書、委任状などの代表権の証明、権限を持つ代表者の身分証明書です。欧州委員会は、書類をできるだけ英語で用意し、原本には英訳を添えるよう求めています。
日本の会社の場合、登記証明書には法務局の登記事項証明書が当たります。登記事項証明書に記載されているのは12桁の会社法人等番号で、国税庁の13桁の法人番号とは異なるため、フォームには添付する証明書と同じ番号を入力します。
参考になる手引きは、非EU事業者向け登録ガイド(2026年2月24日)、事業者・検証機関用ポータルの利用者マニュアル第4.00版(2026年8月27日)、従業員へのアクセス委任ガイド(2026年6月4日)の3つです。いずれもCBAM登録簿のページに英語版が掲載されています。
手順2:事業者と施設ごとの登録を申請する
登録申請には、第10条第2項に定める情報を記載します。事業者については、名称、住所、法人または事業の登録番号、連絡先と、親会社を含む支配企業の同じ情報、その証拠書類です。施設ごとに、完全な住所と小数点以下6桁の経度・緯度による所在地、主な経済活動を記載します。日本の住所は英語表記で入力します。
欧州委員会が登録を通知し、登録は5年間有効です(第10条第3項)。登録された施設には、CBAM登録簿の固有の施設識別番号が付きます。この番号は、実施規則(EU)2025/2547付属書IVの排出量報告書の項目の一つです。登録内容の変更は遅滞なく届け出る必要があり(第10条第4項)、事業者はいつでも登録の抹消を申請できます(第10条第8項)。
事業者の名称、住所、登録番号、連絡先と施設の所在地は原則として公開され、排出量データは非公開です。事業者は、これらの情報を公開しないことを選べます(第14条第4項)。
手順3:施設ごとの排出量報告書を作成する
登録した事業者は、施設で生産する製品の種類ごとに体化排出量を算定します(第10条第5項(a))。直接排出量のモニタリング方法には、実施規則(EU)2025/2547付属書II第B項に定める2つの方法があります。計算に基づく方法は、活動量データと計算係数を使う標準法(第B.3.1項)またはマスバランス法(第B.3.2項)です。測定に基づく方法は、排ガス中の温室効果ガス濃度と流量を連続測定します(第B.6項)。
事業者は最も正確で信頼性の高い結果が得られる方法を選び、施設の部分ごとに方法を組み合わせることもできます(第B.2項)。N2Oは測定が必須で(第B.6.1項)、一次アルミニウムのPFC(パーフルオロカーボン)は第B.7項の規則に従います。規則(EU)2023/956付属書IIに記載のない製品、主にセメントと肥料には、電力による間接排出量を加えます。
報告期間は暦年(1月から12月)です。4月から3月の年度で排出量を管理している日本の会社は、モニタリングのデータを暦年で区切り直す必要があります。2026年度(2026年4月から2027年3月)の集計は、そのままでは2026年の報告に使えません。
移行期間に任意様式として使われていたコミュニケーションテンプレートは、現在の報告様式ではありません。実施規則(EU)2025/2547第10条第1項は、排出量報告書と、少なくとも付属書IVの内容を含むそのサマリーを求めています。事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(同付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します(同実施規則第10条第4項)。EUの買い手が見るのは、この16項目です。
この手順で直接役立つのが、欧州委員会が2026年8月14日に公表したガイダンスです。ガイダンス第2号はEU域外の事業者向けのクイックガイド、第3号は体化排出量の算定方法、5aから5fは部門別のモニタリングと算定の手引きです。全体はCBAMの10のガイダンス文書(英語)で紹介しています。日本語では、JETROの算定実務マニュアル(2026年3月)と、経済産業省のねじ・ボルト等の算定ガイドライン第3版(2026年3月)が参考になります。
手順4:CBAM登録簿を通じて検証を受ける
登録した事業者は、排出量報告書とそのサマリーをCBAM登録簿経由で検証機関に送り(実施規則(EU)2025/2547第10条第2項)、検証機関は登録簿を使って体化排出量を検証します(規則(EU)2023/956第10a条第5項)。事業者と検証機関の連携は、O3CIの連携リクエストで行います。リクエストはどちらからでも送ることができ、相手方が承認すると連携が成立します。欧州委員会は、検証報告書を2027年1月からCBAM登録簿で発行すると発表しています。
検証機関は、委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らしてEU加盟国の国家認定機関(NAB)の認定を受けている必要があります。実施規則(EU)2025/2546第2条から第4条により、施設が初めて検証を受ける年には、日本の生産施設への物理的な現地訪問が必要です。検証機関は、認定を受けた国の管轄当局にO3CIでの登録を申請します。
2026年10月13日時点で、国家認定機関の登録簿で確認できる認定は5件です。認定したのはギリシャのESYD、イタリアのAccredia、スウェーデンのSwedacの3機関で、日本の法人は含まれていません。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。日本の検証機関は、域外からの申請を受け付ける7つの国家認定機関(2026年10月21日の欧州委員会の表)のいずれかに申請します。
GX-ETSの登録確認機関であることは、CBAMの検証資格になりません。JETROは2026年10月27日、日本で活動する検証機関の一部が事前検証を提供し、認定の取得を目指していると報じています。認定の状況はCBAM認定検証機関で確認できます。
検証機関は、活動量データの記録(燃料消費量、電力の請求書、原料の請求書)、排出係数の妥当性、実施規則(EU)2025/2547の算定方法の適用、モニタリング計画の網羅性を確認します。検証費用は、検証サービス各社の提示額に基づく市場推計で、施設1か所・報告期間1回当たり約5,000ユーロから5万ユーロです。金額は施設の複雑さや検証機関の所在地によって変わります。検証の流れはCBAMの検証(輸出者向け)で説明しています。
手順5:検証済みデータをEUの買い手に開示する
規則(EU)2023/956第10条第7項により、登録した事業者は、体化排出量の検証に関する情報と、支払った炭素価格の情報を認可CBAM申告者に開示できます。申告者はその情報を自らの検証義務の履行に使えます(第8条第2項)。実務では、買い手が登録簿の外でEORI番号を供給者に伝えます。買い手は自分の区画のEmissionsタブで第三国施設の登録簿を検索し、施設と排出量のデータを取り込んで、申告書に自動で反映させることができます。
1回のアップロードで、すべての買い手に対応できます。2026年8月14日のガイダンス第2号によると、登録した事業者は施設ごとに排出量データを一度だけアップロードし、検証後にその製品を輸入するすべての申告者と共有できます。申告者が見るのは排出量報告書のサマリーで、報告書の全文ではないため、工場の機密データは守られます。
JETROは2026年9月18日、日系企業のEU子会社自身が認可申告者になる場合もあると指摘しており、その場合は日本の親会社の施設データを子会社が同じ方法で取り込みます。
同じガイダンスによると、CBAM登録簿は2027年に拡張され、自社の製品を前駆体として使う他の事業者ともデータを共有できるようになります。線材を国内の製鉄所から仕入れて輸出するねじ・ボルトのメーカーのように、前駆体のデータを国内の供給者から集める日本の会社にとって重要な変更です。経済産業省も、この業界は「中小企業比率が高く、商流も複雑」としています。
実排出量で申告すれば、EUの輸入者が納付するCBAM証書は減り、そのコストも下がります。輸出者が提供するデータの全体像は、CBAMのデータ要件(輸出者向け)で説明しています。
手順6:報告期間ごとに繰り返す
CBAMの申告は暦年単位で行われます。EUの輸入者は、前年の輸入をすべて含むCBAM申告書を毎年9月30日までに提出します。2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。事業者は報告期間ごとに新しい排出量報告書を作り、検証を受けます。現地訪問は、初年度は物理的な訪問が必要ですが、2年目以降は実施規則(EU)2025/2546第3条と第4条の条件のもとでバーチャル訪問も可能です。
記録の保存期間は、申告の周期より長くなります。登録した事業者は、検証報告書の写しと算定の根拠となる記録を検証後4年間保存し(第10条第5項(c))、施設は報告期間の後少なくとも6年間、完全な記録を保存します(実施規則(EU)2025/2547付属書II第A.2項)。
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O3CIにアップロードするデータ
EU域外の生産者がO3CIにアップロードするのは、報告期間の排出量報告書とそのサマリーで、特定体化排出量は製品ごとに示します。
実施規則(EU)2025/2547付属書IVの内容を、生産者の側から分類すると次の表のとおりです。
| データの分類 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 事業者と施設の識別情報 | 事業者の名称、登録番号、住所。施設の名称、CBAM登録簿の固有識別番号、UN/LOCODE、住所、座標 | 全部門 |
| 生産工程と生産ルート | 施設のCBAMの生産工程とルート、それぞれで製造する製品 | 全部門 |
| 生産量 | 施設全体と生産工程ごとの製品と生産量 | 全部門 |
| 特定直接体化排出量 | 製品ごとの値、デフォルト値を使った割合、施設全体の直接排出量 | 全部門 |
| 特定体化無償割当 | 製品ごとの値と、使用したCBAMベンチマークの確認 | 全部門 |
| 特定間接体化排出量 | 電力消費量と適用した排出係数 | 付属書IIに記載のない製品(主にセメントと肥料) |
| 前駆体のデータ | 使用した前駆体ごとのCNコード、原産国、デフォルト値か実排出量か | 複雑な製品(鋼管、セメント、尿素など) |
| 支払った炭素価格 | 第9条に基づく炭素価格と、その書類と証拠(第10条第5項(d)) | 第9条の減額を請求する場合 |
| 検証報告書 | 認定検証機関が発行、2027年1月からCBAM登録簿で発行 | 実排出量を使う場合 |
第9条の控除に使う炭素価格のデータには、制度の名称、法的根拠、無償割当やリベートを差し引いた後にCO2換算トン当たり実際に支払った正味の価格、支払いの証拠書類が必要です。自主的なカーボンオフセット、社内炭素価格、政府のエネルギー補助金は、規則(EU)2023/956上の「実際に支払われた炭素価格」には当たりません。
日本の場合、排出量取引制度(GX-ETS)は鉄鋼やセメントにベンチマーク方式で無償割当を行っており(ICAP)、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。地球温暖化対策のための税(CO2 1トン当たり289円、環境省)についても、鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税です。
2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階で採択されていません。どの国の炭素価格もまだ認められていません。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。
キャプション:EU域外の生産者が施設単位の排出量データをO3CIにアップロードすると、EUの買い手はCBAM申告書でデフォルト値の代わりに検証済みの実排出量を使えます。
日本の輸出者が検証済みデータを提供すべき理由
検証済みデータを提供しない日本の輸出者の製品は、年々上がるマークアップ付きのデフォルト値で評価され、EUの買い手のコストが増えます。
実施規則(EU)2025/2621のマークアップは、2026年10%、2027年20%、2028年以降30%です。この上乗せは鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素に適用され、肥料のマークアップは1%です。2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。
日本の主な輸出品をデフォルト値で輸入した場合の証書数とコストは、次の表のとおりです。日本の国別表のデフォルト値(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)とColumn Bのベンチマーク(実施規則(EU)2025/2620)を使い、2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算しました。
| 製品(CNコード) | 日本のデフォルト値(tCO2e/t) | ルート | ベンチマーク(Column B) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(製品1トン当たり) | 2030年のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 熱延鋼板(7208 51 20) | 2.100 | C | 1.370 | 0.97425 | 80.20ユーロ | 166.65ユーロ |
| ボルト・ねじ(7318 15 42) | 2.800 | C | 1.364 | 1.7501 | 144.07ユーロ | 241.82ユーロ |
| アルミニウム板(7606 12 99) | 1.730 | L | 0.148 | 1.7587 | 144.78ユーロ | 178.86ユーロ |
価格は2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで一定としました。2030年の列は、マークアップ30%とCBAM係数51.5%を当てはめた数値です。2027年1月1日以降の輸入品についてはベンチマークが更新される可能性があるため、2030年の数値は目安です。
ボルト・ねじの1.7501枚は、経済産業省のガイドライン第3版(2026年3月)が示す2026年の「1.750」と一致します。日本の国別表では、鉄鋼の行は高炉・転炉法(C、F)のみで、電炉法の行はありません。スクラップを使う日本の電炉メーカーの製品も、検証済みの実排出量をO3CIなどで提供するまでは高炉材と同じデフォルト値で評価されます。国別の値はCBAM デフォルト値(輸出者向け)にまとめています。
貴社の製品とトン数に基づく推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
他国の例でも同じ構造が確認できます。トルコの国別表ではクリンカーの欄にダッシュ(値なし)が記載されているため「その他の国と地域」の値が適用され、グレークリンカーは製品1トン当たり1.410 tCO2e(2026年のマークアップ込みで1.551)です。トルコのセメント協会Türkçimentoは会員の数値として0.88を示していますが、これは業界団体の数値で、検証済みの実排出量ではありません。
トルコ産のグレーポルトランドセメントをデフォルト値で輸入する場合、2026年輸入分は製品1トン当たり76.94ユーロです。CBAM係数が51.5%になる2030年輸入分は、同じ82.32ユーロで計算すると125.87ユーロになります(現在のベンチマークによる計算で、2027年以降の輸入品についてはベンチマークが更新される可能性があります)。証書コストの計算方法と、2034年まで続く無償割当の段階的縮小は、EU CBAMガイドで説明しています。
測定と検証への投資を判断する計算は単純です。検証費用の約5,000ユーロから5万ユーロは、施設ごとに毎年かかる固定費です。一方、マークアップの回避による節約は、EUの買い手から購入価格の上乗せや取引の継続という形で還元され、輸出量に比例して大きくなります。
アラブ首長国連邦から一次アルミニウム(CNコード 7601)を年間5万トン輸出する生産者がデフォルト値に頼る場合、買い手が2026年輸入分で必要とする証書は製品1トン当たり0.670枚です(1.870 × 1.10 = 2.057から0.975 × 1.423を差し引き)。82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり55.12ユーロ、年間約276万ユーロです。未加工アルミニウムでは、デフォルト値でも実排出量でも差し引く量が同じため、2.057を下回る検証済みの1 tCO2eごとに証書が1枚減ります。
検証済みデータを提供しない生産者には、不利が積み重なります。同じ部門で検証済みデータを提供する競合他社は、EUの買い手の証書負担を下げ、陸揚げコストで優位に立ちます。日本の熱延鋼板では、82.32ユーロ一定で2026年80.20ユーロのコストが2030年には166.65ユーロになるため(現在のベンチマークによる計算で、2027年以降の輸入品についてはベンチマークが更新される可能性があります)、データ提供の価値は年ごとに増します。
CBAM事業者用ポータルとEUのCBAM制度の関係
O3CIと申告者の口座は、1つのCBAM登録簿の2つの区画です。
事業者の区画には施設と排出量のデータが、申告者の区画にはCBAM申告書とCBAM証書が置かれます。日本の事業者の作業はO3CIで完結し、証書の購入、保有、納付はすべてEU側で行われます。
CBAM事業者用ポータルとCBAM登録簿はどう違いますか
事業者用ポータルは登録簿の一部で、別のシステムではありません。欧州委員会がO3CIと呼ぶこのポータルは、第三国の施設の事業者と認定検証機関のためのCBAM登録簿の区画です(規則(EU)2023/956第14条第3項)。認可CBAM申告者は同じ登録簿の別の区画で申告書を提出し、CBAM証書を保有して納付します。
事業者は証書の口座を持ちません。第10条第7項に基づいて開示された検証済みのデータは、EUの輸入者が保有・納付する証書数を算定する際の体化排出量の数値として使われます。申告者側の詳細はCBAM登録簿(英語)で説明しています。
日本の生産者はCBAM事業者用ポータルへの登録が義務ですか
義務ではありません。第10条第1項は、欧州委員会が「upon request」(申請に基づき、当サイト仮訳)登録を行うと定めています。ガイダンス第2号も、登録を「recommended, but currently voluntary」(推奨されるが現在は任意、当サイト仮訳)としています。JETROも2026年9月18日、欧州委員会が域外の生産者に登録を推奨していると伝えています。
法的な義務を負うのはEUの輸入者、つまり認可CBAM申告者で、日本の生産者にCBAMの義務はありません。登録しない事業者も、同じ様式で排出量報告書と検証報告書を買い手ごとに自ら送れば、実排出量を提供できます(実施規則(EU)2025/2547第10条第3項)。検証済みのデータを提供しない生産者のEUの買い手は、デフォルト値を使います。
第三者検証なしでCBAM事業者用ポータルを使えますか
使えません。EUで認定された検証機関の検証を受けていないデータは、実排出量として認められません。規則(EU)2023/956第8条第1項は第18条に基づく認定を受けた検証機関による検証を求め、第10条第5項(b)は登録した事業者にも同じ義務を課しています。検証がなければ、EUの輸入者はデフォルト値を使います。検証機関のCBAM登録簿への登録は、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)が追加した第10a条に基づき、2026年9月1日に始まりました。
1回の登録で複数のEUの買い手に対応できますか
対応できます。欧州委員会のガイダンス第2号によると、登録した事業者は施設ごとに排出量データを一度だけアップロードし、検証後にその製品を輸入するすべての申告者と共有できます。買い手はそれぞれEORI番号を事業者に伝え、自分の区画でデータを取り込みます。測定、検証、アップロードは報告期間ごとに1回で済み、すべてのEUの買い手がその恩恵を受けます。輸出者向けの資料はCBAM 輸出者ガイドにまとめています。
日本の商社はCBAM事業者用ポータルに登録できますか
商社は、施設を運営または管理していない限り、O3CIの事業者に当たりません。事業者は第三国で施設を運営または管理する者と定義されており(第3条第31号)、登録の単位も生産施設です。商社を通じてEUに輸出する場合、施設のデータを登録し検証を受けるのは製造元の事業者(または施設を管理する親会社)で、商社はEUの買い手のEORI番号を製造元に伝えるなど、データの受け渡しを調整する立場になります。
CBAM事業者用ポータルについて日本で相談できる窓口はありますか
O3CIの手引きは英語版のみで、欧州委員会が公表している日本語の公式文書は、移行期間の施設事業者向けガイダンスの和訳だけです。日本語では、経済産業省の「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)とJETROの貿易投資相談、算定実務マニュアル(2026年3月)が利用できます。
2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は確認できません。日本の状況はCBAMと日本と日本のCBAMコンサルタントにまとめています。算定、検証、登録の支援事業者の紹介は、CBAMの相談窓口から無料で依頼できます。