グレー水素とCBAM:2026年は79か国共通のデフォルト値で製品1トン当たり571ユーロ、日本産は861.99ユーロ

グレー水素を79か国共通のCBAMデフォルト値(10.820 tCO2e)で申告すると、2026年輸入分は製品1トン当たり571.32ユーロ、日本産(14.030)は861.99ユーロです。

このページの内容
天然ガスと水蒸気が水蒸気改質炉、シフト反応器、CO2除去を経て水素になる工程図。バーナーの燃焼由来のCO2と工程由来のCO2はどちらもCBAMが算定する直接排出量で、使用した電力は算定されません。

グレー水素は、EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の対象製品の中で、製品1トン当たりの証書コストが最も高い製品の一つです。水素のデフォルト値として最も多くの国(79か国)の表に記載されている10.820 tCO2e(CO2換算トン)を使うと、2026年輸入分のコストは、2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ)で製品1トン当たり571.32ユーロです。

日本産の水素のデフォルト値は14.030 tCO2eで、同じ条件で製品1トン当たり861.99ユーロになります。独自の値がない国に適用される「その他の国・地域」の17.740では1,197.94ユーロです。根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。

この高さは製法に由来します。炭素回収を伴わない天然ガスの水蒸気改質(SMR)では、水素1トン当たりおよそ9から12トンのCO2が排出され(工学上の目安)、CBAMベンチマーク5.089 tCO2eの約2倍に当たります。本ページでは、CNコード 2804 10 00の水素について、コストの計算、日本産のデフォルト値の意味、検証による削減額、2034年までの推移を順に説明します。

キャプション:水蒸気改質による水素の直接CO2排出は水素1トン当たりおよそ9から12トンで、CBAMベンチマークの約2倍です。このためグレー水素は製品1トン当たりのCBAMコストが最も高い製品の一つです。

CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。2026年の輸入には、証書の価格としてEU ETSのオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。仕組みの全体はEU炭素国境調整措置の解説で説明しています。


グレー水素のCBAMコストはいくらですか

グレー水素のCBAMコストは、製品1トン当たりの体化排出量から無償割当調整を差し引いた量に証書価格を掛けて求め、デフォルト値10.820の場合、2026年輸入分は製品1トン当たり571.32ユーロです。

計算は簡単です。2026年のマークアップ10%を加えたデフォルト値は10.820 × 1.10 = 11.902 tCO2eです。無償割当調整はCBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×ベンチマークで、0.975 × 1.00 × 5.089 = 4.961775 tCO2eです。差し引き製品1トン当たり6.940225枚のCBAM証書が必要です。無償割当調整前のコストは979.77ユーロで、正味のコストはその58%です。

日本産の場合は、14.030 × 1.10 = 15.433 tCO2eから無償割当調整4.961775を差し引いて製品1トン当たり10.471225枚となり、82.32ユーロを掛けると861.99ユーロです。無償割当調整前のコストは1,270.44ユーロで、正味はその68%です。計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。

算定の対象は直接排出量だけです。水素は規則(EU)2023/956付属書IIに掲げられているため、製造工程で消費する電力の発電に伴う間接排出量はCBAM証書の対象になりません(第7条第1項)。実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の水素の行は、日本の表を含め、間接排出量を「N/A」としています。

デフォルト値は生産ルートではなく原産国で決まります。原産国ごとの水素のデフォルト値と2026年のコストは、次の表のとおりです(2026年第3四半期の価格82.32ユーロ、当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

原産国(付属書Iの表) デフォルト値(tCO2e/t H2) マークアップ10%加算後 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 無償割当調整前のコスト
79か国(トルコ、エジプト、ロシア、英国、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、台湾など) 10.820 11.902 6.940225 571.32ユーロ 979.77ユーロ
サウジアラビア、クウェート 13.450 14.795 9.833225 809.47ユーロ 1,217.92ユーロ
日本、韓国、インド、シンガポール、フィリピンなど10か国 14.030 15.433 10.471225 861.99ユーロ 1,270.44ユーロ
その他の国・地域(香港、カンボジア、モンゴルなど独自の値がない国) 17.740 19.514 14.552225 1,197.94ユーロ 1,606.39ユーロ
南アフリカ 25.940 28.534 23.572225 1,940.47ユーロ 2,348.92ユーロ
中国、米国 26.640 29.304 24.342225 2,003.85ユーロ 2,412.31ユーロ

14.030の10か国は、アルバニア、ベラルーシ、インド、イラン、日本、ヨルダン、韓国、ニジェール、フィリピン、シンガポールです。生産者が検証済みの排出量を提供した場合は、デフォルト値に代えてその値を使います。

貴社の輸入数量に基づく推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。


水蒸気改質(SMR)がグレー水素のCBAM負担を左右する理由

天然ガスの水蒸気改質は水素の最も一般的な製法で、実施規則(EU)2025/2547付属書I第3.6.2.1項の「水蒸気改質と部分酸化」に当たります。

水素で独自のシステム境界を持つルートは、ほかにスチームクラッキング(第3.6.2.2項)があるだけです。中心となる反応はCH4 + H2O → CO + 3H2で、生じた一酸化炭素は水性ガスシフト反応でCO2に変わります。その結果、水素1トン当たりおよそ9から12トンのCO2が発生し、古く効率の低い改質炉ほど上限に近くなります。

CBAMでは、このCO2のうち無償割当調整を上回る分のすべてにCBAM証書が必要です。また、水素には50トン基準がありません。規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)が挿入した第2a条は、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下の輸入を免除しますが、第2a条第4項は水素と電力をこの免除から外しています。商業的な水素の輸入には、すべて最初の1キログラムから証書の義務が生じます。

複数の調達契約を通じて水素部門のCBAM対応を管理するEUの輸入者から見ると、コストは3つの層に分かれます。

  • デフォルト値で申告する水素:2026年に製品1トン当たり571.32ユーロ以上(日本産は861.99ユーロ)
  • 検証済みの直接排出量が4.962 tCO2e(正確には4.961775)以下の水素:電解水素が満たせる水準で、2026年の証書は不要
  • 検証済みの排出量を持つグレー水素:両者の間に位置し、4.961775を超える分にだけ証書が必要

日本の企業にとって、グレー水素のCBAMは何を意味しますか

日本からEUへの水素の輸出は2025年に0ユーロのため、日本の企業にとってグレー水素のCBAMが関係するのは、直接の輸出よりも、EU子会社による輸入、将来の出荷、前駆体としての水素という3つの場面です。

EUの日本からの水素(CNコード 2804 10 00)輸入額は、2023年3,000ユーロ、2024年89ユーロ、2025年0ユーロです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。JETROも2026年9月18日の記事で、日本からEUへの水素と電気の輸出実績は確認されなかったとしています。

日本の企業が関わる3つの場面は、次のとおりです。

  1. EU子会社がグレー水素を輸入する場合:50トン基準がないため、少量でも認可CBAM申告者の地位と証書が必要です。検証済みの実排出量がなければ、義務は原産国のデフォルト値で決まります。日本以外の原産国の水素でも同じです。
  2. 日本の施設が将来EUに水素を出荷する場合:検証済みの実排出量がなければ日本のデフォルト値14.030で評価され、2026年に製品1トン当たり861.99ユーロです。日本の輸出者自身に法的な義務はなく、義務を負うのはEUの輸入者です。日本の生産者は、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録して検証済みのデータを提供できます(O3CIの解説)。
  3. 水素を前駆体として使う製品を輸出する場合:アンモニアや尿素の体化排出量には原料の水素の排出が含まれます。日本の表のデフォルト値は無水アンモニア(CNコード 2814 10 00)2.190、尿素(CNコード 3102 10 19)1.520で、2026年輸入分のコストは82.32ユーロでそれぞれ製品1トン当たり59.92ユーロ、53.98ユーロです(当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

日本の14.030は、水蒸気改質の工学上の目安(9から12 tCO2)を上回ります。このため、通常の水蒸気改質で作るグレー水素でも、検証済みの実排出量がこの目安の範囲に収まれば、日本産のデフォルト値より大幅に安くなります(具体的な数値は算定の節で示します)。前駆体の詳細はアンモニアのCBAM、日本全体の状況はCBAMと日本をご覧ください。


証書価格別に見るグレー水素のCBAMコスト

デフォルト値で申告するグレー水素の2026年のコストは、証書価格が1 CO2換算トン当たり50ユーロでも、10.820で製品1トン当たり347.01ユーロ、日本の14.030で523.56ユーロです。

次の表は、3つのデフォルト値ごとに、4つの証書価格でのコストを示したものです。公式価格は2026年第3四半期輸入分の82.32ユーロのみで、残りの3つは感応度分析のためのシナリオです。2026年の列はマークアップ10%とCBAM係数97.5%、2030年の列はマークアップ30%とCBAM係数51.5%で計算しています(当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

証書価格 デフォルト値(tCO2e/t H2) 2026年の無償割当調整前のコスト 2026年の正味コスト 2030年の正味コスト
50ユーロ 10.820(79か国) 595.10ユーロ 347.01ユーロ 572.26ユーロ
50ユーロ 14.030(日本など10か国) 771.65ユーロ 523.56ユーロ 780.91ユーロ
50ユーロ 17.740(その他の国・地域) 975.70ユーロ 727.61ユーロ 1,022.06ユーロ
75ユーロ 10.820(79か国) 892.65ユーロ 520.52ユーロ 858.39ユーロ
75ユーロ 14.030(日本など10か国) 1,157.48ユーロ 785.34ユーロ 1,171.36ユーロ
75ユーロ 17.740(その他の国・地域) 1,463.55ユーロ 1,091.42ユーロ 1,533.09ユーロ
82.32ユーロ(2026年第3四半期の公式価格) 10.820(79か国) 979.77ユーロ 571.32ユーロ 942.17ユーロ
82.32ユーロ(2026年第3四半期の公式価格) 14.030(日本など10か国) 1,270.44ユーロ 861.99ユーロ 1,285.69ユーロ
82.32ユーロ(2026年第3四半期の公式価格) 17.740(その他の国・地域) 1,606.39ユーロ 1,197.94ユーロ 1,682.72ユーロ
100ユーロ 10.820(79か国) 1,190.20ユーロ 694.02ユーロ 1,144.52ユーロ
100ユーロ 14.030(日本など10か国) 1,543.30ユーロ 1,047.12ユーロ 1,561.82ユーロ
100ユーロ 17.740(その他の国・地域) 1,951.40ユーロ 1,455.22ユーロ 2,044.12ユーロ

正味コスト=(デフォルト値 ×(1+マークアップ)- CBAM係数 × 5.089)× 価格。CBAM係数は指令2003/87/EC第10a条第1a項に定められ、2026年97.5%、2030年51.5%です。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2030年の列は目安です。

2026年の正味コストは小さくありません。10.820のデフォルト値では、申告する11.902 tCO2eのうち6.940225 tCO2eが無償割当調整を上回り、その分に証書価格が満額でかかります。日本の14.030では、15.433 tCO2eのうち10.471225 tCO2eです。

同じ82.32ユーロで計算すると、2030年輸入分は10.820で製品1トン当たり942.17ユーロ(2026年比65%増)、日本の14.030で1,285.69ユーロ(同49%増)です。増加の要因はマークアップの引き上げと無償割当調整の縮小であり、製品の排出強度が変わるわけではありません。


グレー水素の体化排出量はどのように算定されますか

グレー水素の体化排出量は、実施規則(EU)2025/2547の方法で、生産施設の検証済みの実データから算定し、それがなければマークアップ付きのデフォルト値を使います。

2026年のデフォルト値には、実施規則(EU)2025/2621により10%のマークアップが加わります。2026暦年の輸入分のCBAM申告書は2027年9月30日が提出期限で(第6条第1項)、輸出側の施設はそれまでに次の3つのデータを認可申告者に提供する必要があります。

  • 水素1トン当たりの燃料消費量(GJ(ギガジュール)/t H2)
  • 原料の天然ガスのCO2排出係数(tCO2/GJ)
  • 施設で回収し恒久的に貯留したCO2の量(体化排出量をその分だけ減らします)

認定検証機関による検証済みデータを提供できない輸出者の製品には、原産国のデフォルト値が適用されます。10.820の国では2026年に11.902 tCO2eとして申告され、無償割当調整前のコストは979.77ユーロ、正味は571.32ユーロです。この「デフォルト値+マークアップ」の構造は、検証を促すためのものです。

ベンチマークは、デフォルト値の場合も実排出量の場合も5.089です。検証済みの排出量がマークアップ付きのデフォルト値を1 tCO2e下回るごとに証書は1枚減り、この減少は4.961775を下限として続きます。日本産の水素を検証済みの実排出量で申告した場合のコストを、日本のデフォルト値と比べると次のとおりです(82.32ユーロ、当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

検証済みの直接排出量(tCO2e/t H2) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト 日本のデフォルト値(861.99ユーロ)との差 2030年のコスト
9.000 4.038225 332.43ユーロ 529.56ユーロ安い 525.13ユーロ
10.000 5.038225 414.75ユーロ 447.24ユーロ安い 607.45ユーロ
11.000 6.038225 497.07ユーロ 364.92ユーロ安い 689.77ユーロ
12.000 7.038225 579.39ユーロ 282.60ユーロ安い 772.09ユーロ

実排出量にはマークアップがかかりません。2030年に日本のデフォルト値を使った場合のコストは1,285.69ユーロです。2027年以降はベンチマークが更新される可能性があるため、2030年の数値は目安です。

日本産の水素では、水蒸気改質の目安の上限(12 tCO2e)でも、検証によって2026年に製品1トン当たり282.60ユーロ安くなります。実排出量とデフォルト値のどちらを使うかを判断し、出荷ごとの負担の上限と下限を見極めるには、CBAMの体化排出量の算定方法の理解が欠かせません。


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グレー水素のCBAMコストは他の生産ルートとどう違いますか

CBAMでは検証済みの直接CO2強度に応じて水素の生産ルート間に明確なコスト差が生じ、2026年に実排出量で申告する場合の義務は、検証済みの排出量から4.961775を差し引いた量(下限はゼロ)です。

次の表は、この計算方法を生産ルートごとの工学上の目安に当てはめた説明用の例です。目安の範囲はCBAMの法令に定められた値ではありません。

生産ルート 製法 直接CO2の目安(tCO2/t H2) 2026年の基準値(4.962)との比較
グレー SMR、CCSなし 約9から12 上回る:4.962を超える分に証書が必要
ブルー SMR+CCS 約1から3 下回る:証書は不要
ターコイズ メタン熱分解 約0から1 下回る:証書は不要
ピンク 原子力電力による電気分解 約0 下回る:証書は不要
グリーン 再生可能電力による電気分解 約0 下回る:証書は不要

CBAMにおけるグレー水素と低炭素水素の差は、証書の負担がまるごと生じるかどうかにあります。基準を下回ることが検証された生産者の水素は2026年の負担がゼロで、デフォルト値で申告するグレー水素には製品1トン当たり571.32ユーロ以上の負担がかかります。この基準はCBAM係数とともに下がり、2030年輸入分では2.621(正確には2.620835)tCO2eです。2034年からはCBAM係数が適用されなくなります。

輸入者にとっての実務上の結論は明確です。CBAMの負担は、供給者の生産ルートと、その排出量が検証されているかどうかでほぼ決まります。残る変数は証書価格ですが、これは輸入者が左右できるものではありません。

キャプション:証書価格を82.32ユーロで一定とすると、デフォルト値10.820のグレー水素の正味コストは、2026年輸入分の製品1トン当たり571.32ユーロから2030年輸入分では942.17ユーロに上がります。EU ETS指令のスケジュールで無償割当が段階的に廃止されるためです。


2034年までにグレー水素のCBAMコストはどう変わりますか

グレー水素の正味のCBAMコストは2026年が最も低く、証書価格を82.32ユーロで一定とすると、日本の14.030では2026年の製品1トン当たり861.99ユーロから2030年には1,285.69ユーロに上がります。

無償割当のうち維持される割合であるCBAM係数は、2026年の97.5%から2030年の51.5%に下がり、2034年からは適用されません。デフォルト値のマークアップは2027年に20%、2028年以降は30%です。年ごとのコストは次の表のとおりです(82.32ユーロ一定、当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

輸入年 マークアップ CBAM係数 10.820(79か国) 14.030(日本など) 17.740(その他の国・地域)
2026年 10% 97.5% 571.32ユーロ 861.99ユーロ 1,197.94ユーロ
2027年 20% 95% 670.86ユーロ 987.96ユーロ 1,354.45ユーロ
2028年 30% 90% 780.88ユーロ 1,124.40ユーロ 1,521.43ユーロ
2029年 30% 77.5% 833.25ユーロ 1,176.77ユーロ 1,573.80ユーロ
2030年 30% 51.5% 942.17ユーロ 1,285.69ユーロ 1,682.72ユーロ
2034年以降 30% 適用なし 1,157.91ユーロ 1,501.43ユーロ 1,898.46ユーロ

2034年からは無償割当調整がなくなり、コストはマークアップ付きのデフォルト値に価格を掛けた額です。2027年以降はベンチマークが更新される可能性があるため、2027年以降の数値は目安です。

欧州会計検査院は特別報告書11/2024のプレスリリースで、"the Commission set overly ambitious targets for the production and import of renewable hydrogen, i.e. 10 million tonnes each by 2030"(欧州委員会は再生可能水素の生産と輸入について、2030年までにそれぞれ1,000万トンという過度に野心的な目標を設定した、当サイト仮訳)と述べ、EUがこの目標を達成する可能性は低いとしています。

この状況は、CBAMへの備えを考える上でも重要です。EUの域外からのCNコード 2804 10 00の輸入額は2025年に680万ユーロで(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))、最大の供給国は米国の368万ユーロです。2025年の数量は元データに明らかな誤りがあるため、金額だけを示します。現時点では、証書の義務は実務上の問題というより戦略上の問題ですが、EUの水素取引が増えるにつれて金額面の影響は大きくなります。


日本の炭素価格はグレー水素のCBAMで控除されますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)の実施規則案は2026年5月13日に公表され、2026年11月4日時点で未採択です。どの国の炭素価格もまだ認められていません。控除の対象は実際に支払われた炭素価格だけで、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。

排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度(2026年4月から2027年3月)から、直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者に義務化されました(経済産業省)。地球温暖化対策のための税(温対税)は化石燃料にCO2 1トン当たり289円を課しています(環境省)。欧州委員会がこれらを実際に支払われた炭素価格として扱うか、GX-ETSの無償割当分をどう評価するかは未解決です。

デフォルト値で申告する場合は、欧州委員会が2027年から国ごとに年次で定めることができるデフォルト炭素価格を参照して、控除を請求できます(第9条第4項)。日本についてはまだ定められていません。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。

英国では、EU CBAMとは別の税制度である英国CBAMが2027年1月1日に始まり、水素を含む5部門の直接排出量に課税します。英国が2026年10月16日に公表した水素の試算税率はCO2換算トン当たり9.24ポンドで、納税義務を生じない参考値です(英国CBAM、英語)。


グレー水素とグリーン水素のCBAMの違いは何ですか

電気分解によるグリーン水素の直接排出量はゼロに近い値です。消費する電力に伴う排出は間接排出量であり、付属書IIの製品である水素では算定の対象外です。委任規則(EU)2023/1184による再生可能な非生物起源燃料(RFNBO)の認証は別の制度で、CBAMの数値を決めるものではありません。

検証済みの直接排出量が4.962 tCO2e以下であれば、グリーン水素は2026年輸入分で証書が不要です。82.32ユーロの場合、デフォルト値10.820の水素との差は製品1トン当たり571.32ユーロ、日本の14.030との差は861.99ユーロで、証書価格が上がるほど広がります。生産ルートごとの比較はグリーン水素とCBAMで紹介しています。

グレー水素のデフォルト値は輸入者に有利ですか、不利ですか

供給者の排出量がマークアップ付きのデフォルト値より少ない輸入者には不利です。2026年には、10.820は11.902、日本の14.030は15.433として申告され、差し引くベンチマークはどちらの方法でも5.089です。検証済みの排出量がこれを下回る施設から調達すれば、1 tCO2eの差ごとに証書1枚分、輸入者のコストが下がります。

これを上回る施設では、実排出量を報告しても有利になりません。分岐点はマークアップの引き上げに伴って上昇し、10.820では2027年12.984、2028年以降14.066、日本の14.030では2027年16.836、2028年以降18.239です。検証済みデータが有利になる施設は年ごとに増えます。マークアップの仕組み全体はCBAMデフォルト値で説明しています。

水素の輸入に50トン基準はありますか

ありません。規則(EU)2025/2083が挿入した規則(EU)2023/956第2a条の50トン基準から、水素は電力とともに明示的に除外されています(第2a条第4項)。輸入量にかかわらず、商業的な水素の輸入にはすべてCBAM証書の義務が生じます。

この点は、試験目的で少量の水素を輸入する場合に特に重要です。鉄鋼、セメント、アルミニウムであれば免除される少量の出荷でも、水素ではCBAMの手続きの負担が生じます。50トン基準の詳細はCBAMの50トン基準(英語)をご覧ください。

EUの水素の輸入者にはどのような認可が必要ですか

EUの水素の輸入者には、規則(EU)2023/956第17条に基づく認可CBAM申告者の地位が必要です。本格実施期間中も輸入を続けるための申請の期限は2026年3月31日で(第17条第7a項)、それ以降に申請した場合は、審査中の暫定的な輸入が認められません。

認可申告者でない者が義務を守らずに輸入した場合、納付しなかった証書1枚につき第26条第1項の罰金の3倍から5倍が科されます(第26条第2項)。第26条第1項の罰金は、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ)です。手順の全体は水素の輸入者向けCBAMガイド(英語)をご覧ください。

EU ETSの価格が上がるとグレー水素のCBAMコストは上がりますか

上がります。CBAM証書の価格はEU ETSのオークション価格に連動し、2026年の輸入には四半期平均(第21条第1a項)、2027年の輸入からは週次平均(第21条第1項)が適用されます。公式価格は2026年第1四半期75.36ユーロ、第2四半期75.28ユーロ、第3四半期82.32ユーロで、第3四半期の価格は2026年10月5日に公表されました。

10.820のデフォルト値では2026年に製品1トン当たり6.940225枚を納付するため、証書価格が10ユーロ上がるごとにコストは製品1トン当たり69.40ユーロ増えます。日本の14.030では10.471225枚のため、104.71ユーロ増えます。価格の推移はCBAM証書価格トラッカーで確認できます。

日本の「低炭素水素等」の基準はCBAMで使えますか

使えません。「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」(令和6年法律第37号、2024年5月24日公布)は、第2条第1項で低炭素水素等を「水素等(水素及びその化合物であって経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)であって、」製造に伴うCO2の量が一定の値以下であることなどの要件を満たすものと定めています(e-Gov法令検索、2026年11月4日確認)。

これは日本独自の制度であり、EUのRFNBO認証と同様、CBAMとは別の仕組みです。CBAMでデフォルト値に代えて使えるのは、EU加盟国の国家認定機関が認定した検証機関が実施規則(EU)2025/2546に基づいて検証した直接排出量だけです。日本の基準を満たした水素も、検証済みの実排出量がなければ日本のデフォルト値14.030で評価されます。

認定の状況はCBAM認定検証機関にまとめています。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。