EU域外の輸出者のためのCBAM対応:日本企業がEU向け輸出を守るために知っておくべきこと

EU CBAMの義務を負うのはEUの輸入者ですが、検証済みの排出量データがなければ日本の輸出品はデフォルト値とマークアップで不利になります。

このページの内容

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の法的義務を負うのはEUの輸入者ですが、日本の輸出者にとっても取引条件を左右する商業上の問題です。EUの買い手は、輸入品の体化排出量に応じてCBAM証書を購入し、納付します。証書の価格はEU排出量取引制度(EU ETS)に連動し、2026年第3四半期の公式価格は1 CO2換算トン当たり82.32ユーロです(2026年10月5日公表)。

輸出者が検証済みの排出量データを提供できなければ、EUの買い手はデフォルト値を使います。デフォルト値には2026年に10%、2027年に20%、2028年以降は30%のマークアップが加わります(肥料は毎年1%)。この追加コストは、値下げ要求、供給者の切り替え、契約の打ち切りという形で、最終的に輸出者に跳ね返ってきます。

根拠法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロで、その約86%が鉄鋼です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で輸入すると、2026年のコストは製品1トン当たり80.20ユーロです。

日本の輸出者がとれる対応は5つあります。検証済みの実排出量データの提供、脱炭素投資、第9条の炭素価格控除の活用、デフォルト値の受け入れ、CBAMのない市場への振り替えです。本ページでは、EUの買い手が求めるデータ、事業者用ポータル(O3CI)、製品別のコスト、日本の炭素価格の扱い、国別の影響を順に説明します。

キャプション:EU CBAMの証書の義務はEUの輸入者にありますが、コストの圧力は価格交渉を通じてEU域外の輸出者に戻ってきます。


EU CBAMは日本の輸出者にどう影響しますか

EU CBAMは日本の輸出者に直接の法的義務を課しませんが、検証済みの体化排出量データを提供できない輸出者は、提供できる競合に対して価格競争力を失います。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。対象は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6部門です。EUの輸入者は、体化排出量から無償割当調整を差し引いた分のCBAM証書を納付します。

2026年の輸入には、EU ETSの排出枠のオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。公式価格は2026年第1四半期が75.36ユーロ、第2四半期が75.28ユーロ、第3四半期が82.32ユーロです。週次価格が適用されるのは2027年の輸入からです(第21条第1項)。

EUの買い手が貴社施設の検証済みの特定体化排出量を入手していれば、その実際の値で証書数を計算します。入手していなければ、実施規則(EU)2025/2621に定めるデフォルト値を使わなければなりません。日本の生産者にCBAM上の義務はありませんが、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に施設を登録し、検証済みのデータをEUの買い手に提供できます。

デフォルト値は中立的な推計ではありません。国別の値にマークアップを加えたもので、これより低い排出量を報告する生産者は少なくありません。たとえば中国産スラブ(CNコード 7207 12 10)のデフォルト値は製品1トン当たり3.169 tCO2e(CO2換算トン)で、2026年のマークアップ10%を加えると3.4859になります。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)では、2.100が2.310になります。

施設の検証済み排出量がマークアップ後のデフォルト値を下回れば、その差は証書コストの差となり、EUの買い手はそれを契約価格に織り込みます。証書価格の決まり方から規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)による申告期限の変更まで、制度の全体像はEU CBAMの解説で説明しています。


日本からEUへのCBAM対象製品の輸出規模はどれくらいですか

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品は14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、EU域外からの輸入に占める割合は金額ベースで1.30%、数量ベースで0.72%です。

日本は金額ベースで第22位、数量ベースで第24位の供給国です(Eurostat Comext、2025年)。2023年の24億4,810万ユーロ、190万4,514トンから、金額で41%、数量で55%減りました。部門別の内訳は次の表のとおりです。

部門 2023年の金額(百万ユーロ) 2025年の金額(百万ユーロ) 2025年の数量(トン) EU域外輸入に占める割合(金額/数量) 日本の順位(金額/数量)
鉄鋼(鉄鉱石を除く第72類・第73類) 2,217.9 1,245.9 809,223 2.04%/1.40% 13位/16位
うち第72類の完成品 1,776.5 808.1 748,767 3.19%/2.37% 10位/11位
うち第73類の製品 434.0 425.8 51,354 1.58%/0.51% 11位/18位
うち粗鋼と半製品 1.7 7.3 6,221 0.13%/0.06% 19位/20位
うち銑鉄・合金鉄・直接還元鉄 5.6 4.7 2,881 0.15%/0.05% 28位/30位
アルミニウム 219.2 195.0 42,260 0.64%/0.46% 23位/29位
うち地金(7601) 0.8 2.1 122 0.01%/0.00% 43位/49位
うちアルミ製品 218.4 192.8 42,139 1.39%/1.50% 14位/13位
セメント 6.6 4.8 5,701 0.45%/0.04% 19位/23位
肥料 4.4 2.5 1,431 0.03%/0.01% 35位/35位
水素(金額のみ) 0.003 0 非掲載 0%(金額) なし
電力 0 0 0 MWh 0% なし
合計 2,448.1 1,448.2 858,614 1.30%/0.72% 22位/24位

出典:ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、EU27の日本からのCBAM対象製品(付属書Iのコード)の輸入、2023年から2025年(2026年10月12日抽出)。日本からの鉄鉱石の輸入は2023年に13ユーロ、2025年はゼロです。水素は出典の2025年の数量に誤りがあるため、金額のみを示します(2023年は3,000ユーロ、2025年はゼロ)。順位はEU域外の供給国の中での順位です。

鉄鋼は2025年の金額の約86%、アルミニウムは約13.5%を占め、セメント、肥料、水素、電力はごくわずかです。日本は金額ベースで、電磁鋼板を含む合金鋼板(CNコード 7225)で第4位、幅の狭いステンレス鋼板(7220)と合金鋼線(7229)で第3位の供給国です(Eurostat Comext、2025年)。いずれもトン当たりの単価が高い製品です。

熱延鋼板(CNコード 7208)の数量は、2023年から2025年にかけて74%減少しました。要因の一つと考えられるのは、EUが2025年9月26日に日本産を含む熱延鋼板に課した6.9%から30%の確定反ダンピング関税です(欧州委員会通商総局)。ただし、統計だけでは因果関係を証明できません。また、反ダンピング関税はCBAMのコストではありません。品目別の詳細は日本の鉄鋼輸出とEU CBAMで解説しています。


EUの輸入者が日本の輸出者に求めるデータは何ですか

EUの輸入者が必要とするのは事業者の排出量報告書のサマリーで、実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項に定める16項目から成ります。

16項目は、施設の識別情報、生産ルート、特定体化排出量、算定に含まれる場合の間接排出量、前駆体に関するものです。2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で、英語により提供します(同実施規則第10条第4項)。移行期間中に使われていた任意様式のコミュニケーションテンプレートは、この構成に置き換えられました。第9条の控除に使う炭素価格の書類は、別ファイルで用意します。

欧州委員会は2026年8月14日、本格実施期間に向けた10件のガイダンス文書を公表しました。ガイダンス第2号はEU域外の事業者向けのクイックガイド、第3号は体化排出量の算定方法を扱い、5aから5fの6件は部門別のモニタリングと算定の手引きです。いずれも2026年の報告年に事業者がEUの輸入者へ渡すデータを対象としています。一覧は10件のCBAMガイダンス文書に関するニュース(英語)で確認できます。

施設の識別情報

EUの輸入者は、輸出元の会社名ではなく、CBAM対象製品を生産した施設を特定して申告します。EUの買い手が日本の輸出者に求める施設の識別情報は、次の5項目です。

  • 生産会社の正式名称と施設の所在地
  • 施設のUN/LOCODE(国際的な標準地点コード)
  • 小数点以下6桁の地理座標(緯度と経度)
  • CBAM登録簿に登録済みの施設の場合は、その固有の施設識別番号
  • 施設のCBAMデータに関する問い合わせ担当者

特定体化排出量

特定体化排出量は、生産した製品1トン当たりのCO2換算トン数で、EUの方法に従い施設単位で算定します。実施規則(EU)2025/2547付属書II第B.2項は、直接排出量のモニタリング方法として、計算に基づく方法と測定に基づく方法の2つを定めています。

計算に基づく方法は活動量データと計算係数を使い、標準法(第B.3.1項)またはマスバランス法(第B.3.2項)で算定します。マスバランス法は、投入される炭素から製品とともに出ていく炭素を差し引く方法です。測定に基づく方法(第B.6項)では、温室効果ガスの濃度と排ガスの流量を連続測定します。

事業者は、最も正確で信頼性の高い結果が得られる方法を選びます。施設内の部分ごとに異なる方法を組み合わせることもでき、N2Oには測定に基づく方法が必須です。移行期間中は2024年末まで他のモニタリング制度の規則も認められていましたが、本格実施期間では認められません。日本のGX-ETSなど国内制度のために集めたデータも、そのままではEUの方法による算定の代わりになりません。

算定に含める排出量の範囲は部門によって異なります。EUの買い手が部門ごとに必要とする範囲は、次の表のとおりです。

部門 直接排出量 間接排出量 対象となる温室効果ガス
鉄鋼 必要 不要(凝結させた鉄鉱石、CNコード 2601 12 00を除く) CO2
セメント 必要 必要 CO2
アルミニウム 必要 不要 CO2とPFC(CF4、C2F6)
肥料 必要 必要 CO2とN2O
電力 必要 該当なし CO2
水素 必要 不要 CO2

セメント、肥料、凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)の生産者は、生産で消費した電力による間接排出量も提供します。このため、製品1トン当たりの電力消費量の開示が必要です。排出係数には、実施規則(EU)2025/2621付属書IIに定める国別の系統電力の係数を使います。ただし、発電施設と直接の技術的接続がある場合や電力購入契約(PPA)がある場合は例外です(規則(EU)2023/956付属書IV第6項)。

炭素価格の書類(第9条の控除のため)

自国の炭素価格制度で、輸出品の体化排出量について炭素価格を支払った場合、EUの買い手は第9条に基づき納付する証書数の減額を請求できます。輸出者が用意するのは、CO2換算トン当たりの支払額(無償割当、リベート、国による補償を差し引いた後)、制度の名称と法的根拠、請求書、登録簿の記録、課税通知などの支払いの証拠です。第9条の実施規則は2026年11月4日時点で案の段階(未採択)であり、日本を含め、どの国の炭素価格も認められていません。

自主的なカーボンオフセット、社内炭素価格、政府のエネルギー補助金は対象になりません。規則(EU)2023/956第3条第29号は、炭素価格を、第三国で炭素排出量削減計画に基づき税金、負担金、料金または排出枠として支払われる金額と定義しています。第9条で考慮されるのは、それが実際に支払われた場合に限られます。J-クレジットやGXリーグの自主的なクレジットも、炭素価格の支払いには当たりません。

前駆体の排出量データ

複雑な製品(他のCBAM対象製品を原料として生産する製品)を輸出する場合は、前駆体ごとの体化排出量を分けて報告します。ポルトランドセメントの生産者は使用したクリンカーの体化排出量を、尿素の生産者は上流のアンモニアの体化排出量を提供します。前駆体が別の施設で作られた場合は、その施設のデータを入手して検証を受けたうえで、EUの輸入者に渡す必要があります。

日本では、購入した鋼材からねじやボルトを製造する中小の部品メーカーにとって、前駆体データの入手が課題になります。経済産業省は、業界の中小企業比率が高く商流も複雑なことから、「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)を作成しました。部門ごとの算定方法はCBAMの体化排出量で、提供データの全項目は輸出者のデータ要件で説明しています。


事業者用ポータル(O3CI)とは何ですか

CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI、Operators of Third Country Installations)は、EU域外の施設事業者が排出量データを一度アップロードして検証を受け、EUの買い手と共有するための機能です。

ポータルでできること

日本の輸出者にとって、事業者用ポータル(O3CI)には次の3つの役割があります。

  1. 施設単位の排出量データを保存します。 データの形式は、CBAM申告書に必要な項目と対応しています。
  2. 検証済みのデータを、貴社の製品を輸入する認可CBAM申告者に開示します(規則(EU)2023/956第10条第7項)。 各買い手は貴社にEORI番号を伝え、自社の登録簿モジュールでデータを受け取ります。
  3. 本格実施期間の報告構成に対応しています。 任意様式のコミュニケーションテンプレートは3文書から成る義務的な構成に置き換えられ、実排出量で報告する事業者は排出量報告書とそのサマリー(実施規則(EU)2025/2547付属書IV)を英語で作成します。

施設のデータは、一度アップロードすればEUのすべての輸入者との取引に使えます。検証機関が同じ登録簿上で内容を確認して検証報告書を発行し、そのデータを、施設から輸入するEUのすべての買い手と共有できます。出荷ごと、買い手ごとにデータを送るより効率的です。

ポータルでできないこと

事業者用ポータル(O3CI)は、第三者検証の代わりにはなりません。EUの輸入者がデフォルト値ではなく実際の特定体化排出量として受け入れるには、ポータルのデータも認定検証機関の検証を受ける必要があります。施設が初めて検証を受ける年には現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条から第4条)。検証機関は施設を訪れて生産工程と計測機器を確認し、データ記録のサンプルを抽出して調べたうえで検証報告書を発行します。

CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関(NAB)だけで、委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らして認定します。日本、インド、中国、トルコ、韓国の認定機関はCBAM検証機関を認定できません。これらの国の検証機関は、域外からの申請を受け付ける7つの国家認定機関(フランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、スロバキア、スウェーデン。2026年10月21日付の欧州委員会の一覧表による)のいずれかに申請します。

2026年10月13日時点で、国家認定機関の登録簿で確認できる認定は5件あり、いずれもEUに設立された法人です。EmiCert S.A.(ギリシャのESYD)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccredia)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedac)です。日本の法人は含まれていません。また、2026年10月23日時点で欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。

JETROは2026年10月27日、日本で活動する検証機関の一部が事前検証を提供し、認定の取得を目指していると報じています。GX-ETSの登録確認機関やGXリーグの登録検証機関であっても、CBAMの検証を行う資格にはなりません。施設の登録から報告書の作成、検証機関の選び方までは事業者用ポータル(O3CI)のガイドで説明しています。


検証済みデータを提供すると、どれだけのコスト差が生まれますか

デフォルト値を使う製品は2026年からベンチマークを上回る排出量の全額が証書の対象になるため、検証済みデータを提供する経済的なメリットは初年度からあり、マークアップの上昇と無償割当の縮小に伴って大きくなります。

2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。必要な証書数は、体化排出量から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引いて求めます。無償割当調整は製品1トン当たりの固定量なので、ベンチマークを上回る排出量は、デフォルト値のマークアップ分も含めて全額が証書の対象になります。

コストの規模を、中国産スラブ(CNコード 7207 12 10)をデフォルト値で輸入する例で示します。デフォルト値3.169は、マークアップ10%で3.4859になります。ここからベンチマーク1.364の97.5%を差し引くと製品1トン当たり2.156枚の証書が残り、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり177.48ユーロになります。

同じスラブの2030年輸入分は、価格を82.32ユーロで一定とすると製品1トン当たり281.31ユーロです。これはマークアップ30%とCBAM係数51.5%を当てはめ、現行のベンチマークで計算した数値です。ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される可能性があります(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)。検証済みデータを出せない輸出者は、出せる競合に対して価格面で不利になり、負担が増えるほどEUの買い手は供給者の切り替えを急ぎます。

代表的な4製品について、2026年にデフォルト値を使った場合のコストを次の表に示します。

製品 原産国 付属書Iのデフォルト値(tCO2e/t) 2026年のマークアップ後 2026年のコスト(デフォルト値)
スラブ(CNコード 7207 12 10) 中国 3.169 3.4859 製品1トン当たり177.48ユーロ
グレークリンカー(CNコード 2523 10 00) トルコ 1.410 1.551 製品1トン当たり74.22ユーロ
無水アンモニア(CNコード 2814 10 00) エジプト 2.050 2.0705 製品1トン当たり48.28ユーロ
一次アルミニウム地金(CNコード 7601) アラブ首長国連邦 1.870 2.057 製品1トン当たり55.12ユーロ

デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)、2026年のマークアップ10%(肥料は1%)。コスト:Column Bのベンチマーク1.364、0.666、1.522、1.423(実施規則(EU)2025/2620)、CBAM係数97.5%、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロ。トルコのクリンカーは表の値がダッシュ(記載なし)のため、「その他の国と地域」の値を適用しています。検証済みデータによる削減額は、施設自身の検証済み排出量と、実排出量の場合の計算(Column Aのベンチマークに前駆体の無償割当を加えて差し引く方法)によって決まります。

トルコのセメント輸出者の場合、グレーポルトランドセメントのデフォルト値でのコストは、2026年輸入分で製品1トン当たり76.94ユーロ、2030年輸入分で125.87ユーロです(価格は82.32ユーロで一定とし、現行のベンチマークで計算しています。ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される可能性があります)。デフォルト値を受け入れるのは中立的な選択ではなく、価格面でEUの顧客を手放す判断になりかねません。

日本の主要製品のコスト(2026年と2030年)

日本のデフォルト値で計算すると、2026年のコストは熱延鋼板で製品1トン当たり80.20ユーロ、ボルト・ねじで144.07ユーロ、アルミ板で144.78ユーロです。

熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)の計算は、デフォルト値2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。同じ方法で日本の主要製品を計算した結果を次の表に示します。

製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年のマークアップ後 ベンチマーク(Column B、ルート) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 2030年のコスト(製品1トン当たり)
熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 2.310 1.370(C) 0.97425 80.20ユーロ 166.65ユーロ
無方向性電磁鋼板(7225 19 90) 3.530 3.883 1.488(C) 2.4322 200.22ユーロ 314.68ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 2.800 3.080 1.364(C) 1.7501 144.07ユーロ 241.82ユーロ
アルミ地金(7601) 0.360 0.396 0.091(L) 0.307275 25.29ユーロ 34.67ユーロ
アルミ板・シート・ストリップ(7606 12 99) 1.730 1.903 0.148(L) 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ

デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の日本の表の「総排出量」。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項、日本の行に記載されたルート(Cは高炉・転炉法、Lは二次アルミニウム)。2030年の数値は、マークアップ30%、CBAM係数51.5%、価格82.32ユーロ一定で計算した目安です(ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される可能性があります)。計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。

アルミ板(CNコード 7606)には注意が必要です。日本の行は二次ルート(L)に分類され、ベンチマークが0.148と小さいため、差し引ける量がわずかです。ボルト・ねじの1.7501枚は、経済産業省のガイドライン第3版(2026年3月)付属書IVの2026年の数値1.750と一致します。同ガイドラインの円建て額(2026年に製品1トン当たり29,139円)は、EU ETS価格90ユーロ、1ユーロ185円という経済産業省の前提に基づきます。

貴社の製品とトン数での推計は、CBAMコスト計算ツール(英語)で確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。国別、製品別のデフォルト値の仕組みはCBAMデフォルト値(輸出者向け)で説明しています。

キャプション:実施規則(EU)2025/2621のマークアップは2026年10%、2027年20%、2028年以降30%です。2030年に向けて、検証済みの実排出量データを提供する必要性が高まります。


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日本の輸出者がとれる5つの対応策

日本の輸出者がEU CBAMに対してとれる対応は5つあり、それぞれコスト、期間、商業上のリスクが異なります。

対応1:検証済みの実排出量データを提供する。 実排出量が公表されたデフォルト値を下回る輸出者にとって、短期的に最も重要な対応です。検証サービス各社は施設1か所、報告期間1回当たり5,000ユーロから5万ユーロの費用を提示しています。費用は施設の複雑さと検証機関の所在地によって変わります(市場推計)。

検証済みデータがあればマークアップ分のコストを避けられ、EUの買い手の信頼も得られるため、効果はすぐに表れます。一方で、連続モニタリングの導入またはデータ収集手順の強化、担当者の教育、検証機関との継続的な関係づくりが必要になります。

対応2:脱炭素に投資する。 製品の体化排出量の原単位を下げることは、表面的な対処ではなく、CBAMコストの根本原因への対応です。高炉から電炉への転換、セメントでの混合材比率の引き上げ、アルミ製錬でのアノード効果とPFC排出の削減(アルミニウムは直接排出量のみが対象)は、いずれもCBAMの負担を構造的に減らします。長期的な投資が必要ですが、2034年に向けてCBAMのコストが上がるほど、持続的な競争優位につながります。詳しくは輸出者の脱炭素をご覧ください。

対応3:第9条の炭素価格控除を活用する。 生産者が自国で炭素価格を実際に支払っていれば、EUの買い手は第9条に基づき納付する証書数の減額を請求できます。日本では、地球温暖化対策のための税と、2026年度(2026年4月から2027年3月)に義務化された排出量取引制度(GX-ETS)が候補になりますが、2026年11月4日時点でいずれも認められていません(詳しくは後述します)。

韓国のK-ETSは2015年から運用され、2023年に国内排出量の77.75%を対象としていました(ICAP)。ただしICAPによれば、鉄鋼はフェーズ4(2026年から2030年)でも100%無償割当で、実際に支払われる価格は限られます。

南アフリカの炭素税は2019年6月1日から適用され、2026年1月1日からの基本税率はCO2換算トン当たり308ランド(2026年10月9日のECB参照レートで約16.62ユーロ、南アフリカ財務省の2026年予算書)で、各種の非課税枠を合わせると最大95%に達します。実際に支払われる炭素価格ではありますが、2026年11月4日時点で、これも第9条では認められていません。

欧州委員会は2026年5月13日、第三国で支払われた炭素価格の控除に関する実施規則案を公表し、排出量取引制度、排出源への炭素税、燃料への炭素税、混合型の4つの認定経路を示しました。意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で未採択です。炭素価格制度のある国の輸出者にとって、実施規則の採択後に認定を求めることが、EUの買い手のCBAM負担を下げる方法になります。

対応4:デフォルト値を受け入れ、取引上の影響を引き受ける。 マークアップ分とベンチマークを上回る排出量の全額が証書の対象になるため、初年度から最も費用のかかる選択です。排出量がデフォルト値と同じかそれ以上の輸出者や、EUへの輸出量が少なく検証費用に見合わない輸出者に限って合理的な選択といえます。2028年以降はマークアップ30%とCBAM係数の低下が重なり、EUに大量に輸出する多くの輸出者にとって維持できない選択になります。

対応5:CBAMのない市場に輸出先を振り替える。 ただし、英国は振り替え先として限界があります。英国CBAMは5部門を対象とする別の税制度で、2027年1月1日に始まります。英国が2026年10月16日に公表した鉄鋼の試算税率はCO2換算トン当たり9.69ポンドで、納税義務は生じない参考値です。

カナダは2026年10月12日時点で国境炭素調整を制定していません。2021年8月5日に始まったカナダ財務省の意見募集は終了してアーカイブされ、2025年11月4日の2025年予算にも記載がありません。米国では、2025年外国汚染料法(Foreign Pollution Fee Act of 2025、S.1325)が2025年4月8日に提出されて以来、上院財政委員会に付託されたままです(Congress.gov、2026年10月12日確認)。

振り替えは、排出原単位が高く短期間で削減できない輸出者にとって一時的な回避策にはなりますが、CBAM対象の輸出の大半にとって持続的な戦略とはいえません。対応策の比較は輸出者のCBAM戦略にまとめています。


日本の炭素価格はCBAMの第9条で控除されますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

控除の対象は実際に支払われた炭素価格に限られ、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。日本の主な炭素価格制度と第9条との関係は、次の表のとおりです(各制度の出典は表内に記載、2026年11月4日確認)。

制度 対象と価格 開始・状況 CBAMとの関係
地球温暖化対策のための税(温対税) 化石燃料全般、CO2 1トン当たり289円(環境省) 2012年10月1日から段階導入、2016年4月1日に最終税率 鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税(経済産業省の令和9年度税制改正要望)。高炉とセメントの排出の大部分を占める石炭には課されていません
排出量取引制度(GX-ETS) 直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者(経済産業省) 2026年度から義務化 鉄鋼とセメントにはベンチマーク方式で無償割当(ICAP)。無償割当分は実際に支払われた価格になりません
化石燃料賦課金 化石燃料の輸入者などにCO2量に応じて課金(JETRO) 2028年度から、未施行 2026年と2027年の輸入について控除を主張する余地はありません
東京都・埼玉県の排出量取引制度 主に大規模な建物と事業所(ICAP、埼玉県) 東京都2010年、埼玉県2011年 CBAM対象製品にはほとんど関係しません

まだ答えの出ていない論点は、次の4つです。

  • 欧州委員会がGX-ETSを「実際に支払われた」炭素価格として扱うか、無償割当分と上限価格での支払いをどう評価するか(JETROも2026年9月18日の記事で同じ論点を挙げています)
  • 日本の年度(4月から3月)を、CBAMの暦年にどう対応させるか
  • 上流で課され燃料価格に転嫁される温対税や化石燃料賦課金が、施設の事業者が支払ったものとみなされるか
  • GX-ETSで2026年度の排出分に排出枠を充てる期限、つまり2026年度の炭素コストが実際に支払われる時期

デフォルト値で申告する場合、2027年から欧州委員会が国ごとに定めることのできる年次のデフォルト炭素価格を参照してのみ控除を請求できます(第9条第4項)。日本についてはまだ定められていません。証拠書類は、申告者からも第三国の当局からも独立した者の認証を受ける必要があります(第9条第2項)。書類は、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第9条第3項)。

英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せました。英国CBAMは別の税制度で、無償割当分は軽減の対象外です。EU CBAMの扱いとは別の判断であり、そこからEUでの控除を推測することはできません。控除の要件はCBAMの炭素価格控除で説明しています。


CBAMの影響が大きい国はどこですか

EU CBAMの影響の大きさは、対EU輸出量、部門の排出原単位、実際に支払われる炭素価格の有無によって国ごとに異なります。

日本:鉄鋼が中心、デフォルト値は主要競合国より低い水準

日本はEU域外からのCBAM対象製品の供給国として、金額ベースで第22位です。トルコ、中国、インドに比べ輸出規模は小さく、その約86%を鉄鋼が占めます(Eurostat Comext、2025年)。熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)の日本のデフォルト値2.100は、韓国の2.118、トルコの2.428、中国の3.187、インドの4.280より低く、米国の1.400より高い水準です。

原産国 熱延鋼板のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト 2030年のコスト
米国 1.400 0.20425 16.81ユーロ 91.74ユーロ
日本 2.100 0.97425 80.20ユーロ 166.65ユーロ
韓国 2.118 0.99405 81.83ユーロ 168.58ユーロ
トルコ 2.428 1.33505 109.90ユーロ 201.75ユーロ
中国 3.187 2.16995 178.63ユーロ 282.98ユーロ
インド 4.280 3.37225 277.60ユーロ 399.95ユーロ

CNコード 7208 51 20、デフォルト値、2026年第3四半期の価格82.32ユーロ(2030年も一定)、実施規則(EU)2025/2621および2025/2620、2026年11月4日計算。2030年の数値はベンチマークの更新により変わる可能性があります。

注意したいのは、日本の表の鉄鋼の行に電炉法(ルートD、E)が1つもない点です。デフォルト値を使う限り、スクラップを使う日本の電炉メーカーの製品も高炉・転炉法のベンチマークで評価されます(実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項)。日本の炭素価格制度と政府の情報はCBAMと日本にまとめています。

トルコ:商業上の影響が最も大きい国

EUは2025年、トルコからCBAM対象製品(付属書Iのコード)を108億3,000万ユーロ輸入しました。金額では中国に次ぐ第2位、数量では電力を除き1,481万トンで全供給国の中で最大です(Eurostat Comext、2025年)。トルコはEUのセメントとクリンカーの輸入で数量ベースで43.0%を占める最大の供給国で、CBAM対象の鉄鋼でも743万トンで第2位です。

トルコは2025年7月9日に初の気候法(第7552号)を制定し、トルコ排出量取引制度規則は2026年8月27日に施行されました。2026年から2027年の試行期間は排出枠の100%を無償で割り当てるため、実際に支払われる炭素価格はなく、第9条の減額も生じません。

トルコのグレークリンカーとグレーポルトランドセメントは表の値がダッシュ(記載なし)のため、「その他の国と地域」のデフォルト値1.410と1.440が適用され、2026年のマークアップ後は1.551と1.584です。トルコのセメント協会Türkçimentoはグレークリンカー1トン当たり0.88 tCO2を報告しています。ただし、これは業界団体の数値で、検証済みの実排出量でもデフォルト値でもないため、ここでは計算に使いません。デフォルト値でのグレークリンカーのコストは、2026年輸入分で製品1トン当たり74.22ユーロです。

インド:鉄鋼が中心、認められた炭素価格はなし

EU域外からのCBAM対象製品の輸入のうち、2025年にインドが占めた割合は金額ベースで4.8%(53億ユーロ)でした。2023年の68億7,000万ユーロから減っています(Eurostat Comext、2025年)。2025年の数値のうち第72類と第73類の鉄鋼は43億9,000万ユーロ、401万トンで、2024年の460万トンから減りました。

インドの炭素クレジット取引制度(CCTS)は、原単位に基づくベースライン・アンド・クレジット型の制度です。ICAPによれば、目標が確定したのはアルミニウムとセメントを含む7部門で、鉄鋼の目標は2026年2月時点で告示されていません。2026年11月4日時点で、この制度は第9条で認められておらず、Tata Steel、JSW Steel、SAILなどのインドの鉄鋼メーカーは、検証体制の整備と排出原単位の削減を迫られています。

中国:金額ベースで最大の影響

EU域外からのCBAM対象製品の輸入のうち、2025年に中国が占めた割合は金額ベースで15.4%(170億9,000万ユーロ)、数量ベースで9.5%でした(Eurostat Comext、2025年)。その中心は鉄鋼(134億5,000万ユーロ)とアルミニウム(32億5,000万ユーロ)です。

中国は2025年3月、全国排出量取引制度の対象を鉄鋼、セメント、アルミニウムに広げ、約30億トンのCO2と約1,500の事業者を加えました。排出枠は生産量に基づく方法で100%無償割当され、2025年の二次市場の平均価格は70.78元(9.85米ドル)でした(ICAP)。実際に支払われる炭素価格はほとんどなく、2026年11月4日時点で第9条でも認められていません。中国産スラブのデフォルト値3.169は、実排出量がこれを下回る中国の生産者にとって、検証済みデータを提供する強い動機になります。

韓国:炭素価格はあるものの、第9条では未承認

韓国のK-ETSは2015年から運用され、2023年に国内排出量の77.75%を対象とし(ICAP)、2026年にフェーズ4(2026年から2030年)に入りました。2025年の二次市場の平均価格は9,393ウォン(6.60米ドル)でした(ICAP)。ただし、鉄鋼などカーボンリーケージ(炭素漏出)のおそれがある部門はフェーズ4でも100%無償割当のため、実際に支払われる価格は市場価格を大きく下回ることがあります。

2026年11月4日時点で、第9条で認められた国の炭素価格はありません。POSCOや現代製鉄(Hyundai Steel)などの生産者が減額を受けられるかは、実施規則の内容と、実際に支払った価格によって決まります。

キャプション:主要な輸出国のCBAMの影響を、対EU輸出量と、認められた炭素価格制度の有無で比較した図です。


EUの輸入者の義務と、日本の輸出者の対応はどうつながりますか

日本の輸出者の対応は、EUの輸入者が負う一連の義務(認可の取得から年次のCBAM申告、CBAM証書の納付まで)と直結しています。

EUの輸入者は貴社のデータをどう使いますか

EUの輸入者は、受け取った検証済みデータで証書の必要数を計算します。製品1トン当たりの特定体化排出量から、無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)と第9条の減額を差し引き、輸入トン数と公式の証書価格を掛けて金額を求めます。データがなければ、輸入者はデフォルト値とマークアップを使い、その追加コストを貴社との契約価格の交渉に持ち込みます。

EUの輸入者が守るべき期限

2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します。

2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となり、報告義務を負う場合もあると指摘しています。輸入者側の手続きはEUの輸入者向けCBAMガイド(英語)で解説しています。


CBAMと輸出者に関するよくある質問

日本の輸出者にEU CBAMの法的義務はありますか

ありません。日本の輸出者には、規則(EU)2023/956に基づく直接の法的義務はありません。金銭と報告の義務を負うのは、EUに設立された認可CBAM申告者、つまり輸入者(またはその間接的通関代理人)です。ただし、検証済みの体化排出量データを提供できない輸出者は、EUの買い手のCBAMコストを押し上げることになり、買い手はそのコストを、購入価格の引き下げやデータを提供できる供給者への切り替えという形で輸出者に跳ね返します。

輸出者が排出量データを提供しないとどうなりますか

EUの輸入者は、欧州委員会のデフォルト値にマークアップを加えて使います。マークアップは鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素で2026年10%、2027年20%、2028年以降30%、肥料は毎年1%です。排出量の多い部門の多くの生産者では実排出量がデフォルト値を下回るため、デフォルト値で計算した負担は実際のCBAMの負担より大きくなり、EUの輸入者に余分なコストが生じます。そのコストが、データ提供か値下げを求める圧力となって輸出者に向かいます。

日本で支払った炭素価格の控除を輸出者が請求できますか

輸出者自身は請求できませんが、EUの買い手による第9条の請求を書類で支援できます。買い手が減額を請求できるのは、生産国で実際に支払われた炭素価格について、無償割当、リベートなどの補償を差し引いた分だけで、書類は独立した者の認証が必要です。自主的なカーボンオフセットや社内炭素価格は対象外です。

2026年11月4日時点で第9条の実施規則は案の段階で、日本のGX-ETSと温対税、韓国のK-ETS、中国の全国排出量取引制度、インドのCCTS、南アフリカの炭素税を含め、どの国の炭素価格も認められていません。

事業者用ポータル(O3CI)の利用は義務ですか

義務ではありません。CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)の利用は、EU域外の施設事業者にとって任意です。排出量報告書と検証報告書を、記録の残る別の方法でEUの輸入者に直接渡すこともできます。ただしポータルを使えば、1回の提出ですべてのEUの買い手との取引に対応でき、複数の輸入者からのデータ依頼に応じる事務負担が減ります。

日本の輸出者に関係するCBAMの対象部門はどれですか

規則(EU)2023/956付属書Iの対象は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料(アンモニア、硝酸、尿素、混合肥料など)、電力、水素の6部門です。各部門で対象になるのは、特定のCNコード(EUの関税分類コード)に分類される製品だけで、付属書Iにコードがない川下の鉄鋼製品、アルミ加工品、有機肥料は対象外です。

電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。日本の輸出者の取引先が小口の輸入者であれば、この基準に該当する場合があります。

川下製品への対象拡大は欧州委員会提案(COM(2025)989、法律ではありません)で、適用開始を2028年1月1日としています。対象品目数は欧州委員会案が約180、理事会案が約200、欧州議会案が約457(推計)です。JETROは2026年9月18日、電力中央研究所の分析として、提案された川下製品のコードが日本の対EU輸出の5.0%を占め、現在のCBAM対象製品の2.9%を上回ると紹介しています。部門ごとの解説はCBAMの対象部門にあります。

CBAMのコストはいつから大きくなりますか

デフォルト値を使う製品では初年度からです。2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です。無償割当調整は製品1トン当たりの固定量なので、ベンチマークを上回る排出量は、デフォルト値のマークアップ分も含めて全額が証書の対象です。

中国産スラブ(CNコード 7207 12 10)をデフォルト値で輸入すると、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで、2026年輸入分は製品1トン当たり177.48ユーロ、2030年輸入分は同じ価格で281.31ユーロです(マークアップ30%、CBAM係数51.5%、ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される可能性があります)。日本産の熱延鋼板は2026年80.20ユーロ、2030年166.65ユーロです。

検証済みデータも、低い実排出量も、認められた炭素価格もない輸出者はEU市場でのコスト面の不利が大きくなるため、2026年中に準備を始める必要があります。

CBAMについて日本で相談できる窓口はありますか

経済産業省は「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)で概要と関連資料を公開しています。ただし同ページの簡素化の概要は2025年2月の提案段階の内容で、申告期限などは成立した規則(EU)2025/2083と異なります。JETROは貿易投資相談の窓口、算定実務マニュアル(2026年3月)、セミナーを提供しています。2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は確認できません。算定や検証の支援事業者の紹介は、cbamguide.comの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。