
CBAMの鉄鋼ベンチマークは、2025年12月16日の実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項で、478の鉄鋼CNコードについてコードごとに定められています。熱延鋼板(CNコード 7208)のデフォルト値用ベンチマークは、製品1トン当たり、高炉・転炉法1.370 tCO2e(CO2換算トン)、直接還元鉄(DRI)を使う電炉法0.481 tCO2e、スクラップ電炉法0.072 tCO2eです。
EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の根拠は、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。ベンチマークは、2026年1月1日からEUに輸入されるすべての鉄鋼製品について、体化排出量から差し引く無償割当調整の大きさを決めます。
ベンチマークは生産者の排出量を測る数値ではなく、デフォルト値とも異なります。CBAM係数を掛けたうえで体化排出量から差し引く量で、排出量とこの差し引き量の差が証書のコストを決めます。日本の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を2026年にデフォルト値で輸入する場合、必要なCBAM証書は製品1トン当たり0.97425枚で、2026年第3四半期の価格では80.20ユーロです。
キャプション:実施規則(EU)2025/2620が熱延鋼板(CNコード 7208)に定める3つのルート別の値は、高炉・転炉法、DRI電炉法、スクラップ電炉法の炭素プロファイルの違いを反映しています。
証書制度の全体像と、ベンチマークに法的拘束力を与える枠組みは、EU CBAMの基礎ガイドで説明しています。
2026年のCBAMの鉄鋼ベンチマークの公式値はいくつですか
CBAMの鉄鋼ベンチマークの公式値は、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項にCNコードごとに記載された値で、実排出量用のColumn Aとデフォルト値用のColumn Bの2列があります。
第5.3項の表は、478の鉄鋼CNコードについてベンチマークを定めています。Column Aは、体化排出量を検証済みの実排出量で申告する場合に使うプロセスベンチマークで、前駆体に含まれる無償割当がこれに加算されます。Column Bは、デフォルト値で申告する場合に使うデフォルト値用ベンチマークです。
1つのCNコードに複数の値がある場合は、かっこ内の記号が生産ルートまたは期間を示します。第5.3項の凡例は次のとおりです(英語原文、当サイト仮訳を併記)。
- (C):"Carbon Steel based on BF/BOF"(高炉・転炉法による炭素鋼、当サイト仮訳)
- (D):"Carbon Steel based on DRI/EAF"(DRIを使う電炉法による炭素鋼、当サイト仮訳)
- (E):"Carbon Steel based on Scrap/EAF"(スクラップ電炉法による炭素鋼、当サイト仮訳)
- (F):"Low alloy Steel based on BF/BOF"(高炉・転炉法による低合金鋼、当サイト仮訳)
- (G):"Low alloy Steel based on DRI/EAF"(DRIを使う電炉法による低合金鋼、当サイト仮訳)
- (H):"Low alloy Steel based on scrap/EAF"(スクラップ電炉法による低合金鋼、当サイト仮訳)
- (J):"High alloy Steel (based on EAF)"(電炉法による高合金鋼、当サイト仮訳)
- (1):"Value is to be used for production years 2026-27"(2026年から2027年の生産年に使う値、当サイト仮訳)
- (2):"Value is to be used for production years 2028-30"(2028年から2030年の生産年に使う値、当サイト仮訳)
主な炭素鋼の製品グループの値は、次の表のとおりです(単位は製品1トン当たりのtCO2e、実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項)。
| CNコード | 製品 | Column A(実排出量用) | Column B、ルート(C) 高炉・転炉法 | Column B、ルート(D) DRI電炉法 | Column B、ルート(E) スクラップ電炉法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 7207 11 14、7207 12 10 | 非合金鋼の半製品(ビレット、スラブ) | 0.188 (C)、0.065 (D)、0.065 (E) | 1.364 | 0.475 | 0.066 |
| 7208(全20コード)、7211 13 00、7211 14 00、7211 19 00、7306 30 18 | 熱延鋼板、溶接鋼管の1コード | 0.044 | 1.370 | 0.481 | 0.072 |
| 7209(全17コード) | 冷延鋼板 | 0.079 | 1.458 | 0.533 | 0.108 |
| 7210(全15コード) | めっき・被覆鋼板 | 0.112 | 1.491 | 0.567 | 0.141 |
| 7213(全10コード)、7214 20 00 | 棒鋼と線材 | 0.038 | 1.364 | 0.475 | 0.066 |
1.370/0.481/0.072の組み合わせは熱延鋼板のColumn Bの値であり、鉄鋼全体に共通するベンチマークではありません。中国産やトルコ産のスラブとビレット(CNコード 7207 12 10、7207 11 14)には1.364/0.475/0.066が適用されます。ただし、第7207項のすべてが1.364というわけではなく、CNコード 7207 11 90を含む6つのコードは高炉・転炉法で1.629です。
ルート記号のない製品もあり、その場合はルートにかかわらず1つの値が適用されます。銑鉄(第7201項)はColumn A 1.089、Column B 1.210、直接還元鉄(第7203項)は0.295と0.397、凝結させた鉄鉱石(焼結鉱やペレットなど、CNコード 2601 12 00)は両列とも0.086です。
ステンレス鋼、合金鉄、その他の合金鋼の多くの行には、2つの期間の値が記載されています。たとえばステンレス熱延コイル(CNコード 7219 11 00)のColumn Bは、2026年から2027年の生産年が1.189、2028年から2030年が1.151です。
ベンチマークは、申告する排出量ではありません。輸入者は検証済みの実排出量か、付属書Iのデフォルト値にマークアップを加えた値を申告し、ベンチマークは差し引く量だけを決めます。製品1トン当たりの無償割当調整は、CBAM係数(2026年97.5%)×部門横断補正係数(CSCF、2026年から2030年は100%、実施決定(EU)2026/1862)×ベンチマークです(規則(EU)2023/956第31条)。
日本産の鉄鋼製品にはどのベンチマークが適用されますか
日本産の鉄鋼製品をデフォルト値で申告する場合、ベンチマークは実施規則(EU)2025/2621付属書Iの日本の表に記載されたルートで決まり、炭素鋼では高炉・転炉法(C)の値になります。
日本の表(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の鉄鋼の行のうち、値のある198行のルート記号は、炭素鋼の高炉・転炉法(C)が103行、低合金鋼の高炉・転炉法(F)が32行、両者の併記(C/F)が6行です。残る57行はステンレス鋼(第7218項から第7223項)、銑鉄、合金鉄などルート記号のない行で、電炉法(D、E、G、H)を示す行は1つもありません(2026年11月4日に当サイトの法令データで集計)。
EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象の鉄鋼製品(鉄鉱石を除く第72類と第73類、付属書Iのコード)は12億4,590万ユーロ、80万9,223トンで、EU域外からの輸入に占める割合は金額ベースで2.04%です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。日本の主な輸出品について、デフォルト値で申告する場合に適用されるベンチマークを示すと次のとおりです。
| 製品(CNコード) | 2025年のEUの対日輸入額(4桁の項) | 日本のデフォルト値(tCO2e/t) | ルート(日本の表) | Column Bのベンチマーク(2026年) | 無償割当調整(2026年) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | 2026年のコスト(製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 熱延鋼板(7208 51 20) | 2億1,673万ユーロ | 2.100 | C | 1.370 | 1.33575 | 0.97425 | 80.20ユーロ |
| 無方向性電磁鋼板(7225 19 90) | 1億7,762万ユーロ | 3.530 | C | 1.488 | 1.4508 | 2.4322 | 200.22ユーロ |
| ボルト・ねじ(7318 15 42) | 1億7,643万ユーロ | 2.800 | C | 1.364 | 1.3299 | 1.7501 | 144.07ユーロ |
| 冷延鋼板(7209 16 90) | 1億1,888万ユーロ | 2.143 | C | 1.458 | 1.42155 | 0.93575 | 77.03ユーロ |
| めっき鋼板(7210 49 00) | 9,436万ユーロ | 2.130 | C | 1.491 | 1.453725 | 0.889275 | 73.21ユーロ |
| ラインパイプ用継目無鋼管(7304 19 10) | 5,737万ユーロ | 2.110 | C | 1.383 | 1.348425 | 0.972575 | 80.06ユーロ |
| 冷延ステンレス鋼板、幅600mm未満(7220 20 21) | 5,098万ユーロ | 3.360 | なし | 1.270(期間1) | 1.23825 | 2.45775 | 202.32ユーロ |
| シリコマンガン鋼の線(7229 20 00) | 4,039万ユーロ | 3.530 | C/F | 1.613(F、期間1) | 1.572675 | 2.310325 | 190.19ユーロ |
輸入額は4桁の項(7208、7225、7318、7209、7210、7304、7220、7229)ごとの合計です(Eurostat Comext、2025年)。デフォルト値は日本の表の「総排出量」、マークアップは2026年の10%、価格は2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロとし、2026年11月4日に当サイトの計算ツールで計算しました。
表から読み取れる日本固有の点は3つあります。
- ステンレス鋼の行にはルート記号がなく、期間で値が変わります。 冷延ステンレス鋼板(CNコード 7220 20 21)のベンチマークは2027年まで1.270、2028年からは1.230に下がるため、差し引き量が小さくなります。日本は第7220項で、EU域外からの供給国として第3位です(Eurostat Comext、2025年)。
- 合金鋼線(第7229項)の日本の行は「C/F」と併記されています。 ベンチマークの表に炭素鋼のルート(C、D、E)の値しかないコード(CNコード 7229 90 50、ルート(C) 1.435)ではCが、低合金鋼と高合金鋼のルート(F、G、H、J)の値しかないコード(CNコード 7229 20 00、ルート(F)で2027年まで1.613)ではFが当てはまります。
- 直接還元鉄(第7203項)の日本の行は、値のないダッシュになっています。 この場合は付属書Iの導入部の規定により「その他の国・地域」の表の値(1.325)を使い、ベンチマークはルート記号のない0.397です。
ボルト・ねじの1.7501は、経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)が2026年について示す「1.750」(CBAM係数97.5%、ベンチマーク1.364)と一致します。日本の製品別のコストと輸出者の対応は、日本の鉄鋼輸出とEU CBAMで詳しく説明しています。
鉄鋼メーカーは3つの生産ルートにどう分類されますか
デフォルト値を使う場合、施設を分類する手続きはなく、原産国の付属書Iの行に記載されたルートがそのまま適用されます。
実施規則(EU)2025/2620付属書第5.1項は、次のように定めています。"Where default values are used to determine SEFA of a final good or of a precursor, the same production route shall be used as indicated in Annex I to Commission Implementing Regulation (EU) 2025/2621 for the country of origin of that good or precursor."(最終製品または前駆体の無償割当調整をデフォルト値で決める場合は、その製品または前駆体の原産国について実施規則(EU)2025/2621付属書Iに示されたものと同じ生産ルートを用いる、当サイト仮訳)
この規定により、炭素鋼では次の3つのことがいえます。
- 大半の原産国はルート(C):中国、インド、トルコ、韓国、日本、ウクライナ、ロシア、ベトナム、ブラジルの表と「その他の国・地域」の表では、ルート記号のある鉄鋼の行はすべて高炉・転炉法です。実際の工場が電炉であっても、高炉・転炉法のベンチマークが差し引かれます。
- ルート(E)は6つの表だけ:アゼルバイジャン、ミャンマー、北マケドニア、フィリピン、タイ、ウズベキスタンの表は、炭素鋼でスクラップ電炉法(E)、低合金鋼で(H)を示しています。
- ルート(D)の行はなし:DRI電炉法を示す国の表は1つもないため、0.481や0.475はデフォルト値の経路では選ばれません。
このため、デフォルト値を使うトルコの電炉メーカーのビレット(CNコード 7207 11 14)には、トルコのデフォルト値2.310 tCO2eとルート(C)のベンチマーク1.364が適用されます。輸入者はルート(E)の0.066を選べず、選んでも得はありません。ベンチマークが低いほど差し引き量が小さくなるからです。
日本のスクラップ電炉メーカーの製品も、デフォルト値では同じ扱いです。日本の半製品(CNコード 7207 11 14)では、デフォルト値2.100にマークアップ10%を加えた2.310から1.3299を差し引き、製品1トン当たり0.9801枚になります。実排出量に切り替えると、差し引き量の基になるベンチマークは、ルート(E)のColumn Aの0.065に前駆体に含まれる無償割当を加えた値に変わります。このため、実排出量が低くなる効果と差し引き量が減る効果を、あわせて比べる必要があります。
実排出量を使う場合は、事業者が排出量報告書に施設の生産ルートと鋼種を記載し、認定検証機関が確認したうえで、そのルートのColumn Aの値が適用されます。付属書第5.2.3項は、炭素鋼を "means steel other than stainless steel, high alloy or low alloy steel"(ステンレス鋼、高合金鋼、低合金鋼以外の鋼をいう、当サイト仮訳)と定義しています。
同じ製鉄所に高炉と電炉の両方を持つ生産者から調達する輸入者は、工場全体の平均ではなくルートごとの生産データを求めてください。そうすれば、製品の流れごとに検証済みの排出量とColumn Aのベンチマークを対応させられます。ルートごとの詳しい仕組みは高炉・転炉法(BF-BOF)とCBAMと電炉法(EAF)とCBAMで説明しています。
CBAMの公式デフォルト値をすべて1つのスプレッドシートに収録しています。マークアップ、ベンチマーク、2026年の製品1トン当たりのコスト付きで、英語版をすぐにダウンロードできます。
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鉄鋼のデフォルト値とベンチマークはどう違いますか
デフォルト値は申告する体化排出量として証書の数を増やす数値で、ベンチマークは無償割当調整として証書の数から差し引く数値です。
デフォルト値は、検証済みの実排出量がない場合に輸入者が申告する、国別、CNコード別の体化排出量です。ベンチマークは、EU ETSの無償割当に相当する差し引き量を計算するための値です。この2つの混同は、申告でよく見られる誤りです。
中国産スラブ(CNコード 7207 12 10)のデフォルト値は、実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)で製品1トン当たり3.169 tCO2e、ルート(C)で、対応するベンチマークは1.364です。2026年の輸入では、申告する排出量が3.169 × 1.10 = 3.4859、差し引き量が0.975 × 1.364 = 1.3299で、輸入者は製品1トン当たり2.1560枚のCBAM証書を納付します。
日本産の熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)では、2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。
デフォルト値のマークアップは段階的に上がります。付属書Iの導入部に定める日程は次のとおりです。
- 2026年:鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素の総排出量のデフォルト値に10%を加算
- 2027年:同じ分野に20%を加算
- 2028年以降:同じ分野に30%を加算
マークアップは差し引きの前にデフォルト値へ加算され、ベンチマークにはマークアップがありません。このため、マークアップ分の排出量には、すべて証書価格が満額でかかります。中国産スラブの場合、2026年のマークアップは0.3169 tCO2eで、82.32ユーロでは製品1トン当たり26.09ユーロ、2028年以降の30%では78.26ユーロです。
日本産の熱延鋼板の場合、2026年のマークアップは0.210 tCO2eで、82.32ユーロでは製品1トン当たり17.29ユーロ、2028年以降の30%では0.630 tCO2e、51.86ユーロです。検証済みの排出量がデフォルト値を下回る生産者は、マークアップとデフォルト値の超過分をまとめてなくせます。検証報告書の費用は、この差で回収することになります。
第72類と第73類のCNコード全体と、熱延コイルから川下製品へ体化排出量が引き継がれる前駆体のルールは、CBAMの鉄鋼部門ガイドで説明しています。
ベンチマーク値と現在の価格で見るCBAM証書のコスト
2026年の輸入に適用されるCBAM証書の価格は、EU ETSのオークション価格の四半期平均で、1 CO2換算トン当たり第1四半期75.36ユーロ、第2四半期75.28ユーロ、第3四半期82.32ユーロです。
これらの価格は規則(EU)2023/956第21条第1a項に基づくもので、第3四半期の価格は2026年10月5日に公表されました。週次価格が適用されるのは2027年の輸入からです(第21条第1項)。
次の表は、2026年にデフォルト値で輸入した7つの例に、第3四半期の公式価格82.32ユーロで法定の計算方法を当てはめたものです。製品1トン当たりの証書数は、デフォルト値 × 1.10から0.975 × 1.00 × Column Bのベンチマークを差し引いた値です。総コストは無償割当調整を差し引く前のコストです。
| 原産国、製品、CNコード | デフォルト値(tCO2e/t) | マークアップ10%込み | Column Bのベンチマーク(ルート) | 証書数(製品1トン当たり) | 総コスト | 2026年の正味コスト |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 中国、スラブ、7207 12 10 | 3.169 | 3.4859 | 1.364 (C) | 2.1560 | 286.96ユーロ/t | 177.48ユーロ/t |
| 中国、熱延鋼板、7208 | 3.187 | 3.5057 | 1.370 (C) | 2.16995 | 288.59ユーロ/t | 178.63ユーロ/t |
| トルコ、ビレット、7207 11 14 | 2.310 | 2.541 | 1.364 (C) | 1.2111 | 209.18ユーロ/t | 99.70ユーロ/t |
| インド、熱延鋼板、7208 | 4.280 | 4.708 | 1.370 (C) | 3.37225 | 387.56ユーロ/t | 277.60ユーロ/t |
| 韓国、熱延鋼板、7208 | 2.118 | 2.3298 | 1.370 (C) | 0.99405 | 191.79ユーロ/t | 81.83ユーロ/t |
| 日本、熱延鋼板、7208 51 20 | 2.100 | 2.310 | 1.370 (C) | 0.97425 | 190.16ユーロ/t | 80.20ユーロ/t |
| 北マケドニア、熱延鋼板、7208 | 1.530 | 1.683 | 0.072 (E) | 1.6128 | 138.54ユーロ/t | 132.77ユーロ/t |
これらの例では、正味コストは総コストの42%(日本)から96%(北マケドニア)に当たり、2.5%ではありません。2026年に正味コストが2.5%にとどまるのは、体化排出量がベンチマークと等しい製品だけです。ベンチマークを上回る排出量には、マークアップ分も含めてすべて満額で証書が必要です。
北マケドニアの行からは、ルートの規定の影響がわかります。デフォルト値は表の中で最も低いものの、スクラップ電炉法のベンチマークでは0.0702 tCO2eしか差し引かれないため、正味コストはトルコ、韓国、日本より高くなります。
コストは2030年に向けて上がります。CBAM係数(無償割当のうち維持される割合)が97.5%から2030年の51.5%に下がり(指令2003/87/EC第10a条第1a項)、マークアップが30%に達するためです。価格を82.32ユーロで一定とすると、製品1トン当たりの正味コストは次のように推移します。
| 輸入年 | CBAM係数 | マークアップ | 中国、スラブ(7207 12 10) | 日本、熱延鋼板(7208 51 20) |
|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 97.5% | 10% | 177.48ユーロ | 80.20ユーロ |
| 2027年 | 95% | 20% | 206.38ユーロ | 100.31ユーロ |
| 2028年 | 90% | 30% | 238.08ユーロ | 123.23ユーロ |
| 2029年 | 77.5% | 30% | 252.11ユーロ | 137.33ユーロ |
| 2030年 | 51.5% | 30% | 281.31ユーロ | 166.65ユーロ |
実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は変わる可能性があります。貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
キャプション:中国産スラブをデフォルト値で輸入した場合の正味コストは、価格を82.32ユーロで一定とすると、無償割当の段階的廃止とマークアップ30%により、2026年輸入分の製品1トン当たり177.48ユーロから2030年輸入分の281.31ユーロに上がります。
国別のデフォルト値の一覧は、CBAMのデフォルト値にまとめています。
本格実施期間におけるCBAMベンチマークの適用
ベンチマークと検証はどう関係しますか
実施規則(EU)2025/2620のベンチマークは検証の仕組みと並行して機能するもので、検証の代わりにはなりません。2026暦年分のCBAM申告書を2027年9月30日までに提出する輸入者は、体化排出量を検証済みの実排出量かデフォルト値で申告し、検証が必要なのは実排出量を使う場合だけです(規則(EU)2023/956第8条第1項)。
デフォルト値では、原産国の付属書Iの行に記載されたルートのColumn Bのベンチマークが差し引き量を決めます。実排出量では、Column Aのベンチマークと前駆体に含まれる無償割当が差し引き量を決めます。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があり、その輸入者は証書を納付しません。検証の手続きはCBAMの検証で説明しています。
CBAMベンチマークはすべての鉄鋼CNコードに適用されますか
実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項は、478の鉄鋼CNコードについてベンチマークを定めています。対象は、付属書Iで除外されるものを除く第72類、第73類のうち対象となる13の項(第7301項から第7311項、第7318項、第7326項)、および凝結させた鉄鉱石(CNコード 2601 12 00)です。
値はコードごとに異なります。ルート(C)では、ビレットと棒鋼が1.364、熱延鋼板が1.370、冷延鋼板が1.458、めっき鋼板が1.491で、銑鉄は1.210です。ステンレス鋼(第7218項から第7223項)と、その他の合金鋼(第7224項から第7229項)の多くのコードには、2026年から2027年と2028年から2030年の別々の値があります。鉄スクラップ(第7204項)はCBAMの対象製品ではなく、ベンチマークもありません。
ベンチマークは前駆体の連鎖とつながっています。熱延コイル(CNコード 7208)は、冷延鋼板(CNコード 7209)とめっき鋼板(CNコード 7210)の主な前駆体です。実排出量では、前駆体に含まれる無償割当が川下製品のColumn Aの値に加算されます。デフォルト値では、川下製品のコードのColumn Bの値がそのまま適用されます。対象コードの一覧は鉄鋼のCNコードにあります。
CBAMベンチマークはEU ETSのベンチマークと同じですか
CBAMのベンチマークとEU ETSのベンチマークは、法的な根拠も目的も異なる別の仕組みです。EU ETSのベンチマークは、指令2003/87/ECに基づき、EUの国内生産者に配分する無償の排出枠の量を決めます。実施規則(EU)2025/2620のCBAMベンチマークは、その無償割当をCBAM対象製品1トン当たり、CNコードごとに表したもので、同じ量を輸入者の証書数から差し引くために使います。
実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、現在の値がEU ETSのベンチマークの推計に基づくこと、2026年から2030年の確定したEU ETSのベンチマークに基づく更新後のCBAMベンチマークを2027年1月1日以降の輸入品に適用すべきことを記しています。2026年11月4日時点で、改正規則は公表されていません。
2つの仕組みは構造的につながっています。EUの鉄鋼生産者へのEU ETSの無償割当が2026年から2034年にかけて段階的に廃止されるにつれて、CBAM係数が下がり、差し引き量が縮小し、輸入者の証書数が増えます。2034年からはCBAM係数は適用されません。
CBAMのベンチマークは日本のGX-ETSのベンチマーク方式と同じですか
CBAMのベンチマークと、日本の排出量取引制度(GX-ETS)の「ベンチマーク方式」は、名前が同じだけの別の仕組みです。GX-ETSは2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化され、鉄鋼などの指定業種にはベンチマーク方式で排出枠を無償で割り当てます(ICAP)。この日本の割当量は、CBAMの証書数の計算には一切使われません。
CBAMの差し引き量を決めるのは、EUの生産者の無償割当を表す実施規則(EU)2025/2620の値だけです。GX-ETSの支払いがCBAMに影響し得る経路は、第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)だけで、欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。
2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階(未採択)です。GX-ETSの無償割当分をどう扱うかなどの論点は、CBAMの炭素価格控除とCBAMと日本で整理しています。
低炭素の鉄鋼メーカーにはベンチマーク上の利点がありますか
はい、あります。ただし、証書数はゼロが下限です。差し引き量は製品1トン当たりの固定量で、生産者の排出量が少なくても減りません。検証済みの排出量が差し引き量に近い生産者は必要な証書が少なく、差し引き量を下回る生産者は証書が不要です。
2026年8月14日の欧州委員会(DG TAXUD)ガイダンス第1号(法的拘束力なし)は、証書数=max[0,体化排出量-無償割当調整-炭素価格分]という下限付きの式を示しています。計算結果がゼロを下回っても、払い戻しやクレジットはありません。ベンチマークを大きく上回る生産者は、差し引き量を超えるすべての排出量について証書価格を満額で負担します。
検証済みの低炭素の生産者から調達する輸入者は、その利点を調達上の根拠として示せます。CBAM申告書に記載する体化排出量の算定手順は、鉄鋼のCBAM計算で説明しています。
ベンチマークを誤って使った場合の罰金はありますか
誤ったベンチマークに対する独自の罰金はありません。誤ったルートやベンチマークを使うと納付する証書が過少になり、その不足分に応じて措置がとられます。規則(EU)2023/956第19条により、欧州委員会と管轄当局は、申告書を提出すべきであった年の後4年目の終わりまで申告書を審査できます。管轄当局は本来納付すべきであった証書数を決定し、1か月以内に追加の証書の納付を求めます。
9月30日までに納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項、指令2003/87/EC第16条第3項)。認可CBAM申告者以外の者が義務を守らずに製品を持ち込んだ場合は、その3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)です(第26条第2項)。
インドの高炉・転炉法の供給者やトルコのスクラップ電炉法の供給者など、複数の調達先から鉄鋼を購入するEUの輸入者には、製品分類の平均ではなく供給者ごとの管理が必要です。認可、記録の保存、申告の義務は、輸入者向けCBAM鉄鋼ガイド(英語)にまとめています。