CBAM鉄鋼の体化排出量の計算方法:高炉・転炉法(BF-BOF)と電炉法(EAF)

CBAM鉄鋼の体化排出量と証書コストの計算方法を4ステップで解説。

このページの内容
鋼管1トン当たりの特定体化排出量の図。鋼管工場の直接排出量に、コイルの使用量×コイルの体化排出量を加え、鋼管の生産量で割ります。無償割当調整を差し引くと1トン当たりのCBAM証書の数になります。

CBAM鉄鋼の計算は、EUに鉄鋼製品を輸入するすべての輸入者が納付するCBAM証書の数を決めます。直接排出量を最も大きく左右するのは生産ルートです。実施規則(EU)2025/2620のベンチマーク表では、半製品のデフォルト値用ベンチマークは高炉・転炉法(BF-BOF)が製品1トン当たり1.364 tCO2e(CO2換算トン)、スクラップを使う電炉法(EAF)が0.066で、約21対1の差があります。

ただし、ベンチマークは差し引く量であり、排出係数ではありません。本ページでは、生産ルートによる差の大きさを示す目的に限って使います。

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の根拠は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。2026年1月1日からの本格実施期間では、検証済みの実排出量と実施規則(EU)2025/2621付属書Iのデフォルト値のどちらを申告するか、そこからどのベンチマークを差し引くかが、鉄鋼のCBAMコストを左右する最も重要な判断になります。

日本の輸出者がまず確認すべきなのは、日本のデフォルト値の表です。日本の表の炭素鋼の行には高炉・転炉法(C)しか記載がなく、デフォルト値で計算すると日本産の半製品(CNコード 7207 11 14)は2026年輸入分で製品1トン当たり80.68ユーロになります。

本ページでは、計算の4つのステップ、生産ルート別の違い、実排出量に切り替える意味を、日本と他の原産国の数値を使って順に説明します。制度全体はEU CBAMガイドで解説しています。

キャプション:半製品のデフォルト値用ベンチマークは、高炉・転炉法が製品1トン当たり1.364 tCO2e、スクラップ電炉法が0.066です。輸入者の支払額は、検証済みの実排出量があればその値で、なければ原産国の表のデフォルト値とルートで決まります。


CBAMで計算する鉄鋼の体化排出量とは何ですか

CBAMにおける鉄鋼の体化排出量は、生産施設で鉄鋼製品を製造する際に生じる直接排出量で、輸入する製品1トン当たりのtCO2eで表します(規則(EU)2023/956第3条第22号)。

鉄鋼は規則(EU)2023/956の付属書IIに掲げられているため、電力消費による間接排出量は算定に含まれず、直接排出量だけが対象です。この点で、電力由来の間接排出量も対象になるセメントや肥料とは異なります。鉄鋼で算定の対象になるのは、高炉でのコークスの燃焼、転炉での酸素吹錬、電炉でのアーク溶解の工程から生じる排出です。

欧州委員会の鉄鋼部門ガイダンス(ガイダンス第5d号)は、2026年8月14日に公表された本格実施期間向けの10のガイダンス文書(英語)の一つで、この範囲を確認しています。鉄鋼製品で数えるのは原則として直接排出量だけです。例外は凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00、焼結鉱やペレットを含む)で、電力由来の間接排出量も計算します。

同ガイダンスは、鉄鋼部門の製品を統合製品カテゴリに分けています。焼結鉱(sintered ore)、銑鉄、合金鉄(フェロマンガン、フェロクロム、フェロニッケル)、直接還元鉄(DRI)、粗鋼、鉄鋼製品です。


CBAM鉄鋼の計算手順:4つのステップ

鉄鋼の輸入品のCBAM体化排出量と証書数は、次の4つのステップで計算します。

  1. 生産ルートを区分する(高炉・転炉法、スクラップ電炉法、DRIを使う電炉法)
  2. 実排出量かデフォルト値かを選ぶ
  3. 体化排出量の計算式を当てはめる
  4. CBAM証書の数とコストを計算する

ステップ1:生産ルートを区分する

生産ルートが重要な理由は2つあります。施設の実排出量を左右すること、そして無償割当調整に使うCBAMベンチマークを決めることです。実施規則(EU)2025/2620のベンチマーク表に載っている炭素鋼のルートは、次の3つです(括弧内は表のルート記号)。

  • 高炉・転炉法(BF-BOF)、ルート(C):高炉で作った銑鉄から製造する粗鋼
  • スクラップ電炉法(scrap-EAF)、ルート(E):リサイクルしたスクラップを溶解して製造する粗鋼
  • DRIを使う電炉法(DRI-EAF)、ルート(D):直接還元鉄から製造する粗鋼

ルートを誰が特定するかは、実排出量とデフォルト値のどちらを使うかで変わります。実排出量の場合は、施設の事業者が排出量報告書に施設のルートを記載し、認定検証機関が確認します。デフォルト値の場合、輸入者がルートを区分する必要はありません。実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項により、実施規則(EU)2025/2621付属書Iの原産国の行に記載されたルートを使います。

中国、インド、トルコの表は、他の多くの国と同じく、炭素鋼のすべてのコードに高炉・転炉法(C)を記載しています。日本の表も同じで、鉄鋼の行に記載されたルートは炭素鋼の(C)、低合金鋼の(F)、両者の併記(C/F)だけです。スクラップ電炉法を記載している表は、アゼルバイジャン、ミャンマー、北マケドニア、フィリピン、タイ、ウズベキスタンの6か国だけです。

この計算は、規則(EU)2023/956付属書Iの鉄鋼のCNコードに該当するすべての出荷に適用されます。対象は、第72類(一部を除く)、第73類の13の項、CNコード 2601 12 00です。主なコードは7206、7207、7208から7212、7213から7217、7301から7311です。コードごとの詳細はCBAM鉄鋼のCNコードにまとめています。

ステップ2:実排出量かデフォルト値かを選ぶ

鉄鋼のCBAM申告に使う排出量データは2種類あります。実排出量は、実施規則(EU)2025/2547のモニタリング方法で算定し、実施規則(EU)2025/2546に基づき認定検証機関の検証を受けた値です。デフォルト値は、実排出量が検証できない場合や提供されない場合に使う、実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の値で、原産国とCNコードごとに定められています。

次の表に、6つの原産国の半製品と熱延鋼板のデフォルト値を、付属書Iに記載されたルート、そのルートで決まるColumn Bのベンチマークとあわせて示します。

原産国 デフォルト値、半製品(CNコード 7207 11 14、7207 12 10)(tCO2e/t) デフォルト値、熱延鋼板(CNコード 7208)(tCO2e/t) 付属書Iのルート Column Bのベンチマーク(7207/7208)
中国 3.169 3.187 (C)高炉・転炉法 1.364/1.370
インド 4.270 4.280 (C)高炉・転炉法 1.364/1.370
トルコ 2.310 2.428 (C)高炉・転炉法 1.364/1.370
日本 2.100 2.100 (C)高炉・転炉法 1.364/1.370
北マケドニア 1.530 1.530 (E)スクラップ電炉法 0.066/0.072
タイ 1.920 1.920 (E)スクラップ電炉法 0.066/0.072

デフォルト値とベンチマークは別の量です。デフォルト値は申告する排出量で、ベンチマークはステップ4で差し引く量を決めます。中国のスラブのデフォルト値3.169は、ベンチマーク1.364の2倍を超えます。このため、検証済みの排出量がデフォルト値を下回る中国の生産者には、そのデータを提供する直接の経済的な動機があります。

原産国の表に該当するコードの行がない場合や値がダッシュの場合は、「その他の国と地域」の表の値を使います。この表の値は、半製品(CNコード 7207 11 14)が3.996、熱延鋼板(CNコード 7208)が4.049で、日本の2.100のほぼ2倍です。

デフォルト値には、実施規則(EU)2025/2621に基づくマークアップが加わります。率は総排出量のデフォルト値に対して2026年10%、2027年20%、2028年以降30%で、実排出量にはかかりません。マークアップは無償割当調整を差し引く前に加算されるため、マークアップ分には証書価格が全額かかります。国別の値の読み方はCBAMのデフォルト値で説明しています。

ステップ3:体化排出量の計算式を当てはめる

特定体化排出量(SEE)は、次の計算式で求めます。

特定体化排出量=(製品に配分された直接のプロセス排出量+直接の燃料燃焼排出量)÷その製品の生産量(トン)

例えば、高炉・転炉法の施設が、1暦年の報告期間にモニタリングした直接排出量120万 tCO2を、ある製品60万トンに配分する場合(説明用の数値で、デフォルト値ではありません)、特定体化排出量は120万÷60万=製品1トン当たり2.0 tCO2です。

前駆体の排出量は、マスバランスによる配分で引き継がれます。冷延鋼板やめっき鋼板の前駆体として使う熱延コイル(CNコード 7208)の体化排出量は、川下の製品の申告に持ち越されます。川下の鉄鋼製品を輸入する場合は、原料から計算し直すのではなく、前駆体の特定体化排出量を算入します。

JETROは2026年9月18日の記事「EU CBAM、排出量算定の実務対応」で、高炉で作る熱延鋼板(CNコード 7208)を例に、焼結鉱、銑鉄、粗鋼を経る前駆体の流れを図解しています。中間品を購入する企業は一次・二次サプライヤーから前駆体の体化排出量データを入手する必要があり、データを入手できない場合もあると指摘しています。

ステップ4:CBAM証書の数とコストを計算する

特定体化排出量が決まれば、無償割当調整を差し引く前の製品1トン当たりの総コストは次の式で求められます。

総CBAMコスト=特定体化排出量 × CBAM証書の価格

実際に納付する証書の数は、無償割当調整(SEFA)を差し引くため、これより少なくなります。

製品1トン当たりの証書数=max[0,特定体化排出量-無償割当調整-第9条の炭素価格分]、無償割当調整=CBAM係数 × 部門横断補正係数(CSCF)× CBAMベンチマーク

CBAM係数は無償割当のうち維持される割合で、2026年は97.5%です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で、デフォルト値による5つの輸入例を計算すると次のとおりです(2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算)。

原産国、製品、CNコード 特定体化排出量:デフォルト値+マークアップ10%(tCO2e/t) 総コスト(82.32ユーロ) 無償割当調整:0.975 × ベンチマーク 2026年の正味コスト(製品1トン当たり)
インド、ビレット、7207 11 14 4.697 386.66ユーロ 0.975 × 1.364 = 1.3299 277.18ユーロ
中国、スラブ、7207 12 10 3.4859 286.96ユーロ 0.975 × 1.364 = 1.3299 177.48ユーロ
トルコ、ビレット、7207 11 14 2.541 209.18ユーロ 0.975 × 1.364 = 1.3299 99.70ユーロ
日本、半製品、7207 11 14 2.310 190.16ユーロ 0.975 × 1.364 = 1.3299 80.68ユーロ
タイ、半製品、7207 11 14 2.112 173.86ユーロ 0.975 × 0.066 = 0.06435 168.56ユーロ

2026年の正味コストは、インド、中国、トルコの3例では総コストの48%から72%、日本は42%、タイは97%で、2.5%ではありません。2026年に排出量の2.5%に当たる額だけを支払うのは、排出量がベンチマークとちょうど等しい製品に限られます。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。

コストは年を追って上がります。同じ価格82.32ユーロで計算すると、2030年輸入分はトルコのビレットが製品1トン当たり189.38ユーロ、日本の半製品が166.91ユーロです(CBAM係数51.5%、マークアップ30%、現行のベンチマークで計算)。ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される場合があるため(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)、2030年の数値は目安です。

事業計画には、2026年の数値だけでなく、無償割当の縮小を織り込む必要があります。CBAM係数は2029年に77.5%、2030年に51.5%まで下がります。

貴社の製品と数量に基づく推計は、CBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

欧州委員会の鉄鋼ガイダンスにある計算例

欧州委員会の鉄鋼部門ガイダンス(2026年8月14日のガイダンス第5d号)は、これらのステップが証書義務にどうつながるかを例示しています。計算例は2027年にステンレス鋼管100トンを輸入すると仮定したもので、無償割当調整を差し引いた後、外国で支払った炭素価格を差し引く前の段階で、95.9枚のCBAM証書の納付が必要になります。輸入した鋼管1トン当たり1枚弱です。

欧州の鉄鋼流通業者の団体EUROMETALは、2026年8月19日にこの部門ガイドを要約しました。ガイダンス全体は430ページに及ぶ分量が批判されています(英語)が、この例は、鉄鋼の完成品の輸入者が本格実施期間に行う計算を欧州委員会自身が示したものです。


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鉄鋼の輸入者にはどのようなCBAM証書の義務がありますか

CBAM証書の義務は、体化排出量の計算に続く金銭面の手続で、EUの認可CBAM申告者が負います。

全部門に共通する実排出量とデフォルト値の関係を含め、体化排出量の算定方法は専用のページで解説しています。日本の鉄鋼メーカーや商社にCBAMの法的義務はなく、義務を負うのはEUの輸入者またはその間接的通関代理人です。

鉄鋼の輸入者である認可申告者は、前年の輸入分について毎年9月30日までにCBAM証書を納付します。2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します。

CBAM証書の価格は、2026年の輸入分にはEU ETSの排出枠のオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。週次価格が適用されるのは2027年の輸入分からです(第21条第1項)。

2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定は、マークアップなしのデフォルト値か前年に納付した証書数に基づき、第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。


高炉・転炉法と電炉法でCBAMの計算はどう違いますか

高炉・転炉法と電炉法の違いは排出源と測定の範囲にあり、計算を決めるのは、デフォルト値では原産国の表のルート、実排出量では施設自身の排出量です。

高炉・転炉法の主なCO2の排出源は高炉で使うコークスで、転炉での石灰石の焼成や補助工程の燃料燃焼がこれに加わります。スクラップ電炉法の直接の排出源は電極の消耗と補助燃料で、高炉のような還元反応は伴いません。スクラップ電炉法のデフォルト値用ベンチマーク(製品1トン当たり0.066から0.072 tCO2e)が、その排出規模の目安になります。

鉄鋼部門のCNコード、貿易データ、前駆体の扱いの全体像は、CBAM鉄鋼部門ガイドで解説しています。

輸入者にとっての実務上の意味は、デフォルト値と実排出量のどちらを使うかで変わります。デフォルト値では、インド産ビレット(CNコード 7207 11 14、デフォルト値4.270)は2026年輸入分で製品1トン当たり277.18ユーロ、トルコ産ビレット(デフォルト値2.310)は99.70ユーロで、どちらの炉で作られたかは関係ありません。デフォルト値もルートも原産国の表で決まります。

実排出量を使う場合は工場自身の排出量がデフォルト値に代わり、電炉で作られた製品のコストは実際の排出量に基づいて決まります。スクラップを使う生産者にとって、検証済みデータが最も重要な要素になるのはこのためです。

スクラップの配合は実排出量を下げますが、デフォルト値を使う場合のベンチマークは変えません。銑鉄とスクラップを併用する施設がスクラップ比率の効果をコストに反映できるのは、検証済みの実排出量を使う場合だけです。

ベンチマークの働きは、直感とは逆です。ベンチマークは差し引く量なので、ビレットのスクラップ電炉法の値0.066は、高炉・転炉法の値1.364よりはるかに小さい控除にしかなりません。2026年に1万トンを輸入する場合、ルート(C)の控除は1万3,299 tCO2e、ルート(E)の控除は643.5 tCO2eです。

タイの例:デフォルト値が低くても、コストは日本の2倍以上

タイの表は、半製品(CNコード 7207 11 14)にデフォルト値1.920とスクラップ電炉法(E)を記載しています。デフォルト値は日本の2.100より低いのに、差し引くベンチマークが0.066と小さいため、2026年のコストは製品1トン当たり168.56ユーロで、日本産の80.68ユーロの2倍を超えます(82.32ユーロ、当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

タイに生産拠点を持つ日系企業がタイ産の鉄鋼製品をEUに輸出する場合、この差はそのまま買い手のコストになります。デフォルト値の高低だけで有利不利を判断せず、ルートとベンチマークをあわせて確認する必要があります。

日本の電炉メーカーの製品:デフォルト値では高炉材と同じ扱い

日本の表に電炉法(D、E)の行はないため、日本のスクラップ電炉メーカーの製品も、デフォルト値では高炉・転炉法(C)のデフォルト値2.100とベンチマーク1.364(半製品)または1.370(熱延鋼板)で計算されます。結果は日本の高炉材と同じ製品1トン当たり80.68ユーロ(半製品)または80.20ユーロ(熱延鋼板)です。

電炉メーカーが自社の低い排出量をコストに反映させる方法は、検証済みの実排出量を提供することだけです。実排出量の場合は、Column Aのプロセスベンチマークに前駆体に含まれる無償割当を加えた量を差し引くため、削減できる額は施設ごとに計算する必要があります。生産ルート別の詳細は高炉・転炉法の鉄鋼とCBAMと電炉法の鉄鋼とCBAMをご覧ください。

キャプション:高炉・転炉法の鉄鋼の輸入者には2027年から四半期末の証書保有義務がかかり、CBAM係数が2026年の97.5%から2030年の51.5%に下がるにつれて義務は増えます。


CBAM鉄鋼の計算に関するよくある質問

スクラップの投入はCBAM申告の体化排出量を減らしますか

投入物としてのスクラップの体化排出量はゼロです。鉄スクラップ(CNコード 7204)はCBAMの対象製品ではないため、スクラップから作った鋼に前駆体の排出量は引き継がれません。

転炉に20%のスクラップを装入する高炉・転炉法の施設では、測定される製品1トン当たりの直接排出量が下がります。この削減が反映されるのは、検証済みのモニタリングに基づく実排出量を使う場合です。デフォルト値は工場のスクラップ比率によって変わることはなく、原産国とCNコードごとに、ベンチマークを決める生産ルートとともに固定されています。

鉄鋼の輸出者が実排出量のデータを提供しない場合はどうなりますか

実施規則(EU)2025/2621(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の原産国別のデフォルト値が、マークアップ付きで適用されます。2026年は総排出量のデフォルト値に10%です。原産国の表にそのコードの行がない場合は、「その他の国と地域」の表の値が適用されます。

中国産スラブ(CNコード 7207 12 10)では、デフォルト値3.169にマークアップ10%を加えた3.4859を申告します。0.975 × 1.364 = 1.3299を差し引くと、製品1トン当たり2.1560枚の証書を納付することになり、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで製品1トン当たり177.48ユーロです。無償割当調整の前は286.96ユーロです。日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)では、2.310から1.33575を差し引いた0.97425枚で、製品1トン当たり80.20ユーロ(調整前は190.16ユーロ)です。

検証済みデータを提供する経済的なメリットは、申告値と工場の検証済み排出量の差に証書価格を掛けた額です。ただし、実排出量を使う場合は差し引くベンチマークが異なるため、その点を調整して評価します。この差は、マークアップが2027年に20%、2028年以降に30%へ上がるにつれて大きくなります。

DRIを使う電炉法とスクラップ電炉法では、CBAMの計算が異なりますか

ベンチマーク表は、2つのルートに別々の値を定めています。熱延鋼板(CNコード 7208)のColumn Bは、DRIを使う電炉法(ルートD)が製品1トン当たり0.481 tCO2e、スクラップ電炉法(ルートE)が0.072です。半製品では0.475と0.066です。

DRIを使う電炉法の値が高いのは、直接還元のシャフト炉で天然ガスを使うためで、スクラップだけを使う電炉法にはこの工程がありません。付属書Iのどの国の表もルート(D)を記載していないため、DRIを使う電炉法の工場がそのルートとして扱われるのは実排出量の場合だけです。

CBAMの体化排出量は鉄鋼の総生産量と正味生産量のどちらで計算しますか

計算に使うのは正味の生産量、つまり報告期間に施設で実際に生産されたCBAM対象製品の重量から、工程内のロスを差し引いた量です。このため特定体化排出量は粗鋼1トン当たりではなく、その製品1トン当たりの値です。

輸入の申告では、施設の総生産量ではなく、輸入したCBAM対象製品のトン数を参照します。鋼管(CNコード 7303から7307)や構造物(CNコード 7308)のような複雑な製品では、上流の前駆体の鋼の体化排出量が、マスバランスの配分ルールにより完成品の申告に引き継がれます。

CBAMの体化排出量を計算するのはEUの輸入者ですか、輸出者ですか

計算の責任はEUの認可CBAM申告者(EUの輸入者)にあり、2026暦年分のCBAM申告書を2027年9月30日までに提出します。ただし、体化排出量のデータそのものは、EU域外の生産者の施設から提供されます。

実務では、日本を含むEU域外の鉄鋼輸出者が、生産施設の単位で実排出量のデータを作成して検証を受け、EUの買い手に伝える必要があります。検証済みデータを提供しない輸出者の製品には、EUの輸入者が原産国のデフォルト値を使うことになります。その結果、通常はCBAMコストが高くなり、排出量の少ない競合に比べて価格面で不利になります。データの項目はCBAMで輸出者に求められるデータにまとめています。

生産国で支払った炭素価格でCBAMの義務を減らせますか

規則(EU)2023/956第9条は、生産国で実際に支払われた炭素価格について、リベートなどの補償を差し引いたうえで減額を認めています。2026年11月4日時点で、第9条の実施規則は案の段階で未採択であり、韓国のK-ETSや日本のGX-ETSを含め、どの国の炭素価格も認められていません。ICAPによれば、韓国の鉄鋼はK-ETSの第4期(2026年から2030年)でも100%無償割当を維持し、トルコの排出量取引の試行制度も100%無償割当で運用されています。

日本の排出量取引制度(GX-ETS)は2026年度(2026年4月から2027年3月)に義務化されましたが、鉄鋼にはベンチマーク方式で無償割当が行われます(ICAP)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。地球温暖化対策のための税(CO2 1トン当たり289円、環境省)は、鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭を免税としており、高炉の排出の大部分を占める石炭には課されていません。

デフォルト値を使う場合は、欧州委員会が2027年から定めることのできる年次のデフォルト炭素価格を参照してのみ減額を請求できます(第9条第4項)。日本についてはまだ定められていません。2026年のコストは第9条の減額なしで計画してください。英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度の暫定リストに載せましたが、EU CBAMの扱いとは別です。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。


高炉・転炉法と電炉法では、どちらのCBAMコストが低いですか

スクラップ電炉法のCBAMコストが低くなるのは、検証済みの実排出量で申告する場合です。直接排出量が高炉よりはるかに少なく、控除を上回る排出量にはすべて証書価格がかかるためです。デフォルト値で申告する場合、生産ルートは有利に働きません。トルコの棒鋼とビレットにはトルコのデフォルト値2.310とルート(C)が割り当てられ、どの炉で作られても2026年輸入分で製品1トン当たり99.70ユーロ(82.32ユーロ)です。

熱延鋼板(CNコード 7208)のスクラップ電炉法のベンチマーク0.072は、高炉・転炉法の1.370の約19分の1です。ただし、ベンチマークが低いということは控除が小さいということで、コストが低いという意味ではありません。タイの例が示すとおり、表にスクラップ電炉法が記載されている国では、デフォルト値でのコストがかえって高くなります。

輸入者はCBAMのデフォルト値を使うべきですか、サプライヤーに実排出量を求めるべきですか

実施規則(EU)2025/2547で算定し、実施規則(EU)2025/2546に基づき検証を受けた実排出量は、多くの鉄鋼生産者にとって、マークアップ付きの原産国のデフォルト値より低い申告値になります。2026年でもその差は小さくありません。価格82.32ユーロで計算すると、マークアップだけでトルコ産ビレットに製品1トン当たり19.02ユーロ、中国産スラブに26.09ユーロ、日本産半製品に17.29ユーロが加わり、デフォルト値と工場の実際の排出量の差も全額が証書の対象です。

実排出量の経路では、Column Bではなく、Column Aのベンチマークに前駆体に含まれる無償割当を加えた量を差し引くため、輸入者は両方の経路を試算する必要があります。経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)は、CNコード 7318 15 42について2026年の証書数を1.750としており、当サイトの計算ツールの計算(1.7501)と一致します。同ガイドラインの円建ての数値(製品1トン当たり29,139円)は、EU ETSの価格90ユーロ、1ユーロ185円を前提にしています。

2027年にマークアップが20%になり、CBAM証書の販売も始まると、検証済みの実排出量を使う理由はさらに強まります。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。

国別・製品別のデフォルト値はCBAMのデフォルト値に、日本の輸出者向けの製品別コストは日本の鉄鋼輸出とEU CBAMにあります。複数のCBAM対象製品を扱うEUの輸入者は、認可の手続と四半期末の保有義務について輸入者向けCBAM鉄鋼ガイド(英語)もご覧ください。算定や検証の支援事業者の紹介は、CBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。