
グリーン水素(CNコード 2804 10 00)は水の電気分解で製造され、反応の過程でCO2を排出しません。EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)が水素について算定するのは直接排出量だけです。そのため、EUの輸入者が検証済みの実排出量で申告すれば、グリーン水素にCBAM証書は必要ありません。
一方、デフォルト値で申告すると、グリーン水素もグレー水素と同じ扱いになります。多くの国のデフォルト値は製品1トン当たり10.820 tCO2e(CO2換算トン)で、2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)を当てはめると、2026年の輸入分は製品1トン当たり571.32ユーロです。日本産のデフォルト値14.030では861.99ユーロになります。
再生可能な非生物起源燃料(RFNBO)の認証は、再生可能エネルギー指令に基づく委任規則(EU)2023/1184の制度で、CBAMとは別の枠組みです。認証を受けてもCBAMの体化排出量が決まるわけではなく、デフォルト値の代わりにもなりません。なお、CBAMの根拠法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。
本ページでは、CBAMの算定の考え方、RFNBO認証と日本の「低炭素水素等」の基準の位置づけ、2034年までのコストの推移、申告に必要な書類、日本企業への影響を順に説明します。
キャプション:RFNBOの認証を受ける電気分解施設は、委任規則(EU)2023/1184の追加性、時間的相関、地理的相関の要件を満たす必要があります。
CBAMは2026年に水素の輸入者に何を求めますか
CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。
同規則は規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)により改正されており、水素も2026年1月1日から本格実施期間に入りました。CBAMの全体像は、証書の流れや認可CBAM申告者の義務とあわせてEU炭素国境調整措置の解説で説明しています。
水素は規則(EU)2023/956の付属書IIに掲げられた製品のため、算定の対象は直接排出量だけです。電気分解で消費する電力に伴う排出は間接排出量にあたり、電源を問わず算定に含まれません(第7条第1項、第3条第34号)。再生可能電力でも系統電力でも同じです。
電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。水素にはこの免除がなく(第2a条第4項)、最初の1トンから義務がかかります。そのため、最初の年から、生産ルートとそれを裏付ける検証済みの排出量が取引上の決め手になります。
電気分解で製造した水素は、どのモニタリング規則で算定しますか
電気分解で製造した水素は、実施規則(EU)2025/2547付属書I第3.1項の部門横断の規則に従って算定します。
同実施規則が水素のシステム境界を定めているのは、水蒸気改質と部分酸化(付属書I第3.6.2.1項)、スチームクラッキング(第3.6.2.2項)で、電気分解はいずれにも含まれません。付属書に記載のない生産ルートで製造されたCBAM対象製品には、第3.1項の部門横断の規則が適用されます。
欧州委員会の税制・関税同盟総局(DG TAXUD)が2026年8月14日に公表したガイダンス第3号(法的拘束力なし)は、水素の生産ルートとして "Electrolysis of water and Chlor-Alkali electrolysis"(水の電気分解と食塩電解、当サイト仮訳)を挙げています。
RFNBO認証でCBAM証書の数は変わりますか
グリーン水素の証書義務がゼロになるのは、検証済みの実排出量として直接排出量ゼロを申告した場合だけで、RFNBO認証によって証書の数が変わることはありません。
電気分解で消費する電力は、RFNBOの要件を満たしているかどうかにかかわらず、CBAMの計算には含まれません。RFNBO認証の枠組みを定めているのは、再生可能エネルギー指令に基づく委任規則(EU)2023/1184です。電気分解で製造した水素がRFNBOと認められるには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 追加性(第5条):再生可能電力の発電設備は、水素製造設備の運転開始の36か月前以降に運転を開始したものでなければなりません。2028年1月1日より前に運転を開始する水素製造設備については、第11条により、この要件の適用が2038年1月1日まで猶予されます。
- 時間的相関(第6条):2029年12月31日までは、再生可能電力の発電と同じ暦月に水素を製造する必要があります。2030年1月1日からは同じ1時間単位での一致が求められるため、設備計画では2030年の切り替えを織り込んでおく必要があります。
- 地理的相関(第7条):再生可能電力の設備は、電解槽と同じ入札区域、前日市場価格が同等以上の相互接続された入札区域、または相互接続された洋上入札区域のいずれかに所在する必要があります。入札区域の制度がない場合、EU域外の生産者は同等の概念を用いることができます(前文第3項)。
買い手との取引やEUの再生可能エネルギー目標はこれらの要件を前提としているため、輸出者はRFNBO認証とCBAMの検証済みの排出量報告書の両方の取得を目指します。3つの要件を満たせばRFNBOと認められますが、CBAM申告書はそれとは別の手続です。
CBAM申告書に反映されるのは生産工程の直接排出量だけで、施設で燃焼する燃料や、工程で消費する熱・冷却に伴う排出もこれに含まれます(第3条第21号)。数値の根拠となるのは、事業者の検証済みの排出量報告書です。算定方法の詳細はCBAMの体化排出量をご覧ください。
日本の「低炭素水素等」の基準とJOGMECの助成金はCBAMに関係しますか
水素社会推進法に基づく「低炭素水素等」の基準と助成金は日本国内の制度であり、CBAMの検証の代わりにも、デフォルト値の代わりにもなりません。
「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」(令和6年法律第37号)は、低炭素水素等を、製造に伴って排出される二酸化炭素の量が「一定の値以下」であることなどの要件を満たす水素等と定めています(第2条第1項、e-Gov法令検索、2026年11月4日確認)。具体的な要件は経済産業省令に委ねられています。
同法第7条の認定を受けた供給事業者には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、継続的な供給に必要な資金と、共同で使う貯蔵・輸送施設の整備資金に充てる助成金を交付します(第10条)。この助成金は日本国内の制度であり、EU CBAMの炭素価格の控除とも関係しません。
RFNBO認証と同じく、日本の基準を満たした水素も、検証済みの実排出量がなければ原産国のデフォルト値で評価されます(日本産は14.030)。CBAMでデフォルト値に代えて使えるのは、実施規則(EU)2025/2547の方法で算定し、EU加盟国の国家認定機関から認定を受けた検証機関が検証した直接排出量だけです。
グリーン水素とグレー水素のCBAMコスト比較
デフォルト値で申告する水素と、検証済みの排出量がほぼゼロの水素とのコスト差は、2026年の輸入分で製品1トン当たり571.32ユーロ以上、日本産のデフォルト値では861.99ユーロです。
次の表は、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロ(2026年10月5日公表)で計算した、2026年の証書数とコストです。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)によるもので、計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。
| 申告の根拠 | 申告する体化排出量(tCO2e/t H2) | 2026年の証書数(製品1トン当たり) | コスト(82.32ユーロ、製品1トン当たり) |
|---|---|---|---|
| デフォルト値、多くの国(モロッコ、チリ、エジプト、オーストラリアなど) | 10.820+マークアップ10%=11.902 | 6.940225 | 571.32ユーロ |
| デフォルト値、サウジアラビア | 13.450+マークアップ10%=14.795 | 9.833225 | 809.47ユーロ |
| デフォルト値、日本(韓国、インドも同じ値) | 14.030+マークアップ10%=15.433 | 10.471225 | 861.99ユーロ |
| デフォルト値、「その他の国・地域」 | 17.740+マークアップ10%=19.514 | 14.552225 | 1,197.94ユーロ |
| 検証済みの実排出量が4.96以下(グリーン水素) | 検証した値 | 0 | 0ユーロ |
デフォルト値の各行では、無償割当調整(0.975 × 1.00 × 5.089 = 4.961775 tCO2e)を差し引いています(CBAM係数97.5%、部門横断補正係数100%、水素のベンチマーク5.089)。デフォルト値は原産国ごとに定められ、グリーン水素とグレー水素を区別しないため、デフォルト値で申告するとグリーン水素もグレー水素と同じ額を負担します。
日本産の場合は、14.030 × 1.10 = 15.433から無償割当調整4.961775を差し引いて製品1トン当たり10.471225枚のCBAM証書となり、82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり861.99ユーロです。
貴社の数量での推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。
価格を82.32ユーロで一定とした場合、デフォルト値10.820のコストは2030年に製品1トン当たり942.17ユーロ、日本の14.030では1,285.69ユーロに上昇します。マークアップが30%に上がり、CBAM係数が51.5%まで下がるためです。検証済みの直接排出量がゼロの水素には、どの年にも負担は生じません。
デフォルト値のマークアップは2026年10%、2027年20%、2028年以降30%です。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は、2027年1月1日以降の輸入品についてベンチマークを更新する予定を示しているため、2027年以降の数値は現行のベンチマークに基づく目安です。
キャプション:水素1トン当たりのCBAMの正味コストは、無償割当の段階的廃止が加速する2029年から急上昇し、2034年以降はCBAM係数が適用されなくなります。
検証済みの排出量がゼロでない場合、2034年までにコストはどう変わりますか
検証済みの直接排出量がゼロでないグリーン水素も、2030年までは多くの場合で証書が不要ですが、CBAM係数が適用されなくなる2034年からは全排出量について証書が必要になります。
施設で燃焼する燃料や工程で消費する熱は直接排出量に含まれるため(第3条第21号)、電解施設でも検証済みの値がゼロにならないことがあります。一方、差し引かれる無償割当調整(CBAM係数 × 部門横断補正係数 × 5.089)は、2026年4.961775、2027年4.83455、2028年4.5801、2029年3.943975、2030年2.620835 tCO2eと年々小さくなります。
次の表は、検証済みの実排出量が製品1トン当たり0、0.5、2.0、4.0 tCO2eの水素について、82.32ユーロ一定で計算した証書数とコストです(当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。実排出量で申告する場合の無償割当調整は、法令上、Column Aのベンチマークと前駆体の無償割当で決まるため、表の数値は推計です。なお、水素のベンチマークはColumn A、Column Bとも5.089です。
| 検証済みの実排出量(tCO2e/t H2) | 2026年 | 2028年 | 2030年 | 2034年以降 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 0ユーロ | 0ユーロ | 0ユーロ | 0ユーロ |
| 0.5 | 0ユーロ | 0ユーロ | 0ユーロ | 41.16ユーロ(0.5枚) |
| 2.0 | 0ユーロ | 0ユーロ | 0ユーロ | 164.64ユーロ(2.0枚) |
| 4.0 | 0ユーロ | 0ユーロ | 113.53ユーロ(1.379165枚) | 329.28ユーロ(4.0枚) |
2034年以降はCBAM係数が適用されず、検証済みの直接排出量1トンにつき証書1枚が必要です(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。ベンチマークは2027年1月1日以降の輸入品について更新される可能性があるため(実施規則(EU)2025/2620前文第10項)、2028年と2030年の数値は現行のベンチマークに基づく目安です。長期のオフテイク契約では、「ゼロ」という表示だけで判断せず、検証済みの数値そのものを確認することが重要です。
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グリーン水素のCBAM申告に必要な書類
検証済みの実排出量でグリーン水素を輸入する認可CBAM申告者は、2026暦年分のCBAM申告書を2027年9月30日までに提出し、その裏付けとして4つの要素をそろえておく必要があります(第6条第1項)。
申告の裏付けとなる4つの要素は次のとおりです。
- CNコードと製品の説明:CNコード 2804 10 00(水素)と、事業者の排出量報告書に記録された生産ルートです。
- 検証済みの体化排出量:製品1トン当たりゼロまたはゼロに近い値(tCO2e)で、認定検証機関による第三者検証を受けたものです。認定は各国の国家認定機関の登録簿で確認でき、2026年10月13日時点で5件(ギリシャのESYD、イタリアのAccredia、スウェーデンのSwedacによる)です。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。
- RFNBO認証の書類:CBAMの要件ではありません。委任規則(EU)2023/1184への適合を示す追加性の証明、時間的相関の記録、地理的相関の証拠は、再生可能エネルギー法令と買い手に向けた書類です。CBAMの書類と一緒に保管します。
- 原産国で支払われた炭素価格:第9条は、実際に支払われた炭素価格の分だけ証書を減らすことを認めていますが、2026年11月4日時点で、どの国の炭素価格も認められていません。検証済みの排出量がゼロの水素は、そもそも証書が不要です。
検証が必要なのは実排出量で申告する場合だけで(第8条第1項)、デフォルト値で申告する場合は不要です。施設が初めて検証を受ける年には、現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条)。認定済みの機関はCBAM認定検証機関にまとめています。
2026年3月31日までに認可申告者の地位を申請した場合は、本格実施期間中も暫定的に輸入を続けることが認められました(第17条第7a項)。CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します(第20条第1項)。ただし、検証済みの排出量がゼロのグリーン水素の輸入者は、証書を購入する必要がありません。
日本の生産者がデータを提供する場合、事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します。CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に登録すれば、EUのすべての買い手とデータを共有できます(詳しくは事業者用ポータル)。
グリーン水素のCBAMは日本企業にどう影響しますか
日本からEUへの水素の輸出はほぼゼロのため、日本企業に影響が及ぶのは、EU子会社による輸入、将来のEU向け出荷、水素を前駆体とする製品の輸出という3つの場面です。
EUの日本からの水素(CNコード 2804 10 00)の輸入額は、2023年が3,000ユーロ、2024年が89ユーロ、2025年が0ユーロです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。2025年のEU域外からの水素の輸入額(適用除外国を含む)は679万ユーロで、最大の供給国は米国(368万ユーロ)でした。2025年の数量は元データに明らかな誤りがあるため、金額のみを示しています。
JETROも2026年9月18日の記事で、日本からEUへの水素と電力の輸出実績は確認されなかったとしています。日本企業が検討すべき3つの場面は次のとおりです。
- EU子会社が水素を輸入する場合:水素には50トン基準が適用されないため、輸入量にかかわらず認可CBAM申告者の地位とCBAM申告が必要です。グリーン水素を調達していても、供給者の検証済みの排出量報告書がなければデフォルト値で申告することになります。
- 日本の施設が将来EUに水素を出荷する場合:検証済みの実排出量がなければ日本のデフォルト値14.030で評価され、2026年の輸入分では製品1トン当たり861.99ユーロです。日本のデフォルト値は、モロッコやオーストラリアの10.820を上回ります。
- 水素を前駆体として使う製品を輸出する場合:アンモニア、尿素、直接還元鉄の体化排出量には、原料となる水素の排出量が含まれます。グリーン水素の検証済みのゼロという値は、下流の製品にも引き継がれます。
日本とCBAMの関係の全体像はCBAMと日本にまとめています。日本の輸出者には、CBAM証書の購入、申告、納付の法的義務はありません。義務を負うのはEUの輸入者またはその間接的通関代理人で、日本の生産者は検証済みのデータを提供する立場です。
日本の炭素価格は、グリーン水素のCBAMコストに影響しますか
2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。
検証済みの直接排出量がゼロのグリーン水素には、そもそも控除の対象となる証書がありません。第9条が関係するのは、グレー水素や排出量が残る水素です。控除できるのは実際に支払われた炭素価格だけで、リベートなどの補償分は差し引かれます(第9条第1項)。欧州委員会の日本語ガイダンスも「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。
日本の排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度(2026年4月から2027年3月)から、直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者を対象に義務化されました(経済産業省)。欧州委員会がGX-ETSを実際に支払われた炭素価格として扱うか、無償割当分をどう評価するかは、まだ決まっていません。詳しくはCBAMの炭素価格控除をご覧ください。
英国では、EU CBAMとは別の税制度である英国CBAMが2027年1月1日に始まり、水素を含む5部門の直接排出量に課税します。英国が2026年10月16日に公表した水素の試算税率はCO2換算トン当たり9.24ポンドで、納税義務を伴わない参考値です(英国CBAM、英語)。
CBAMの水素部門の中で、グリーン水素はどう位置づけられますか
CBAMの水素部門はCNコード 2804 10 00の1項目だけで構成され、50トン基準による適用除外がなく、アンモニアや肥料の前駆体という役割も担います。
水素はアンモニア(CNコード 2814)の原料であり、アンモニアはさらに第31類の窒素肥料の原料になります。検証済みの直接排出量がゼロのグリーン水素からグリーンアンモニアを製造する生産者は、ゼロという体化排出量をアンモニアに、該当する場合は下流の肥料製品にも引き継ぎます(アンモニアのCBAM)。
水素の生産ルートによるCBAMの義務の違い、デフォルト値の構造、前駆体の流れについては、CBAM 水素部門ガイドで説明しています。
よくある質問
RFNBO認証を受けたグリーン水素には、CBAM証書が何枚必要ですか
輸入者が検証済みの実排出量として直接排出量ゼロを申告すれば、必要な証書はゼロです。ただし、ゼロになる理由はRFNBO認証ではありません。水素は付属書IIの製品のため、規則(EU)2023/956では直接排出量だけが算定され、電気分解に使う電力は計算に含まれないからです。
検証済みの実排出量がなければ、原産国のデフォルト値が適用されます。たとえばデフォルト値10.820 tCO2eの場合、2026年に82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり571.32ユーロ、日本の14.030では861.99ユーロです。
50トン基準はグリーン水素の輸入に適用されますか
適用されません。規則(EU)2025/2083で改正された規則(EU)2023/956第2a条の年間50トンの適用除外は、対象から電力と水素を明示的に除いています(第2a条第4項)。グリーン水素の輸入者は、輸入量にかかわらず最初の1トンから義務を負います。ただし、検証済みの直接排出量がゼロの水素であれば、証書は不要です。
RFNBO認証があれば、CBAMの体化排出量の申告要件を満たせますか
満たせません。委任規則(EU)2023/1184のRFNBO認証とCBAM申告書は別の制度です。CBAM申告書には、デフォルト値か、実施規則(EU)2025/2546に基づき認定検証機関が検証した実排出量のどちらかが必要です。
国家認定機関の登録簿で確認できる認定は、2026年10月13日時点で5件(ギリシャのESYD、イタリアのAccredia、スウェーデンのSwedacによる)です。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。
CBAMでは、ブルー水素もグリーン水素と同じ扱いですか
デフォルト値で申告する場合は同じで、どちらも原産国のデフォルト値を使います。検証済みの実排出量で申告する場合、ブルー水素(水蒸気メタン改質と炭素回収・貯留(CCS)の組み合わせ)は、回収後に残る直接排出量を申告します。
その値が4.96 tCO2e(0.975 × ベンチマーク5.089)以下であれば、2026年は証書が不要となり、グリーン水素と同じ結果になります。ブルー水素はRFNBOに該当しませんが、RFNBOに該当するかどうかはCBAMの計算に影響しません。
モロッコやチリ産のグリーン水素も、証書はゼロになりますか
原産国にかかわらず、検証済みの実排出量で直接排出量ゼロを申告すれば、証書はゼロになります。検証済みの実排出量がなければ、付属書Iに定めるモロッコとチリのデフォルト値10.820 tCO2eが適用され、2026年に82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり571.32ユーロです。日本産なら14.030で861.99ユーロです。
委任規則(EU)2023/1184のRFNBOの要件はすべての生産国に等しく適用されますが、これは再生可能エネルギー法令上の要件であり、CBAMの条件ではありません。
水素製造を脱炭素化すると、CBAMの負担はどう減りますか
水蒸気メタン改質から再生可能電力による電気分解に切り替えると、CBAMのコストを生む直接排出量がなくなります。ただし、その排出量を検証済みの実排出量として記録することが条件です。価格を82.32ユーロで一定とすると、デフォルト値10.820で申告する水素のコストは2030年に製品1トン当たり942.17ユーロ、日本の14.030では1,285.69ユーロです。
これらは現行のベンチマークに基づく数値で、ベンチマークは2027年以降の輸入品について更新される可能性があります。検証済みの排出量がゼロの生産者は、この負担を完全に避けられます。輸出者の移行戦略はCBAMのための脱炭素化で説明しています。
グレー水素のCBAMコストは、第9条の控除で減らせますか
規則(EU)2023/956第9条は、原産国で実際に支払われた炭素価格の分だけ、納付する証書を減らすことを認めています。グレー水素の輸入者がこの控除を受けられるのは、水素の製造に伴う排出に実際に炭素価格が支払われた場合だけで、リベートは差し引かれます。
2026年11月4日時点で、どの国の炭素価格も認められておらず、実施規則も確定していません。欧州委員会は2026年5月13日に実施規則案(未採択)を公表し、排出量取引制度、排出源への炭素税、燃料への炭素税、混合型の4つの認定経路を示しました。意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で採択されていません。仕組みはCBAMの第9条で説明しています。
グレー水素を使う輸入者は供給者を切り替えるべきですか
価格を82.32ユーロで一定とすると、デフォルト値10.820で申告する水素のCBAMコストは、製品1トン当たり2026年の571.32ユーロから2030年には942.17ユーロに上がります。日本の14.030では861.99ユーロから1,285.69ユーロです。いずれも現行のベンチマークに基づく数値で、2027年以降の輸入品についてはベンチマークが更新される可能性があります。
検証済みの直接排出量ゼロを示せる供給者から調達すれば、どの年も証書のコストはかかりません。マークアップが上がり、無償割当が段階的になくなるにつれて、切り替えの経済的なメリットは年々大きくなります。EUの輸入者向けの詳細は水素の輸入者向けCBAMガイド(英語)をご覧ください。
グレー水素とグリーン水素のCBAMコストはどう違いますか
デフォルト値で申告する場合は同じです。2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると、製品1トン当たりのコストはデフォルト値10.820で571.32ユーロ、日本の14.030で861.99ユーロ、「その他の国・地域」の17.740で1,197.94ユーロです。
検証済みの実排出量で申告する場合、直接排出量ゼロのグリーン水素は0ユーロで、グレー水素は4.961775 tCO2eを超える検証済みの排出量の分を負担します。グレー水素のデフォルト値と水蒸気改質の排出の算定は、グレー水素とCBAMで詳しく説明しています。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。