CBAMの鉄鋼部門ガイド(2026年):CNコード、ベンチマーク、コスト、EU輸入者の手続き

EU CBAMの鉄鋼部門(第72類・第73類)の対象CNコード、生産ルート別のベンチマーク(高炉・転炉法の熱延鋼板1.370 tCO2e)、82.32ユーロでの製品1トン当たりのコスト、日本産鋼材のデフォルト値と計算例を解説します。

このページの内容
高炉・転炉と電炉の2つのルートで、焼結鉱とスクラップから粗鋼、鋼板・条鋼、第73類の鉄鋼製品に至る流れの図。直接排出量は算入、電力は算入されず、前駆体の排出量は引き継がれます。

鉄鋼は、EU炭素国境調整措置(CBAM。JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の対象分野のうち、EUの輸入額が最も大きい分野です。EUは2025年に、第72類と第73類のCBAM対象の鉄鋼製品(付属書Iのコード)をEU域外から609億5,201万ユーロ、5,773万121トン輸入しました(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。同規則の付属書Iは、鉄鋼を15項目で定めています。内訳は、一部のコードを除外した第72類、第73類の13の項、鉄鉱石の1コードです。

CBAMのベンチマークは、CNコードと生産ルートごとに実施規則(EU)2025/2620で定められています。熱延鋼板(CNコード 7208)のデフォルト用ベンチマークは、高炉・転炉法(BF-BOF)で製品1トン当たり1.370 tCO2e(CO2換算トン)、直接還元鉄(DRI)を使う電炉法で0.481 tCO2e、スクラップ電炉法で0.072 tCO2eです。

日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で2026年に輸入する場合、2.100 × 1.10 = 2.310から無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575を差し引き、製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書が必要です。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で換算すると、製品1トン当たり80.20ユーロです。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページでは、対象CNコードの全体像、公式ベンチマーク、生産ルート別のコスト、そして最初のCBAM申告期限である2027年9月30日までにEUの輸入者が行う手続きを、日本の鉄鋼メーカーと商社の視点も交えて説明します。

キャプション:高炉と転炉による鉄鋼生産のCO2が、EUの輸入者のCBAM証書の義務につながる流れです。熱延鋼板の高炉・転炉法のベンチマークは1.370 tCO2eです。


鉄鋼のCBAMとは:対象製品と仕組み

鉄鋼のCBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に、輸入した鉄鋼製品1トンごとの体化排出量に応じたCBAM証書の納付を求める証書制度です。

鉄鋼が対象になっているのは、とくに高炉・転炉法の生産で多くのCO2が排出されるためです。EUの生産者はこの排出についてEU排出量取引制度(EU ETS)の価格を負担していますが、EU域外の競合生産者は負担していません。CBAMは輸入される鉄鋼にも同等の炭素コストを求めることで、カーボンリーケージ(炭素漏出)を防ぎます。

対象は、合同関税品目分類表(CN)の3つの範囲にわたります。第72類は一次形状と半製品を含む鉄鋼、第73類は鉄鋼製品、第26類のCNコード 2601 12 00は凝結させた鉄鉱石(焼結鉱やペレットなど)です。

付属書Iの15項目は、10の除外コード群を除いた第72類全体、第73類の13の項、鉱石のコードで構成されています。実施規則(EU)2025/2620のベンチマーク表には、これらに属する8桁のコードが478個掲載されています。

鉄鋼は規則(EU)2023/956付属書IIに掲げる製品で、CBAMの計算に算入されるのは直接排出量だけです。 製鋼で消費する電力に由来する間接排出量は含まれません。EUの鉄鋼メーカーも、間接的な炭素コストは直接負担するのではなく、EU ETS指令に基づく国家補助で補償を受けています。例外は付属書IIに記載のない凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)で、その間接排出量も算入されます。

欧州委員会の税制・関税同盟総局(DG TAXUD)は2026年8月14日、EU域外の鉄鋼生産者と認可CBAM申告者を対象に、本格実施期間の鉄鋼部門ガイダンス(ガイダンス第5d号)を公表しました。同じ日に公表された本格実施期間の10のCBAMガイダンス文書(英語)の一つで、JETROも2026年8月26日のビジネス短信で紹介しています。


鉄鋼のCBAM対象CNコード:第72類と第73類の全体像

鉄鋼のCBAM対象CNコードは第72類、第73類、第26類の1コードにわたり、付属書Iはこれを15項目で定めています。

各項目と除外の内容はCBAM対象製品リストにまとめています。主なコード群、製品、CBAMの適用の有無は次の表のとおりです。

CNコード/範囲 製品 CBAMの対象
2601 12 00 凝結させた鉄鉱石(焼結鉱、ペレットなど) 対象
7201 銑鉄、スピーゲルアイゼン(塊状などのもの) 対象
7202(3種の合金鉄) フェロマンガン(7202 11、7202 19)、フェロクロム(7202 41、7202 49)、フェロニッケル(7202 60) 対象
7202(その他のコード) フェロシリコン(7202 21、7202 29)、フェロシリコマンガン(7202 30)、その他の合金鉄 対象外
7203 鉄鉱石の直接還元により得た鉄鋼製品(DRI) 対象
7204 鉄くず(鉄スクラップ) 対象外
7205 銑鉄、スピーゲルアイゼン、鉄鋼の粒と粉 対象
7206 鉄・非合金鋼のインゴットその他の一次形状 対象
7207 鉄・非合金鋼の半製品 対象
7208~7212 鉄・非合金鋼のフラットロール製品 対象
7213~7217 鉄・非合金鋼の棒鋼、線材、線 対象
7218~7223 ステンレス鋼の半製品と完成品 対象
7224~7229 その他の合金鋼の半製品と完成品 対象
7301~7302 鋼矢板、鉄道線路用資材 対象
7303~7307 鋳鉄・鉄鋼製の管と管用継手 対象
7308~7311 鉄鋼製の構造物、貯蔵タンク、容器 対象
7318 ねじ、ボルト、ナット、リベット 対象
7326 その他の鉄鋼製品(項全体) 対象

CNコード 7207 11 11、7207 11 14、7207 12 10などの非合金鋼の半製品は、EU域内で加工される主な原料です。EUの2025年の輸入量は項7207全体で894万3,526トンで、第72類と第73類のCBAM対象の項のなかで熱延鋼板(7208、1,147万8,344トン)に次ぐ第2位でした(Eurostat Comext、2025年。貿易統計で、CBAM申告の数値ではありません)。めっき・被覆鋼板(7210、642万4,431トン)などのフラットロール製品も数量の多い区分で、その体化排出量は輸出元の施設が使った粗鋼の生産ルートにさかのぼります。

鉄くず(CNコード 7204)は、付属書Iの第72類の項目で明示的に除外されているため、CBAMの対象外です。スクラップはCBAM対象製品でも前駆体でもないため、体化排出量は持ち込まれません。そのため、スクラップの配合率を高めた製鉄所は、検証済みの実排出量を用いれば、より低い排出量を報告できます。

川下製品への対象拡大に関する提案COM(2025)989(2026年11月4日時点で提案の段階で、法律ではありません)には、製造工程で発生する使用前スクラップを前駆体として扱う内容が含まれています。使用前スクラップと使用済みスクラップの違いは、CBAMのスクラップの抜け穴で分析しています。

日本からの輸出が多いのは、第72類のフラットロール製品と第73類のねじ・ボルト類です。EUの2025年の日本からの輸入額は、熱延鋼板(7208)が2億1,673万ユーロ、電磁鋼板を含む合金鋼板(7225)が1億7,762万ユーロ、ねじ・ボルト・ナット類(7318)が1億7,643万ユーロでした(Eurostat Comext、2025年)。コード別の一覧は鉄鋼のCNコードをご覧ください。

第73類で負担が大きい製品はどれですか

第73類の製品のうち、構造物(7308)、圧縮・液化ガス用の容器(7311)、ねじ・ボルト類(7318)などは、高炉・転炉法の粗鋼から作られる場合にCBAMの負担が大きくなります。

粗鋼の体化排出量は、前駆体の計算を通じて完成品に引き継がれます。そのためEUの輸入者は、製品に使われた上流の鋼材の体化排出量も含めて申告する必要があります。熱延コイル(7208)は冷延鋼板(7209)とめっき鋼板(7210)の主な前駆体で、その体化排出量は使用された鋼材の質量に応じてこれらの製品に引き継がれます。

加工品のデフォルト値は高いため、第73類の製品をEU域外から購入するEUの輸入者は、供給者に排出量データを求める必要があります(実施規則(EU)2025/2621、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。中国の構造物(7308)のデフォルト値は6.035 tCO2eで、鋼片(CNコード 7207 12 10)の3.169を大きく上回ります。7308のルートCのデフォルト用ベンチマークは1.491です。

この条件で中国産の構造物1トンをデフォルト値で2026年に輸入すると、マークアップ10%を加えた正味のコストは、82.32ユーロで製品1トン当たり426.81ユーロになります。中国産の鉄鋼をデフォルト値で輸入すると、ほとんどの場合、検証済みの実排出量を使うよりも多くの証書が必要になります。

日本の付属書Iの表では、構造物(7308)のデフォルト値は2.950 tCO2eで中国の半分以下、ボルト・ねじ(7318 15)は2.800、ナット(7318 16)は3.060です。2026年のコストは、構造物(CNコード 7308 90 98)が製品1トン当たり147.46ユーロ、ボルト・ねじ(CNコード 7318 15 42)が144.07ユーロです(82.32ユーロ、2026年11月4日計算)。

EUが2025年に日本から輸入したねじ・ボルト類(7318)は1億7,643万ユーロ、構造物(7308)は208万ユーロ(150トン)でした(Eurostat Comext、2025年)。経済産業省は、中小企業の比率が高く商流が複雑なねじ・ボルト業界向けに、「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)を公表しています。

デフォルト値を使う場合、生産ルートは出荷ごとに特定するのではなく、原産国の付属書Iの行で決まります。実排出量を使う場合は、EU炭素国境調整措置(CBAM)のもとで、事業者の排出量報告書に生産ルートを記載する必要があります。適用されるベンチマークがルートごとに異なり、3つのルートの間で金額の差が大きいためです。


鉄鋼のCBAM分野別カード:付属書Iの項目数は15、2026年のデフォルト用ベンチマークは製品1トン当たり1.364 tCO2e、直接排出量は対象、間接排出量は対象外(CNコード 2601 12 00を除く)、温室効果ガスはCO₂。凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)は付属書Iの製品で、付属書IIに記載がないため、間接排出量も算入されます。
出典:規則(EU)2023/956付属書I・II。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項 · 2026年10月26日時点
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- 15:付属書Iの項目数 (CNコード単位)

- 1.364:2026年のデフォルト用ベンチマーク (製品1トン当たりのtCO₂e。非合金鋼の半製品(CNコード 7207 11 14)、高炉・転炉法)

証書の対象となる排出量

- 直接排出量:対象

- 間接排出量:対象外(凝結させた鉄鉱石、CNコード 2601 12 00を除く)

- 温室効果ガス:CO₂

凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)は付属書Iの製品で、付属書IIに記載がないため、間接排出量も算入されます。

鉄鋼の公式CBAMベンチマークと排出係数

鉄鋼のCBAMベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項に定められており、排出係数でもデフォルト値でもありません。

同実施規則は2025年12月に採択されました。ベンチマークにCBAM係数を掛けたものが無償割当調整となり、輸入者が申告する体化排出量から差し引かれます。表はCNコードごとに2つの列で値を示しており、Column Aは検証済みの実排出量で申告する場合に、Column B(デフォルト用ベンチマーク)はデフォルト値で申告する場合に使います。

主な炭素鋼製品のColumn Bの値は次の表のとおりです(製品1トン当たりのtCO2e)。

CNコードと製品 高炉・転炉法(ルートC) DRIを使う電炉法(ルートD) スクラップ電炉法(ルートE)
7207 11 14、7207 12 10:半製品(ビレット、スラブ) 1.364 0.475 0.066
7208:熱延鋼板 1.370 0.481 0.072
7209:冷延鋼板 1.458 0.533 0.108
7210:めっき・被覆鋼板 1.491 0.567 0.141
7213、7214 20 00:棒鋼と線材 1.364 0.475 0.066

高炉・転炉法の1.370は、付属書Iの表がルートCを示す国の熱延鋼板をデフォルト値で申告するときの基準です。中国、インド、トルコ、日本などがこれに当たります。ルートごとの値の詳細は鉄鋼のCBAMベンチマークで解説しています。

ベンチマークは一般的な高炉の排出原単位より低く、その差が輸入者の負担になります。2026年の差し引き量は0.975 × 1.370 = 1.33575 tCO2eで、これを上回る排出量には1 tCO2eごとに証書価格の全額がかかります。国のデフォルト値より低い検証済み排出量を示せる輸出者は、EUの輸入者が必要とする証書数を減らせます。

スクラップ電炉法の0.072は高炉・転炉法の1.370の19分の1で、リサイクルスクラップを主原料とする電炉製鋼の排出量が構造的に少ないことを反映しています。ただし、ベンチマークが低いほど差し引き量も小さくなります。デフォルト値でこのルートが適用されるのは、付属書Iの表がスクラップ電炉法を示す6つの原産国(アゼルバイジャン、ミャンマー、北マケドニア、フィリピン、タイ、ウズベキスタン)だけです。

最も分かりやすい例はトルコです。トルコは2025年のCBAM対象の鉄鋼の数量で第2位の原産国で(Eurostat Comext、2025年)、その表は炭素鋼のすべてにルートCを示しています。そのため、トルコの電炉製の鋼材も、デフォルト値ではビレットと棒鋼で2.310 tCO2e、ベンチマーク1.364で評価されます。トルコのスクラップ電炉メーカーには、実排出量のデータを提供する経済的な動機があります。

日本も同じ状況です。日本の付属書Iの表の鉄鋼の行に記載されたルートは、炭素鋼の高炉・転炉法(C)が103行、低合金鋼の高炉・転炉法(F)が32行、両者の併記(C/F)が6行で、電炉法(D、E)の行は1つもありません。スクラップを使う日本の電炉メーカーの製品も、検証済みの実排出量を提供するまでは高炉材と同じデフォルト値で評価されます(電炉法(EAF)とCBAM)。

ルートの選択は、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項に従います。デフォルト値を使う場合について、同項は "the same production route shall be used as indicated in Annex I to Commission Implementing Regulation (EU) 2025/2621 for the country of origin of that good or precursor" と定めています(製品または前駆体の原産国について実施規則(EU)2025/2621付属書Iに示された生産ルートと同じルートを用いる。当サイト仮訳)。

輸入者がルートを選ぶことはできません。また、DRIを使う電炉法(ルートD)を示す国の表はありません。実排出量を使う場合は、事業者が施設のルートを報告し、検証機関が確認します。ハイブリッド炉を操業する輸出者や、操業キャンペーンごとに原料の配合を変える施設は、正確な申告のためにルートの内訳を記録しておく必要があります。

鉄鋼の体化排出量はどのように算定されますか

鉄鋼の証書数は、輸入した製品の質量、適用される排出量(検証済みの実排出量、またはマークアップを加えた付属書Iのデフォルト値)、無償割当調整、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)を組み合わせて求めます。

基本の式は、体化排出量(tCO2e)=輸入製品の正味質量(トン)×特定体化排出量(製品1トン当たりのtCO2e)です。中国産の鋼片(CNコード 7207 12 10)500トンを2026年にデフォルト値で輸入する場合、特定体化排出量はデフォルト値3.169にマークアップ10%を加えた3.4859 tCO2eで、申告する体化排出量は1,742.95 tCO2eになります。2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロでは、無償割当調整前のコストは14万3,479.64ユーロです。

ただし、先に無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引くため、実際に納付する証書はこれより少なくなります。CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年は97.5%です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。部門横断補正係数(CSCF)は、2026年7月23日の実施決定(EU)2026/1862により2026年から2030年まで100%です。

鋼片の例では、無償割当調整は0.975 × 1.00 × 1.364 = 1.3299 tCO2eで、製品1トン当たり2.1560枚、合計1,078枚の証書が残り、正味のコストは8万8,740.96ユーロです。これは総額の61.8%で、総額に小さな一定割合を掛ける簡易計算とは大きく異なります。2030年の輸入では、CBAM係数51.5%とマークアップ30%により、同じ価格で14万653.60ユーロになります(ベンチマークは2027年から更新される可能性があります)。

日本産の鋼片(CNコード 7207 12 10、デフォルト値2.100)500トンでは、体化排出量は2.310 × 500 = 1,155 tCO2e、無償割当調整前のコストは9万5,079.60ユーロです。製品1トン当たり0.9801枚、合計490.05枚分の証書が必要で、正味のコストは4万340.92ユーロ、総額の42.4%です。

算定の流れは、生産施設でのデータ収集から登録簿に提出するCBAM申告書まで、体化排出量の算定方法で説明しています。鉄鋼製品の計算手順と計算例は鉄鋼のCBAM計算にまとめています。


生産ルート別の鉄鋼のCBAMコスト(2026年)

鉄鋼のCBAMコストは、申告する排出量、適用される生産ルートとベンチマーク、輸入した四半期の証書価格、輸入年のCBAM係数で決まります。

次の表は、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のデフォルト値と、実施規則(EU)2025/2620のColumn Bのベンチマークを、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算したものです。2026年の列はマークアップ10%とCBAM係数97.5%、2030年の列はマークアップ30%とCBAM係数51.5%を同じ価格で当てはめています。

原産国、製品、CNコード デフォルト値(tCO2e/t) 付属書Iのルートとベンチマーク 2026年の総額(無償割当調整前、82.32ユーロ) 2026年の正味コスト 2030年の正味コスト
トルコ、ビレット、7207 11 14 2.310 (C)高炉・転炉法、1.364 209.18ユーロ/t 99.70ユーロ/t 189.38ユーロ/t
中国、スラブ、7207 12 10 3.169 (C)高炉・転炉法、1.364 286.96ユーロ/t 177.48ユーロ/t 281.31ユーロ/t
中国、熱延鋼板、7208 3.187 (C)高炉・転炉法、1.370 288.59ユーロ/t 178.63ユーロ/t 282.98ユーロ/t
インド、熱延鋼板、7208 4.280 (C)高炉・転炉法、1.370 387.56ユーロ/t 277.60ユーロ/t 399.95ユーロ/t
韓国、熱延鋼板、7208 2.118 (C)高炉・転炉法、1.370 191.79ユーロ/t 81.83ユーロ/t 168.58ユーロ/t
北マケドニア、棒鋼、7213 1.530 (E)スクラップ電炉法、0.066 138.54ユーロ/t 133.25ユーロ/t 160.94ユーロ/t
日本、半製品、7207 11 14 2.100 (C)高炉・転炉法、1.364 190.16ユーロ/t 80.68ユーロ/t 166.91ユーロ/t
日本、熱延鋼板、7208 51 20 2.100 (C)高炉・転炉法、1.370 190.16ユーロ/t 80.20ユーロ/t 166.65ユーロ/t
日本、ボルト・ねじ、7318 15 42 2.800 (C)高炉・転炉法、1.364 253.55ユーロ/t 144.07ユーロ/t 241.82ユーロ/t

「ユーロ/t」は製品1トン当たりの金額です。計算は2026年11月4日、法令の算定方法を実装した当サイトの計算ライブラリで行いました。

2026年の時点で、正味コストはすでに大きな額です。ルートCでは無償割当調整によって製品1トン当たり約1.33 tCO2eが一律に差し引かれ、それを上回る分には、デフォルト値のマークアップを含めて証書価格の全額がかかります。2030年の列は、CBAM係数の低下とマークアップの30%への引き上げによって、コストがさらに増えることを示しています。

実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しています。そのため、2030年の数値は計画用の目安です。

中国の鋼片(CNコード 7207 12 10)のデフォルト値3.169では、2026年の総額が製品1トン当たり286.96ユーロ、正味のコストが177.48ユーロです。生産者の検証済み排出量がマークアップ後の3.4859を0.1 tCO2e下回るごとに、この価格で製品1トン当たり8.23ユーロの差が生じます(実排出量の場合に適用されるベンチマークの違いを調整する前の金額です)。

マークアップが2028年から30%に上がり、2034年からはCBAM係数が適用されなくなるため、中国の鉄鋼輸出者には、検証済みの排出量測定に投資する強い動機があります。日本の熱延鋼板も、価格を82.32ユーロで一定とした場合、製品1トン当たり2026年80.20ユーロ、2027年100.31ユーロ、2028年123.23ユーロ、2030年166.65ユーロと上昇します(2027年以降の数値はベンチマーク更新の可能性を含む目安です)。

貴社の製品と数量に応じた推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

キャプション:スクラップ電炉法の熱延鋼板のベンチマーク0.072 tCO2eと、高炉・転炉法の1.370 tCO2eの比較です。


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EUの輸入者による鉄鋼のCBAM手続き

EUの輸入者は、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)で改正された規則(EU)2023/956に基づき、鉄鋼について5つの手続きを順に行います。

手続きを時系列に並べると、次のとおりです。

  1. 認可CBAM申告者の資格を取得する。 設立地のEU加盟国の管轄当局に申請します。本格実施期間中の暫定的な輸入のための申請期限は2026年3月31日でした(第17条第7a項)。管轄当局は120暦日以内に決定し、追加情報を求める場合は最大180日まで延長されます(実施規則(EU)2025/486第4条第1項、第5条第4項)。
  2. EU域外の鉄鋼の供給者から体化排出量のデータを集める。 実排出量を報告する供給者は、施設、製品、暦年ごとに、生産ルートを記載した検証済みの排出量報告書を提供します。実データがなければ、原産国とCNコードに対応する実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値を、2026年はマークアップ10%を加えて使います。
  3. 輸入ごとに記録を保存する。 体化排出量の計算に必要な情報(CNコード、正味質量、原産国、生産施設、使用した排出量データ)を保存します(第7条第5項、付属書V)。輸入は通常どおり税関に申告します。税関のデータはCBAM登録簿に送られ、体化排出量は年次のCBAM申告書で報告します(第6条)。
  4. 共通中央プラットフォームでCBAM証書を購入する。 CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します(第20条第1項)。2026年の輸入には、輸入した四半期のEU ETSの排出枠のオークション価格の平均が適用されます(第21条第1a項)。2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。
  5. 年次のCBAM申告書を提出する。 2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。申告書には、体化排出量の合計、無償割当調整後に納付する証書数、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)を記載します。

必要な数のCBAM証書を9月30日までに納付しなかった輸入者には、納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項)。罰金を支払っても証書の納付義務は残ります(第26条第3項)。

認可申告者でない者が規則に従わずに鉄鋼を輸入した場合は、その3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)の罰金が科されます(第26条第2項)。CBAMの罰則のなかで最も重い金銭的な措置です。証書の購入と管理の詳細はCBAM証書をご覧ください。


主要な鉄鋼輸出国:CBAMの影響が大きいのはどこですか

鉄鋼のCBAMの影響は、原産国のデフォルト値、EUとの取引量、国内の炭素価格によって大きく異なります。

2026年11月4日時点で、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)に関する実施規則は案の段階(未採択)で、どの国の炭素価格も認められていません。以下の正味コストは、2026年の輸入をデフォルト値で申告した場合の82.32ユーロでの金額です。

輸入の数値は、EU27か国が2025年に輸入した第72類と第73類のCBAM対象の鉄鋼製品(付属書Iのコード、鉄鉱石 2601 12 00を除く)で、割合はEU域外からの輸入に占める数量ベースのものです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。これは貿易統計で、CBAM申告の数値ではありません。以下では5か国を数量の多い順に挙げています(第3位は517万2,095トンのロシアです)。

  • 中国:2025年は906万6,919トン、134億5,408万ユーロで、EU域外からの輸入に占める割合は数量ベースで15.71%、金額ベースで22.07%と、いずれも第1位です。中国の全国排出量取引制度は2025年3月20日の作業計画で鉄鋼、セメント、アルミニウム製錬に拡大されましたが、無償割当は100%で、第9条では認められていません。鋼片(CNコード 7207 12 10)のデフォルト値3.169で、正味のコストは製品1トン当たり177.48ユーロです。インドより低く、トルコや韓国よりかなり高い水準です。
  • トルコ:2025年は743万1,339トン、71億7,563万ユーロ(数量ベースで12.87%、第2位)で、2023年の456万3,421トンから増えました。トルコの表は炭素鋼のすべてにルートCを示し、ビレットと棒鋼のデフォルト値は2.310 tCO2e(正味で製品1トン当たり99.70ユーロ)です。トルコの排出量取引規則は2026年8月27日に公布されましたが、試行段階の無償割当は100%で、どの生産ルートでも実際に支払われる炭素価格はなく、第9条の控除は生じません。
  • ウクライナ:2025年は424万6,940トン、24億4,925万ユーロ(数量ベースで7.36%、第4位)で、2023年の284万5,823トンから増えました。ウクライナはEUにCBAMの軽減を求めていますが、2026年10月12日時点で免除はありません。
  • インド:2025年は400万7,992トン、43億9,029万ユーロ(数量ベースで6.94%、第5位、金額ベースでは第3位)です。インドの表はルートCを示し、インドの炭素クレジット取引制度(CCTS)は第9条で認められていません。デフォルト値は熱延鋼板(CNコード 7208)で4.280、ビレットで4.270で、熱延鋼板の正味のコストは製品1トン当たり277.60ユーロです。
  • 韓国:2025年は362万8,576トン、36億3,909万ユーロ(数量ベースで6.29%、第6位)です。韓国の排出量取引制度(K-ETS)は第4期(2026年から2030年まで)に入っており、ICAPによれば鉄鋼は同期間も無償割当100%を維持します。第9条では認められていません。CNコード 7208のデフォルト値2.118で、正味のコストは製品1トン当たり81.83ユーロです。

日本の鉄鋼輸出の位置づけ

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象の鉄鋼製品は12億4,589万ユーロ、80万9,223トンで、EU域外からの輸入に占める割合は金額ベースで2.04%(第13位)、数量ベースで1.40%(第16位)です。

2023年の22億1,786万ユーロ、185万9,395トンから、金額で44%、数量で56%減りました。2025年の内訳は、第72類の完成品が8億814万ユーロ(74万8,767トン)、第73類の製品が4億2,578万ユーロ(5万1,354トン)、粗鋼と半製品が726万ユーロ(6,221トン)、銑鉄・合金鉄・直接還元鉄が471万ユーロ(2,881トン)で、凝結させた鉄鉱石はゼロです(Eurostat Comext、2025年)。

日本の熱延鋼板のデフォルト値2.100は、韓国の2.118とほぼ同じで、トルコの2.428、中国の3.187、インドの4.280より低い水準です。熱延鋼板(7208)の数量は2023年から2025年に74%減少しました。要因の一つとして、EUが2025年9月26日に日本産を含む熱延鋼板に課した確定反ダンピング関税が考えられます。ただし、統計だけで因果関係は証明できません。また、反ダンピング関税はCBAMのコストではありません。

日本の炭素価格も、2026年11月4日時点でEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。2026年度(2026年4月から2027年3月)に義務化された排出量取引制度(GX-ETS)では、鉄鋼にベンチマーク方式で無償割当が行われ(ICAP)、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。

地球温暖化対策のための税(CO2 1トン当たり289円、環境省)も、鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭を免税としています(経済産業省の令和9年度税制改正要望)。英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度の暫定リストに載せましたが、EU CBAMの扱いとは別です。詳しくはCBAMの炭素価格控除とCBAMと日本をご覧ください。


2026年以降の見通し:鉄鋼の輸入者と輸出者への影響

鉄鋼のCBAMの義務は2026年1月1日から適用されており、デフォルト値で申告する輸入者には初年度から大きな負担が生じます。

証書価格82.32ユーロの場合、トルコ産ビレットは製品1トン当たり99.70ユーロ、中国産スラブは177.48ユーロ、日本産熱延鋼板は80.20ユーロです。デフォルト値のマークアップが2027年に20%、2028年に30%へ上がり、CBAM係数も下がるため、コストは毎年上昇します。EUの輸入者にとって重要な計画期間は2029年から2030年で、CBAM係数は1年で77.5%から51.5%に下がります。

高排出の原産国から高炉・転炉法の鉄鋼をデフォルト値で調達する輸入者は、最も急なコスト上昇に直面します。中国産の鋼片(CNコード 7207 12 10、デフォルト値3.169)を年間1万トン輸入するEUの輸入者の正味の証書コストは、2026年の輸入で約177万4,800ユーロ、2030年の輸入では同じ証書価格と数量で約281万3,100ユーロです(2030年はベンチマーク更新の可能性を含む目安)。

日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を年間1万トン輸入する場合は、2026年の輸入で約80万2,000ユーロ、2030年の輸入で約166万6,500ユーロです(同じ前提)。日本の鉄鋼輸出者にCBAMの法的義務はなく、証書の購入、申告、納付の義務はEUの輸入者またはその間接的通関代理人が負います。輸出者の役割は、検証済みの排出量データの提供です(日本の鉄鋼輸出とEU CBAM)。

実施規則(EU)2025/2547に基づく排出量のモニタリング、委任規則(EU)2025/2551に基づき認定された検証機関による検証、生産ルートの記録に2027年までに投資する第三国の輸出者は、国のデフォルト値より低い実排出量を示せます。それによりEUの輸入者の証書数が減り、デフォルト値に頼る競合に対して価格面の優位が生まれます。

CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関だけで、GX-ETSの登録確認機関であることはCBAMの検証資格になりません。2026年10月23日時点で欧州委員会の認定検証機関リストは未公表で、各国の登録簿で確認できる認定に日本の法人は含まれていません(CBAM認定検証機関)。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


鉄鋼のCBAMに関するよくある質問:国別のコストと関連ツール

主な輸出国ごとの鉄鋼のCBAMコストと、EUの輸入者が証書の義務を推計・管理するためのツールについて、よくある質問の形でまとめます。

トルコの輸出者にとって鉄鋼のCBAMコストはいくらですか

トルコは2025年にCBAM対象の鉄鋼の第2位の原産国で、743万1,339トンを輸出しました(Eurostat Comext、2026年10月12日抽出)。トルコの付属書Iの表は、炭素鋼のすべてに高炉・転炉法のルートを割り当てています。デフォルト値では、トルコ産のビレットと棒鋼(CNコード 7207 11 14、CNコード 7213)は2.310 tCO2e、2026年のマークアップ10%、ルートCのベンチマーク1.364で評価されます。

その結果、証書は製品1トン当たり1.2111枚で、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで製品1トン当たり99.70ユーロです(無償割当調整前は209.18ユーロ)。熱延鋼板(CNコード 7208、デフォルト値2.428)は製品1トン当たり109.90ユーロです。トルコの排出量取引の試行は無償割当100%で、2026年11月4日時点でどの国の炭素価格も認められていないため、第9条の控除はありません。詳しくはCBAM Turkey(英語)をご覧ください。

インドの輸出者にとって鉄鋼のCBAMコストはいくらですか

インドの付属書Iの表は、どの炉で作られたかにかかわらず、すべての炭素鋼のコードに高炉・転炉法(ルートC)を割り当てています。インドのデフォルト値は主要な原産国のなかで最も高い水準で、ビレット(CNコード 7207 11 14)が4.270 tCO2e、熱延鋼板(CNコード 7208)が4.280 tCO2eです。

2026年のマークアップとルートCのベンチマークを当てはめると、正味のコストは82.32ユーロでそれぞれ製品1トン当たり277.18ユーロと277.60ユーロです。インドの炭素クレジット取引制度は第9条で認められていません。国別の貿易データと分析はCBAM India(英語)にあります。

中国産の鉄鋼は他国よりCBAMのデフォルト値が高いですか

一部の国より高く、別の国より低い水準です。中国のデフォルト値は、鋼片(CNコード 7207 12 10)が3.169 tCO2e、熱延鋼板(CNコード 7208)が3.187 tCO2eです(実施規則(EU)2025/2621、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。鋼片のコードでは、トルコ(2.310)、韓国(2.118)、日本(2.100)より高く、インド(4.270)とインドネシア(8.230)より低い値で、同コードの高炉・転炉法のベンチマーク1.364の2.32倍です。

施設単位の検証済み排出量データを提供する中国の鉄鋼生産者は、デフォルト値の代わりに実排出量を使えます。ただし、実施規則(EU)2025/2547のモニタリング規則と、EUで認定された検証機関による検証には大きな事務コストがかかります。中国のCBAMの影響の全体像はCBAM China(英語)をご覧ください。

日本の鉄鋼製品にはどのCBAMデフォルト値が適用されますか

日本の半製品(CNコード 7207 11 14)と熱延鋼板(CNコード 7208)のデフォルト値は製品1トン当たり2.100 tCO2eです(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。冷延鋼板(7209)は2.143、めっき鋼板(7210)は2.130、無方向性電磁鋼板(7225 19 90)は3.530、ボルト・ねじ(7318 15)は2.800、構造物(7308)は2.950です。

日本の表の鉄鋼の行には電炉法のルートがなく、ベンチマークは高炉・転炉法の値になります。2026年の熱延鋼板では、2.310から無償割当調整1.33575を差し引いた製品1トン当たり0.97425枚の証書が必要で、82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。国別の一覧はCBAM デフォルト値(輸出者向け)にあります。

日本で支払った炭素価格は鉄鋼のCBAMで控除されますか

2026年11月4日時点では控除されません。第9条の実施規則案は2026年5月13日に公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、まだ採択されていません。日本のGX-ETSや地球温暖化対策のための税を含め、どの国の炭素価格も認められていません。控除の対象は実際に支払われた炭素価格で、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。

GX-ETSでは鉄鋼に無償割当が行われ、温対税は鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭を免税としています。デフォルト値で申告する場合、2027年から欧州委員会が国ごとに定めることのできる年次のデフォルト炭素価格を参照して控除を請求できますが(第9条第4項)、日本についてはまだ定められていません。詳しくは第9条の炭素価格控除をご覧ください。

CBAMのほかに日本の鉄鋼にかかるEU規制はありますか

日本の鉄鋼には、CBAMとは別の3つのEU規制がかかります。熱延鋼板への反ダンピング関税(6.9%から30%、2025年9月26日)、2026年7月1日から適用される鉄鋼規則(EU)2026/1384の関税割当(年間合計1,834万5,922トン、枠外の輸入には50%の関税)、2026年10月1日から適用される実施規則(EU)2026/1963の溶解・鋳造地(melt and pour)の証明です。

これらはCBAMのコストではなく、CBAM証書の数にも影響しません。日本への国別割当は本ページでは確認していません。輸出1件ごとの書類では、CBAMの排出量データと溶解・鋳造地の証明を一緒に準備すると効率的です。

CBAMの50トン基準は鉄鋼の輸入にも適用されますか

適用されます。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。この50トンはすべてのCNコードと原産国の合計で、鉄鋼はセメント、アルミニウム、肥料と合算されます。

50トン以下の輸入者は、その年の証書の購入と申告の義務を免除され、免除を受けるには税関申告でその旨を示す必要があります。基準は暦年全体で判定され、1回の出荷ごとではありません。電力と水素は免除の対象外ですが、鉄鋼は対象になります。

スクラップを使う鉄鋼の輸出者は排出係数ゼロを主張できますか

主張できません。スクラップ自体は投入物として体化排出量がゼロですが、それから作られる鉄鋼はゼロではありません。電炉は、スクラップ100%の配合でも、電極の消費や補助燃料による直接排出量があります。

実施規則(EU)2025/2620のスクラップ電炉法の値(ビレット0.066 tCO2e、熱延鋼板0.072 tCO2eなど)は無償割当調整に使うベンチマークで、輸出者が主張できる排出係数ではありません。スクラップを使う輸出者が示せるのは、検証済みの実排出量です。検証済みのデータがなければ、輸入者は国のデフォルト値を申告します。トルコのビレットと棒鋼では、炉の種類にかかわらず2.310 tCO2eです。

鉄鋼のCBAM証書の価格はEU ETSの排出枠と違いますか

違いません。鉄鋼のCBAM証書の価格はEU ETSの価格に直接連動します。2026年の輸入には、EU ETSの排出枠のオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。2026年第1四半期は75.36ユーロ、第2四半期は75.28ユーロ、第3四半期は82.32ユーロです。

週次価格が適用されるのは2027年の輸入からです(第21条第1項)。CBAM独自の炭素価格はないため、鉄鋼のCBAMコストの予測はすべてEU ETSの価格予測に左右されます。第3四半期の価格では、トルコ産ビレットはデフォルト値で総額が製品1トン当たり209.18ユーロ、無償割当調整後が99.70ユーロです。

CBAM計算ツールは、EU ETSの価格シナリオと輸入数量ごとに証書の義務を試算します。公式のデフォルト値とベンチマークに法令の算定式を当てはめた推計で、拘束力のある数値はCBAM申告書に記載される数値です。

EUの輸入者は鉄鋼のCNコードをどのように調べますか

EUの輸入者は、毎年改訂されるEUの合同関税品目分類表(CN)で、鉄鋼製品ごとのCNコードを特定します。CNコードによって、適用されるデフォルト値とベンチマーク、そもそも対象かどうか(鉄くず 7204は対象外)、EU域外の供給者から集めるべき生産施設のデータが決まります。

第72類と第73類のすべての鉄鋼のコードは、鉄鋼のCNコード検索ツールで確認できます。日本語の解説は鉄鋼のCNコードにあります。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。