日本のアルミニウム輸出とEU CBAM:直接排出量だけが対象、二次ルートのデフォルト値に注意

日本産アルミ板(CNコード 7606)のCBAMコストは、デフォルト値を使う2026年輸入分で製品1トン当たり144.78ユーロです。

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図:一次ルート(K、CO2とPFC、アノード効果を監視)と二次ルート(L、スクラップの再溶解、スクラップはCBAM対象外)のアルミ塊は押出業者の前駆体。検証報告書があれば実排出量、なければデフォルト値。

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)のもとで、日本からEUに輸出されるアルミ板(CNコード 7606)は、デフォルト値を使う場合、2026年輸入分で製品1トン当たり1.7587枚のCBAM証書が必要です。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で換算すると、製品1トン当たり144.78ユーロです。

アルミ塊(CNコード 7601)の日本のデフォルト値は製品1トン当たり0.360 tCO2e(CO2換算トン)で、付属書Iで最も低い値です。韓国など、ほかの36の国別表も同じ値です。ただし、日本の表ではアルミニウムの行がすべて二次ルート(L)として記載されているため、差し引けるベンチマークも小さくなります。その結果、2026年のアルミ板のコストは、デフォルト値が日本より高いアラブ首長国連邦(UAE)の121.68ユーロやトルコの126.57ユーロを上回ります。

アルミニウムは、EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品(付属書Iのコード)14億4,820万ユーロのうち1億9,497万ユーロで、約13.5%を占めます(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページでは、アルミニウムで対象となる排出量、日本のデフォルト値と二次ルートの関係、製品別のコスト、提供すべきデータ、日本の炭素価格の扱いを順に説明します。


日本からEUへのアルミニウム輸出:CBAM対象の製品と金額

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象のアルミニウム製品は1億9,497万ユーロ、4万2,260トンで、EU域外からの輸入に占める割合は金額ベースで0.64%、数量ベースで0.46%です。

日本は金額ベースで第23位、数量ベースで第29位の供給国です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。ほぼすべてが加工品で、加工品だけで見ると1億9,283万ユーロ、4万2,139トンで、割合は金額ベースで1.39%、数量ベースで1.50%、順位はそれぞれ第14位と第13位です。アルミ塊(7601)は214万ユーロ、122トンにすぎません。

日本からのアルミニウム製品を2025年の金額順に並べると、次の表のとおりです(Eurostat Comext、2025年)。

CNコード(4桁) 製品 2025年の金額 2025年の数量 EU域外輸入に占める割合(金額/数量) 日本の順位(金額ベース)
7606 アルミ板、シート、ストリップ(厚さ0.2mm超) 1億1,364万ユーロ 3万4,692トン 2.89%/3.20% 10位
7607 アルミはく(厚さ0.2mm以下) 3,012万ユーロ 3,624トン 2.30%/1.28% 10位
7616 その他のアルミニウム製品 2,141万ユーロ 711トン 0.78%/0.30% 14位
7604 棒、形材 1,025万ユーロ 1,492トン 0.51%/0.38% 19位
7612 たる、缶、箱などの容器(容量300L以下) 759万ユーロ 464トン 1.38%/0.77% 8位
7605 線 423万ユーロ 858トン 0.41%/0.25% 19位
7610 構造物とその部分 275万ユーロ 216トン 0.19%/0.08% 25位
7601 アルミ塊(新地金と合金) 214万ユーロ 122トン 0.01%/0.00% 43位
7603、7608、7609、7611、7613、7614 粉、管、管継手、タンク、ガス容器、より線 合計284万ユーロ 合計約83トン 該当なし 該当なし

アルミ板(7606)は日本のアルミニウム輸出額の58%、数量の82%を占めます。2023年の1万3,784トン(4,306万ユーロ)から2025年には3万4,692トン(1億1,364万ユーロ)へ増えました。一方、アルミはく(7607)は2023年の1億158万ユーロ(1万1,292トン)から2025年の3,012万ユーロに減っています。日本のアルミニウム全体では、2023年が2億1,918万ユーロ(3万560トン)、2024年が1億2,705万ユーロ(1万8,842トン)でした。


アルミニウムでCBAMの対象となる排出量

アルミニウムのCBAMは直接排出量とパーフルオロカーボン(PFC)だけを対象とし、製錬で使う電力の排出量は対象外です。

アルミニウムは規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられており、第7条第1項により直接排出量だけが算定されます。電力消費による間接排出量は含まれません。EUのアルミニウム生産者は、EU ETS指令(指令2003/87/EC)第10a条第6項に基づき、間接的な炭素コストについて国家補助を受けています。EUは、輸入品の間接排出量にCBAMを課しつつ域内生産者を補償すると不均衡が生じる、と説明しています。

CO2のほかに対象となるPFCは2種類で、地球温暖化係数(GWP)6,630の四フッ化炭素(CF4)と、GWP 11,100の六フッ化エタン(C2F6)です。どちらも、ホール・エルー法の電解で電解浴のアルミナ濃度が低下したときに起きる「アノード効果」によって発生します。詳しくはアルミニウムのPFCをご覧ください。

規則(EU)2023/956第30条第2項(a)(i)は、付属書IIの製品について、間接排出量まで対象を広げるかどうかの評価を欧州委員会に求めています。欧州委員会税制・関税同盟総局(DG TAXUD)は2026年6月、CBAMの間接排出量に関する技術調査を公表しました。2026年10月12日時点で、アルミニウムは付属書IIに掲げられたままで、間接排出量にCBAMの義務はありません(アルミニウムの間接排出量)。

電力が対象外である点は、電力由来の間接排出量も算入するセメントや肥料との大きな違いです。CBAMの対象部門(EU炭素国境調整措置(CBAM)の全体像)の中でも、アルミニウムは対象範囲の設計が競争条件を最も大きく左右する部門です。

キャプション:一次アルミニウムの製錬でCBAMの対象となるのは、アノード由来のCO2とPFCだけで、電解に使う電力は対象外です。


日本のデフォルト値と二次ルート(L)のベンチマーク

デフォルト値を使う場合、ベンチマークは原産国の表に記載された生産ルートで決まり、日本の表のアルミニウムの行はすべて二次ルート(L)です。

デフォルト値は、施設事業者が検証済みの特定体化排出量を提供しないときに使う代替値です。国別の値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)に、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項に定められています。デフォルト値で使うベンチマークは、国の行に記載されたルートのColumn Bの値です(同付属書第5.1項)。

日本の表には、アルミ塊(7601)からその他の製品(7616)まで24行があり、すべてルートLです。主な値と、ルートLのColumn Bのベンチマークは次のとおりです。

製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) ルートLのベンチマーク(Column B) 一次ルート(K)のベンチマーク
アルミ塊(7601) 0.360 0.091 1.423
粉、フレーク(7603) 1.050 0.140 1.506
棒、線(7604 29 10、7605) 1.280 0.148 1.485
中空形材、管(7604 21 00、7608) 1.290 0.152 1.493
板、シート、ストリップ(7606) 1.730 0.148 1.485
はく(7607) 1.730 0.258 1.599

出典:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項。2026年11月4日に当サイトの計算ツールで読み取り。

同じアルミ板(CNコード 7606 12 99)を2026年にデフォルト値で輸入した場合のコストを供給国別に比べると、次のとおりです(2026年第3四半期の価格82.32ユーロ、2026年11月4日計算)。

原産国(ルート) デフォルト値(tCO2e/t) 無償割当調整(0.975 × ベンチマーク) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト 2030年のコスト
UAE(K) 2.660 1.447875 1.478125 121.68ユーロ 221.71ユーロ
トルコ(K) 2.714 1.447875 1.537525 126.57ユーロ 227.49ユーロ
米国(K) 2.730 1.447875 1.555125 128.02ユーロ 229.20ユーロ
日本(L) 1.730 0.1443 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ
韓国(L) 1.950 0.1443 2.0007 164.70ユーロ 202.41ユーロ
中国(K) 4.120 1.447875 3.084125 253.89ユーロ 377.95ユーロ
インド(K) 4.126 1.447875 3.090725 254.43ユーロ 378.59ユーロ

JETROは2026年9月18日の記事で、日本のアルミニウムのデフォルト値は「既に極めて低い」とし、製品によってはデフォルト値が有利に働く可能性を指摘しています。アルミ塊についてはそのとおりです。しかしアルミ板では、ルートLの小さなベンチマーク(0.148)しか差し引けないため、2026年のコストはUAE、トルコ、米国より高くなります。

この差はCBAM係数の低下とともに縮まり、やがて逆転します。価格を82.32ユーロで一定とすると、日本のアルミ板は2028年に174.17ユーロとなってUAEの174.64ユーロとほぼ並び、2030年には178.86ユーロでUAEの221.71ユーロを下回ります。2027年以降の数値は、2027年からの輸入品についてベンチマークが更新される可能性があるため、あくまで目安です(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)。


日本産アルミニウムのCBAMコスト:製品別の計算

CBAMで必要な証書数は、製品1トン当たりの体化排出量から無償割当調整を差し引いた値に、製品の質量を掛けて求めます。

計算式は、証書数=max[0,特定体化排出量-無償割当調整-第9条の炭素価格分]×質量です(規則(EU)2023/956第6条第2項(c)、第31条)。無償割当調整は、CBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×CBAMベンチマークです。CBAM係数は2026年が97.5%で、これはEUの生産者が維持する無償割当の割合です。部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。

輸出額が最も大きいアルミ板について、CNコード 7606 12 99で計算すると次のとおりです。デフォルト値1.730 × 1.10 = 1.903、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 0.148 = 0.1443、差し引き製品1トン当たり1.7587枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり144.78ユーロです。

日本の主なアルミニウム製品について、同じ方法で計算した結果を次の表に示します。計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。

製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) マークアップ10%後(2026年) ベンチマーク(Column B、ルートL) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 2030年のコスト(製品1トン当たり)
アルミ塊(7601 10 90) 0.360 0.396 0.091 0.307275 25.29ユーロ 34.67ユーロ
粉、フレーク(7603 10 00) 1.050 1.155 0.140 1.0185 83.84ユーロ 106.43ユーロ
棒(7604 29 10) 1.280 1.408 0.148 1.2637 104.03ユーロ 130.71ユーロ
中空形材(7604 21 00) 1.290 1.419 0.152 1.2708 104.61ユーロ 131.61ユーロ
線(7605 11 00) 1.280 1.408 0.148 1.2637 104.03ユーロ 130.71ユーロ
板、シート、ストリップ(7606 12 99) 1.730 1.903 0.148 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ
はく(7607 19 90) 1.730 1.903 0.258 1.65145 135.95ユーロ 174.20ユーロ
管(7608 20 89) 1.290 1.419 0.152 1.2708 104.61ユーロ 131.61ユーロ
その他の製品(7616 99 90) 1.730 1.903 0.148 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ

2030年の列は、同じデフォルト値、ベンチマーク、価格(82.32ユーロで一定)に、2030年輸入分のマークアップ30%とCBAM係数51.5%を当てはめた数値です。ベンチマークは2027年1月1日以降の輸入品について更新される可能性があるため(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)、2030年の数値は目安です。

価格を82.32ユーロで一定とすると、アルミ板のコストは製品1トン当たり2026年144.78ユーロ、2027年159.32ユーロ、2028年174.17ユーロ、2029年175.70ユーロ、2030年178.86ユーロと年々上がります。2034年からはCBAM係数が適用されなくなり、無償割当調整を差し引けないため、185.14ユーロになります。貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。

計算ツールの結果は、規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。日本の輸出者は証書の費用を直接負担しませんが、EUの買い手はこのコストを購入価格の交渉に持ち込みます。


一次アルミニウムと二次アルミニウムのコスト比較

一次アルミニウムと二次アルミニウムのコスト差は、CBAMのアルミニウム部門で取引に最も大きく影響する構造上の違いです。

デフォルト値で適用されるルートは、付属書Iの国別の行に記載されたルートです。UAEと中国は一次ルート(K)、日本と韓国は二次ルート(L)です。アルミ塊(CNコード 7601)で比べると、次の表のとおりです(2026年第3四半期の価格82.32ユーロ)。

付属書Iの行(CNコード 7601) デフォルト値(tCO2e/t) マークアップ10%後 Column Bのベンチマーク 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり)
UAE、一次ルート(K) 1.870 2.057 1.423 0.670 55.12ユーロ
中国、一次ルート(K) 3.000 3.300 1.423 1.913 157.44ユーロ
日本または韓国、二次ルート(L) 0.360 0.396 0.091 0.307 25.29ユーロ

デフォルト値:実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。ベンチマーク:実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項。証書数=マークアップ後のデフォルト値-0.975 × ベンチマーク。

二次アルミニウムの体化排出量が低い理由は2つあります。第一に、リサイクルスクラップは排出量ゼロの投入物として扱われます(その炭素は上流ですでに計上されています)。第二に、再溶解に必要なエネルギーは電解よりはるかに少なく、再溶解炉の直接排出量も小さくなります。アルミニウムのくず(CNコード 7602)は付属書Iの対象外です。

このため、輸出品のリサイクル比率を上げることには構造的な利点があります。溶湯に占めるスクラップの比率を上げるほど、申告する特定体化排出量は下がります。スクラップ比率を記録している輸出者は、実施規則(EU)2025/2547の方法に従って算定すれば、その比率を使って製品1トン当たりの体化排出量を低く示せます(スクラップの扱い)。


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日本のアルミニウム輸出者がEUの買い手に提供すべきデータ

日本のアルミニウム施設事業者にCBAMの法的義務はありませんが、EUの輸入者がデフォルト値を避けるには、施設ごとの特定体化排出量のデータが必要です。

義務を負うのは、EUの認可CBAM申告者(輸入者またはその間接的通関代理人)です。検証済みのデータを提供する輸出者は、デフォルト値に頼る競合より有利な条件を買い手に示せます。事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します(同実施規則第10条第4項)。

アルミニウム施設が用意するデータは、実施規則(EU)2025/2547に沿って次の4つの分類にまとめられます。

  1. 施設の識別情報:事業者の正式名称、施設の所在地、UN/LOCODE、小数点以下6桁の地理座標
  2. 生産ルートの区分:一次アルミニウムの標準的なルートはホール・エルー法で、二次アルミニウムは再溶解です。モニタリング計画でシステム境界を定めます
  3. 特定直接体化排出量:製品1トン当たりのtCO2eで、同実施規則付属書IIの計算に基づく方法(標準法またはマスバランス法)または測定に基づく方法で算定した値
  4. PFCの報告:CF4とC2F6の排出量を同付属書第B.7項に従って算定し、該当するGWPでCO2eに換算した値

欧州委員会は2026年8月14日、本格実施期間の10本のガイダンス文書を公表しました。ガイダンス第2号はEU域外の事業者向けのクイックガイド、第3号は体化排出量の算定方法、部門別ガイド5eはその方法をアルミニウムの生産ルートに当てはめたものです。概要は10本のCBAMガイダンス文書(英語)をご覧ください。

アルミニウム輸出者がとれる2つの選択肢は次のとおりです。

  • 検証済みの実排出量を事業者用ポータルで提供する:EUの輸入者のコストを下げ、デフォルト値のマークアップをなくし、輸出価格の維持に直結します。検証は、EU加盟国の国家認定機関(NAB)がEN ISO/IEC 17029:2019に基づいて認定した検証機関が行い、施設が初めて検証を受ける年には現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条)。
  • デフォルト値を受け入れる:初期費用はかかりませんが、輸入者はマークアップ付きのデフォルト値を使い、追加コストを購入価格の引き下げとして輸出者に求めます。マークアップが2027年に20%、2028年以降30%に上がるため、不利な立場は年々大きくなります。

CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録し、検証済みの施設データをアップロードすれば、EUのすべての買い手と同時にデータを共有できます。1回の検証で複数の輸入者に対応できます(CBAM事業者用ポータル)。

国家認定機関の登録簿で確認できる認定は、2026年10月13日時点で5件です。このうちSGS ICS Italia S.r.l.(イタリアの国家認定機関Accrediaが認定)は、アルミ塊(未加工アルミニウム)の活動グループを認定範囲に含みません。5件の中に日本の法人はなく、2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です(CBAM認定検証機関)。


日本の炭素価格はCBAMの第9条で控除されますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)の実施規則案は2026年5月13日に公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で未採択です。控除の対象は、申告された体化排出量について実際に支払われた炭素価格で、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。アルミニウムでは電力の間接排出量を申告しないため、電力に含まれる炭素コストは控除の根拠になりません。

日本の主な炭素価格制度と、アルミニウムのCBAMとの関係は次のとおりです(2026年11月4日確認)。

制度 対象と価格 開始・状況 アルミニウムのCBAMとの関係
地球温暖化対策のための税(温対税) 化石燃料全般、CO2 1トン当たり289円(環境省) 2012年10月1日から段階導入、2016年4月1日に最終税率 上流で課税され燃料価格に転嫁されます。施設の事業者が支払ったとみなされるかは未解決です
排出量取引制度(GX-ETS) 直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者(経済産業省) 2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化 ベンチマーク方式の列挙部門は鉄鋼、セメント、電力、製紙、石油精製で、その他はグランドファザリングによる無償割当(ICAP)。無償割当分は実際に支払われた価格になりません
化石燃料賦課金 化石燃料の輸入者などにCO2量に応じて課金(JETRO) 2028年度から、未施行 2026年と2027年の輸入について控除は請求できません

欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。JETROも、GX-ETSがEUから「実効的な炭素価格」と認められるか、無償割当分をどう扱うか、排出枠価格をどう証明するかを論点に挙げています。日本の年度(4月から3月)をCBAMの暦年にどう対応させるかも未解決です。

欧州委員会は2027年から国ごとに年次のデフォルト炭素価格を定めることができ、デフォルト値で申告する場合はそれを参照して控除を請求できます(第9条第4項)。2026年11月4日時点で、日本のデフォルト炭素価格はまだ定められていません。英国は2026年8月27日、GX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度(QCPS)の暫定リストに載せましたが、EU CBAMの扱いとは別です(CBAMの炭素価格控除)。


アルミニウムでCBAMの影響を最も受ける国はどこですか

アルミニウムでのCBAMの影響は、生産技術と原産国のデフォルト値によって国ごとに大きく異なります。

EUが2025年にEU域外から輸入したCBAM対象のアルミニウム製品(付属書Iのコード)は303億4,000万ユーロ、914万トンでした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。日本はその0.64%(金額ベース)で、第23位です。

ノルウェー(44億7,000万ユーロ)、アイスランド(22億ユーロ)、スイス(16億7,000万ユーロ)はCBAMの対象外です。規則(EU)2023/956付属書III第1項により、これらの国を原産とする製品は除外されています。3か国を合わせると、2025年のEU域外からのアルミニウム輸入の27.5%(金額ベース)、29.3%(数量ベース)を占めますが、CBAMの義務はかかりません。

CBAMの対象となる原産国の中では中国が金額ベースで最大で、2025年は32億5,000万ユーロ、EU域外輸入の10.7%でした。ほぼすべてが加工品で、アルミ塊は1万2,000トンにとどまります(Eurostat Comext、2025年)。中国の全国排出量取引制度は2025年3月20日の作業計画で対象がアルミニウム製錬に拡大されましたが、排出枠は100%無償割当で、2025年の二次市場の平均価格は70.78元(9.85米ドル、ICAP)でした。第9条では認められておらず、実際に支払われる炭素価格はほとんどありません(CBAMと中国、英語)。

トルコからのCBAM対象のアルミニウム輸入は、2025年に28億4,000万ユーロ、68万4,000トンでした(Eurostat Comext、2025年)。トルコの排出量取引制度規則は2026年8月27日に公布されましたが、2026年から2027年までのパイロット期間は排出枠が100%無償割当されるため、第9条で控除できる炭素価格は発生しません。

UAE(EGA)とバーレーン(Alba)は2025年に、それぞれ45万4,000トンと47万6,000トンのアルミ塊(CNコード 7601)を供給し、EU域外輸入の数量ベースで7.2%と7.5%を占めました(Eurostat Comext、2025年)。両国産の地金には直接排出量を対象とするCBAMが適用され、デフォルト値はいずれも製品1トン当たり1.870 tCO2eです。

キャプション:ノルウェー、アイスランド、スイスはCBAMの対象外です。中国、トルコ、UAE、バーレーン、日本はCBAMが及ぶ原産国です。


デフォルト値を使い続けるとどうなりますか

デフォルト値に頼るアルミニウム輸出者のコスト負担は、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)と実施規則(EU)2025/2621が定めるスケジュールに沿って年々大きくなります。

デフォルト値のマークアップはどのように上がりますか

アルミニウムのデフォルト値に加わるマークアップは、次のように段階的に上がります(鉄鋼、セメント、水素も同じです)。

  • 2026年:基礎となるデフォルト値に10%
  • 2027年:同じく20%
  • 2028年以降:同じく30%

UAEのデフォルト値1.870の場合、2028年からは30%のマークアップにより製品1トン当たり0.561 tCO2eが上乗せされ、その全量が証書の対象になります(82.32ユーロで46.18ユーロ)。価格を82.32ユーロで一定とすると、UAEのアルミ塊のコストは2026年55.12ユーロ、2027年73.44ユーロ、2028年94.69ユーロ、2030年139.79ユーロです。日本のアルミ塊は、同じ条件で2026年25.29ユーロ、2027年28.45ユーロ、2028年31.78ユーロ、2030年34.67ユーロです。

2027年以降の数値は現在のベンチマークによるもので、ベンチマークは2027年からの輸入品について更新される可能性があります。CBAM係数は2030年に51.5%まで下がります。こうしたコストは、輸出者が受け取る購入価格の引き下げという形で交渉に持ち込まれます。

デフォルト値を受け入れるべき場合はありますか

施設の検証済みの直接排出量が、日本のデフォルト値にマークアップを加えた値以上の場合に限られます。アルミ塊の場合、二次ルートの再溶解施設の排出量が製品1トン当たり0.396 tCO2eを下回れば、2026年から検証済みデータのほうが有利になります。この基準値はマークアップの引き上げとともに上がります。一次ルートのアルミ塊ではColumn AとColumn Bのベンチマークがどちらも1.423のため、有利不利はほぼ排出量の値だけで決まります。

圧延品では事情が異なります。実排出量で申告する場合、差し引く量は、Column Aのプロセスベンチマークに前駆体分の無償割当を加えた値になります。一次地金を前駆体として使う圧延工場では、デフォルト値(ルートLのベンチマーク0.148)との比較が大きく変わる可能性があるため、両方の方法を自社のデータで試算してから選んでください。


よくある質問:CBAMと日本のアルミニウム輸出

CBAMはアルミニウム製錬で使う電力を対象にしますか

対象にしません。アルミニウムは規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられているため、CBAMの対象は直接排出量とPFCだけで、電力消費による間接排出量は除外されます。EUのアルミニウム生産者はEU ETS指令に基づき間接的な炭素コストの国家補助を受けています。DG TAXUDは2026年6月に対象拡大の技術調査を公表しましたが、2026年10月12日時点でアルミニウムは付属書IIに残っています。

CBAMのアルミニウムの算定に含まれるPFCは何ですか

対象のPFCは、GWP 6,630の四フッ化炭素(CF4)と、GWP 11,100の六フッ化エタン(C2F6)の2種類です。どちらもCO2eに換算され、直接排出されるCO2と合わせて特定体化排出量に算入されます。PFCはホール・エルー法の電解で起きるアノード効果で発生します。

二次アルミニウム(再生地金)はCBAMの対象外ですか

対象外ではありませんが、体化排出量は一次アルミニウムよりはるかに低くなります。リサイクルスクラップは排出量ゼロの投入物として扱われます。日本や韓国のように二次ルートを記載する付属書Iの行では、アルミ塊(CNコード 7601)のデフォルト値が製品1トン当たり0.360 tCO2e、ベンチマークが0.091で、2026年輸入分は82.32ユーロで製品1トン当たり25.29ユーロです。検証済みの排出量がより低い再溶解施設には、その数値で計算されます。

日本のアルミニウムのデフォルト値はいくつですか

日本のデフォルト値は、アルミ塊(CNコード 7601)が製品1トン当たり0.360 tCO2e、アルミ板(7606)とアルミはく(7607)が1.730、棒と線(7604 29 10、7605)が1.280で、すべて二次ルート(L)です(実施規則(EU)2025/2621付属書I、実施規則(EU)2026/1740により差し替え)。アルミ板は2026年に製品1トン当たり1.7587枚のCBAM証書が必要で、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり144.78ユーロです。国別の一覧はCBAM デフォルト値(輸出者向け)をご覧ください。

一次アルミニウムのCBAMデフォルト値はいくつですか

アルミ塊(CNコード 7601)のデフォルト値は国ごとに定められており、UAE、バーレーン、インドが製品1トン当たり1.870 tCO2e、トルコが1.700、中国が3.000、独自の行を持たない原産国が2.203で、いずれも一次ルートです。2026年は10%のマークアップが加わり、UAEの値は2.057になります。マークアップは2027年に20%、2028年から30%に上がります。

ノルウェーのアルミニウム輸出者はCBAMの影響を受けますか

受けません。ノルウェーを原産とする製品は規則(EU)2023/956付属書III第1項によりCBAMの対象外で、ノルウェーの製錬所は欧州経済領域(EEA)協定を通じてEU ETSの対象です。ノルウェーは2025年にEUのアルミニウム輸入の最大の原産国で、CBAM対象のアルミニウム製品は44億7,000万ユーロ、155万トン、EU域外輸入の金額ベースで14.7%でした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。

中国の排出量取引制度で中国のアルミニウム輸出者は第9条の控除を受けられますか

現時点では受けられません。中国の全国排出量取引制度は2025年3月20日の作業計画でアルミニウム製錬に拡大されましたが、排出枠は生産量ベースで100%無償割当され、2025年の二次市場の平均価格は70.78元(9.85米ドル、ICAP)でした。第9条の控除は実際に支払われた炭素価格に限られ、実施規則案は2026年11月4日時点で未採択です。どの国の炭素価格もまだ認められていません。

日本のGX-ETSで支払った炭素価格はCBAMで控除されますか

2026年11月4日時点では控除されません。日本の炭素価格は第9条で認められておらず、実施規則も案の段階です。GX-ETSは2026年度から義務化されましたが、無償割当分は実際に支払われた価格になりません。証拠書類は申告者と第三国の当局から独立した者が認証し(第9条第2項)、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)から4年後の年末まで保存します(第9条第3項)。

CBAMについて日本で相談できる窓口はありますか

経済産業省は「炭素国境調整措置」のページ(2026年6月1日更新)で概要と関連資料を公開し、JETROは貿易投資相談の窓口、算定実務マニュアル(2026年3月)、セミナーを提供しています。2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は確認できません。日本の状況はCBAMと日本で解説しています。支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口(無料)から依頼できます。


EUのアルミニウム輸入者と関連制度から見たCBAM

日本のアルミニウム輸出者とEUの輸入者は同じ取引の当事者で、輸出者がデータを作成し、輸入者が申告と納付を行います。

EUのアルミニウム輸入者はどのような義務を負いますか

EUの輸入者は、認可CBAM申告者としての認可を取得し、CBAM証書を購入して、年1回CBAM申告を行います。2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します。詳細は輸入者向けCBAMアルミニウムガイド(英語)をご覧ください。

CBAMのアルミニウムはどのCNコードを対象にしますか

付属書Iのアルミニウムは14項目で、第76類のアルミ塊(7601)、粉とフレーク(7603)、棒と形材(7604)、線(7605)、板(7606)、はく(7607)、管(7608)、管継手(7609)、構造物(7610)、タンクと容器(7611から7613)、より線(7614)、その他の製品(7616)です。くず(7602)は対象外です(アルミニウムのCNコード、CBAM アルミニウム部門ガイド)。

CBAMのアルミニウムと鉄鋼はどう違いますか

アルミニウムと鉄鋼はどちらも付属書IIの製品で、直接排出量だけが対象です。鉄鋼はCO2だけ、アルミニウムはPFCも含みます。アルミニウム製錬は製鋼よりはるかに多くの電力を使うため、間接排出量が除外されることの影響はアルミニウムのほうが大きくなります。鉄鋼ではコークスなどの直接排出量が大半を占めます(日本の鉄鋼輸出とEU CBAM)。

英国CBAMは日本のアルミニウム輸出に関係しますか

英国CBAMは、EU CBAMとは別の税制度で、2027年1月1日からアルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼の5部門の直接排出量に課税します。英国が2026年10月16日に公表したアルミニウムの試算税率はCO2換算トン当たり9.79ポンドで、納税義務を生じない参考値です。拘束力のある2027年第1四半期の税率は2026年末までに公表されます(英国CBAM、英語)。

川下製品への対象拡大はアルミニウム製品に影響しますか

川下製品への対象拡大は欧州委員会提案(COM(2025)989、法律ではありません)で、鉄鋼とアルミニウムの川下製品を2028年1月1日から加える案です。対象品目数は欧州委員会案が約180、理事会案が約200、欧州議会案が約457(推計)です。2026年10月20日の第1回三者協議(トリローグ)では全体合意に至らず、アルミニウム製品の少量免除基準(デミニミス)を含む4つの論点が技術協議に回されたと報じられています(川下製品への対象拡大)。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。