CBAM証書:購入、四半期末の50%保有、2027年の納付と日本産製品のコスト

CBAM証書は2027年2月1日に販売が始まり、2026年分は2027年9月30日までに納付します。

このページの内容
CBAM証書のライフサイクル。共通中央プラットフォームで購入し、CBAM登録簿の口座で各四半期末に50%以上を保有、9月30日に申告書とともに納付。余剰分は10月31日までに買い戻し、残りは11月1日に抹消。

CBAM証書の販売は2027年2月1日に始まります。EUの認可CBAM申告者は、2026年に輸入した製品の体化排出量に応じたCBAM証書を、2027年9月30日までに納付します(規則(EU)2023/956第20条第1項、第22条第1項)。CBAM証書は手数料でも関税でもありません。必要な枚数は体化排出量で決まり、価格はEU ETSの炭素価格に連動します。CBAM証書1枚は、輸入品の体化排出量1 CO2換算トンに相当します。

日本からの輸出品を例にとると、熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で2026年に輸入した場合、製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書が必要です。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で換算すると、製品1トン当たり80.20ユーロです。証書を買うのはEUの輸入者ですが、このコストは日本の輸出者との価格交渉に直接影響します。

第26条第1項の罰金(納付しなかったCBAM証書1枚につき、インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ)を避けられるかどうかは、購入、四半期末の50%保有、9月30日の納付という3つの手続をきちんと管理できるかにかかっています。罰金を支払っても、証書の納付義務は残ります(第26条第3項)。

このページでは、EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の証書について、価格の算定、四半期末の保有義務、買い戻し、抹消、罰金を順に説明し、日本産製品の計算例も示します。説明の対象は、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)による改正後の「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」に基づく、本格実施期間のルールです。

キャプション:規則(EU)2023/956(規則(EU)2025/2083による改正後)に基づくCBAM証書の4段階のライフサイクル。


CBAM証書とは

CBAM証書は、CBAM登録簿で扱われる電子形式の証書で、6部門(鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素)の輸入品に体化された排出量1 CO2換算トンに相当します。

定義は規則(EU)2023/956第3条第24号にあります。CBAM証書は取引所で売買できず、認可申告者の間で譲渡できず、EU ETSの義務履行にも使えません。用途は、毎年9月30日に提出するCBAM申告書で申告した年間の体化排出量に見合う分を納付することだけです。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。EU域内でEU ETSの対象として生産された製品と同じ炭素コストを輸入品にも負担させることで、カーボンリーケージ(炭素漏出)を防ぎます。この仕組みの全体像はEU CBAMの解説で説明しています。

CBAM証書は、申告者が設立された加盟国が共通中央プラットフォームで販売し(第20条第1項)、CBAM登録簿(CBAMレジストリ)の口座で保有されます。納付された証書は欧州委員会が登録簿から削除し(第22条第1項)、残った証書は該当する年の11月1日に欧州委員会が抹消します(第24条)。

CBAM証書には、販売した加盟国、購入日、支払った価格(購入時に適用された第21条の価格)、購入年(ビンテージ)の4つの情報がひも付いています。購入年が重要なのは、改正後の第24条第1項が、前々年に購入された証書を毎年11月1日に抹消するためです。2027年に購入した証書は、2029年11月1日まで口座に残っていれば、その日に抹消されます。

最初の年には例外があります。第24条第2項により、2026年の体化排出量のために2027年に購入した証書は、2027年11月1日に抹消されます。輸入者は、この期間を超えて証書を買いだめしておくことはできません。


CBAM証書の価格の決まり方

CBAM証書の価格は、2026年の輸入分はEU ETSの排出枠(EUA)のオークション終値の四半期平均、2027年からの輸入分は暦週ごとの平均です。

2026年の輸入品(本格実施期間の最初の年で、証書の納付は2027年9月)には、輸入した四半期の平均価格が適用されます(第21条第1a項、規則(EU)2025/2083で追加)。2027年からの輸入品には、暦週ごとの平均価格が適用されます(第21条第1項)。算定と公表の手続は実施規則(EU)2025/2548に定められています。

CBAMに独自の価格はなく、証書のコストはEU ETS(英語)の炭素価格に比例して上下します。欧州委員会が公表した2026年の公式価格は、次の表のとおりです(第21条第1a項、実施規則(EU)2025/2548)。

四半期(輸入時期) CBAM証書の価格(1 CO2換算トン当たり) 公表日
2026年第1四半期 75.36ユーロ 2026年4月7日
2026年第2四半期 75.28ユーロ 2026年7月6日
2026年第3四半期 82.32ユーロ 2026年10月5日
2026年第4四半期 未公表 2027年1月4日に公表予定

第3四半期の価格は第2四半期より7.04ユーロ(9.35%)高く、本格実施期間に入ってから四半期価格が初めてはっきり上昇しました。2027年の価格見通しとその根拠はCBAM証書価格の2027年予測(英語)で説明し、現在と過去の価格は、EU ETSのオークションデータから毎週更新するCBAM価格トラッカーで公開しています。

キャプション:2027年からの輸入分のCBAM証書の価格は、欧州委員会が実施規則(EU)2025/2548に基づき公表するEU ETSのオークション終値の週次平均です(第21条第1項)。2026年の輸入分は四半期平均です(第21条第1a項)。

2026年に6品目をデフォルト値で輸入した場合の製品1トン当たりのコストを、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると、次の表のとおりです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の「総排出量」の値、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn Bの値です。

原産国と製品(CNコード) デフォルト値(tCO2e/t) マークアップ込み ベンチマーク 証書数(製品1トン当たり) 無償割当調整前のコスト 2026年のコスト(製品1トン当たり)
トルコ、鉄鋼半製品(7207 11 14) 2.310 2.541 1.364 1.2111 209.18ユーロ 99.70ユーロ
中国、鉄鋼半製品(7207 12 10) 3.169 3.4859 1.364 2.1560 286.96ユーロ 177.48ユーロ
その他の国、グレーポルトランドセメント(2523 29 00) 1.440 1.584 0.666 0.93465 130.39ユーロ 76.94ユーロ
中国、アルミニウムの塊(7601) 3.000 3.300 1.423 1.912575 271.66ユーロ 157.44ユーロ
エジプト、尿素(3102 10 19) 1.390 1.4039 0.902 0.52445 115.57ユーロ 43.17ユーロ
その他の国、水素(2804 10 00) 17.740 19.514 5.089 14.552225 1,606.39ユーロ 1,197.94ユーロ

マークアップは2026年が10%(尿素は1%)で、製品1トン当たりの証書数は、マークアップ込みのデフォルト値から0.975 × 1.00 × ベンチマークを差し引いた値です。鉄鋼の2行は高炉・転炉法(BF-BOF、ルートC)、アルミニウムの行は一次アルミニウム(ルートK)のベンチマークを、付属書Iの行の記載どおりに使っています。

セメントの「その他の国」の行は、自国の行がダッシュ表示のトルコにも適用されます。鉄鋼、アルミニウム、水素のデフォルト値は直接排出量だけ、セメントと肥料のデフォルト値は間接排出量も含みます。

右端の列は法定の方法によるもので、無償割当調整前のコストに一定の割合を掛けたものではありません。製品1トン当たりの証書数は、特定体化排出量から無償割当調整と第9条の炭素価格分を差し引いた値で、ゼロを下回りません(規則(EU)2023/956第6条第2項(c)、第31条、実施規則(EU)2025/2620)。ゼロを下限とすることは、2026年8月14日の欧州委員会税制・関税同盟総局(DG TAXUD)のガイダンス第1号に記載されています。

製品1トン当たりの無償割当調整は、CBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×CBAMベンチマークです。2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項、指令(EU)2023/959による改正後)。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。マークアップは無償割当調整を差し引く前のデフォルト値に加算し、ベンチマークには加算しません。

このため、体化排出量がベンチマークと等しい製品に限り、2026年の負担は排出量の2.5%分にとどまります。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。トルコ産の鉄鋼半製品は、デフォルト値で製品1トン当たり99.70ユーロで、無償割当調整前の209.18ユーロの47.7%です。コストはCBAM係数が2030年に51.5%へ下がるにつれて増え、2034年からはCBAM係数が適用されません。

日本産製品の2026年のCBAM証書コスト

実施規則(EU)2025/2621付属書Iには、日本独自の表があります。日本の主要な輸出品6品目について、同じ方法と同じ価格(82.32ユーロ)で計算した結果は次の表のとおりです(2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算)。

日本産の製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) マークアップ込み(10%) ベンチマーク(Column B、ルート) 証書数(製品1トン当たり) 無償割当調整前のコスト 2026年のコスト(製品1トン当たり)
熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 2.310 1.370(C) 0.97425 190.16ユーロ 80.20ユーロ
冷延鋼板(7209 16 90) 2.143 2.3573 1.458(C) 0.93575 194.05ユーロ 77.03ユーロ
めっき鋼板(7210 49 00) 2.130 2.343 1.491(C) 0.889275 192.88ユーロ 73.21ユーロ
無方向性電磁鋼板(7225 19 90) 3.530 3.883 1.488(C) 2.4322 319.65ユーロ 200.22ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 2.800 3.080 1.364(C) 1.7501 253.55ユーロ 144.07ユーロ
アルミニウムの板(7606 12 99) 1.730 1.903 0.148(L) 1.7587 156.65ユーロ 144.78ユーロ

日本産の熱延鋼板のコストは製品1トン当たり80.20ユーロで、無償割当調整前の190.16ユーロの42.2%です。アルミニウムの板(7606 12 99)はベンチマーク(ルートL)が0.148と小さいため、無償割当調整前の156.65ユーロの92.4%にあたる144.78ユーロになります。

ボルト・ねじ(7318 15 42)の証書数1.7501は、経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)が示す2026年の値「1.750」と一致します。同ガイドラインの円建ての数値(製品1トン当たり29,139円)は、EU ETSの価格90ユーロ、1ユーロ185円を前提にした試算です。

貴社の製品とトン数に応じた推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。算定式の手順はCBAMの計算方法、国別の値はCBAMデフォルト値で説明しています。

週次価格は実務上どのように公表されるのでしょうか。2027年からの輸入分について、欧州委員会は翌暦週の最初の営業日に平均価格を公表します(第21条第2項)。その価格は、公表の翌営業日から次の暦週の最初の営業日まで適用されます。オークションが行われなかった週には、最後にオークションが行われた週の平均価格が適用されます(第21条第1項)。


CBAM証書の購入方法

CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで、その加盟国に設立された認可申告者に販売します(第20条第1項)。

共通中央プラットフォームは、加盟国との共同調達を経て欧州委員会が設置・管理し(第20条第2項)、販売と買い戻しの情報は毎営業日の終わりにCBAM登録簿へ送られます(第20条第3項)。流通市場も証書の取引所もなく、認可申告者が他の認可申告者に証書を売る仕組みもありません。

CBAM証書の購入は、次の4つの手順で進めます。

  1. 認可の状況を確認する。 証書を購入できるのは認可CBAM申告者だけです(規則(EU)2023/956第4条)。審査中の暫定的な輸入を認める認可申請の期限は2026年3月31日でした(第17条第7a項)。認可のない輸入者は購入機能を使えず、無認可の輸入には第26条第1項の額の3倍から5倍(インフレ調整前で1トン当たり300から500ユーロ)の罰金が科されます(第26条第2項)。要件はCBAM認可申告者(英語)で説明しています。
  2. CBAM登録簿にサインインする。 二要素認証を設定したEUログイン(EU Login)のアカウントでサインインします。認証とアクセスの確認はUUM&DSの仕組みで行われ(実施規則(EU)2024/3210第8条)、加盟国が自国の税関ポータル経由のサインインを用意する場合もあります(ドイツはZoll-Portal)。口座には、保有証書数、税関から送られる輸入取引の履歴、現在の公表価格が表示されます。
  3. 必要な数を計算する。 その時点までの累積の体化排出量と、四半期末の証書保有義務(後述)から購入数を決めます。証書は1 CO2換算トン単位の整数で扱われます。
  4. 購入を申請し、支払う。 後述の委任規則案では、申請はCBAM登録簿で行い、支払いは欧州委員会が管理する共通中央プラットフォーム(英語)を通じてユーロで行います。価格は第21条の価格で、2026年の排出分は輸入した四半期の価格、2027年からの輸入分はその時点の週次価格です。欧州委員会は、証書ごとの固有の識別番号、価格、販売日を口座に登録します(第20条第5項)。

一度にどれだけ購入すべきでしょうか。保有義務の確認日(3月31日、6月30日、9月30日、12月31日)に合わせて四半期ごとに購入するのが、運用上最も効率的です。輸入量が大きく予測しやすい認可申告者は、納付期限の前にまとめて買うより、年間を通じて輸入の積み上がりに合わせて少しずつ購入するのが一般的です。


販売と買い戻しの委任規則案:2026年7月の意見募集

欧州委員会は2026年7月9日、2027年2月1日の販売開始に向けてCBAM証書の販売と買い戻しの取引手続を定める委任規則案(規則(EU)2023/956第20条第6項)について、意見募集を始めました。

意見募集は2026年8月6日に締め切られ、93件の意見が寄せられました。最終日に提出が集中し、デンマーク産業連盟(Danish Industry)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)、ORLEN、ブラジル鉄鋼協会(Brazil Steel Institute)のほか、ブラジルの省庁、韓国とトルコの鉄鋼メーカーが意見を出しています。

欧州委員会は2026年第4四半期の採択を予定しており、当初の2026年第2四半期から遅れています。2026年10月12日時点で、欧州委員会のCBAM法令のページに販売と買い戻しの採択済みの法令は掲載されていません。以下はすべて委任規則案(未採択)の内容で、法律ではありません。

案は基本規則で決まっている証書の設計を確認し、運用の細部を加えています。主な内容は次の7点です。

  • 購入と買い戻しの申請はCBAM登録簿で行います。
  • 1回の申請は1枚から99,999枚までです。
  • 取引ごとに証書1枚当たり0.05ユーロの固定手数料がかかります。
  • 証書には固有の識別番号が付き、譲渡も売買もできません。
  • 買い戻しの申請は、申告者ごとに年1回です。
  • 支払いは共通中央プラットフォームを通じてユーロで行います。
  • 加盟国は、指定した管轄当局だけを通じて証書を販売します。

案の全体は証書の販売と買い戻しの規則案に関する意見募集(英語)、提出者と要望は93件で締め切られた意見募集の報告(英語)にまとめています。多くの意見に共通する要望は、毎月の買い戻し期間、申請処理の迅速化、取引手数料への批判です。採択されるまで、これらの案がこのページで説明する確定した枠組みを変えることはありません。


四半期末の証書保有義務(50%)

2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。

算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。この基準は規則(EU)2025/2083による改正で引き下げられ、四半期内の資金繰りに余裕が生まれました。最初の確認日は2027年3月31日で、2027年1月1日以降の輸入品が対象です。

第22条第2項は、この体化排出量を次の2つのどちらかで算定することを認めています。基準(a)はマークアップを含まないデフォルト値です。基準(b)は前年に納付した証書の数で、税関申告がCNコードと原産国について前年のCBAM申告書と同じ製品を対象とする場合に使えます。どちらの基準でも第31条の無償割当調整が考慮され、保有義務は調整後の量で測ります。

4つの確認日と、それぞれの算定の範囲は次の表のとおりです。

四半期末 対象となる累積期間 必要な保有数
3月31日 1月1日から3月31日(第1四半期) 第1四半期の体化排出量の50%以上
6月30日 1月1日から6月30日(上半期) 上半期の累積体化排出量の50%以上
9月30日 1月1日から9月30日(9か月) 9か月の累積体化排出量の50%以上
12月31日 1月1日から12月31日(通年) 通年の累積体化排出量の50%以上

算定の基礎は、その四半期だけでなく1月1日からの累積です。このため、確認のたびに基礎となる合計が大きくなります。無償割当調整後の体化排出量が第1四半期に1,000 tCO2e(CO2換算トン)、第2四半期にさらに1,000 tCO2eあった輸入者は、6月30日に500枚ではなく、上半期の累計2,000 tCO2eの50%にあたる1,000枚以上を保有する必要があります。

無料のCBAM証書トラッカーのテンプレート(英語)は、購入と四半期末の保有数を記録するCSV形式のワークシートで、確認日ごとに増えていく合計を照合できます。

基準(a)での計算例として、2027年に輸入するトルコ産の鉄鋼半製品(CNコード 7207 11 14)を取り上げます。マークアップを含まないデフォルト値は製品1トン当たり2.310 tCO2eです。無償割当調整は0.95 × 1.00 × 1.364 = 1.2958 tCO2e(2027年のCBAM係数95%、Column Bのベンチマーク1.364)で、差し引き製品1トン当たり1.0142 tCO2eが残ります。

  • 第1四半期の輸入:500トン × 1.0142 tCO2e/t = 507.1 tCO2e
  • 3月31日の必要保有数:507.1 × 50% = 253.55、したがって254枚
  • 第2四半期の輸入:さらに500トン × 1.0142 tCO2e/t = 507.1 tCO2eの追加
  • 上半期の累計:1,014.2 tCO2e
  • 6月30日の必要保有数:1,014.2 × 50% = 507.1、したがって508枚(保有済みの254枚に加え、254枚を追加購入)

2027年の輸入分の証書は、まだ決まっていない週次価格で販売されます。参考として2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロを使うと、254枚の購入1回分は20,909.28ユーロです。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、1.364という値は変わる可能性があります。

日本産熱延鋼板での計算例(2027年、基準(a))

日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を2027年に年間2,000トン、四半期ごとに500トンずつ輸入する場合を計算します。マークアップを含まないデフォルト値は2.100、無償割当調整は0.95 × 1.00 × 1.370 = 1.3015で、差し引き製品1トン当たり0.7985 tCO2eです(2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算)。

四半期末 累積輸入量 無償割当調整後の累積体化排出量 必要な保有数(50%)
2027年3月31日 500トン 399.25 tCO2e 200枚(199.625)
2027年6月30日 1,000トン 798.5 tCO2e 400枚(399.25)
2027年9月30日 1,500トン 1,197.75 tCO2e 599枚(598.875)
2027年12月31日 2,000トン 1,597 tCO2e 799枚(798.5)

端数の切り上げは当サイトの計算ツールの慣行で、規則に証書数の端数処理の定めはありません。

3月31日に必要な200枚は、参考価格82.32ユーロで16,464ユーロです。保有義務の算定にはマークアップが入らないため、年末の保有義務799枚は、同じ2,000トンをデフォルト値で申告した場合に2028年9月30日までに納付する2,437枚(製品1トン当たり1.2185枚、マークアップ20%込み)の32.8%にとどまります。2,437枚は参考価格で200,613.84ユーロです。

つまり、保有義務を満たしていても、納付期限までにはさらに多くの証書を買い増す必要があります。ここでも、2027年以降のベンチマークは更新される可能性があります。

四半期末に保有数が足りなくても、1トン当たりの罰金はありません。口座が第22条第2項の義務を満たしていないと欧州委員会が判断すると、CBAM登録簿を通じて管轄当局に通知し、管轄当局は申告者に1か月以内に十分な証書を確保するよう通知します(第22条第3項)。保有義務への重大または繰り返しの違反は、認可申告者の地位の取消事由です(第17条第8項)。第26条第1項の罰金は、9月30日までに納付されなかった証書にだけ科されます。

四半期の算定にはどの排出量データを使うのでしょうか。どちらの基準も検証済みのデータを必要としません。基準(a)は実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のデフォルト値をマークアップなしで使い、基準(b)は同じ製品と原産国について前年に納付した証書の数を使います。

マークアップ(2026年10%、2027年20%、2028年以降30%、肥料は1%)は、デフォルト値での年間の納付計算にだけ適用されます。部門ごとの特定体化排出量の算定方法はCBAMの体化排出量で説明しています。

キャプション:四半期末の50%の保有義務は、各四半期だけでなく1月1日からの体化排出量の累計に対して算定されます。


CBAM証書の納付方法

CBAM証書の納付とは、CBAM登録簿の口座にある証書を、年間のCBAM申告書で申告した体化排出量と相殺することです(第3条第25号)。

納付はCBAM登録簿で行い、納付された証書は欧州委員会が登録簿から削除します(第22条第1項)。期限は毎年9月30日で、前年1年分が対象です。最初の期限は2027年9月30日で、2026年の輸入分が対象です。

CBAM証書の納付は、次の5つの手順で進めます。

  1. 体化排出量の合計を確定する。 納付する証書は、年間のCBAM申告書で申告した体化排出量に対応する必要があります(第22条第1項)。検証が必要なのは実排出量で申告する場合だけで(第8条第1項)、デフォルト値での申告に検証機関は不要です。検証は実施規則(EU)2025/2546に従い、委任規則(EU)2025/2551に基づき認定された検証機関が行います。CBAM登録簿への検証機関の登録は2026年9月1日に始まりました。
  2. 正味の納付数を計算する。 無償割当調整(EUの競合生産者がまだ受けているEU ETSの無償割当に相当する減額で、実施規則(EU)2025/2620によりCBAM係数×部門横断補正係数×CBAMベンチマークで算定)を差し引きます。原産国で実際に支払われた炭素価格による第9条の減額があれば、それも差し引きます。結果はゼロを下回らず、これが納付する正味の証書数です。
  3. 保有数が足りているか確認する。 申告書の提出時点で、CBAM登録簿の口座に正味の納付数以上の証書が必要です。不足があれば、申告書を提出する前に追加購入します。
  4. CBAM申告書を提出する。 年間のCBAM申告書をCBAM登録簿で提出します(第6条第1項)。申告書には、製品の種類と原産国ごとのCBAM対象製品の総量、体化排出量の合計(実排出量の場合は検証済み)、納付する証書数、第9条の減額を請求する場合はその書類を記載します。記載事項の詳細は規則(EU)2023/956第6条に定められています。
  5. 納付を確認し、記録を保存する。 欧州委員会が納付された証書を登録簿から削除します(第22条第1項)。税関申告書、検証報告書、証書の購入記録、第9条の減額の証拠などの書類は、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第7条第6項、第9条第3項)。

納付とともに提出する書類は何でしょうか。実排出量を使う場合、CBAM申告書には検証報告書の参照情報と、生産施設ごとの体化排出量の内訳が必要です。第9条の減額の証拠はその上に加わります。記載項目の詳細はCBAM申告書(英語)で説明しています。


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買い戻し:買いすぎた証書を戻す権利

認可申告者は、余ったCBAM証書を、購入時に支払った価格で買い戻してもらうことができます(第23条第1項)。

申請を受けると、申告者が設立された加盟国が証書を買い戻し、欧州委員会がその加盟国に代わって共通中央プラットフォームで買い戻しを実行します(第23条第1項)。

買い戻しの権利は、規則(EU)2025/2083による改正後の第23条に定められています。第23条第2項は、買い戻せる数を、購入した暦年に第22条第2項の四半期末の保有義務に基づき購入義務があった証書数までとしています。上限は割合ではなく枚数です。ただし、50トン基準を超えると見込んで購入し、実際には超えなかった申告者は、この上限の例外として、申請すればその証書をすべて買い戻してもらえます(第23条第2項)。

買い戻しの請求期限は証書を納付した年の10月31日で、9月30日の納付期限の1か月後です。2027年9月30日の最初の申告で納付した場合、期限は2027年10月31日です。第23条第2a項は最初のサイクルに制限を加えており、2026年分として2027年に購入した証書は2027年中に限り買い戻し可能です。

買い戻しは、見込みの輸入量で証書を前もって買ったものの、需要の変化、サプライチェーンの混乱、商品価格の変動で実際の輸入が見込みを下回るという運用上のリスクに備える仕組みです。買い戻しがなければ、余った証書は11月1日に価値を失います。買い戻しがあれば、第23条第2項の上限(その暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数)まで購入費用を回収できます。

買い戻しの管理で押さえるべき実務上の点は、次の3つです。

  • 上限は年間の購入義務で計算します。 総購入数や個々の取引ではなく、その年の第22条第2項の購入義務が基準です。2027年の累積体化排出量が2,000 tCO2eに達した輸入者は、第22条第2項により1,000枚の購入義務があったため、総購入数にかかわらず、2027年に購入した証書のうち買い戻せるのは最大1,000枚です。
  • 買い戻し価格は購入時の価格です。 買い戻し日の価格ではありません。1 CO2換算トン当たり75ユーロで購入し、市場価格が85ユーロになった時点で買い戻しても、回収できるのは75ユーロです。
  • 理由の説明も承認も要りません。 事務的な申請だけで足り、10月31日の期限内であれば無条件に行使できる権利です。

注意すべき点が1つあります。2026年7月9日から8月6日まで意見募集が行われた委任規則案は、買い戻しの申請を申告者ごとに年1回としています。これはまだ採択された法律ではありません。


抹消:11月1日のルール

欧州委員会は毎年11月1日に、前々年に購入され口座に残っているCBAM証書をすべて抹消します(第24条第1項)。

実務上は、2年前の購入年の証書が、その年の11月1日に抹消されます。たとえば2029年11月1日には、認可申告者の口座に残る2027年購入の証書がすべて、補償なしで永久に抹消されます。根拠は改正後の第24条第1項です。

抹消のサイクルによって保有できる期間は限られますが、その長さは購入年のどの時期に買ったかで変わります。2027年2月1日に購入した証書は2029年11月1日まで約33か月保有でき、2027年12月下旬に購入した証書は約22か月で同じ抹消日を迎えます。将来の値上がりに備えて証書を無期限に持ち越すことはできません。

最初のサイクルはさらに短くなります。第24条第2項の特例により、2026年の体化排出量のために2027年に購入した証書のうち、2027年9月30日までに納付されず、2027年10月31日までに買い戻されなかったものは、2027年11月1日に抹消されます。

キャプション:CBAM証書は、納付も買い戻しもされなければ、購入年の2年後の11月1日に永久に抹消されます。

最初の3年間の購入分の抹消日は、次の表のとおりです。

証書の購入年 第24条第1項による抹消日 最初のサイクルの例外
2027年 2029年11月1日 2026年の体化排出量のための証書は2027年11月1日に抹消(第24条第2項)
2028年 2030年11月1日 なし
2029年 2031年11月1日 なし

抹消の一般原則は、義務の対象年ではなく購入年を基準にしています。購入年の2暦年後の11月1日に残っている分が抹消されます。唯一の例外は最初のサイクルで、第24条第2項が2026年の義務のために2027年に購入した証書を2027年11月1日に抹消するため、最初の申告で余った証書は翌年に持ち越せません。この仕組みは、証書の買いだめを防ぐよう意図的に設計されています。


納付が不足した場合の罰金

9月30日までに十分なCBAM証書を納付しなかった場合、納付しなかったCBAM証書1枚につき、規則(EU)2025/2083による改正後の第26条第1項の罰金が科されます。

第26条第1項自体にはユーロの金額がありません。同項は指令2003/87/EC第16条第3項のEU ETSの超過排出罰金(1 CO2換算トン当たり100ユーロ)を適用し、その額は同指令第16条第4項により欧州消費者物価指数に沿って調整されます。EU ETSとCBAMの整合性を保つための、意図的な設計です。

罰金は納付義務に代わるものではありません(第26条第3項)。500枚の証書を納付しなかった輸入者は、インフレ調整前で5万ユーロの罰金を支払い、さらに不足の500枚を調達して納付する必要があります。2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロでは、その証書は41,160ユーロで、不足の総額はインフレ調整前で91,160ユーロ、1 CO2換算トン当たり182.32ユーロになります。

不足の原因が、施設の事業者、検証機関、または炭素価格の書類を認証する独立した認証者が提供した誤った情報にある場合、管轄当局は罰金を減額できます(第26条第1a項)。

認可申告者でない者には、より重い制裁があります。第26条第2項により、規則に従わずにCBAM対象製品を持ち込んだ者には、納付しなかった証書1枚につき第26条第1項の額の3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)の罰金が科されます。第26条第2a項により、認可を受けずに50トン基準を超えた輸入者にも、その暦年の輸入品に体化されたすべての排出量について同じ罰金が適用されます。罰金を支払えば、その輸入者はその輸入品の申告と納付の義務を免れます。


無償割当の段階的廃止とCBAM証書のコスト

CBAM証書の正味コストは、CBAM対象部門へのEU ETSの無償割当が2026年から2034年にかけて段階的に廃止されるにつれて、毎年増えます。

規則(EU)2023/956第31条は、この無償割当を反映してCBAMの義務を減らし、その廃止の日程は指令2003/87/EC第10a条第1a項に定められています。CBAM係数はEUの生産者が維持する無償割当の割合で、体化排出量から差し引く無償割当調整の大きさを決めます。

次の表は、トルコ産の鉄鋼半製品(CNコード 7207 11 14、デフォルト値2.310、ベンチマーク1.364)と日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20、デフォルト値2.100、ベンチマーク1.370)に、部門横断補正係数100%、価格82.32ユーロ一定でこの日程を当てはめたものです。2030年より後の部門横断補正係数は定められていないため、2031年から2033年までの数値は示せません。

年 CBAM係数(維持される無償割当) 廃止された割合 マークアップ トルコ産半製品の証書数(製品1トン当たり) トルコ産半製品のコスト 日本産熱延鋼板の証書数(製品1トン当たり) 日本産熱延鋼板のコスト
2026年 97.5% 2.5% 10% 1.2111 99.70ユーロ 0.97425 80.20ユーロ
2027年 95% 5% 20% 1.4762 121.52ユーロ 1.2185 100.31ユーロ
2028年 90% 10% 30% 1.7754 146.15ユーロ 1.497 123.23ユーロ
2029年 77.5% 22.5% 30% 1.9459 160.19ユーロ 1.66825 137.33ユーロ
2030年 51.5% 48.5% 30% 2.3005 189.38ユーロ 2.02445 166.65ユーロ
2034年から 適用なし 100% 30% 3.0030 247.21ユーロ 2.730 224.73ユーロ

最も大きな変化は2029年から2030年にかけて起こり、CBAM係数は77.5%から51.5%に下がります。同じ証書価格で、トルコ産半製品のコストは製品1トン当たり160.19ユーロから189.38ユーロへ、日本産熱延鋼板は137.33ユーロから166.65ユーロへ上がります。2027年以降の数値は2026年のベンチマークを前提にしており、実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しています。

無償割当調整(SEFA、実施規則(EU)2025/2620)は、EUの競合生産者になお与えられている無償割当に応じて、各輸入者の納付義務を減らす仕組みです。製品1トン当たりのSEFAは、CBAM係数×部門横断補正係数×CBAMベンチマークです。デフォルト値では国別の付属書Iの行に記載された生産ルートのColumn Bのベンチマーク、実排出量ではColumn Aのプロセスベンチマークに前駆体に含まれる調整分を加えたものを使います。


CBAM証書の購入時期と価格リスク

CBAM証書の価格の決まり方はすべての認可申告者に共通で、価格を前もって固定する仕組みは規則にありません。

2027年からの輸入分の証書はEU ETSのオークション終値の週次平均(第21条第1項)、2026年の排出分の証書は輸入した四半期の価格(第21条第1a項)で購入します。価格を固定したい輸入者は、証書の購入とは別に、金融市場で取引されるEU ETSの排出枠の先渡し取引などを自ら利用する必要があります。

大口の輸入者が購入時期を決める方法は主に3つあり、コストとリスクの特徴がそれぞれ異なります。

  • 四半期ごとの購入: 各四半期末の確認日に、50%の最低限をちょうど満たす数を買います。資金の支出を遅らせられますが、年間を通じて価格変動にさらされます。EU ETSの価格が第1四半期から第4四半期にかけて上がれば、第4四半期に買う証書は第1四半期より高くなります。
  • 年初の一括購入: 販売が始まる2月か3月に、見込みの年間義務をまとめて買います。値上がりのリスクは避けられますが、実際の輸入が見込みを下回れば証書が余ります。買い戻し(第23条第2項により、購入した暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数まで)が、このリスクを一部和らげます。
  • 毎月の比例購入: 毎月、その月の輸入量と体化排出量に比例した数を買います。12か月で購入価格を平均でき(ドルコスト平均法と同じ考え方)、特定の四半期に資金負担を集中させずに50%の基準を上回る保有を保てます。

EU ETSの価格が大きく下がった場合はどうなるでしょうか。高い価格で買った証書を減らしたい輸入者は、購入した暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数まで買い戻しを使えます(第23条第2項)。残りは保有して納付するか、抹消を受け入れるしかありません。購入時と納付時の価格差で申告者が利益を得る仕組みは、規則にありません。


日本の輸出者と日系EU子会社への影響

日本の輸出者はCBAM証書を購入も納付もせず、その義務を負うのはEUの認可CBAM申告者(EUの輸入者またはその間接的通関代理人)です。

EU域外の会社は認可申告者の地位を持てません。輸入者がEU加盟国に設立されていない場合は、間接的通関代理人が地位を取得し(第5条第2項)、その輸入品について輸入者の義務を負います(第5条第2a項)。JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となり、義務を負う場合もあると指摘しています。

日系EU子会社が認可申告者になる場合、証書の購入先は子会社が設立された加盟国で、購入、四半期末の保有、納付、買い戻しのすべてをその子会社が管理します。日本の本社の役割は、施設の排出量データを用意して、子会社の証書コストを抑えることです。

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は14億4,820万ユーロで、そのうち鉄鋼(鉄鉱石を除く第72類と第73類)が12億4,590万ユーロ(金額ベースで約86%)、アルミニウムが1億9,500万ユーロ(同約13.5%)です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。この取引のほぼすべてで、EUの買い手が前掲の表の水準の証書コストを負います。

GX-ETSの排出枠も、EU ETSの排出枠(EUA)も、CBAM証書の代わりに納付することはできません。2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しており、GX-ETSで鉄鋼やセメントに無償で割り当てられた分は、実際に支払われた炭素価格になりません。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。

日本の輸出者が契約で押さえておくべき点は、次の4つです。

  • 価格の基準時点: 2026年の輸入分は輸入した四半期の価格(第1四半期75.36ユーロ、第3四半期82.32ユーロ)、2027年からは週次価格です。CBAMコストを価格に反映させる契約では、どの時点の価格を使うかを明記しておくと、後の争いを避けられます。
  • データの種類: デフォルト値ではマークアップ分も全額が証書の対象になります。検証済みの実排出量を提供できるかどうかで、買い手の証書数が変わります。
  • CNコードと原産国の一貫性: 四半期末の保有義務の基準(b)は、税関申告のCNコードと原産国が前年のCBAM申告書と同じ場合に使えます。品目分類が年ごとに変わらないよう、買い手と確認しておくと役立ちます。
  • 検証の期限: 実排出量での申告には検証報告書が必要で、2026年分の納付期限は2027年9月30日です。2026年10月13日時点で国家認定機関の登録簿にある5件の認定に日本の法人は含まれず、欧州委員会の認定検証機関リストは2026年10月23日時点で未公表です(CBAM認定検証機関)。

英国向けの輸出には、別の制度が適用されます。英国CBAMは2027年1月1日に始まる税で、証書の仕組みはありません。英国が2026年10月16日に公表した試算税率は、鉄鋼がCO2換算トン当たり9.69ポンド、アルミニウムが9.79ポンドで、納税義務は生じない参考値です。英国はGX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度の暫定リストに載せました(2026年8月27日)。EU CBAMの扱いとは別です。詳細は英国CBAM(英語)にあります。

日本語の解説資料を読む際の注意

CBAM証書について日本語の資料を読む際は、規則(EU)2025/2083の改正(2025年10月20日施行)より前の内容かどうかを確認する必要があります。

注意が必要な資料は、次の3つです。

  • 経済産業省「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新): CBAM簡素化の内容を2025年2月の法案の段階で要約しており、申告期限や買い戻しの上限は採択後の規則と異なります。
  • JETRO「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」(2024年2月): 改正前の資料で、買い戻しの上限と期限、抹消日は現行の規則では使えません。
  • JETROの2026年9月18日の記事: 2026年の四半期価格、2027年2月1日の販売開始、2027年からの50%の保有義務は現行の規則と一致しますが、抹消日と罰金の額、買い戻しの上限には触れていません。

現行の規則では、買い戻しの請求期限は証書を納付した年の10月31日で、上限はその暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数です(第23条)。2026年分として購入した証書は2027年11月1日に抹消され、一般原則では前々年に購入した証書が毎年11月1日に抹消されます(第24条)。

日本での相談先として、JETROは貿易投資相談の窓口、算定実務マニュアル(2026年3月)、セミナーを提供しています。日本の状況全体はCBAMと日本、輸出者向けの対応はCBAM輸出者ガイドと日本の鉄鋼輸出とEU CBAMにまとめています。算定や検証の支援事業者の紹介は、CBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


CBAM証書の主な期限のまとめ

最初の販売日である2027年2月1日から、その購入年の証書が第24条第1項で抹消される2029年11月1日までは、33か月です。

2027年の遵守年の主な期限は、次のとおりです。

  • 2026年9月1日(前年): CBAM登録簿への検証機関の登録が始まりました。実排出量で申告する輸入者は、2026年分の検証のため、検証機関との契約を急ぐ必要があります。
  • 2027年2月1日: 証書の販売開始。認可申告者は購入を始められます。
  • 2027年3月31日: 最初の四半期末の確認。2027年第1四半期の体化排出量の50%以上を、無償割当調整を考慮したうえで保有します(第22条第2項)。
  • 2027年6月30日: 2回目の確認。2027年上半期の累積体化排出量の50%以上を保有します。
  • 2027年9月30日: 年間の納付期限。最初のCBAM申告書(2026年の輸入分)を提出し、証書を納付します。2026年の体化排出量は、2026年の各四半期のEU ETS価格の四半期平均で評価されます(2027年の週次平均ではありません)。
  • 2027年9月30日(同日): 2027年第3四半期の保有数の確認日でもあります。
  • 2027年10月31日: 買い戻しの請求期限(第23条第1項)。余った証書は購入価格で共通中央プラットフォームを通じて買い戻され、上限は購入した暦年に第22条第2項に基づき購入義務があった証書数です(第23条第2項)。2026年分として2027年に購入した証書は2027年中に限り買い戻し可能です(第23条第2a項)。
  • 2027年11月1日: 第24条第2項の特例。2026年の体化排出量のために2027年に購入し、2027年9月30日までに納付されず、10月31日までに買い戻されなかった証書は、補償なしで抹消されます。
  • 2027年12月31日: 4回目の確認。2027年通年の累積体化排出量の50%以上を保有します。
  • 2029年11月1日: 残っている2027年購入の証書が、第24条第1項(前々年に購入された証書の抹消)により永久に抹消されます。

暦年ごとの全体の日程はCBAMのタイムラインで説明しています。


CBAM証書に関するよくある質問

CBAM証書を他の認可申告者に売ることはできますか

できません。規則には、認可申告者の間でCBAM証書を譲渡する方法がありません。証書を戻す唯一の方法は第23条の買い戻しで、申告者が設立された加盟国が余った証書を購入時の価格で買い戻し、欧州委員会がその加盟国に代わって共通中央プラットフォームで実行します。この点で、施設や第三者の取引業者の間で売買できるEU ETSの排出枠とは異なります。

各四半期末に保有すべき最低限の証書数はありますか

あります(2027年から)。各四半期末の最低限は、その年の1月1日から輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書で、無償割当調整が考慮されます(第22条第2項)。確認は3月31日、6月30日、9月30日、12月31日の4回です。不足しても1トン当たりの罰金はなく、管轄当局の通知を受けて1か月以内に補充します(第22条第3項)。重大または繰り返しの違反は認可の取消事由です(第17条第8項)。

購入後にCBAM証書の価格は変わりますか

変わりません。購入した証書の価格は支払った価格で固定され、CBAM登録簿に販売日とともに記録されます(第20条第5項)。その後EU ETSの価格が変わっても、保有している証書のコストはさかのぼって変わりません。価格リスクは、まだ購入していない証書についてだけ生じます。

体化排出量の合計を誤って申告するとどうなりますか

体化排出量を過少に申告すると、その分の証書が納付されないことになります。欧州委員会と管轄当局は、申告書を提出すべきであった年の後4年目の終わりまで申告書を審査できます(第19条第2項)。申告された数が誤っていると判断した場合、管轄当局は本来納付すべきであった数を決め、1か月以内に追加の証書を納付するよう求めます(第19条第5項)。

納付されなかった証書1枚につき、第26条第1項の罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ)が科されます。誤りが施設の事業者、検証機関、または炭素価格の書類を認証する独立した認証者に由来する場合、管轄当局は罰金を減額できます(第26条第1a項)。納付義務への重大または繰り返しの違反は、認可の取消事由にもなります(第17条第8項)。

証書数の算定にデフォルト値を使えますか

使えます。供給者から実際の体化排出量のデータを得られない輸入者は、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のデフォルト値を使えます。値は原産国とCNコードごとに定められ、総排出量の値にマークアップ(2026年10%、2027年20%、2028年以降30%、肥料はすべての年で1%)を加えます。マークアップは無償割当調整を差し引く前に加算されるため、マークアップ分には証書価格が満額でかかります。

デフォルト値での申告に検証機関は不要です。供給者の実排出量がデフォルト値を下回る輸入者にとって、検証済みデータを得る経済的な利点はマークアップが上がるにつれて大きくなります。どちらが安いかは製品と施設によるため、両方を試算してください。

四半期末の保有義務は2026年にも適用されますか

適用されません。第22条第2項は、四半期末の証書保有義務を「From 2027」(2027年から、当サイト仮訳)適用するとしています。証書の販売開始は2027年2月1日、最初の確認日は2027年3月31日で、2027年1月1日以降の輸入品が対象です。2026年の輸入品に四半期末の保有義務はなく、その体化排出量は2027年9月30日が期限の最初の納付義務になります。

GX-ETSの排出枠をCBAM証書の代わりに使えますか

使えません。CBAM証書は、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売する独自の証書で、GX-ETSの排出枠もEU ETSの排出枠も代わりに納付できません。日本で支払った炭素価格を反映する仕組みは第9条の減額ですが、2026年11月4日時点で日本の炭素価格は認められておらず、実施規則も案の段階です。


関連する実務上の論点

体化排出量とCBAM証書の数の関係

輸入者が納付する証書の数は、1暦年に輸入したすべてのCBAM対象製品の体化排出量の合計(CO2換算トン、実排出量の場合は検証済み)から、無償割当調整と第9条の減額を差し引いた数に対応します。体化排出量は輸入額や重量だけでは決まりません。生産施設ごとの製品1トン当たりの特定体化排出量に、輸入トン数を掛けて求めます。

セメントと肥料は直接排出量と間接排出量(電力に由来する排出)の両方を含み、鉄鋼は直接排出量だけです。部門ごとの算定の枠組みはCBAMの体化排出量で説明しています。

原産国が違うと体化排出量の扱いは変わりますか

原産国が違っても算定方法は同じですが、生産技術と燃料構成が違うため結果は変わります。デフォルト値にもその差が表れており、鉄鋼半製品(CNコード 7207 11 14)について、実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)は、マークアップ前で製品1トン当たり日本2.100 tCO2e、韓国2.118、トルコ2.310、インド4.270としています。

現在、どの原産国についても第9条の減額は義務を減らしていません。欧州委員会は2026年5月13日に第9条の減額の認定経路と計算方法を定める実施規則案を公表し、2026年6月10日に意見募集を締め切りました。2026年11月4日時点で採択されておらず、韓国のK-ETSや日本のGX-ETSを含め、どの国の炭素価格も控除の対象として認められていません。

購入資格と認可CBAM申告者

CBAM証書を購入できるのは認可CBAM申告者だけで、第20条第1項により各加盟国はその国に設立された認可申告者に販売します。認可の要件は、申請前3年間に重大または繰り返しの違反を認定する決定がないこと、申請前5年間に経済活動に関する重大な刑事犯罪がないこと(実施規則(EU)2025/486第9条第1項)、財務上と運営上の能力、有効なEORI番号、設立地の加盟国の管轄当局への有効な申請です。

2026年3月31日は、審査中の暫定的な輸入を認める申請期限でした(第17条第7a項)。それより後の申請にはこの権利がありません。認可を受けずに50トン基準を超えてCBAM対象製品を輸入した者には、第26条第1項の罰金(インフレ調整前で100ユーロ)ではなく、第26条第2項の3倍から5倍(インフレ調整前で1トン当たり300から500ユーロ)の罰金が科されます。手続、必要書類、管轄当局の連絡先はCBAM認可申告者(英語)で説明しています。

認可は付与後に取り消されることがありますか

あります。管轄当局は、実施規則(EU)2025/486とその改正である実施規則(EU)2025/2549に定める事由で認可を取り消せます。事由には、その後の税関違反、税務上の不正による有罪判決、倒産手続、申請での重大な虚偽、CBAMの義務の継続的な不履行が含まれます。取り消された認可申告者はCBAM対象製品を合法的に輸入できなくなり、取消後の輸入には罰金が科される可能性があります。

納付を支えるCBAM報告と記録

納付時に提出する年間のCBAM申告書は、それだけで完結する書類ではなく、輸入記録、検証済みの排出量報告書、第9条の炭素価格の証拠、無償割当調整の計算など、1年を通じて集めたデータをまとめたものです。これらの書類は、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第7条第6項、第9条第3項)。記録の枠組みと、第19条の審査で管轄当局が求めうる書類はCBAM報告(英語)で説明しています。

実排出量で申告する場合(第8条第1項)は、検証機関が報告の中心的な役割を担います。デフォルト値での申告には検証機関は不要です。実排出量では、生産施設ごとの特定体化排出量を、委任規則(EU)2025/2551に基づき認定された検証機関が確認します。

実施規則(EU)2025/2546は、施設が初めて検証を受ける年に現地訪問を求めています(第2条から第4条)。CBAM登録簿への検証機関の登録は2026年9月1日に始まりました。検証報告書は、年間のCBAM申告書で実排出量を裏付ける主要な証拠です。検証の流れはCBAMの検証で説明しています。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。