
アルミニウムの間接排出量、つまり製錬に使う電力の発電に伴う排出量は、EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の課金対象になっていません。石炭火力の比率が高い電力で操業する中国の一次アルミニウム製錬所は、製品1トン当たり合計で約12から16 tCO2e(CO2換算トン)を排出しますが、CBAMが算定するのは直接排出量だけで、新しい製錬所ではこれが約1.5 tCO2eにとどまります(いずれも当サイトの概算で、デフォルト値ではありません)。
つまり、炭素フットプリントの8割以上を占める電力由来の排出量が、課金の範囲から外れています。これは制度の構造によるもので、アルミニウムは「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」の付属書IIに掲げられているため、直接排出量だけが算定されます(第7条第1項)。
日本の輸出者にとって重要なのは、電力の除外よりもデフォルト値の生産ルートです。デフォルト値を定めた実施規則の付属書Iでは、日本の表のアルミニウムの行がすべて二次ルート(L)で記載されています。アルミ板(CNコード 7606 12 99)の負担は2026年輸入分で製品1トン当たり144.78ユーロとなり、中国産アルミ塊(CNコード 7601)の157.44ユーロに近い水準です(2026年第3四半期の公式価格、1 CO2換算トン当たり82.32ユーロで計算)。
CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。本ページでは、課金対象となる排出量、間接排出量が除外される理由、直接排出量と全体の差、日本の製品への影響、EUの輸入者の対応、将来の対象拡大の見通しを順に説明します。
キャプション:一次アルミニウムの製錬は製品1トン当たり14から16 MWhの電力を使うため、石炭火力の比率が高い電力系統の製錬所では、電力が炭素フットプリントの最大の発生源になります。
2026年のCBAMでアルミニウムの課金対象となる排出量
規則(EU)2023/956のもとでアルミニウムの課金対象となるのは直接排出量だけで、炭素アノードの消費によるCO2と、ホール・エルー法の電解で生じるパーフルオロカーボン(PFC)がこれに当たります。
製錬で消費する電力による間接排出量は除外されます。この制限は、アルミ塊(7601)、線(7605)、板(7606)、その他の製品(7616)を含め、付属書Iに掲げられたアルミニウムの14項目すべてに適用されます。
新しい一次製錬所の直接排出量は製品1トン当たり約1.5 tCO2e(概算で、デフォルト値ではありません)ですが、検証済みのデータがない輸入者は、原産国のデフォルト値で算定することになります。中国産アルミ塊(CNコード 7601)のデフォルト値は直接排出量だけで3.000 tCO2e、2026年のマークアップ10%を加えると3.300です。
無償割当調整は、CBAM係数97.5%×部門横断補正係数(CSCF)100%×ベンチマーク1.423=1.387425 tCO2eです(実施規則(EU)2025/2620、実施決定(EU)2026/1862)。差し引き、製品1トン当たり1.912575枚のCBAM証書が必要になります。
2026年10月5日に公表された2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると、製品1トン当たり157.44ユーロになります。2030年輸入分ではマークアップ30%とCBAM係数51.5%が適用されるため、同じ価格でも製品1トン当たり260.72ユーロに増えます。
ベンチマークは2027年からの輸入品について更新される可能性があるため(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)、2030年の数値は目安です。CBAM係数は無償割当のうち維持される割合です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。
直接排出量に含まれる温室効果ガスは2種類です。1つは電解中に炭素アノードが酸化して出るCO2、もう1つはPFCで、地球温暖化係数(GWP)はCF4が6,630、C2F6が11,100です(実施規則(EU)2025/2547付属書II第G項の表6)。PFCは、電解槽のアルミナ濃度が下がりすぎたときの「アノード効果」で発生します。
ノルウェーやアイスランドの新しい製錬所は厳密な工程管理でアノード効果を抑えていますが、中国、ロシア、一部の湾岸協力会議(GCC)諸国の旧式の施設ではPFCの排出が多く残っています。このため、中国産とアイスランド産の一次アルミニウムでは、電力の影響を考慮しなくても、申告される直接排出量に大きな差が生じることがあります。
全部門に共通する制度の枠組みと、認可CBAM申告者の義務の流れは、EU炭素国境調整措置(CBAM)の全体像で説明しています。
アルミニウムの間接排出量が対象外となる理由:付属書IIの規定
アルミニウムの間接排出量が課金対象外なのは、規則(EU)2023/956付属書IIが、直接排出量だけを算定する製品としてアルミニウムを掲げているためです。
これは見落としではなく、意図的な設計です。鉄鋼、アルミニウム、水素が付属書IIに掲げられている理由は共通しています。EUの域内生産者が、EU ETS指令(指令2003/87/EC)第10a条第6項に基づき、間接的な炭素コストについて国家補助による補償を受けているためです。
EUの発電事業者はEU ETSの費用を電力価格に転嫁するため、EUの製錬所は電力料金を通じて間接的に炭素コストを負担しています。加盟国は、製錬所の国際競争力を守るため、この間接コストの一部を補償できます。域内の補償を続けたまま輸入品にCBAMで間接排出量の負担を課すと、二重計上による不均衡が生じます。
そこで規則(EU)2023/956は、対象範囲の網羅性よりも制度の整合性を優先し、域内で間接コストの補償を受けている部門には、間接排出量についてCBAMを適用しない設計になっています。
規則(EU)2023/956前文第65項は、付属書IIの製品の間接排出量に対象を広げるために必要な情報を、欧州委員会が「as soon as possible」(できる限り早く、当サイト仮訳)収集するよう求めています。2026年10月23日時点で、アルミニウムは付属書IIに掲げられたままで、課金対象は直接排出量だけです。
2025年12月16日の第30条の見直し報告書(COM(2025)783)は、間接排出量を対象にする5つの技術的な解決策を検討し、さらなる分析が必要だと結論づけました。同報告書は、間接排出量の扱いについて提案を行うかどうかの判断を、2027年末の見直しに委ねています。
対象範囲に入る排出量の算定方法と、前駆体の排出量を川下のアルミニウム製品に配分する方法は、体化排出量の算定方法で説明しています。
直接排出量と炭素フットプリント全体の差(概算)
石炭火力の比率が高い電力系統で操業する一次製錬所では、CBAMの算定範囲に入るのは炭素フットプリント全体の約11から12.5%です。
次の表は、製錬の電力原単位を製品1トン当たり15 MWhと仮定し、4つの代表的な電力系統で一次アルミニウムの直接排出量と全体の排出量を比べたものです。数値はすべて当サイトの概算で、デフォルト値ではありません。
| 生産地 | 電力系統の排出係数(概算) | 直接排出量(tCO2e/t) | 電力由来のCO2(tCO2e/t) | 合計(tCO2e/t) | CBAMの算定範囲に入る割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| ノルウェー・アイスランド(水力) | 約0.01 tCO2/MWh | 約1.5 | 約0.15 | 約1.65 | なし:対象外の原産国(付属書III第1項) |
| UAE・バーレーン(天然ガス) | 約0.5~0.6 tCO2/MWh | 約1.5 | 約7.5~9.0 | 約9.0~10.5 | 約14~17% |
| インド(石炭中心の系統) | 約0.7 tCO2/MWh | 約1.5 | 約10.5 | 約12.0 | 約12.5% |
| 中国(石炭中心の系統) | 約0.7~0.8 tCO2/MWh | 約1.5 | 約10.5~12.0 | 約12.0~13.5 | 約11~12.5% |
石炭中心の電力系統で操業する中国の一次製錬所では、2026年のCBAM証書が対象とするのは、実際の炭素フットプリントの約11から12.5%に当たる直接排出量の部分だけです。ノルウェーとアイスランドの製錬所は付属書III第1項の対象外の原産国にあるため、そのフットプリントはまったくCBAMの課金対象になりません。
この差が、付属書IIの制限が生む構造的な競争のゆがみです。課金対象から外れる排出量は非常に大きく、中国産アルミ塊をデフォルト値で輸入する場合、2026年の負担は製品1トン当たり157.44ユーロで、その全額が直接排出量によるものです。
表にある中国の電力由来の排出量(製品1トン当たり10.5から12.0 tCO2e)には、まったく課金されません。これらは15 MWhの仮定と概略の系統排出係数から求めた概算で、デフォルト値ではないため、本ページの計算にも使っていません。
日本のアルミニウム製品への影響:負担を決めるのは二次ルート(L)のデフォルト値
日本産のアルミニウム製品でも電力の排出量はCBAMの算定に入らず、EUの買い手の負担は、付属書Iの日本の表にある二次ルート(L)のデフォルト値か、施設の検証済みの直接排出量で決まります。
EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象のアルミニウム製品(付属書Iのコード)は1億9,497万ユーロ、4万2,260トンで、EU域外輸入に占める割合は金額ベースで0.64%、数量ベースで0.46%、日本の順位は金額ベースで第23位です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。アルミ塊(CNコード 7601)は214万ユーロ、122トンにとどまり、輸入のほぼすべてが加工品です。
最も大きいのはアルミ板(CNコード 7606)の1億1,364万ユーロ(3万4,692トン)、次がアルミはく(CNコード 7607)の3,012万ユーロ(3,624トン)で、2品目で日本のアルミニウムの金額の約74%を占めます。総額は2023年の2億1,918万ユーロから2024年に1億2,705万ユーロに減り、2025年に回復しました(Eurostat Comext、2025年)。
日本の表のアルミニウムの24行はすべて二次ルート(L)で記載され、デフォルト値で申告する場合のベンチマークもルートLの値になります(実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項および第5.3項)。日本の行も他の国と同じく、間接排出量の欄は「N/A」で、総排出量は直接排出量と同じ値です。
日本の主なアルミニウム製品をデフォルト値で輸入した場合のコストは、次の表のとおりです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620のColumn Bの値を用い、2026年11月4日に当サイトの当サイトの計算ツールで計算しました。
| 製品(CNコード) | 日本のデフォルト値(tCO2e/t) | ベンチマーク(Column B、ルートL) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(製品1トン当たり) | 2030年のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|
| アルミ塊(7601) | 0.360 | 0.091 | 0.307275 | 25.29ユーロ | 34.67ユーロ |
| 棒・形材(7604 10 10) | 1.280 | 0.148 | 1.2637 | 104.03ユーロ | 130.71ユーロ |
| アルミ板(7606 12 99) | 1.730 | 0.148 | 1.7587 | 144.78ユーロ | 178.86ユーロ |
| アルミはく(7607 11 90) | 1.730 | 0.258 | 1.65145 | 135.95ユーロ | 174.20ユーロ |
| その他のアルミニウム製品(7616 99 90) | 1.730 | 0.148 | 1.7587 | 144.78ユーロ | 178.86ユーロ |
2026年はマークアップ10%とCBAM係数97.5%、2030年はマークアップ30%とCBAM係数51.5%で、価格はどちらも82.32ユーロで一定としています。ベンチマークは2027年からの輸入品について更新される可能性があるため、2030年の列は目安です。
日本の電力系統の排出係数がいくらであっても、この計算には影響しません。間接排出量が除外されているため、日本の施設が使う系統電力の排出量は、デフォルト値でも実排出量でも申告に含まれません。貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。結果は、規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
アルミ塊(CNコード 7601)について、直接排出量だけのデフォルト値とコストを原産国別に比べると、次のとおりです(価格82.32ユーロ、2026年11月4日計算)。
| 原産国 | 付属書Iのルート | デフォルト値(tCO2e/t) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト | 2030年のコスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 中国 | 一次(K) | 3.000 | 1.912575 | 157.44ユーロ | 260.72ユーロ |
| インド | 一次(K) | 1.870 | 0.669575 | 55.12ユーロ | 139.79ユーロ |
| UAE | 一次(K) | 1.870 | 0.669575 | 55.12ユーロ | 139.79ユーロ |
| バーレーン | 一次(K) | 1.870 | 0.669575 | 55.12ユーロ | 139.79ユーロ |
| 日本 | 二次(L) | 0.360 | 0.307275 | 25.29ユーロ | 34.67ユーロ |
| 韓国 | 二次(L) | 0.360 | 0.307275 | 25.29ユーロ | 34.67ユーロ |
インド、UAE、バーレーンのデフォルト値は同じ1.870で、概算表の電力由来の排出量(UAE・バーレーンで約7.5から9.0、インドで約10.5 tCO2e)は、どの国のデフォルト値にも含まれていません。この表で日本のアルミ塊の負担が韓国と並んで最も低いのは二次ルートのデフォルト値が低いためで、電力の扱いとは関係ありません。
日本の電力料金に含まれる炭素コストは第9条で控除できますか
日本の電力料金に含まれる炭素コストは、アルミニウムのCBAMでは第9条の控除の根拠になりません。アルミニウムでは電力の間接排出量を申告しないため、それに対応する炭素価格を差し引く対象がないからです。日本の排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度(2026年4月から2027年3月)から、CO2の直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者に参加が義務づけられており、発電部門も対象です(経済産業省、ICAP)。
第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)の実施規則案は2026年5月13日に公表されましたが、2026年11月4日時点で未採択で、日本の炭素価格を含め、どの国の炭素価格も認められていません。施設自身の直接排出量に対する炭素価格であっても、GX-ETSで無償割当を受けた分は、実際に支払われた炭素価格には当たりません。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。
GX-ETSの扱いについてまだ答えの出ていない論点(無償割当の評価、日本の年度とCBAMの暦年の対応など)は、CBAMの炭素価格控除にまとめています。
日本の輸出者にはCBAM上の法的義務はなく、申告とCBAM証書の納付の義務はEUの認可CBAM申告者が負います。日本の事業者は、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録し、検証済みのデータをEUの買い手と共有できます。日本全体の状況はCBAMと日本にまとめています。
英語のニュースレターです。CBAM証書の価格アラートと重要な規制の変更など、CBAMに関する最新情報を毎週お届けします。スパムは送りません。配信はいつでも停止できます。
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EUのアルミニウム輸入者が2026年にすべきこと
2026年1月1日に始まった本格実施期間では、50トン基準を超えてアルミニウム製品を輸入するEUの輸入者は、認可CBAM申告者の資格を取得する必要があります。
2026年3月31日までに申請した輸入者は、管轄当局が決定するまで暫定的に輸入を続けられます(第17条第7a項)。CBAM証書の販売は2027年2月1日に始まり(第20条第1項)、2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は2027年9月30日です(第6条第1項、第22条第1項)。申告書には、輸入したすべてのアルミニウム製品の直接の体化排出量を、デフォルト値か検証済みの実排出量で記載します。
アルミニウムの輸入者が2026年に押さえるべき義務は、次の4つです。
- 認可CBAM申告者の資格を、所在する加盟国の管轄当局から取得します。 暫定的な輸入のための2026年3月31日の申請期限は過ぎています。
- EU域外のアルミニウムの供給者ごとに、検証済みの排出量データを求めます。 アノードの消費によるCO2と、アノード効果によるPFCの排出の両方が対象です。
- 検証済みの実排出量とデフォルト値のどちらを使うかを決めます。 2026年のアルミニウムのデフォルト値には、実施規則(EU)2025/2621により10%のマークアップが加わります。
- 2027年9月30日の申告に向けて書類をそろえ始めます。 書類には、輸入品を生産した施設ごとの検証報告書も含まれます。
ノルウェー、アイスランド、スイスから調達する場合、CBAMの義務は生じません。これらの国を原産とする製品は、規則(EU)2023/956付属書III第1項(第2条第4項)によりCBAMの対象外です。付属書III第1項は、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスと、ビュージンゲン、ヘルゴラント、リヴィーニョ、セウタ、メリリャの地域を掲げています。
2025年のEU域外からのCBAM対象のアルミニウム製品(付属書Iのコード)の輸入のうち、対象外の原産国からの輸入は数量ベースで29%を占め、ノルウェーが155万トン、アイスランドが82万1,000トンでした(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。
CNコードの全一覧、川下の加工品の前駆体の配分ルール、主な供給国ごとの影響は、CBAM アルミニウム部門ガイドで説明しています。
アルミニウムの間接排出量が将来CBAMの課金対象になる可能性
アルミニウムの間接排出量を課金対象にするには、国家補助との関係と、EUの川下の製造業の負担増という2つの障害を乗り越える必要があります。
主な技術的障害は国家補助との関係です。EUの製錬所への第10a条第6項の補償を続けたまま、競合する輸入品にだけ間接排出量についてCBAMを課すと、WTOの無差別原則との関係で懸念が生じます。解決には、補償をやめる(EUの生産者は反対しています)か、域内の補償水準を考慮してCBAMの間接排出量の算定方法を設計し直すかのどちらかが必要ですが、いずれも容易ではありません。
川下製品への対象拡大(欧州委員会提案COM(2025)989、法律ではありません)は、2028年1月1日から鉄鋼とアルミニウムの川下製品を追加する案です。追加品目の数は、欧州委員会案が約180、理事会の一般的アプローチが8桁コードで約200(Mayer Brownの集計)、2026年9月15日に採択された欧州議会の交渉方針が約457(業界紙の推計)です。
2026年10月20日の第1回三者協議(トリローグ)は全体合意に至らず(報道)、アルミニウムのデミニミス基準を含む4つの論点が技術的な作業に回されました。第2回は2026年11月30日と報じられており、案件はまだ提案の段階です。川下製品への拡大と同時に間接排出量を加えれば、特にEUの自動車と包装の輸入者の負担は大幅に増えることになります(川下製品への対象拡大)。
CBAMで間接排出量を課金対象にしている前例はありますか
あります。セメントと肥料です。両部門は間接排出量もCBAMの対象で、付属書IIには掲げられていません。EUのセメントと肥料の生産者は、EU ETSの間接コストについて第10a条第6項の補償を受けていないため、間接排出量を含めても域内との不均衡は生じません。
EU ETSのもとでアルミニウムの間接コストの補償が廃止されれば、CBAMの間接排出量への拡大を妨げる技術的障害はなくなります。2026年10月23日時点でアルミニウムは付属書IIに残っており、欧州委員会の見直し報告書COM(2025)783は、提案の可能性を2027年末の見直しに委ねています。セメントの間接排出量の算定はCBAM セメント部門で説明しています。
アルミニウムのデフォルト値には間接排出量のコストが含まれますか
含まれません。実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のアルミニウムの行は、間接排出量の欄が「N/A」で、総排出量のデフォルト値は直接排出量の値と同じです。中国産アルミ塊(CNコード 7601)のデフォルト値3.000 tCO2eも、日本産の0.360も、電力の排出量を含みません。
現行の規則では、アルミニウムの間接排出量は課金の対象ではありません。デフォルト値の決め方と、マークアップの推移がコストに与える影響は、CBAMのデフォルト値で説明しています。
電力系統の排出係数はアルミニウム輸出者の競争力にどう影響しますか
電力系統の排出係数は、競争条件に相反する2つの方向から同時に作用します。水力を使うノルウェーやアイスランドの生産者のように低炭素の系統にある輸出者は、電力由来の間接排出量がわずかで、しかも付属書IIIによりCBAMの対象外となるため、製品をCBAMの負担なしにEUへ輸出できます。中国やインドのように石炭中心の系統にある輸出者は、直接排出量の負担を負いますが、はるかに大きい間接排出量の負担は免れています。
その結果、低炭素の生産者と高炭素の生産者の競争上の差は、間接排出量まで対象とするCBAMの場合より小さくなります。系統の排出係数が約0.5から0.6 tCO2/MWhの天然ガス中心の系統で操業するUAEとバーレーンの輸出者はその中間に位置し、間接排出量はあるものの、石炭中心の系統の競合より少なくなります。長期的な競争上の位置づけは日本のアルミニウム輸出とEU CBAMをご覧ください。
PFCはCO2より大きなコスト要因になりますか
アノード効果の管理が不十分な旧式の製錬所では、CO2e換算でPFCの排出がCO2を上回ることがあります。CF4のGWPは6,630なので、絶対量が少なくてもCO2e換算では大きな数値になります。アルミニウム1トン当たり0.1 kgのCF4を出す製錬所では、CBAM申告に製品1トン当たり0.663 tCO2eが加わります。これは、直接排出のCO2の目安である1.5 tCO2e/tの44%に相当します。
北欧と西欧の新しい製錬所は、アノード効果をほぼゼロまで減らしています。PFC管理の水準が最も高い施設と最も低い施設の差は、検証済みのデータでCBAM申告を行う場合に、コストを分ける重要な要素になります。PFCとCBAMの報告義務の関係はアルミニウムのPFCとCBAMで詳しく説明しています。
製錬や圧延に使う電力の排出量はEUの買い手の証書の数に影響しますか
影響しません。アルミニウムでEUの輸入者が申告するのは直接排出量の範囲の体化排出量だけで、電力の消費量や電力系統の排出係数は、デフォルト値でも実排出量でもCBAM証書の数を変えません。証書の数を左右するのは、アノード、PFC、燃料の燃焼による直接排出量と、前駆体の体化排出量です。
事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します(同実施規則第10条第4項)。16項目のうち間接排出量に関する2項目は、主にセメントと肥料に関係します。
アルミニウム輸入者は実務で何を確認すればよいですか
本格実施期間にアルミニウム製品を輸入するEUの輸入者の手続きは、3つの段階に分かれます。暫定的な輸入のための2026年3月31日の申請期限は過ぎているため、まだ申請していない輸入者は、50トン基準を超えて輸入する前に認可を受ける必要があります。
2026年のアルミニウム輸入者のチェックリストを、段階ごとに次に示します。
- 認可の段階:CBAM登録簿を通じて所在国の管轄当局に認可CBAM申告者の申請を提出し、申請前5年間を対象とする誓約書を添えます。
- データ収集の段階(2026年通年):EU域外の供給者の施設ごとに、検証済みの直接排出量の報告書を集めます。供給者が旧式の電解技術を使う場合は、PFCの報告を別途求めます。
- 申告の段階(2027年9月30日まで):CBAM登録簿で最初の年次CBAM申告書を提出し、直接の体化排出量から第31条の無償割当調整と第9条の炭素価格の控除を差し引いた数のCBAM証書を納付します。
複数の原産国から調達するEUの輸入者は、デフォルト値でのコストを今のうちに試算しておく必要があります。デフォルト値のマークアップが2027年に10%から20%に上がるためです。検証済みの実排出量がデフォルト値を下回る場合、2027年以降は実排出量を使う経済的なメリットがさらに大きくなります。輸入者向けの手順はアルミニウム輸入者のCBAM対応(英語)にあり、算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。
キャプション:デフォルト値で輸入するアルミニウムのCBAMコストは、マークアップが上がりCBAM係数が下がるにつれて毎年増え、2034年からは無償割当調整を差し引かなくなります。