CBAMで日本の輸出者がEUの輸入者に提供するデータ:16項目、3文書、検証、提出経路

EU CBAMでEUの輸入者が日本の生産者に求めるのは、排出量報告書のサマリー16項目と検証報告書です。

このページの内容
排出量報告書のサマリー16項目の構成図。全施設に適用される9項目、間接排出量を算入する製品(セメント、肥料、CNコード 2601 12 00)の2項目、前駆体を使う製品の5項目に分かれます。

EU炭素国境調整措置(CBAM。JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)では、輸出者が提供するデータによって、EUの買い手が実排出量で申告できるか、それともデフォルト値に2026年は10%、2027年は20%、2028年以降は30%のマークアップ(肥料は毎年1%)を上乗せして申告することになるかが決まります。根拠は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。

日本の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)をデフォルト値で2026年に輸入すると、EUの買い手の負担は製品1トン当たり80.20ユーロです(2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロ)。検証済みのデータを渡せない輸出者には、このコストが値下げ要求や取引先の切り替えとして返ってきます。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページでは、EUの買い手が求めるデータ項目、その形式、検証の要件、事業者用ポータル(O3CI)での提供方法を、日本の鉄鋼、アルミニウム、ねじ・ボルトの輸出者の立場から順に説明します。


EUの輸入者は日本の生産者にどのようなCBAMデータを求めますか

EUの輸入者が必要とするのは、実施規則(EU)2025/2547に定めるEUの方法で算定した施設単位の特定体化排出量で、単位は製品1トン当たりのtCO2e(CO2換算トン)です。

この数値は、輸入者が管轄当局に提出するCBAM申告書に記載されます。2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。検証済みの特定体化排出量がなければ、輸入者は貴社の製品について原産国別のデフォルト値を使い、マークアップを上乗せして申告します。

特定体化排出量は、概算で済ませられる数値ではありません。活動量データ、試験分析に基づく排出係数、文書化されたモニタリング計画が必要です。CBAM証書1枚が輸入品の体化排出量1 CO2換算トンに対応する仕組みは、EU CBAMの解説で説明しています。

データ作成の公式ガイダンスは、2026年8月14日に欧州委員会が公表した本格実施期間向けの10文書です。ガイダンス第2号はEU域外の事業者向けのクイックガイド、第3号は体化排出量の算定方法、5aから5fは部門別のモニタリングと算定の手引きです。10文書の一覧はガイダンス10文書のニュース(英語)で確認できます。

キャプション:CBAMのデータは生産施設で生まれ、EUの認可CBAM申告者の年次CBAM申告書に入ります。


EUの輸入者が求めるデータ:16項目と6つの分類

EUの輸入者が受け取るのは、事業者の排出量報告書のサマリーで、番号付きの16項目からなります(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)。

実排出量で報告する事業者は、同実施規則第10条第1項により排出量報告書を作成します。その背後にある生産データを生産者の側から整理すると、次の6つに分類できます。このうち炭素価格の証拠は、排出量報告書とは別のファイルとして扱います。各分類の形式、対象部門、根拠資料は次の表のとおりです。

データの分類 形式 対象部門 根拠資料
施設の識別情報 事業者名と登録番号、施設名、CBAM登録簿の識別番号、UN/LOCODE、所在地、地理座標 全部門 商業登記と座標
生産ルート CBAMの生産工程とルート(高炉・転炉法(BF-BOF)、電炉法(EAF)など)と各工程で作る製品 全部門 事業者の申告
活動量データ 燃料消費量(TJまたはGJ)、電力(MWh)、原材料の投入量(トン) 全部門 計量器の記録、請求書、試験分析
特定直接体化排出量 製品1トン当たりのtCO2e(算定方法は実施規則(EU)2025/2547付属書IIとIII) 全部門 同実施規則の方法による算定シート
特定間接体化排出量 製品1トン当たりのtCO2e(電力消費量×電力の排出係数) 規則(EU)2023/956付属書IIにない製品:セメント、肥料、凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00) 電力の排出係数の資料
支払った炭素価格(第9条) 実際に支払ったCO2換算トン当たりのユーロ額、制度名、法的根拠、支払いの証拠、独立した認証 現地に炭素価格制度がある全部門 税の賦課決定、排出量取引の登録簿の記録

排出量報告書のサマリー16項目の一覧

16項目のうち9項目はすべての施設に、2項目は付属書IIにない製品(主にセメントと肥料)に、5項目は前駆体を使う製品に適用されます。

16項目は付属書IV第1.2項の順に次のとおりです。デフォルト値で申告する場合は、どの項目も必要ありません。

番号 項目 適用される施設
1 事業者の識別情報 すべて
2 施設の識別情報と所在地 すべて
3 生産工程と生産ルート すべて
4 製品ごとの特定体化排出量と無償割当 すべて
5 直接排出量の合計 すべて
6 施設の間接排出量 付属書IIにない製品
7 測定可能な熱の流れ すべて
8 ゼロ評価の燃料 すべて
9 廃ガス すべて
10 CO2の回収 すべて
11 施設内での発電 付属書IIにない製品
12 デフォルト値を使う前駆体 前駆体を使う製品
13 実排出量を使う前駆体 前駆体を使う製品
14 報告期間をまたぐ前駆体の平均 該当する場合
15 施設をまたぐ前駆体の平均 該当する場合
16 各前駆体の原産地 前駆体を使う製品

日本の対EU輸出の中心である鉄鋼とアルミニウムは付属書IIに掲げられているため、項目6と11は通常該当しません。

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)は金額ベースで14億4,820万ユーロで、うち鉄鋼が12億4,590万ユーロ(約86%)、アルミニウムが1億9,500万ユーロ(13.5%)を占め、セメントは480万ユーロ、肥料は250万ユーロにとどまります(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。各項目の輸入者側の扱いは輸入者向けCBAMデータ要件にまとめています。

施設の識別情報

施設の識別情報はすべてのCBAMデータの土台となるため、法的に正確でなければなりません。

EUの輸入者は、規則(EU)2023/956付属書Vに基づき貴社の施設の情報を記録として保存します。実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項が定める項目は、事業者については名称、登録番号、英語での所在地、施設については名称、CBAM登録簿の固有識別番号、UN/LOCODE、英語での所在地、主な排出源の地理座標です。

座標は経度と緯度を小数点以下6桁で記載します。これは、CBAM登録簿への登録(規則(EU)2023/956第10条第2項)と、実施規則(EU)2025/2546付属書の検証報告書様式が求める精度です。輸入者は事業者の連絡先も保存します。

生産ルートと活動量データ

生産ルートによって、貴社の施設に適用される排出量の算定式が決まります。

欧州委員会は部門ごとに生産ルートを定めています。鉄鋼は高炉・転炉法と電炉法、セメントはプレヒーター付きの乾式法、一次アルミニウムはホール・エルー法、アンモニアと肥料はハーバー・ボッシュ法です。

活動量データは報告期間全体を対象とし、生産量(トン)、燃料の種類ごとの消費量(テラジュール)、電力消費量(メガワット時)、原材料の投入量(トン)を含みます。各データには、子メーターの記録、燃料の納品書、原材料の購入記録といった根拠資料が必要です。

特定直接体化排出量

特定直接体化排出量は、施設の直接排出量を、実施規則(EU)2025/2547付属書II第B項の2つの方法のいずれかでモニタリングして求めます。

計算に基づく方法では、活動量データと、試験分析または標準値による計算係数を使い、標準法またはマスバランス法で算定します。測定に基づく方法では、排ガス中の温室効果ガスの濃度と流量を連続測定します。求めた排出量は付属書IIIに従って生産工程に割り当て、各製品の生産量で割ります。

いずれの方法でも、システム境界、計測機器、校正の予定、データ欠損時の手順を記載した正式な文書であるモニタリング計画が必要です。2026年からは第三国のデータに基づく「代替方法」は認められず、実施規則(EU)2025/2547のEUの方法だけが適用されます。

同実施規則付属書II第A.5項が定めるモニタリング計画の最低限の22要素は、無料のCBAMモニタリング計画テンプレート(英語、CSV形式、1要素1行)で確認できます。経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)も、モニタリング計画の作成と維持を事業者の作業として挙げています。

特定間接体化排出量

特定間接体化排出量が必要なのは、規則(EU)2023/956付属書IIにない製品、つまりセメント、肥料、凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)だけです(第7条第1項)。

これらの製品では、電力消費による間接排出量がCBAMで算入されます。算定では、製品1トン当たりの電力消費量に、実施規則(EU)2025/2621付属書IIの国別係数を掛けます。日本の灰色ポルトランドセメント(CNコード 2523 29 00)のデフォルト値も、直接0.830、間接0.060、合計0.890 tCO2eと分けて記載されています(同実施規則付属書I、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。

電源の実際の排出係数を使えるのは、発電施設との直接の技術的接続か電力購入契約(PPA)がある場合だけです(規則(EU)2023/956付属書IV第6項)。グリーン電力証書だけでは認められません。その他の鉄鋼製品とアルミニウムでは間接排出量は算入されませんが、EUの買い手が自社のスコープ3報告のために任意で求めることがあります。

第9条の控除のための炭素価格データ

炭素価格のデータがあれば、EUの輸入者は第9条に基づき、生産国で支払われた炭素コストの分だけCBAM証書の数を減らすよう請求できます。

控除の対象は、機能している排出量取引制度や法定の炭素税など、法的拘束力のある制度で実際に支払われ、無償割当、リベート、国の補償で相殺されていない炭素価格に限られます(第9条第1項)。

データを提供する輸出者は、CO2換算トン当たりの支払額、制度名、国内法上の根拠、支払いの証拠(税の賦課決定や排出量取引の登録簿の記録)を用意します。第9条第2項は、申告者からも第三国の当局からも独立した者による認証を求めます。自主的なカーボンオフセットや社内炭素価格は実際に支払われた炭素価格に当たらないため、控除の対象になりません。

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。 日本の制度ごとの状況は次のとおりです。

  • 排出量取引制度(GX-ETS):2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化されています。鉄鋼とセメントにはベンチマーク方式による無償割当があり(ICAP)、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。
  • 地球温暖化対策のための税(温対税):CO2 1トン当たり289円です(環境省)。ただし、鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税です(経済産業省の令和9年度税制改正要望)。
  • 化石燃料賦課金:2028年度からの導入で、まだ施行されていません。2026年と2027年の輸入について主張できるものはありません。

英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せました。英国CBAMは独立した税制度で、EU CBAMの扱いとは別です。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。


前駆体のデータ:投入品もCBAM対象製品の場合

貴社の製品が他のCBAM対象製品を投入品として使う場合、前駆体のデータが必要です。

取引のうえで特に重要な前駆体の連鎖は3つです。セメントに含まれるクリンカー、尿素肥料に含まれるアンモニア、アルミニウムの形材や押出材に含まれるアルミニウムの塊です。日本の輸出では、アルミニウム板(CNコード 7606)に使うアルミニウムの塊や、ねじ・ボルトのメーカーが購入する線材などの鉄鋼材料がこれに当たります。

前駆体ごとに提供するのは、上流施設での前駆体の特定体化排出量、消費した前駆体の量に体化排出量を割り当てる質量配分の方法、そして別の施設から購入した場合はその施設の検証済みデータです。購入した前駆体の実排出量は、それを生産した施設の検証報告書に基づく場合にだけ使えます。前駆体の連鎖が揃わなければ、EUの輸入者は複雑な製品のCBAM申告書を完成できません。

前駆体の生産国が特定できない場合は、排出原単位が最も高い第三国のデフォルト値が使われます(実施規則(EU)2025/2621付属書IV)。JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業から「サプライヤーが実排出量を算定できない」「生産効率など機微な情報を含む」との声があり、前駆体はデフォルト値、自社施設だけ実測値とする対応も想定されると報じています。16項目のうち項目12(デフォルト値を使う前駆体)が、この組み合わせに対応します。

経済産業省がねじ・ボルトに特化した算定ガイドラインを作成したのも、この業界が「中小企業比率が高く、商流も複雑」であるためです。線材の購入先から前駆体のデータを得られるかどうかを、早めに確認してください。


データはどのようにEUの輸入者に届きますか:事業者用ポータル(O3CI)と直接送付

EUの輸入者がCBAMデータを受け取る経路は、登録済みの事業者が事業者用ポータルで開示する方法と、未登録の事業者が同じ報告書を直接送付する方法の2つです。

CBAM事業者用ポータルは、欧州委員会のCBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)です。EU域外の施設事業者は、ここに排出量データをアップロードして検証を受け、その施設から輸入する認可CBAM申告者に開示できます。EUの買い手が複数いる生産者にとっては効率的な経路で、1回のアップロードですべての輸入者に対応でき、データを何度も送る必要がありません。

利用にはEUログイン(EU Login)のアカウントが必要で、欧州委員会は2段階認証を求めています。JETROの「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応する排出量の算定実務マニュアル」(2026年3月)も、登録の第一歩としてEUログインのアカウント作成を説明しています。

移行期間中に使われていた任意様式のコミュニケーションテンプレートは、現在の報告形式ではありません。2026年8月14日のガイダンス第3号は、本格実施期間にはこれが "a mandatory structure of three documents"(3文書からなる義務的な構成、当サイト仮訳)に置き換わると述べています。3文書とは、年次の排出量報告書の全体、申告者向けのサマリー、電力の申告者別の補遺です。

事業者の排出量報告書の全体は番号付きの35項目からなります。検証報告書に添付されるのは、16項目のサマリーです(2026年8月14日のガイダンス第3号)。電力の補遺は輸入電力にだけ関係するため、日本の輸出者には通常かかりません。実排出量で報告する事業者は、付属書IVの最低限の内容で排出量報告書とサマリーを作成し(実施規則(EU)2025/2547第10条第1項)、英語で提供します(同第10条第4項)。

登録事業者は、これらの文書をCBAM登録簿を通じて検証機関に送ります(同第10条第2項)。ガイダンス第2号によれば、登録すると、申告者が閲覧できる範囲はサマリーに限られます。未登録の事業者は、同じ報告書を自ら送付します。ガイダンス第2号はそうした事業者に対し、"authorised declarants are obliged to request complete verification reports and emissions reports from you"(認可申告者は、貴社に検証報告書と排出量報告書の全体を求める義務があります、当サイト仮訳)と注意を促しています。

キャプション:事業者用ポータル(O3CI)では、検証済みデータの1回のアップロードで、施設のすべてのEUの取引先に対応できます。


CBAMニュースレター(英語)

英語のニュースレターです。CBAM証書の価格アラートと重要な規制の変更など、CBAMに関する最新情報を毎週お届けします。スパムは送りません。配信はいつでも停止できます。

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検証:誰がデータを確認し、何を調べますか

規則(EU)2023/956第8条は実排出量に基づく体化排出量を認定検証機関が検証するよう求めており、CBAMで実排出量として認められるのは検証済みのデータだけです。

認定はEU加盟国の国家認定機関(NAB)が委任規則(EU)2025/2551に基づいて行い、検証活動は整合規格EN ISO/IEC 17029:2019に照らして審査されます。中国、インド、トルコ、エジプト、日本など第三国の検証機関は、自国の認定機関からCBAMの認定を受けることはできません。CBAMの認定を提供する加盟国の国家認定機関に申請する必要があります(同委任規則第3条第2項)。

2026年10月21日付の欧州委員会の状況表では、域外からの申請を受け付ける国家認定機関はフランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、スロバキア、スウェーデンの7つです。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。認定は各国の国家認定機関の登録簿で確認でき、2026年10月13日時点で5件ありますが、いずれも日本の法人ではありません。

GX-ETSの登録確認機関やGXリーグの登録検証機関であることは、CBAMの検証資格になりません。JETROは2026年10月27日、日本で活動する検証機関の一部が事前検証を提供し、認定の取得を目指していると報じています。認定済みの機関はCBAM認定検証機関、検証の流れは輸出者のためのCBAM検証にまとめています。

2026年の輸入分(本格実施期間の初年度)では、生産施設への現地訪問が必須です(実施規則(EU)2025/2546第2条から第4条)。検証機関は施設内を実際に回って主要な生産工程を確認し、計測機器と校正記録を調べ、活動量データを根拠資料と突き合わせます。検証報告書は2027年1月からCBAM登録簿で発行されます(2026年8月24日の欧州委員会の発表)。

検証機関が確認する5つの領域は次のとおりです。

  1. 活動量データの正確さ:燃料と電力の請求書との照合
  2. 排出係数の妥当性:試験分析に基づく係数の確認
  3. 算定方法の正しさ:実施規則(EU)2025/2547の方法との照合
  4. モニタリング計画とシステム境界の完全性
  5. 過去の期間のデータとの整合性(データがある場合)

検証報告書には、申告された特定体化排出量が実際の体化排出量を真実かつ公正に表しているかどうかの結論が記載され、重要な虚偽表示があればその旨も明記されます。検証費用については、検証サービス各社は施設1か所、報告期間1回当たり5,000ユーロから5万ユーロを提示しています。これは欧州委員会の数値ではなく市場推計で、施設の複雑さ、生産ルートの数、移動の要否で変わります。


データを提供できない場合、EUの買い手のコストはどうなりますか

特定体化排出量のデータを得られないEUの輸入者は、実施規則(EU)2025/2621に基づき欧州委員会が公表したデフォルト値を使います。

デフォルト値は製品の種類ごと、国ごとの平均排出原単位として設定され、これにマークアップが上乗せされます。マークアップは年を追って上がるため、EUの買い手のコストも段階的に増えます。

日本の主な輸出品について、デフォルト値で輸入した場合の買い手の負担を、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると次のとおりです(2026年11月4日、当サイトの計算ツールで計算)。必要な証書数は、マークアップ後のデフォルト値から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引いて求めます。

製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年 2027年 2028年
熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 0.97425 80.20ユーロ 100.31ユーロ 123.23ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 2.800 1.7501 144.07ユーロ 169.92ユーロ 198.59ユーロ
アルミニウム板(7606 12 99) 1.730 1.7587 144.78ユーロ 159.32ユーロ 174.17ユーロ
灰色ポルトランドセメント(2523 29 00) 0.890 0.32965 27.14ユーロ 35.83ユーロ 45.90ユーロ

金額は製品1トン当たりで、価格を82.32ユーロで一定としています。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年と2028年の数値は目安です。

熱延鋼板の場合、2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。ボルト・ねじの1.7501枚は、経済産業省のガイドライン第3版の2026年の数値(1.750)と一致します。

取扱量の多い生産者にとって、デフォルト値と実排出量の差は決して小さくありません。トルコの灰色クリンカーと灰色ポルトランドセメントの行は付属書Iで空欄(ダッシュ)のため、「その他の国と地域」のデフォルト値1.410と1.440 tCO2e、2026年のマークアップ後で1.551と1.584が適用されます。トルコのセメント協会Türkçimentoは灰色クリンカー1トン当たり0.88 tCO2と報告していますが、これは業界団体の数値で、施設の検証済み実排出量でもデフォルト値でもありません。

検証済みデータによる節約額は、施設自身の検証済み排出量と、実排出量の場合の計算方法(Column Aのベンチマークに前駆体の無償割当を加えた値を差し引く)で決まります。そのため、協会の数値はここでは金額に換算していません。デフォルト値で計算すると、トルコ産の灰色ポルトランドセメントの負担は、2026年の輸入分で製品1トン当たり76.94ユーロです。

EUの買い手はこのコストを、購入価格の引き下げ要求という形で、また検証済みデータを持つ代替の供給者がいれば供給者の切り替えという形で、生産者に転嫁します。算定方法、国別の製品ごとのデフォルト値、2028年までのマークアップの積み上がりはCBAMのデフォルト値(輸出者向け)で説明しています。

貴社の製品とトン数に基づく推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。


日本の輸出者がデータを準備するときの注意点

日本の輸出者がつまずきやすい点は、暦年、英語、既存の環境データの流用、記録の保存、移行期間のデータの5つです。

EUの買い手から排出量データを求められたときに確認しておくべき点は次のとおりです。

  1. 暦年で集計する。 CBAMのデータは施設ごと、製品ごと、暦年の報告期間ごとで、出荷ごとではありません(実施規則(EU)2025/2547)。4月から3月の会計年度でデータを管理している企業は、2026年(1月から12月)の数値を月次データから組み直す必要があります。
  2. 英語で作成する。 排出量報告書とサマリーは英語です(同実施規則第10条第4項)。施設の所在地も英語で記載します。
  3. 既存のカーボンフットプリントを流用しない。 業界平均値や、GHGプロトコル、ISO 14067に基づく製品カーボンフットプリントは認められません。使えるのは同実施規則による実排出量か、欧州委員会のデフォルト値だけです(規則(EU)2023/956第7条第2項、ガイダンス第2号)。
  4. 記録を保存する。 事業者は報告期間の終了後少なくとも6年間記録を保存し(同実施規則付属書II第A.2項)、登録事業者は検証報告書を検証後4年間保存します(規則(EU)2023/956第10条第5項(c))。
  5. 移行期間のデータを作り直す。 2025年までのコミュニケーションテンプレートや代替方法による数値は、本格実施期間には使えません。

日本語で読める公的資料としては、経済産業省の「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)、同省のねじ・ボルト向け算定ガイドライン第3版(付属書III「排出量報告書のサマリレポート」を収録)、JETROの算定実務マニュアル(2026年3月)があります。日本の状況全体はCBAMと日本、算定や検証の支援事業者は日本のCBAMコンサルタントにまとめています。


CBAMのデータ要件に関するよくある質問

EU域外の輸出者にCBAMデータを提供する法的義務はありますか

ありません。規則(EU)2023/956は、EU域外の輸出者に直接の法的義務を課していません。法的義務はすべてEUの認可CBAM申告者(輸入者またはその間接的通関代理人)が負います。2026年8月14日のガイダンス第1号も "Operators established outside the EU are not obliged to carry out any activities under the CBAM"(EU域外に設立された事業者は、CBAMに基づくいかなる活動も義務付けられていません、当サイト仮訳)と述べています。

ただし、取引上の事情は別です。検証済みのデータを得られないEUの輸入者はコストが上がり、その分を値下げ交渉や、データを提供する供給者への切り替えで取り戻します。JETROは、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となる場合もあると指摘しています。

移行期間に集めたデータは本格実施期間でも使えますか

使えません。移行期間(2023年10月から2025年12月まで)に実施規則(EU)2023/1773で認められていた代替の算定方法は、もう受け入れられません。2026年からは実施規則(EU)2025/2547のEUの方法だけが適用されます。移行期間の報告経験は出発点として役立ちますが、算定シートとモニタリング計画は本格実施期間の要件に合わせて作り直す必要があります。

事業者用ポータルへの1回のアップロードで、すべてのEUの買い手に対応できますか

できます。事業者用ポータル(O3CI)では、施設事業者が検証済みの体化排出量データを一度アップロードし、特定の認可申告者にアクセスを認めます。同じ施設から3社以上のEUの輸入者に輸出する生産者には、特に効率的です。

どの部門で間接排出量のデータが必要ですか

間接排出量が算入されるのは、規則(EU)2023/956付属書IIにない製品、つまりセメント、肥料、凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)です。これらの生産者が実排出量で報告する場合は、特定間接体化排出量のデータを提供します。その他の鉄鋼製品、アルミニウム、水素、電力では直接排出量だけが算入されます(第7条第1項)。移行期間中に鉄鋼とアルミニウムで報告した間接排出量は、本格実施期間の証書義務には入りません。

日本に炭素価格制度がある場合、データはどう扱われますか

炭素価格のデータがあれば、EUの輸入者は第9条に基づき、CBAM証書の数を減らす控除を請求できます。炭素価格は、リベートなどの補償を差し引いたうえで実際に支払われたものでなければならず、自主的な制度やシャドープライスは対象外です。

第9条の4つの経路(排出量取引制度、排出源での炭素税、燃料ベースの炭素税、混合型の制度)を定める実施規則案は2026年5月13日に公表され、4週間の意見募集が2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で採択されていません。

2026年11月4日時点で、日本のGX-ETSや温対税を含め、韓国のK-ETS、中国の全国排出量取引制度、インドのCCTSなど、どの国の炭素価格も第9条で認められていません。トルコは2026年8月27日に官報第33353号で排出量取引制度規則を公布しましたが、生産者が実際に支払っている炭素価格はまだなく、案の規則では控除は生じません。


CBAMデータを必要とするのは誰か、提供しない場合のコストはいくらか

データを提供しない場合のコストは、EUの買い手から返ってくるデフォルト値のマークアップで、2026年は国別の平均に10%、2027年は20%、2028年以降は30%(肥料は毎年1%)です。

EU域外の生産者にとっての全体的な戦略はCBAM 輸出者ガイドで説明していますが、データ要件の問題は具体的な金額で示すことができます。排出量の多い生産ルートでは、国別平均のデフォルト値がすでに管理の行き届いた施設の実排出量を上回っていることが多く、マークアップはその不利な基準にさらに上乗せされます。

このページの内容をEUの買い手の立場から見たものが、輸入者向けCBAMデータ要件です。同じ16項目を買い手の側から整理し、各項目が必要になる申告の経路と、それを記録する検証報告書の欄を示しています。

EUの顧客の輸入量が年間50トン未満でもCBAMは適用されますか

電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。基準は鉄鋼、アルミニウム、肥料、セメントを合算した輸入者単位で、供給者単位ではありません。

すべての域外供給者から年間合計40トンを輸入するEUの買い手は免除され、貴社のデータを必要としません。年間5,000トンを輸入する買い手は、供給者の数にかかわらず義務を負い、デフォルト値を避けるには各供給者の検証済みデータが必要です。

体化排出量とCBAM証書はどう結び付いていますか

CBAM証書は、輸入品に含まれるCO2換算の体化排出量に対応します。CBAMの体化排出量では、規則(EU)2023/956第3条第22号の定義、部門ごとの直接排出量と間接排出量の範囲、特定体化排出量から証書数への換算を説明しています。

輸出者にとって重要なのは、EUの買い手が納付する証書数が、貴社の申告した特定体化排出量から無償割当調整と第9条の減額を差し引いて計算される点です。2026年10月5日に公表された2026年第3四半期の公式価格は、1 CO2換算トン当たり82.32ユーロです。デフォルト値より低い実排出量を示す正確な検証済みデータは、証書数を直接減らします。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。