EU CBAM(炭素国境調整措置)完全ガイド2026年版:仕組み、CBAM証書、コスト、日本への影響

EU炭素国境調整措置(CBAM)は2026年1月1日に本格実施期間に入りました。

このページの内容
EU域外の施設で生産された製品の体化排出量を認可CBAM申告者が年1回申告し、無償割当調整と原産国で実際に支払われた炭素価格を差し引いた分のCBAM証書を、EU ETSに連動した価格で納付する流れを示す図。

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)は、2026年1月1日に本格実施期間に入りました。鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6部門の製品をEUに輸入する者にとって、CBAMは実際の支払いを伴う義務になりました。

2026年のCBAM証書の価格は四半期ごとに公表され、第1四半期は1 CO2換算トン当たり75.36ユーロ(2026年4月7日公表)、第2四半期は75.28ユーロ、第3四半期は82.32ユーロ(2026年10月5日公表)です。第3四半期の82.32ユーロが2026年11月4日時点の最新の公式価格で、第4四半期の価格は2027年1月4日に公表される予定です。

日本の輸出者への影響も、具体的な数字で示せます。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を2026年にデフォルト値で輸入すると、EUの輸入者には製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書が必要になり、価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロの負担になります。EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロで、約86%が鉄鋼です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

根拠法は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」で、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)により大幅に改正されました。CBAMは税でも関税でもありません。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。

目的は、カーボンリーケージ(炭素漏出)、つまり炭素価格のない国へ生産と排出が移ることを防ぐことです。本ページでは、1つの基本規則と14の下位法令からなる法的枠組み、体化排出量の算定と検証、証書の仕組み、2034年までの無償割当の段階的廃止、対象6部門、罰金、第9条の炭素価格控除、未解決の論点、そしてEUの輸入者と日本の輸出者にとっての意味を順に説明します。

キャプション:EU域外の生産施設からEUの税関を経て、CBAM証書の納付に至るまでのCBAMの流れです。


EU CBAMとは:導入の目的と背景

EU CBAMは、EU ETSがEU域内の生産者の排出にだけ炭素価格を課し、競合する輸入品には課さないという差を埋めるために導入されました。

この差があると、炭素価格のない国へ生産を移す動機が生まれます。CBAMは、炭素集約的な製品の輸入者に、輸入品の体化排出量(温室効果ガス)に応じたCBAM証書の納付を求めることで、その動機を取り除きます。

法的根拠はEU機能条約(TFEU)第192条第1項で、CBAMは通商措置ではなく環境政策の措置と位置づけられています。CBAMは関税を設定せず、WTOの譲許表上の関税率も変えず、財政上の意味での税も課しません。EU ETSの炭素価格に直接連動する、証書の納付義務を定める制度です。

カーボンリーケージ(炭素漏出)とCBAMの役割

カーボンリーケージとは、EU ETSの炭素コストを負うEUの産業が、同じCO2を出しながら同等の価格を支払わない国の競合に市場を奪われることです。生産が移るだけなので、EUの排出量は帳簿上減っても、世界全体の排出量は変わらないか、むしろ増えます。

OECDの推計では、第1段階(2026年)のCBAMが対象とするのは世界の排出量の0.5%未満です。それでもCBAMは、工業製品の輸入市場として単一では世界最大のEU市場において、カーボンリーケージの経済的な動機を構造的に取り除くことを目指しています。

CBAM以前、EUの生産者はカーボンリーケージへの一時的な補償としてEU ETSの無償割当を受けていました。無償割当は2026年から2034年にかけて、CBAMの導入と並行して段階的に廃止されます。CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年は97.5%、2030年は51.5%で、2034年からは適用されません(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。

輸入者が納付する証書数は、体化排出量から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×製品のCBAMベンチマーク)を差し引いた量です(第31条、実施規則(EU)2025/2620)。体化排出量がベンチマークとちょうど同じ製品に限り、2026年の証書数はベンチマークの2.5%(1-0.975)に相当します。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。

負担の規模を、トルコ産の半製品(CNコード 7207 11 14)をデフォルト値で輸入する例で示します。デフォルト値2.310 tCO2e(CO2換算トン)にマークアップ10%を加えると2.541、無償割当調整は0.975 × 1.364 = 1.3299で、製品1トン当たり1.2111枚の証書が必要です。価格82.32ユーロでは製品1トン当たり99.70ユーロで、無償割当調整前のコストは209.18ユーロです。価格を一定とすると、2030年には189.38ユーロになります。

日本産の場合、同じ半製品(CNコード 7207 11 14)のデフォルト値は2.100で、2026年のコストは製品1トン当たり80.68ユーロです。熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)は、デフォルト値2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。

EU CBAMの対象となる6部門

規則(EU)2023/956付属書Iは、CBAMの対象となる6部門をCNコード(EUの関税分類コード)で定めています。

付属書Iには42の項目があり、内訳は鉄鋼15、セメント6、アルミニウム14、肥料5、電力1、水素1です。6部門の概要は次のとおりです。

  • 鉄鋼:第72類と第73類のCNコードで、銑鉄、熱延鋼板、棒鋼、線、鋼管、形鋼などを含みます。直接排出量だけが対象で、間接排出量は対象外です。例外は、付属書IIに記載のない凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)で、間接排出量も対象になります。デフォルト値(マークアップ前)は、トルコ産半製品(CNコード 7207 11 14)が2.310、同じ半製品の「その他の国」の表の値が3.996、日本産熱延鋼板(CNコード 7208)が2.100です。
  • セメント:焼成粘土(CNコード ex 2507 00 80)と第2523項の5つのコード(クリンカー、白色と灰色のポルトランドセメント、アルミナセメント、その他の水硬性セメント)です。直接排出量と間接排出量の両方が対象です。ポルトランドセメントのおおよその排出原単位は約0.83 tCO2ですが、これはデフォルト値でもCBAMベンチマーク(灰色ポルトランドセメントは0.666)でもありません。
  • アルミニウム:第76類の14項目で、一次と二次のアルミニウム、形材などの川下製品を含みます。対象は直接排出量とパーフルオロカーボン(CF4は地球温暖化係数6,630、C2F6は11,100)です。電力消費による間接排出量は対象外で、アルミニウムのデフォルト値にも含まれません。未加工の一次アルミニウム(CNコード 7601)のデフォルト値は「その他の国」の表で2.203(マークアップ前、直接排出量のみ)、日本の表では0.360(ルートL、二次アルミニウム)です。
  • 肥料:硝酸(CNコード 2808 00 00)、アンモニア(CNコード 2814)、硝酸カリウム(CNコード 2834 21 00)、第3102項と第3105項の第31類製品(尿素、硝酸アンモニウム、複合肥料)です。直接排出量と間接排出量の両方が対象で、生産工程からの一酸化二窒素(N2O)も含みます。尿素のおおよその排出原単位は約2.5 tCO2eで、これもデフォルト値やベンチマークではありません。
  • 電力:CNコード 2716 00 00です。50トン基準は適用されません。発電地点での1 MWh当たりの体化CO2で評価し、物理的な連系線を通じた取引だけが対象です。
  • 水素:CNコード 2804 10 00です。50トン基準は適用されません。デフォルト値は79か国の表で10.820、「その他の国」の表で17.740、日本の表で14.030(いずれもマークアップ前)です。検証済みの実排出量で報告する電解水素は、直接排出量が少なくなります。

地理的な適用範囲は、すべての第三国からEU関税領域への輸入です。付属書III第1項に掲げるアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを原産とする製品は、EU ETSが適用されるか、その排出量取引制度がEU ETSと完全にリンクしているため、適用除外です(第2条第4項、第2条第6項)。日本は付属書IIIに含まれていません。対象コードの一覧はCBAM対象製品リストにあります。


日本からEUへのCBAM対象製品の輸出(2025年)

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、EU域外からの輸入に占める割合は金額ベースで1.30%、数量ベースで0.72%です。

日本は金額ベースで第22位、数量ベースで第24位の供給国です。2023年の24億4,810万ユーロ、190万4,514トンから、金額で41%、数量で55%減少しました(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。部門別の内訳は次の表のとおりです。

部門 2025年の金額 2025年の数量 EU域外輸入に占める割合(金額/数量) 日本の順位(金額/数量)
鉄鋼(鉄鉱石を除く第72類と第73類) 12億4,590万ユーロ 80万9,223トン 2.04%/1.40% 13位/16位
アルミニウム 1億9,500万ユーロ 4万2,260トン 0.64%/0.46% 23位/29位
セメント 480万ユーロ 5,701トン 0.45%/0.04% 19位/23位
肥料 250万ユーロ 1,431トン 0.03%/0.01% 35位/35位
水素 0ユーロ 不掲載(注) 0% なし
電力 0ユーロ 0 MWh 0% なし
合計 14億4,820万ユーロ 85万8,614トン 1.30%/0.72% 22位/24位

注:ユーロスタットの2025年の水素の数量データには不自然な値が含まれるため、水素は金額だけを示します。

鉄鋼が約86%、アルミニウムが約13.5%を占め、セメント、肥料、水素、電力はごくわずかです。電磁鋼板を含む合金鋼板(CNコード 7225)、幅の狭いステンレス鋼板(7220)、合金鋼線(7229)では、日本はEUへの供給国として上位4位以内に入ります。製品別の詳細は日本の鉄鋼輸出とEU CBAMで説明しています。

熱延鋼板(CNコード 7208)の数量は、2023年から2025年にかけて74%減少しました。EUは2025年9月26日、日本産を含む熱延鋼板に6.9%から30%の確定反ダンピング関税を課しており(欧州委員会通商総局)、これが要因の一つと考えられます。ただし、統計だけでは因果関係を証明できません。反ダンピング関税はCBAMのコストではありません。


EU CBAMの体化排出量の算定方法

CBAMの体化排出量は、輸入品を生産した施設の生産工程から出た温室効果ガスで、製品1トン当たりのtCO2e(特定体化排出量)で表します。

前駆体(付属書Iの製品)を1つ以上使って生産する複雑な製品では、各前駆体の体化排出量が完成品の合計に加わります。鋼管は複雑な製品で、その体化排出量には、鋼管工場の直接排出量と、材料となった鋼の体化排出量の両方が含まれます。体化排出量の定義は第3条第22号にあります。

実施規則(EU)2025/2547は、計算に基づく方法と測定に基づく方法を定めています(付属書II第B.2項)。計算に基づく方法のうち、標準法は排出源ストリームごとに燃焼排出(式5)とプロセス排出(式11)を計算し、マスバランス法(式12)はすべての投入物と産出物の炭素含有量から算定します。

付属書IIIの2つの式は、結果を製品の組成で補正します。式64はセメント製品のクリンカー含有量、式65は肥料の窒素含有量によるものです。

体化排出量の算定は、CBAMの義務の中心にあります(詳しくはCBAMの体化排出量)。EUの輸入者が納付する証書数は、暦年中に輸入したすべてのCBAM製品の体化排出量の合計を出発点とし、そこから第31条の無償割当調整と、原産国で実際に支払われた炭素価格(第9条)の分を差し引いて求めます(第6条第2項(c))。

直接排出量と間接排出量の違い

直接排出量は生産工程そのものから出る排出で、6部門すべてでCBAMの対象です。

直接排出量には、燃料の燃焼、化学工程(セメント製造での石灰石の焼成は、セメントのCO2総排出量の約60%を占めます)、施設内での熱の生成が含まれます。

間接排出量は、生産で消費する電力に由来する排出です。CBAMの対象になるのは、セメント、肥料、凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)の間接排出量です。鉄鋼とアルミニウムでは、発電の段階で大量のCO2が排出されていても(アルミニウム製錬は一次地金1トン当たり約14から16 MWhの電力を消費します)、その分は証書の義務に含まれません。

デフォルト値:検証済みデータがない場合

デフォルト値は、EU域外の施設が検証済みの実排出量を提供できない、または提供しない場合に、EUの輸入者が使う公表済みの排出原単位です。

本格実施期間のデフォルト値は実施規則(EU)2025/2621で定められ、その付属書Iは、2026年1月1日から適用される形で実施規則(EU)2026/1740により差し替えられました。「総排出量」のデフォルト値には、鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素で2026年10%、2027年20%、2028年以降30%のマークアップが加わります。肥料は毎年1%で、電力にはマークアップがありません。

マークアップは無償割当調整を差し引く前に加えられ、ベンチマークにはマークアップがないため、マークアップ分のtCO2eはすべて証書価格の満額で負担することになります。このためマークアップは、最初の年から実排出量を測定し、検証を受ける経済的な動機になります。

デフォルト値と実排出量では、差し引くベンチマークも異なります。実施規則(EU)2025/2620のSEFA(製品1トン当たりの無償割当相当量)の方法では、デフォルト値ならベンチマーク表のColumn B、実排出量ならColumn Aに前駆体に含まれる無償割当を加えた量を使います。どちらが安くなるかは製品と施設によって異なるため、輸入者は両方を試算しておく必要があります。

欧州委員会は2026年6月23日のファクトシート「CBAM: Actual vs default values in your declaration」で、2027年9月30日が期限の最初の申告に向けた判断の枠組みを示しています。日本の主な製品のデフォルト値は次の表のとおりです(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2026/1740により差し替え、マークアップ前の総排出量)。

CNコード 製品 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 日本の表に記載のルート
7207 11 14 半製品(非合金鋼) 2.100 C(高炉・転炉法)
7208 熱延鋼板 2.100 C
7209 冷延鋼板 2.143 C
7210 めっき・被覆鋼板 2.130 C
7225 19 90 無方向性電磁鋼板 3.530 C
7318 15 ボルト・ねじ 2.800 C
7601 未加工アルミニウム 0.360 L(二次アルミニウム)
7606 アルミニウムの板 1.730 L

日本の表の鉄鋼の行には電炉法(ルートD、E)がないため、スクラップを使う日本の電炉メーカーの製品も、検証済みの実排出量を提供するまでは高炉・転炉法(BF-BOF)と同じデフォルト値で評価されます。国別の一覧はCBAMのデフォルト値をご覧ください。

第三者検証の要件

検証は、実排出量に基づいて体化排出量を決める場合にだけ必要で(第8条第1項)、デフォルト値で申告する場合は検証機関による検証は不要です。

検証の規則は実施規則(EU)2025/2546、認定は委任規則(EU)2025/2551に定められています。CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関(NAB)だけで、EN ISO/IEC 17029:2019に照らして認定します。施設が初めて検証を受ける年には現地訪問が必要で(実施規則(EU)2025/2546第2条から第4条)、検証機関は対象の施設と関係があってはなりません。

CBAM登録簿での検証機関の登録は、第10a条第1項に基づき2026年9月1日に始まりました。国家認定機関の登録簿で確認できる認定は、2026年10月13日時点で5件です。EmiCert S.A.(ギリシャのESYD)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccredia)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedac)で、日本の法人は含まれません。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。

2026年10月21日の欧州委員会の表では、CBAMの認定を提供する国家認定機関は24、申請を受け付ける準備ができた機関は20、EU域外の申請者を受け付ける機関は7です。日本の検証機関は、この7つの機関のいずれかに申請します。GX-ETSの登録確認機関であることは、CBAMの検証資格になりません。

検証報告書は、2027年1月からCBAM登録簿で発行されます。検証サービス各社は施設1か所当たり5,000ユーロから5万ユーロを提示しており(市場推計)、50の域外施設から調達する輸入者の初回の検証費用は25万ユーロから250万ユーロになり得ます。詳しくはCBAMの検証をご覧ください。


CBAM証書の仕組み

CBAM証書は、輸入したCBAM製品の体化排出量1 CO2換算トンに対応する電子的な証書です(第3条第24号)。

EU CBAMの金銭的な負担は、すべてこの証書を通じて発生します。証書は購入、保有、納付され、場合によっては買い戻しや抹消の対象になります。

CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで認可申告者に販売します(第20条第1項)。証書は、欧州委員会が運営するCBAM登録簿の申告者の口座で保有し、納付します。2026年の輸入にはEU ETSのオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。週次価格は2027年の輸入からです(第21条第1項)。計算と公表の詳細は実施規則(EU)2025/2548が定めます。

2026年第1四半期(1月から3月)の公式価格は1 CO2換算トン当たり75.36ユーロ、第2四半期は75.28ユーロでした。第3四半期(7月から9月)の価格は82.32ユーロで、2026年10月5日に公表されました。第4四半期の価格は2027年1月4日に公表される予定です。最新の価格はCBAM価格トラッカーで確認できます。

証書のサイクルは3つの段階からなり、2026年の輸入に適用されるのは2番目と3番目だけです。

  1. 四半期末の証書保有義務(2027年から):2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。排出量はマークアップなしのデフォルト値、または前年に納付した証書数に基づいて決定し、算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。最初の確認日は2027年3月31日で、2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。不足すると通知を受け、1か月以内に補充します(第22条第3項)。1トン当たりの罰金はありません。この50%という割合は、規則(EU)2025/2083で引き下げられたものです。
  2. 年次の申告と納付:2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。認可申告者は、2026年のすべての輸入について、第31条の無償割当調整と第9条の減額を差し引いた体化排出量に相当する証書を納付します。
  3. 買い戻しと抹消:買い戻しの請求期限は証書を納付した年の10月31日で、価格は購入時の価格です(第23条第1項、第3項)。上限はその暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数です(第23条第2項)。2026年分として2027年に購入した証書は2027年中に限り買い戻し可能です(第23条第2a項)。2026年分として購入し、納付も買い戻しもされなかった証書は2027年11月1日に抹消されます(第24条第2項)。一般原則では、2027年に購入した証書は2029年11月1日に抹消されます(第24条第1項)。

購入、保有状況の管理、CBAM登録簿での納付を含む証書の全体像は、CBAM証書で説明しています。

キャプション:証書のサイクルです。販売は2027年2月1日から、四半期末の保有確認は2027年から、納付期限は2027年9月30日、買い戻しの請求期限は2027年10月31日です。

第9条の炭素価格控除と日本の炭素価格

規則(EU)2023/956第9条により、認可申告者は、原産国で輸入品の体化排出量について実際に支払われた炭素価格の分だけ、納付する証書数を減らすことができます。

控除額は、実際に支払われた検証可能な炭素価格をユーロに換算し、その価格の対象となった排出量に当てはめて求めます。控除の対象は第三国で実際に支払われた炭素価格だけで、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。自主的なカーボンオフセットや社内炭素価格は、第3条第29号の炭素価格に当たりません。

外国の排出量取引制度で受けた無償割当も控除額を減らします。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。デフォルト値を使う申告者が控除を請求できるのは、欧州委員会が2027年から国ごとに定めることのできる年次のデフォルト炭素価格を参照する場合に限られます(第9条第4項)。日本のデフォルト炭素価格はまだ定められていません。

2026年11月4日時点で、どの第三国の炭素価格も認められていません。第9条の実施規則は2026年5月13日に案として公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で未採択です。ICAP(国際炭素行動パートナーシップ)によると、韓国のK-ETSと中国の全国ETSはいずれも鉄鋼を対象としていますが、それぞれの制度の排出枠を無償で割り当てています。

トルコは2026年8月27日に排出量取引制度規則を公表しましたが、試行段階は100%無償割当のため、実際に支払われる炭素価格はまだありません。スイスは付属書IIIの国として、そもそもCBAMの対象外です。

日本の炭素価格も、2026年11月4日時点でEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。日本の主な制度と第9条との関係は次の表のとおりです(2026年11月4日確認)。

制度 対象と価格 開始・状況 EU CBAMとの関係
地球温暖化対策のための税(温対税) 化石燃料全般、CO2 1トン当たり289円(環境省) 2012年10月1日から段階導入、2016年4月1日に最終税率 鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税(租税特別措置法)。これらの石炭には課されていません
排出量取引制度(GX-ETS) 直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者(経済産業省) 2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化 鉄鋼とセメントにはベンチマーク方式で無償割当(ICAP)。無償割当分は実際に支払われた価格になりません
化石燃料賦課金 化石燃料の輸入者などにCO2量に応じて課金(JETRO) 2028年度から、未施行 2026年と2027年の輸入には何も主張できません

まだ答えの出ていない論点は3つあります。欧州委員会がGX-ETSを「実際に支払われた」炭素価格として扱うか、日本の年度(4月から3月)をCBAMの暦年にどう対応させるか、上流で課され燃料価格に転嫁される温対税が施設の事業者の支払いとみなされるか、です。JETROも2026年9月18日の記事で、GX-ETSの認定、無償割当部分の扱い、GX-ETSの排出枠の価格の証明を論点に挙げています。

証拠書類は、申告者からも第三国の当局からも独立した者が認証し(第9条第2項)、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第9条第3項)。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。

不遵守に対する罰金

規則(EU)2025/2083で改正された第26条の罰金には、2つの区分があります。

EU CBAMの本格実施期間に適用される罰金は次のとおりです。

  • 認可申告者が9月30日までに十分な証書を納付しない場合:納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項、指令2003/87/EC第16条第3項、第4項)。
  • 認可申告者以外の者が義務を果たさずにCBAM製品を持ち込んだ場合:納付しなかった証書1枚につき、第26条第1項の罰金の3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)が科されます(第26条第2項)。倍率は、期間、重大性、範囲、故意、反復、協力の度合いで決まります。

第26条第1項は独自の金額を定めず、EU ETSの罰金額を準用しているため、金額は27の加盟国すべてで同じです。罰金を支払っても証書の納付義務は残ります(第26条第3項)。一方、認可を持たずに50トン基準を超えた輸入者は、第26条第2項の罰金を支払えば、その輸入についての申告と納付の義務を免れます(第26条第2a項)。


EU CBAMの認可と登録の手続き

本格実施期間にEUへ付属書Iの製品を輸入する者は、50トン基準による適用除外を除き、認可CBAM申告者の資格を持つ必要があります(第3条第17号、第4条)。

認可は、輸入者が設立された加盟国の管轄当局が与えます。申請書類がそろってから決定までの期限は最長120日です(実施規則(EU)2025/486第4条第1項)。JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となり、報告義務を負う場合もあると指摘しています。

申請者は、実施規則(EU)2025/486第9条が定める2つの確認期間について、問題がないことを示す必要があります。申請前3年間に関税法、税法、市場濫用規則、CBAMの規則への重大または反復的な違反を認定する決定がないこと、申請前5年間に経済活動に関する重大な犯罪歴がないことです(規則(EU)2023/956第17条第2項(a))。

申請は、2025年3月31日に稼働したCBAM登録簿の認可管理モジュール(AMM)から行います。本格実施期間開始から1週間後の2026年1月7日までに、1万2,000件を超える申請が提出され、4,100を超える事業者が認可を受けました。ドイツの管轄当局DEHStは2026年6月、多くの申請が書類不足などで未承認のままだと報告し、登録簿での追加書類の要求を確認するよう申請者に勧めています。

2026年3月31日までに暫定的な認可申請を提出した輸入者は、管轄当局の決定まで輸入を続けることが認められました(第17条第7a項)。120日の決定期限が過ぎるか近づいたため、多くは2026年半ばまでに最終決定を受けましたが、DEHStなどは2026年6月に一部が未解決だと報告しています。27の加盟国はそれぞれ第11条に基づき管轄当局を指定しており、すべての申請は共通のCBAM登録簿を通ります。

CBAM登録簿の仕組み

CBAM登録簿は欧州委員会の税制・関税同盟総局(DG TAXUD)が運営し、実施規則(EU)2025/2550で改正された実施規則(EU)2024/3210が定めています。

認証には同実施規則第8条が定めるUUM&DS(統一ユーザー管理・電子署名システム)を使い、利用者は2要素認証付きのEUログイン(EU Login)のアカウントが必要です。登録簿は、認可申告者の口座、CBAM証書の保有、申告書の提出、税関データとの連携の4つの機能を担います。

税関当局は、50トン基準による適用除外を除き、認可CBAM申告者以外によるCBAM製品の輸入を認めません(第25条第1項)。2026年1月1日から適用される実施規則(EU)2025/2619は、税関がCBAM登録簿に報告する1件当たり8つのデータ項目(EORI番号、CBAM口座番号、8桁のCNコード、数量、原産国など)を定めています。データは税関の監視の仕組みを通じて定期的に、少なくとも週1回送られ、リアルタイムではありません。

日本の施設事業者は、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に施設のデータを登録し、検証を受けた後、すべてのEUの買い手と共有できます。O3CIは登録簿の一部で、別のシステムではありません。

証書販売の共通中央プラットフォームは入札にかけられ、2026年2月11日に官報で公告、2026年4月6日に応募が締め切られました。2026年7月8日の契約締結公告(TED公告468943-2026)によると、受託者はギリシャのEuropean Dynamics SAで、2026年6月26日に選定され、最大583万ユーロの枠組み契約が2026年6月30日に締結されました。

契約は締結されましたが、プラットフォームの試験版の稼働日は公表されていません。証書の販売は引き続き2027年2月1日に始まる予定です。販売と買い戻しの規則は第20条第6項に基づく委任規則案として示され、意見募集は2026年7月9日から8月6日まで行われ、93件の意見が寄せられました。採択は2026年第4四半期の予定で、2026年10月6日時点で未採択です。


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無償割当の段階的廃止:2026年から2034年まで

EU CBAMの金銭的な重みは、CBAM部門のEU ETSの無償割当が段階的に廃止されるにつれて、毎年大きくなります。

無償割当は、EU域内の生産者にEU ETSの排出枠を無償で配る仕組みで、これまでEUの産業をカーボンリーケージから守ってきました。CBAMは輸入側でこの保護を置き換え、域内側では無償割当が同時に縮小します。

廃止の日程は指令2003/87/EC第10a条第1a項が定め、CBAM係数(CBAM製品のEU生産者がまだ受け取る無償割当の割合)を設定しています。輸入者の製品1トン当たりの無償割当調整は、CBAM係数×部門横断補正係数×製品のCBAMベンチマークで、体化排出量から差し引かれます。2026年から2034年までの日程と、2つの製品のコストを次の表に示します。

年 CBAM係数(維持される無償割当) 廃止された無償割当の割合 デフォルト値のマークアップ トルコ産半製品(CNコード 7207 11 14)の正味コスト 日本産熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)の正味コスト
2026年 97.5% 2.5% 10% 製品1トン当たり99.70ユーロ 製品1トン当たり80.20ユーロ
2027年 95% 5% 20% 121.52ユーロ 100.31ユーロ
2028年 90% 10% 30% 146.15ユーロ 123.23ユーロ
2029年 77.5% 22.5% 30% 160.19ユーロ 137.33ユーロ
2030年 51.5% 48.5% 30% 189.38ユーロ 166.65ユーロ
2031年 39% 61% 30% 数値なし:補正係数が未設定 数値なし:補正係数が未設定
2032年 26.5% 73.5% 30% 数値なし:補正係数が未設定 数値なし:補正係数が未設定
2033年 14% 86% 30% 数値なし:補正係数が未設定 数値なし:補正係数が未設定
2034年 適用なし 100% 30% 247.21ユーロ 224.73ユーロ

入力値:付属書Iのデフォルト値(トルコ2.310、日本2.100 tCO2e/t)に各年のマークアップを加算。Column Bのベンチマークはトルコ産半製品1.364、日本産熱延鋼板1.370(いずれも高炉・転炉法、ルートC)。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%(実施決定(EU)2026/1862)。価格は2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで一定。2027年1月1日以降の輸入品にはベンチマークの更新が予定されているため、2027年以降の数値は目安です。2034年からは無償割当調整がなく、コストは(デフォルト値+マークアップ)×価格です。計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。

最も大きく上がるのは2029年から2030年にかけてで、CBAM係数は77.5%から51.5%へ1年で26ポイント下がります。EUの輸入者と日本の供給者にとって、計画上最も重要な時期です。体化排出量がベンチマークと同じ製品では、課金される割合がこの年にベンチマークの22.5%から48.5%へと2倍以上になります。

ベンチマークを大きく上回るデフォルト値の製品は、超過分をすでに全額支払っているため、コストの上がり方は緩やかです。上の例では、トルコ産半製品が製品1トン当たり160.19ユーロから189.38ユーロ、日本産熱延鋼板が137.33ユーロから166.65ユーロです。日程の全体はCBAMのタイムラインにまとめています。


法的枠組み:規則(EU)2023/956、CBAM簡素化規則、13の実施規則

EU CBAMは、1つの基本規則と14の下位法令(13の実施規則と1つの委任規則)で運用されています。

下位法令は、手続きの細部をすべて定めています。CBAMの法的枠組みを構成する主な法令は次のとおりです。

  • 規則(EU)2023/956(2023年5月10日、官報L 130、2023年5月16日、52から104ページ):基本規則です。2025年10月20日の統合版は39条と7つの付属書からなります。法的根拠はTFEU第192条第1項で、適用範囲、義務、罰金、登録簿、EU ETSとの関係を定めます。
  • 規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)(2025年10月8日採択、2025年10月17日官報掲載、2025年10月20日発効):年間50トンの適用除外基準(第2a条)、毎年9月30日の申告期限、2027年2月1日の証書販売開始、2027年からの四半期末保有義務50%、第26条第1a項と第2a項の罰金規則、2026年9月1日からの検証機関の登録(第10a条)を導入しました。
  • 13の実施規則と1つの委任規則:移行期間の実施規則(EU)2023/1773(現在は歴史的な法令)から、本格実施期間のデフォルト値を定める実施規則(EU)2025/2621(付属書Iと付属書IVは実施規則(EU)2026/1740で差し替え)、検証機関の認定を定める委任規則(EU)2025/2551まで、認可申告者と供給者が従う枠組みを構成します。

簡素化規則の内容はCBAM簡素化規則の解説で説明しています。2025年10月の簡素化規則より前に作られた日本語の資料(JETROの2024年2月の基礎編など)には、申告期限、四半期末の保有割合、適用除外の基準について改正前の内容が残っています。経済産業省の「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)も2025年2月の提案段階の内容を要約しているため、数値は必ず現行の規則で確認してください。

キャプション:EU CBAMの法的枠組みです。規則(EU)2023/956、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)、機能別にまとめた実施規則を示しています。

50トン基準(適用除外)

電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。

免除は税関申告で申告する必要があります。第2a条は規則(EU)2025/2083で挿入された規定で、電力と水素はどれだけ少量でも免除されません。改正前の規則は、税関価額に基づく1回の輸入ごとの基準でしたが、簡素化のため年間の重量基準に置き換えられました。

50トン基準は、輸入者ごと、暦年ごとに、すべてのCNコードと原産国を合計して適用されます。1年に鉄鋼25トンとセメント20トン(合計45トン)を輸入するEU企業は基準を下回ります。同じ企業が1年に鉄鋼60トンを輸入すれば基準を超え、その年の付属書I製品の輸入に含まれるすべての体化排出量について、CBAMの義務を全面的に負います。

基準は輸出者ではなく輸入者ごとに適用されます。日本の輸出者の出荷量が少なくても、EUの買い手の年間輸入量が他の供給者の分と合わせて50トンを超えれば、その出荷にもCBAMの義務がかかります。


EU CBAMの部門別コスト例

EU CBAMの実際のコストは、部門と生産ルートによって大きく異なります。

次の表は、6つの製品をデフォルト値で輸入した場合のコストを、2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で示したものです。価格は2026年の輸入では四半期ごと、2027年からは週ごとに設定されます。

製品と原産国(デフォルト値) 総排出量のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年のマークアップ後 Column Bのベンチマーク 無償割当調整前のコスト 2026年の正味コスト 2030年の正味コスト(同じ価格)
半製品、トルコ、CNコード 7207 11 14 2.310 2.541 1.364 209.18ユーロ 99.70ユーロ 189.38ユーロ
熱延鋼板、韓国、CNコード 7208 2.118 2.3298 1.370 191.79ユーロ 81.83ユーロ 168.58ユーロ
灰色ポルトランドセメント、「その他の国」の行、CNコード 2523 29 00 1.440 1.584 0.666 130.39ユーロ 76.94ユーロ 125.87ユーロ
未加工アルミニウム、中国、CNコード 7601 3.000 3.300 1.423 271.66ユーロ 157.44ユーロ 260.72ユーロ
尿素、エジプト、CNコード 3102 10 19 1.390 1.4039 0.902 115.57ユーロ 43.17ユーロ 77.33ユーロ
水素、「その他の国」の行、CNコード 2804 10 00 17.740 19.514 5.089 1,606.39ユーロ 1,197.94ユーロ 1,682.72ユーロ

コストはいずれも製品1トン当たりです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の「総排出量」の値で、マークアップは2026年10%、2030年30%(肥料はいずれも1%)です。ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn Bで、国の行が示すルート(鉄鋼はC、高炉、アルミニウムはK、一次)の値です。

正味コスト=(デフォルト値+マークアップ-CBAM係数×100%×ベンチマーク)×価格で、CBAM係数は2026年97.5%、2030年51.5%です。2030年の列は価格を82.32ユーロで一定とし、現在のベンチマーク(更新の可能性あり)を使っています。第9条の減額は適用していません。

日本産の主な製品について、同じ方法で計算した結果は次のとおりです(2026年11月4日、当サイトの計算ツール、価格82.32ユーロ)。

日本産の製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) ベンチマーク(Column B、ルート) 2026年の調整前コスト 2026年の正味コスト 2030年の正味コスト(同じ価格)
熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 1.370(C) 190.16ユーロ 80.20ユーロ 166.65ユーロ
冷延鋼板(7209 16 90) 2.143 1.458(C) 194.05ユーロ 77.03ユーロ 167.52ユーロ
無方向性電磁鋼板(7225 19 90) 3.530 1.488(C) 319.65ユーロ 200.22ユーロ 314.68ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 2.800 1.364(C) 253.55ユーロ 144.07ユーロ 241.82ユーロ
アルミニウムの板(7606 12 99) 1.730 0.148(L) 156.65ユーロ 144.78ユーロ 178.86ユーロ
未加工アルミニウム(7601 10 90) 0.360 0.091(L) 32.60ユーロ 25.29ユーロ 34.67ユーロ
灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) 0.890 0.666 80.59ユーロ 27.14ユーロ 67.01ユーロ

コストは製品1トン当たりです。2030年の列はマークアップ30%、CBAM係数51.5%で、2027年以降の輸入品についてはベンチマークの更新が予定されているため目安です。

アルミニウムの板(7606)は、日本のデフォルト値1.730に対してベンチマーク(ルートL)が0.148と低いため、2026年でも調整前のコストの約92%にあたる144.78ユーロを負担します。経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)は、CNコード 7318 15 42の2026年の証書数を1.750としており、上の計算(1.7501)と一致します。

同ガイドラインの円建ての数値(2026年に製品1トン当たり29,139円)は、EU ETSの価格90ユーロ、1ユーロ185円を前提にしています。貴社の製品と数量に応じた推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

鉄鋼は、輸入量でも金額でも最大の部門です。EU27が2025年にEU域外から輸入したCBAM対象の鉄鋼は5,773万トン、609億5,000万ユーロでした(鉄鉱石を除く第72類と第73類の付属書I製品)。中国が907万トン、トルコが743万トン、インドが401万トン、韓国が363万トンを供給し、日本は80万9,223トンでした(Eurostat Comext、2025年)。鉄鋼部門の全体像はCBAM 鉄鋼部門ガイドで説明しています。

デフォルト値で申告したトルコ産半製品のコストは、2026年に製品1トン当たり99.70ユーロで、調整前の209.18ユーロの47.7%にあたります。同じ価格で2030年には189.38ユーロに上がります。これは無償割当の廃止が進み、マークアップが30%に達するためです。

水素は、これと対照的な例です。実排出量で申告する場合もベンチマークは5.089 tCO2e/tのため、検証済みの体化排出量がその97.5%(4.962 tCO2e/t)以下の水素は、グリーン水素を含め、2026年には証書が不要です。モロッコ、チリ、サウジアラビアでグリーン水素の生産能力を開発する将来の輸出者は、ロシアなどガス輸出国のグレー水素の生産者に対して構造的に優位に立つ可能性があります。

キャプション:無償割当の廃止に伴い、製品1トン当たりのCBAMの正味コストは2026年から2034年にかけて上がり、最大の段差は2029年から2030年です。


CBAMの収入、WTO、世界の炭素国境調整の動き

EU CBAMの収入は、証書の販売から生じます。

現行の規則では、各加盟国がその国に設立された申告者に証書を販売し(第20条第1項)、収入を受け取ります。規則の条文には、その収入をEU予算と分け合う規定はありません。第30条は見直しと報告の規定で、収入の規定ではありません。

これを変更する提案が2つありますが、2026年10月12日時点でいずれも法律ではありません。欧州委員会は2028年から2034年の予算期間の独自財源提案(COM(2025) 574)で、証書販売収入の75%をEU予算に入れることを提案しました。COM(2025)989の立法財務諸表は、この独自財源を2028年から2034年の平均で年約14億5,000万ユーロと見込んでいます。

もう1つのCOM(2025)990は、2026年と2027年の排出に関する各加盟国の収入の25%を、一時的な脱炭素基金に充てる提案です。

EU ETSの価格水準は、証書の収入を直接左右します。2026年第1四半期のEU ETSの価格は1トン当たり66ユーロから90ユーロで推移し、その後も堅調で、EU ETSの排出枠の2026年12月限は2026年9月14日に日中高値88.53ユーロをつけました。2026年1月には、EUの10加盟国が、EU ETSは戦略産業にとって「存在に関わるリスク(existential risk)」だと正式に表明しています。

欧州委員会は2026年4月1日、市場安定化リザーブ(MSR)決定の改正提案COM(2026) 153 finalを迅速手続きで提出しました。4億枠の基準を超えてリザーブに保有されるEU ETSの排出枠を取り消さず、安定化の余力として保持する内容です。2026年10月20日から21日に理事会と欧州議会は暫定合意に達し、取り消しは維持しつつ最大7億枠を保持できるとしました(欧州委員会プレスリリースIP/26/2206)。2026年10月23日時点で、正式な採択は未了です。

EU ETSの見直し提案COM(2026) 616(2026年7月17日)は、CBAM部門で廃止された無償割当の15%を2028年から再導入し、廃止の終了を2034年から2038年に延ばす内容です。ただし、これは提案(法律ではありません)です。EU ETSのオークション価格を下げる改革は、CBAM証書の価格も同じ割合で下げます。CBAMには独自の価格下限がありません。

ロシアは2025年5月12日、EU CBAMについてWTO紛争DS639を提起し、GATT第1条(最恵国待遇)、第2条(譲許)、補助金協定への違反を主張しました。EUは2025年5月22日に協議を断っています。インドは正式な提訴を非公式に示唆していますが、2026年7月時点で提訴していません。2026年1月27日に妥結したEU・インド自由貿易協定にも、インドへのCBAMの適用除外は含まれていません。

トルコは二国間での解決を探っており、1995年のEU・トルコ関税同盟協定によりトルコの輸出品は他の第三国と同じCBAMの扱いを受けないと主張しています。WTOの上級委員会が機能していないため、現実的な期間内に強制力のある判断は期待できませんが、パネル報告書が出る可能性はあります。EUの法的な防御は、GATT第20条(b)(人、動物、植物の生命と健康の保護に必要な措置)と第20条(g)(有限天然資源の保存に関する措置)に基づきます。

DS639は、パネル段階に進んでいます。ロシアは2026年7月10日にパネル設置を要請し、EUは2026年7月24日の紛争解決機関会合で最初の要請を阻止しました。紛争解決機関は2026年9月25日、ロシアの2回目の要請に基づきパネルを設置しました。炭素国境措置に関する初のWTOパネルで、2026年10月23日時点で構成は未了です。詳しくはWTO紛争DS639をご覧ください。

ポーランドが2023年8月8日に欧州司法裁判所に提起したCBAMの取消訴訟は、2026年10月12日時点で係属中です。EU以外の国の炭素国境調整の動きは、世界の炭素国境調整措置にまとめています。


EU CBAMへの対応が必要な企業:EUの輸入者と日本の輸出者

EUの輸入者と、日本を含むEU域外の輸出者の両方がCBAMの義務または戦略的な影響を受けますが、法的義務はすべてEU側にあります。

EUの輸入者:コンプライアンスの4つの段階

付属書Iの製品を輸入するEUの輸入者が、EU CBAMの法的義務をすべて負います。手続きは、認可の取得、体化排出量データの収集、証書の管理、年次の申告の4段階です。認可申告者でない者が義務を果たさずにCBAM製品を持ち込むと、納付しなかった証書1枚につき第26条第1項の罰金の3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)が科されます。

認可申請、EU域外の供給者への体化排出量データの依頼、2027年からの四半期末の保有義務への準備、2027年9月30日の申告書の提出は、英語のEU輸入者向けCBAMガイドで詳しく説明しています。

電力の輸入にも50トン基準は適用されますか

適用されません。電力(CNコード 2716 00 00)と水素(CNコード 2804 10 00)は、規則(EU)2025/2083で挿入された規則(EU)2023/956第2a条により、50トン基準から明確に除外されています。物理的な連系線を通じて電力を輸入する者は、年間の量にかかわらず、CBAMの義務を全面的に負います。

日本の輸出者:法的義務はないが、データが競争力を左右する

日本を含むEU域外の輸出者には、EU CBAMの直接の法的義務はありません。義務を負うのはEUの輸入者(またはその間接的通関代理人)です。ただし、実排出量を測定・検証してEUの顧客に提供できる輸出者は、顧客がデフォルト値のマークアップ(2026年10%、2028年から30%)を避け、証書のコストをデフォルト値の水準より下げる手助けができます。

データを提供しない、または検証済みデータを提供できない輸出者は、EUの顧客に割高なデフォルト値を使わせることになります。こうした商業的な圧力により、CBAM対応の負担は実質的にサプライチェーンの上流へ移ります。日本の施設事業者は、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録し、検証済みデータを供給できます。

事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します。必要なデータ、検証機関との協力、第9条の控除の経済的な効果は、EU域外の輸出者のためのCBAMで説明しています。

英国CBAMはEU CBAMと同じですか

同じではありません。英国CBAMは2027年1月1日に始まる税で、証書の制度ではありません。HMRC(英国歳入関税庁)が2026年財政法第5部に基づき、アルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼の5部門について、直接排出量だけを対象に、独自の税率と計算規則で運用します。HMRCへの登録は2028年1月1日までに開始されます。

英国からEUへ輸出される製品には引き続きEU CBAMが適用され、英国に輸入されるCBAM製品には2027年1月から英国の税がかかります。2026年11月4日時点で、EUは英国ETSを含め、第9条に基づく第三国の炭素価格を認めていないため、英国とEUの間の取引では二重負担のリスクが残ります。

POLITICOは2026年10月7日、英国とEUが両国の排出量取引制度のリンクで合意したと報じましたが、2026年10月12日時点で英国政府、欧州委員会、理事会のいずれも確認しておらず、文書も公表されていません。英国の首相は、英国・EU首脳会議が2026年11月20日にブリュッセルで開かれると説明しています。英国政府は、リンクの合意が成立すれば英国の輸出者は2030年までに約8億ポンドのEU CBAMの支払いを免れると推計しています。

合意だけではEU側の負担はなくなりません。英国は、まず委任規則によって付属書IIIに記載される必要があります。日本との関係では、英国は2026年8月27日にGX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せましたが、これはEU CBAMの扱いとは別の判断です。詳しくは英語の英国CBAMをご覧ください。

川下製品への対象拡大の提案とは何ですか

欧州委員会提案COM(2025)989(2025年12月17日公表、法律ではありません)は、鉄鋼とアルミニウムを多く使う約180の川下製品を、2028年1月1日からCBAMの対象に加える内容です。提案の付属書には、変速機や車輪などの自動車部品、家庭用洗濯機、クレーンなどの機械、電動機、変圧器、金属製家具が含まれます。

提案は通常立法手続きで欧州議会と理事会の承認が必要です。理事会は2026年6月12日に一般的アプローチを採択し、Mayer Brownによれば追加コードは約200(cbamguide.comの集計では項目とコードの合計で300強)です。欧州議会の環境委員会(ENVI)は2026年7月6日に立場を採択し(賛成56、反対11、棄権12)、業界紙によると対象は約457品目で、迂回防止の規定も強化されています。

欧州議会は2026年9月15日、第1読会の交渉権限を賛成464、反対50、棄権159で採択しました。2026年10月23日時点で、この案件は提案のままで、三者協議(トリローグ)の合意はありません。2026年10月20日の第1回三者協議は全体合意に至らず、第2回は2026年11月30日と報じられています。共同立法者は2026年末までの最終合意を目指しています。

EUの鉄鋼とアルミニウムの生産者は、CBAM対象の素材で作られた製品が対象外になる現在の抜け穴を塞ぐとして、拡大を強く支持しています。EUの自動車と機械の業界は、多国間の複雑なサプライチェーンでは体化排出量の算定が極めて難しいとして反対しています。

JETROは2026年9月18日、電力中央研究所の分析として、提案された川下製品のコードが日本の対EU輸出の5.0%を占め、現在のCBAM対象製品の2.9%を上回ると紹介し、特に自動車用変速機とその部品への影響を挙げています。詳しくはCBAMの川下製品への対象拡大をご覧ください。

対象拡大の案件は鉄鋼とアルミニウムのバリューチェーンに限られ、いずれの案にも化学品や樹脂は含まれません。CBAMが有機化学品とポリマーを対象にするかは別の問題で、第30条第2項の見直し条項のもと、欧州委員会の次の評価は2027年末の見直しで行われる予定です。詳しくは英語のCBAMとプラスチックをご覧ください。

CBAM証書の価格の基礎となるEU ETSの炭素価格と、川下製品への拡大がEUの製造業のコストに与える影響の背景は、英語のEU ETSとはで説明しています。

認可CBAM申告者の認可は取り消されることがありますか

取り消されることがあります。管轄当局は、申告者が認可の基準を満たさなくなった場合、または証書の納付義務や四半期末の保有義務に重大もしくは反復的に違反した場合に、規則(EU)2023/956第17条第8項に基づき認可を取り消します。手続きは実施規則(EU)2025/486が定めます。

記録の保存もコンプライアンスの一部です。記録は、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第7条第6項)。認可を失った後に義務を果たさずにCBAM製品を輸入すると、納付しなかった証書1枚につき第26条第1項の罰金の3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)が科されます。

CBAMのコストは2034年まで上がりますか

製品1トン当たりの証書数はCBAM係数の低下とマークアップの上昇で毎年増えますが、価格の見通しは予測にとどまります。ロイターが2026年7月31日に公表したアナリスト9人の調査では、EU ETSの平均価格は2026年79.97ユーロ、2027年89.13ユーロで、2030年の公式な予測はありません。CBAM証書の価格はEU ETSの価格に連動します。

デフォルト値によるトルコ産半製品(CNコード 7207 11 14)の義務は、現在のデフォルト値とベンチマークで、製品1トン当たり2026年の1.2111枚から2030年には2.3005枚に増えます。82.32ユーロでは製品1トン当たり99.70ユーロから189.38ユーロで、1 CO2換算トン当たり126ユーロとした感応度試算では、2030年は289.87ユーロです。

日本産熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)では、2026年の0.97425枚から2030年の2.02445枚に増え、82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロから166.65ユーロです。これらの見通しは、EU ETSの見直し提案COM(2026) 616と、2027年以降の輸入品について予定されているベンチマークの更新により、大きな不確実性を伴います。

日本ではCBAMについてどこに相談できますか

経済産業省は「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)で概要と関連資料を公開し、ねじ・ボルト向けの算定ガイドライン(第3版、2026年3月)も公表しています。JETROは、貿易投資相談の窓口、算定実務マニュアル(2026年3月)、ビジネス短信、セミナーを提供しています。

2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は確認できません。日本の状況はCBAMと日本、日本で活動する支援事業者は日本のCBAMコンサルタントにまとめています。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。