CBAMのデータ要件(2026年):EUの輸入者がサプライヤーから集める16項目と検証報告書

EUの輸入者がCBAMの実排出量で申告するには、生産施設ごとに16項目のデータと検証報告書が必要です。

このページの内容

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)のデータ要件は、EUの輸入者が実排出量で申告するために、生産施設ごとに集める16項目のデータにまとめられます。

根拠となる法令は、炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956です。16項目は、事業者の排出量報告書のサマリーに番号付きで記載する項目で、実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項に定められています。9項目はすべての施設に、2項目は間接排出量(主にセメントと肥料)に、5項目は前駆体を含む製品に適用されます。

2026年の輸入分を対象とする最初のCBAM申告書の提出期限は、2027年9月30日です(第6条第1項)。データを持たない輸入者はデフォルト値で申告し、2026年は10%、2027年は20%、2028年以降は30%(肥料は毎年1%)のマークアップが加わります。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページは、日系企業のEU子会社や商社のEU拠点など、認可CBAM申告者としてサプライヤーからデータを集める立場の読者に向けて、16項目の中身、依頼の手順、データがない場合のコスト、保存期間を順に説明します。

EU官報と欧州委員会税制・関税同盟総局(DG TAXUD)のCBAMページとの照合:2026年10月12日。日本に関する情報の確認:2026年11月4日。

キャプション:CBAMの16項目のデータと、それぞれのデータが生まれる場所を示した図です。


EUの輸入者はCBAMのためにどのようなデータを集める必要がありますか

EUの輸入者が集めるのは、事業者の排出量報告書のサマリー(施設ごとに番号付きの16項目)と、その内容を確認した検証報告書です。

法的な義務は輸入者にあり、データは施設の事業者が持っています。規則(EU)2023/956第6条と第7条は、認可CBAM申告者に体化排出量の申告と、その根拠となる記録の保存を求めています。一方、2026年8月14日の欧州委員会ガイダンス第1号は "Operators established outside the EU are not obliged to carry out any activities under the CBAM"(EU域外に設立された事業者は、CBAMに基づくいかなる活動も義務付けられていません、当サイト仮訳)と述べています。

義務を負う者とデータを持つ者が異なるため、CBAMへの対応は、サプライヤーに任意の協力を求めるデータ依頼という形をとります。依頼状はCBAMサプライヤーデータ依頼ジェネレーター(英語)で、6部門すべてについて6言語で作成できます。数十社に依頼を送る輸入者はツールを使うことが多く、CBAMソフトウェア一覧(英語)で各社を比較できます。

JETROは2026年9月18日の記事で、日系企業のEU子会社自身が認可申告者となり、報告義務を負う場合もあると指摘しています。日本の本社工場から輸入する場合もデータは施設単位で必要で、グループ内の取引であっても、実排出量で申告するには16項目がそろっていなければなりません。

16項目を付属書IV第1.2項の順に並べ、各項目が必要になる申告の経路と、検証機関が記録する検証報告書(実施規則(EU)2025/2546の付属書)の欄を示すと、次の表のとおりです。

番号 項目 実排出量で必要 デフォルト値で必要 検証報告書の欄
1 事業者の識別情報 必要 不要 1.1
2 施設の識別情報と所在地 必要 不要 1.1
3 生産工程と生産ルート 必要 不要 2.4(a)
4 製品ごとの特定体化排出量と無償割当 必要 不要 2.4(b)
5 直接排出量の合計 必要 不要 2.4(b)
6 施設の間接排出量 付属書IIにない製品 不要 2.4(b)
7 測定可能な熱の流れ 必要 不要 2.4(a)
8 ゼロ評価の燃料 必要 不要 2.4(a)
9 廃ガス 必要 不要 2.4(a)
10 CO2の回収 必要 不要 2.4(a)
11 施設内での発電 付属書IIにない製品 不要 2.4(b)
12 デフォルト値を使う前駆体 前駆体を含む製品 不要 2.5(a)
13 実排出量を使う前駆体 前駆体を含む製品 不要 2.5(b)
14 報告期間をまたぐ前駆体の平均 該当する場合 不要 2.5(c)
15 施設をまたぐ前駆体の平均 該当する場合 不要 2.5(d)
16 各前駆体の原産地 前駆体を含む製品 不要 2.5(b)

16項目に含まれないものは3つあります。サマリーを付属書として添付する検証報告書そのもの、輸入者自身の通関データ(CNコード、数量、原産国)、第9条に基づく炭素価格の支払いの証拠です。

日本から輸入する場合、16項目のうち6と11は通常は必要ありません。EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)14億4,820万ユーロのうち、金額ベースで鉄鋼が12億4,590万ユーロ(約86%)、アルミニウムが1億9,500万ユーロ(13.5%)を占め、どちらも付属書IIに掲げられ、直接排出量だけが算入されるからです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。セメントは480万ユーロ、肥料は250万ユーロにとどまります。


必要なCBAMデータ16項目:5つの分類と炭素価格の証拠

必要なCBAMデータ16項目は、施設の識別、生産と活動、直接排出量、間接排出量、前駆体の5つに分類され、このほかに任意の6つ目の資料として炭素価格の証拠があります。

以下の各項目は、特に記載がない限り、施設の事業者が保有して英語で報告し、認定検証機関が確認するものです。輸入者が納付するCBAM証書の数は、これらの項目で決まります。証書の仕組みの全体はEU CBAMの解説で説明しています。

施設の識別データ

施設の識別データは、申告するすべての数量(トン)を1つの事業者と1つの施設に結び付けるデータで、規則(EU)2023/956付属書Vに基づき輸入者が記録として保存します。

施設の識別データは、次の3つの欄からなります。

  • 事業者(項目1):名称、法人または事業の登録番号、英語での完全な所在地
  • 施設(項目2):名称、CBAM登録簿の識別番号、UN/LOCODE、英語での完全な所在地、主な排出源の地理座標(検証報告書では小数点以下6桁)
  • 事業者の連絡先(付属書V):連絡先の情報(サマリーでは番号付きの項目ではありません)

日本のサプライヤーの場合、所在地は英語表記で求めます。日本語の登記上の住所だけでは、英語での報告を求める実施規則(EU)2025/2547第10条第4項を満たしません。

生産と活動のデータ

生産と活動のデータは、製品の生産工程と生産ルートを特定するデータで、施設の排出量をどう割り当てるか、どのCBAMベンチマークを適用するかを決めます。

生産と活動のデータは、次の5項目からなります。

  • 生産工程と生産ルート(項目3):CBAMの対象となるすべての生産工程と、それぞれの製品とルート(例:高炉・転炉法(BF-BOF)、スクラップを使う電炉法(EAF))
  • 測定可能な熱(項目7):他の施設からの受け入れと他の施設への供給
  • ゼロ評価の燃料(項目8):使用の有無と、ゼロ評価の証拠
  • 廃ガス(項目9):生成、使用、受け入れ、供給
  • CO2の回収(項目10):使用の有無と、CO2を受け取る施設または輸送インフラ

このほか、排出量報告書の全体と検証報告書には、報告期間(2026年に輸入した製品については2026暦年)、CNコードごとの製品の数量、部門別のパラメータ(セメントのクリンカー比率、鋼1トン当たりのスクラップ投入量、肥料の窒素含有量など)も記載されます。

直接排出量のデータ

直接排出量のデータは、第6条第2項(b)に基づいて申告書に記載する数値と、そこから差し引く無償割当調整の基礎になります。

直接排出量のデータは、次の4つの欄からなります。

  • 各製品の特定直接体化排出量(項目4):機能単位当たりのtCO2e(CO2換算トン)で、申告では製品1トン当たりのtCO2eに換算
  • デフォルト値による体化排出量の割合(項目4):パーセント
  • 各製品の特定体化無償割当(項目4):製品1トン当たりのtCO2eと、使用したCBAMベンチマークの確認
  • 直接排出量の合計(項目5):施設全体と生産工程ごとのtCO2e

機能単位は原則としてCNコードごとの製品1トンですが、実施規則(EU)2025/2547第4条に例外があります。クリンカーとほとんどのセメントはクリンカーのトン数、硝酸・アンモニア・混合肥料は窒素のキログラム数、その他の肥料はCNの補足単位、電力はkWhです。

間接排出量のデータ

間接排出量のデータは、生産で消費した電力に由来する排出量を算定するためのデータで、規則(EU)2023/956付属書IIにない製品(主にセメントと肥料)についてだけ算入されます。

付属書IIにより、ほとんどの鉄鋼製品、アルミニウム、水素、電力は直接排出量だけが算入されます。間接排出量のデータは、次の4つの欄からなります。

  • 各製品の特定間接排出量(項目4):tCO2eで、実排出量による分とデフォルト値による分に分けて記載
  • 実排出量を使う条件(項目4):発電源との直接の技術的接続か電力購入契約の確認(規則(EU)2023/956付属書IV第6項)
  • 施設の間接排出量(項目6):報告期間のtCO2e
  • 施設内での発電(項目11):コージェネレーションか単独発電か、化石燃料か再生可能エネルギーか、外部への供給の有無

前駆体のデータ

前駆体のデータは、投入材料として消費したCBAM対象製品の排出量を加算するためのデータで、前駆体ごとに施設単位で必要です。

前駆体とは、それ自体が付属書Iに掲げられている投入材料です。セメントに含まれるクリンカー、尿素に含まれるアンモニア、鉄筋に含まれる粗鋼、形材に含まれるアルミニウムの塊がその例です。前駆体の排出量は、規則(EU)2023/956付属書IV第3項により最終製品に引き継がれます。

輸入者によくある誤りは、圧延工場や押出工場に自社工程の排出量だけを求めることです。購入した前駆体の実排出量は、その前駆体を生産した施設の検証報告書に基づく場合にだけ認められます。前駆体のデータは、次の5項目からなります。

  • デフォルト値を使う前駆体(項目12):CNコード、名称、原産国、適用したデフォルト値
  • 実排出量を使う前駆体(項目13):CNコード、名称、原産国、報告期間、特定体化排出量
  • 報告期間が異なる場合(項目14):複数の年に生産された前駆体に使う加重平均
  • 複数の施設から購入した場合(項目15):使用した値とその方法
  • 原産地(項目16):事業者、施設、CBAM登録簿の識別番号(ある場合)、報告期間

前駆体の生産国を特定できない場合は、実施規則(EU)2025/2621付属書IVにより、排出原単位が最も高い第三国のデフォルト値が適用されます。

日本からの輸入で前駆体が問題になる典型的な製品は、ねじ・ボルト(CNコード 7318)とアルミニウム板(CNコード 7606)です。経済産業省がねじ・ボルト向けに算定ガイドライン(第3版、2026年3月)を作成したのも、この業界が「中小企業比率が高く、商流も複雑」だからです。JETROは2026年9月18日、前駆体にはデフォルト値を使い、自社施設についてだけ実測値を使う対応も想定されると報じています。これは項目12を活用する方法に当たります。

支払った炭素価格のデータ

支払った炭素価格のデータは、第9条に基づく証書の減額を裏付けるもので、施設が実際に炭素価格を支払った場合にだけ集めます。

第9条第2項が求める書類は、次の4つです。

  • 申告した体化排出量に、実際に支払われた炭素価格が課されたことを示す書類
  • リベートその他の補償に関する法令の参照
  • 申告者からも第三国の当局からも独立した者による認証(氏名と連絡先を含む)
  • 実際の支払いの証拠

根拠のない請求は、請求しない場合よりも悪い結果を招きます。第19条により、申告書は提出期限の年の後4年目の終わりまで見直しの対象となります。請求が否認されると1か月以内に追加の証書が必要になり、第26条の罰金の対象にもなります。第9条の実施規則は2026年11月4日時点で未採択で、その状況は第9条の炭素価格控除で追っています。

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。 日本のサプライヤーに第9条の書類を求める前に、次の点を確認してください。

日本の制度 第9条との関係(2026年11月4日時点) 出典
排出量取引制度(GX-ETS) 2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化。鉄鋼とセメントにはベンチマーク方式で無償割当があり、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています 経済産業省、ICAP、欧州委員会
地球温暖化対策のための税(温対税) CO2 1トン当たり289円。ただし鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税です 環境省、経済産業省の令和9年度税制改正要望
化石燃料賦課金 2028年度から導入(未施行)。2026年と2027年の輸入について請求できるものはありません JETRO

英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せました。英国CBAMは独立した税制度で、EU CBAMの扱いとは別です。


サプライヤーがデータを提供しない場合はどうなりますか

サプライヤーがデータを提供しない場合は、マークアップ付きのデフォルト値が適用されます。

規則(EU)2023/956第7条第2項は、体化排出量の基礎として実排出量とデフォルト値の2つを認めています。デフォルト値による申告には16項目のいずれも必要ないため、サプライヤーが提供を拒んでも、法的に手続きが止まることはありません。影響が出るのは金銭面です。

デフォルト値が適用される場合とそのコスト

デフォルト値は、製品またはその前駆体の1つについて検証済みの実データがない場合に必ず適用されます。

実施規則(EU)2025/2621(2026年1月1日に遡って実施規則(EU)2026/1740により修正)は、国とCNコードごとにデフォルト値を定めています。マークアップは、セメント、鉄鋼、アルミニウム、水素で2026年10%、2027年20%、2028年以降30%、肥料は毎年1%です。

次の表は、付属書Iの1行を例にコストを試算したものです。対象はトルコ産の非合金鋼の半製品(CNコード 7207 11 14)で、デフォルト値は製品1トン当たり2.310 tCO2eです。価格は2026年10月5日に公表された2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ)で一定とし、無償割当調整を差し引く前の総額を示しています。

シナリオ 排出量の基礎(tCO2e/t) マークアップ 製品1トン当たりの総額(82.32ユーロ/tCO2e、試算) 検証済みデータとの差
検証済みの実データ、サプライヤーが国の平均と同じ場合(例示) 2.310 なし 190.16ユーロ 0ユーロ
デフォルト値、2026年の輸入 2.541 10% 209.18ユーロ 19.02ユーロ
デフォルト値、2027年の輸入 2.772 20% 228.19ユーロ 38.03ユーロ
デフォルト値、2028年以降の輸入 3.003 30% 247.21ユーロ 57.05ユーロ

日本の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20、日本のデフォルト値は製品1トン当たり2.100 tCO2e)で同じ比較をすると、次のとおりです(82.32ユーロ一定、無償割当調整前の総額、2026年11月4日に試算)。

シナリオ 排出量の基礎(tCO2e/t) マークアップ 製品1トン当たりの総額 検証済みデータとの差
検証済みの実データ、サプライヤーが国の平均と同じ場合(例示) 2.100 なし 172.87ユーロ 0ユーロ
デフォルト値、2026年の輸入 2.310 10% 190.16ユーロ 17.29ユーロ
デフォルト値、2027年の輸入 2.520 20% 207.45ユーロ 34.57ユーロ
デフォルト値、2028年以降の輸入 2.730 30% 224.73ユーロ 51.86ユーロ

キャプション:デフォルト値のマークアップは、2026年の10%から2028年以降の30%へ上がります。

正味のコストはこれより低くなります。規則(EU)2023/956第31条により、同じ製品についてEUの生産者がまだ受け取っている無償割当が差し引かれるためです。デフォルト値で申告する製品については、実施規則(EU)2025/2620がこの無償割当調整を、CBAM係数(2026年は97.5%、指令2003/87/EC第10a条第1a項)×部門横断補正係数(CSCF、2026年から2030年まで100%、実施決定(EU)2026/1862)×CBAMベンチマークと定めています。

製品1トン当たりの証書数は、体化排出量から無償割当調整と第9条の減額を差し引いた値で、ゼロを下回りません(欧州委員会ガイダンス第1号)。トルコの行のデフォルトベンチマークは1.364 tCO2e(Column B、高炉ルート)で、無償割当調整は1.330 tCO2eです。これを2026年のマークアップ込みのデフォルト値2.541 tCO2eから差し引くと1.211 tCO2eとなり、製品1トン当たり約99.70ユーロです。

日本の熱延鋼板では、2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。同じ価格で2027年は100.31ユーロ、2028年は123.23ユーロです。日本産のボルト・ねじ(CNコード 7318 15 42、デフォルト値は製品1トン当たり2.800 tCO2e)は、2026年144.07ユーロ、2027年169.92ユーロ、2028年198.59ユーロです。

2027年と2028年の数値は目安です。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しています。

このため、2026年の義務は総排出量の一律2.5%ではありません。2.5%になるのは、排出量がベンチマークとちょうど同じ製品だけです。無償割当調整は申告する排出量が増えても大きくならないため、ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて1 tCO2eごとに証書価格の全額がかかります。

実排出量で申告する場合は、Column Aのベンチマークに前駆体に含まれる無償割当を加えた値を差し引くため、両方の方法で試算してください。国別の表はCBAMデフォルト値で説明しています。

貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。

データ提供を断られたときの交渉の進め方

データ依頼を断られた場合は、次の6つの段階で働きかけを強め、前の段階で解決しないときにだけ契約条件の交渉に進みます。

  1. 差額を数値で示す。 そのサプライヤーのデフォルト値を使った場合と検証済みの数値を使った場合とで、製品1トン当たりのコストがどれだけ違うかを伝えます。
  2. 依頼を段階に分ける。 まず施設の識別情報、生産ルート、前駆体の原産地を求め、その後に検証済みのサマリーを求めます。
  3. 算定方法の資料を共有する。 2026年8月14日にDG TAXUDのガイダンスページで公表された、EU域外の事業者向けのガイダンス第2号と部門別ガイダンス第5a号から第5f号を渡します。日本語の資料としては、経済産業省のねじ・ボルト向けガイドライン第3版とJETROの算定実務マニュアル(2026年3月)があります。
  4. 機密情報への懸念に応える。 CBAM登録簿への登録を勧めます。ガイダンス第2号は登録の効果を "limiting the information seen by the declarant to a summary of the emissions report"(申告者が見る情報を排出量報告書のサマリーに限る、当サイト仮訳)と説明しています。
  5. データ提供を契約に盛り込む。 期日までに検証済みのサマリーを提出するよう求め、提出がない場合はデフォルト値で生じるコストと同額の価格調整を定めます。
  6. 代替の調達先と比べる。 デフォルト値の上乗せを含めた着地コストを、すでに検証報告書を持つサプライヤーの見積もりと比べます。

日本のサプライヤーには、特に第4段階が有効です。JETROは2026年9月18日、日系企業から「排出量データに生産効率や工程に関する機微な情報が含まれる」ため、サプライヤーから情報を得にくいとの声があると報じています。

マークアップ、デフォルト値、報告書の様式は、実施規則によって改められることがあります。段階を踏んでもデータが得られない場合や、社内で追いきれないほどサプライヤーが多い場合は、CBAMの相談フォームに作業内容を記入してください。

cbamguide.comが、サプライヤーの排出量データの収集を手がける専門会社に依頼内容を伝え、その会社から貴社に直接連絡が入ります。貴社に費用はかかりません。


CBAMニュースレター(英語)

英語のニュースレターです。CBAM証書の価格アラートと重要な規制の変更など、CBAMに関する最新情報を毎週お届けします。スパムは送りません。配信はいつでも停止できます。

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サプライヤーにCBAMデータを依頼する方法

サプライヤーへのCBAMデータの依頼は、施設ごとに書面で、次の7つの手順で行います。

  1. 施設を特定する。 輸入する製品をCNコードごとに、商社などの仲介者を経由する場合も含めて、生産した施設まで遡ります。
  2. 依頼状を作成する。 データ依頼ジェネレーター(英語)で、部門別の項目を選んだ依頼状を作ります。
  3. 3つの文書を求める。 報告年の排出量報告書のサマリーと検証報告書を求め、事業者がCBAM登録簿に登録していない場合は排出量報告書の全体も求めます。
  4. 前駆体の原産地を求める。 購入したすべての前駆体について、施設、国、報告期間を求めます。
  5. 炭素価格について確認する。 実際に炭素価格が支払われた場合にだけ、第9条の書類を求めます。
  6. 期日を決める。 CBAM申告書(英語)の提出期限である2027年9月30日から逆算します。欧州委員会の予定では、検証機関の最初の検証報告書は2027年1月に発行されます。
  7. 検証機関を確認する。 報告書を使う前に、検証機関のCBAMの認定証を確認します。

輸出者向けのCBAMデータ要件は、同じ依頼を生産者の側から説明したページで、依頼状と一緒に日本のサプライヤーへ転送できます。依頼状を送る前に、CBAMサプライヤー質問票テンプレート(英語)で、ジェネレーターで依頼できる15の項目と、各項目が必要になる生産ルートを確認できます。

EUのコミュニケーションテンプレートと3文書の構成

EUのコミュニケーションテンプレートは、データのやり取りのうち事業者側が作成する部分を対象とするもので、本格実施期間には、実施規則(EU)2025/2547付属書IVが最低限の記載内容を定める事業者の排出量報告書がその役割を担います。

移行期間に任意様式として使われた電子のコミュニケーションテンプレートは、欧州委員会のガイダンス第3号が "a mandatory structure of three documents"(3文書からなる義務的な構成、当サイト仮訳)と呼ぶ構成に置き換えられました。3つの文書は次のとおりです。

  • 事業者の排出量報告書の全体:番号付きの35項目で、生産工程ごとの活動量データ、計算係数、データの欠落、部門別のパラメータを含みます
  • 排出量報告書のサマリー:16項目で、申告者が閲覧でき、検証報告書に添付される版です
  • 申告者別の補遺:輸入電力に限り、申告者のEORI番号と対象となる電力量を記載します

CBAM登録簿に登録した事業者は、登録簿を通じてサマリーだけを開示できます。一方、ガイダンス第2号は未登録の事業者に対し、"authorised declarants are obliged to request complete verification reports and emissions reports from you"(認可申告者は、貴社に検証報告書と排出量報告書の全体を求める義務があります、当サイト仮訳)と注意を促しています。

JETROの算定実務マニュアル(2026年3月)は、移行期間中にコミュニケーションテンプレート(Excel)が使われていたと説明しています。3文書の構成は2026年8月14日のガイダンス第3号によるもので、マニュアルの発行より後の変更です。

コミュニケーションテンプレートは義務ですか

本格実施期間の様式については義務です。実施規則(EU)2025/2547第10条第1項は、実排出量を報告する事業者に、付属書IVの内容を最低限含む排出量報告書とそのサマリーの作成を義務付け、第10条第4項は英語での作成を求めています。移行期間のテンプレートは任意でした。この義務がかかるのは実排出量の提供を選んだ事業者だけで、報告を強制されるサプライヤーはいません。

輸入者がサプライヤーのデータを保存する期間

輸入者は、サプライヤーのデータを「CBAM申告書を提出した年、または提出すべきであった年の後4年目の終わりまで」保存します。

この期間は、検証報告書を含む付属書Vの記録については規則(EU)2023/956第7条第6項が、炭素価格の書類については第9条第3項が定めています。2026年の輸入分のデータは2027年に申告するため、2031年12月31日まで保存します。

事業者の保存期間はこれとは別で、報告期間の後、少なくとも6年間です(実施規則(EU)2025/2547付属書II第A.2項)。申告年ごとに保存する記録の構成はCBAMの記録保存(英語)で説明しています。

検証機関は集めたデータの何を確認しますか

検証機関は、集められたデータをモニタリング計画と算定ルールに照らして確認し、その結果を検証報告書に記録します。実施規則(EU)2025/2546に沿った6つの確認事項は次のとおりです。

  • 適合性:事業者がモニタリング計画と算定方法に従ったか
  • 重要性:虚偽表示が、各製品の特定体化排出量と特定体化無償割当の5%以内に収まっているか
  • 現地訪問:施設への実地の訪問。バーチャル訪問への置き換えや免除は第2条から第4条の場合に限られます
  • データの集計:排出量、CNコードごとの数量、使用したベンチマーク
  • 前駆体:各前駆体の原産地と、その実排出量を検証した機関
  • 検証意見:報告書に重要な虚偽表示と不適合がないことについての合理的保証

検証の各段階と費用はCBAMの検証で説明しています。

日本のサプライヤーにデータを依頼するときの注意点

日本のサプライヤーとのやり取りでつまずきやすい点は、暦年、施設単位、既存データの流用、検証機関の4つです。

日本のサプライヤーにデータを依頼するときに確認しておくべき点は、次のとおりです。

  1. 暦年の数値を求める。 CBAMの報告期間は暦年です。4月から3月の年度で管理しているサプライヤーには、2026年(1月から12月)の数値を求めます。
  2. 施設単位の数値を求める。 GX-ETSは直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者を対象とする制度で(経済産業省)、その報告の単位は事業者です。CBAMが求めるのは施設ごと、製品ごとの特定体化排出量です。
  3. 既存のカーボンフットプリントで代用しない。 業界平均値や、GHGプロトコル、ISO 14067に基づく製品カーボンフットプリントは実排出量として認められません(規則(EU)2023/956第7条第2項、ガイダンス第2号)。
  4. CBAMの認定を確認する。 GX-ETSの登録確認機関であることは、CBAMの検証資格になりません。CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関だけで、域外からの申請を受け付けるのは7つの国家認定機関です(2026年10月21日の欧州委員会の表)。

2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。認定は各国の国家認定機関の登録簿で確認できます(2026年10月13日時点で5件)。5件のうち日本の法人はありません。一覧はCBAM認定検証機関にまとめています。


CBAMデータ要件に関するよくある質問

以下の7つの質問は、業界平均値、出荷単位のデータ、算定基準、日本の炭素価格、検証費用、通関業者、グループ内取引を扱います。

サプライヤーのデータの代わりに業界平均値を使えますか

使えません。規則(EU)2023/956第7条第2項が認めるのは実排出量か欧州委員会のデフォルト値だけで、その中間はありません。認められている柔軟な扱いは地域別のデフォルト値の適用だけで、その場合は申告者が公式の情報源に基づいて欧州委員会に根拠を示す必要があります(実施規則(EU)2025/2547付属書V)。

排出量データは出荷ごとに必要ですか、施設ごとに必要ですか

データは出荷ごとではなく、施設ごと、製品ごと、報告期間ごとに必要です。報告期間は暦年なので、1つの検証済み報告書で、その年にその施設から輸入したその製品の全出荷をカバーできます。年間の数値の組み立て方はCBAMの体化排出量で説明しています。

サプライヤーが別の算定基準を使っている場合はどうなりますか

他の基準による製品カーボンフットプリントは、実排出量として認められません。ガイダンス第2号は、CBAMの範囲がGHGプロトコルやISO 14067などの方法と異なると述べています。サプライヤーは実施規則(EU)2025/2547に基づいて算定し直し、その結果について検証を受ける必要があります。

日本のように炭素価格制度がある国の施設から輸入する場合はどうなりますか

第9条の書類は集めて保存しておくべきですが、減額を見込んで予算を組むのはまだ早い段階です。証拠のルールを定める実施規則は、2026年11月4日時点で採択されていません。日本のGX-ETSや温対税を含め、どの国の炭素価格も第9条で認められていません。第9条第4項により、欧州委員会は2027年から国ごとの年次のデフォルト炭素価格を定めることもできます。

サプライヤーの検証費用は誰が負担しますか

検証機関と契約するのは事業者です。法律は費用の負担者を定めていないため、負担の分け方は当事者間の取引条件で決まります。検証サービス各社は施設1か所当たり5,000ユーロから5万ユーロを提示しています。これは市場推計で、欧州委員会の数値ではありません。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。

通関業者にCBAMのサプライヤーデータの収集を任せられますか

任せられます。データは誰でも集められますが、義務は認可CBAM申告者に残ります。ガイダンス第1号によれば、申告者は税関申告を行う者で、通常は輸入者、場合によっては間接的通関代理人です。間接的通関代理人として行動する通関業者は、自らCBAMの義務を負います。

日本の本社工場からEU子会社が輸入する場合もデータは必要ですか

必要です。CBAMにグループ内取引の例外はなく、実排出量で申告するには、本社工場の施設ごとの16項目と検証報告書が必要です。データがなければ、EU子会社は日本のデフォルト値にマークアップを加えて申告します。本社工場がCBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録すれば、検証済みデータを一度のアップロードでグループ内外のすべてのEUの輸入者と共有できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。