CBAM セメントのCNコード一覧:クリンカー(2523 10 00)、ポルトランドセメント、水硬性セメントと日本産の扱い

CBAMのセメントの対象は付属書Iの6項目で、CNコード 2523のクリンカーと各種セメント、焼成カオリン質粘土です。

このページの内容
セメント製品のCNコードの対応図。焼成カオリン質粘土はex 2507 00 80、クリンカーは2523 10 00、セメントは2523 21 00から2523 90 00です。焼成していない粘土と第68類のコンクリート製品は対象外です。

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)の対象となるセメントのCNコードは、付属書Iに掲げる第25類の6項目です。グレークリンカー(CNコード 2523 10 00)のデフォルトベンチマークは製品1トン当たり0.666 tCO2e(CO2換算トン)、「その他の国・地域」のデフォルト値は1.410です。

日本産のグレークリンカーには独自のデフォルト値0.850があり、「その他の国・地域」より約40%低い水準です。2026年第3四半期の公式価格(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、2026年10月5日公表)で計算すると、CBAMのコストは日本産で製品1トン当たり23.51ユーロ、「その他の国・地域」の値では74.22ユーロです。

根拠となる法令は「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」です。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。

セメントは、肥料とともに、生産に使う電力による間接排出量も価格の対象となる2つの部門の1つです。本ページでは、CNコードごとのデフォルト値とコスト、CN10桁のグレーと白色の区別、日本のHSコードとの対応、日本からEUへの輸出の実態を順に説明します。制度全体はEU炭素国境調整措置(CBAM)の概要をご覧ください。

キャプション:CBAMのセメントの6項目は、焼成カオリン質粘土から水硬性セメントまで、すべて合同関税品目分類表(CN)の第25類にあります。


CBAMの対象となるセメントのCNコードはどれですか

CBAMのセメントの対象は、規則(EU)2023/956付属書Iに掲げる6項目で、前駆体の焼成カオリン質粘土から、クリンカー、ポルトランドセメント、アルミナセメント、その他の水硬性セメントまでを含みます。

本格実施期間は2026年1月1日に始まりました。このため、これらのCNコードに分類される輸入品には、移行期間のような報告だけの義務ではなく、CBAM証書を納付する義務が生じます。2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。

CBAMの対象となるセメントのCNコードと、デフォルトベンチマーク、「その他の国・地域」と日本のデフォルト値は、次の表のとおりです。ベンチマークは実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項のColumn B、デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)のマークアップ前の総排出量です。

CNコード 製品 デフォルトベンチマーク(tCO2e/t) 「その他の国・地域」のデフォルト値(tCO2e/t) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 備考
ex 2507 00 80 焼成カオリン質粘土(焼成していないものを除く) 0.666 0.280 「-」(「その他」の0.280) 上流の前駆体で、体化排出量はセメントに引き継がれます
2523 10 00 セメントクリンカー グレー0.666、白色0.859 グレー1.410、白色1.370 グレー0.850、白色は「-」(「その他」の1.370) TARICコードでグレーと白色に分かれます
2523 21 00 白色ポルトランドセメント 0.859 1.450 「-」(「その他」の1.450) クリンカー比率が高い(95%~100%)
2523 29 00 その他のポルトランドセメント 0.666 1.440 0.890 グレーポルトランドセメント。実排出量ではクリンカー比率で決まります
2523 30 00 アルミナセメント 2026年~2027年0.717、2028年~2030年0.686 2.030 1.940 部門で最も高いデフォルト値
2523 90 00 その他の水硬性セメント(スラグセメント、過硫酸塩セメントなど) グレー0.666、白色0.847 グレー1.370、白色1.490 グレー0.850、白色は「-」(「その他」の1.490) TARICコードでグレーと白色に分かれます

日本の表の「-」の行には、付属書Iの序文に基づき「その他の国・地域」の値が適用されます。日本の値の内訳は、グレークリンカーが直接排出量0.820と間接排出量0.030、グレーポルトランドセメントが0.830と0.060、グレーの水硬性セメントが0.790と0.060、アルミナセメントは総排出量1.940(直接排出量1.800)です。拘束力があるのは総排出量の値です(実施規則(EU)2026/1740前文第10項)。

対象は付属書Iに列挙されたコードに限られます。コンクリート製品やプレキャストパネルなど、セメントを原料とする第68類の製品は付属書Iに含まれません。CBAMの対象はセメントそのものであり、川下の加工製品は対象外です。

CN8桁とCN10桁:グレーと白色の区別

付属書Iのデフォルト値の表では、クリンカー(2523 10 00)とその他の水硬性セメント(2523 90 00)がTARIC(EUの統合関税率表)の10桁のコードでグレーと白色に分かれ、デフォルト値もベンチマークも異なります。

CN8桁が同じでも、10桁でどちらに当たるかによってコストは大きく変わります。グレーと白色の区別が設けられている10桁のコードは、次の4つです。

TARICコード(10桁) 製品 ベンチマーク(Column B) 日本産に適用されるデフォルト値 2026年のコスト(製品1トン当たり)
2523 10 00 10 白色クリンカー 0.859 1.370(「その他」) 55.11ユーロ
2523 10 00 90 その他のクリンカー(グレークリンカーを含む) 0.666 0.850(日本) 23.51ユーロ
2523 90 00 10 白色の水硬性セメント 0.847 1.490(「その他」) 66.94ユーロ
2523 90 00 90 その他の水硬性セメント(グレーを含む) 0.666 0.850(日本) 23.51ユーロ

前提:1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ、デフォルト値、2026年のマークアップ10%、CBAM係数97.5%、部門横断補正係数100%。当サイトの計算ツールで2026年11月4日に計算。

日本の表に独自の値があるのはグレーの行だけです。日本産の白色セメントには「その他の国・地域」の値が適用されるため、同じCNコード 2523 90 00でも、グレーなら製品1トン当たり23.51ユーロ、白色なら66.94ユーロとなり、約2.8倍の差が生じます。

日本のHSコード・輸出統計品目番号とCNコードの関係

日本の輸出者が使うHSコードの上6桁(2523.10、2523.21、2523.29、2523.30、2523.90)はEUのCNコードと共通ですが、7桁目以降は日本とEUで別々に定められています。

日本の輸出統計品目表の番号は9桁で、上6桁がHS、残りの3桁は日本独自の細分です。EUのCNコードは理事会規則(EEC)No 2658/87付属書Iに定める8桁のコードで、CBAMはこの8桁と、前述のTARICの10桁で対象を特定します。日本の9桁の番号をそのままEUの申告に使うことはできません。

JIS規格の名称でCNコードが決まるわけでもありません。普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)、高炉セメント(JIS R 5211)、フライアッシュセメント(JIS R 5213)といったJISの名称は、EUの分類とは別の基準によるものです。スラグなどの混合材を含むセメントが2523 29 00と2523 90 00のどちらに当たるかは、製品の組成とEUの分類規則で決まります。

分類に迷う製品では、EUの輸入者が加盟国の税関に拘束力のある関税分類情報(BTI)を申請できます(連合関税法典、規則(EU)No 952/2013第33条)。個別の製品が付属書Iのどのコードに当たるかは、CNコード検索ツールでも確認できます。付属書Iの全項目の文言はCBAM対象製品リストに掲載しています。


CBAM クリンカーのCNコード 2523 10 00:デフォルト値とコスト

CNコード 2523 10 00のクリンカーは、ロータリーキルンで石灰石を約1,450℃に加熱して作る中間製品で、セメント部門の工程排出はこの段階で発生します。

石灰石の脱炭酸反応 CaCO3 → CaO + CO2 は化学的に避けられず、クリンカーの炭素排出の約60%を占めます。キルンでの燃料燃焼が約35%、粉砕などの電力消費が残りの約5%です。この内訳は一般的な概算で、施設ごとに異なります。

CBAMの上でセメントが鉄鋼やアルミニウムと異なるのは、脱炭酸が化学的に不可逆である点です。クリンカーの輸入者がエネルギー効率の改善を示したとしても、脱炭酸による排出を化学量論上の下限より減らすことはできません。

クリンカーの体化排出量を減らす方法は、高炉スラグ、フライアッシュ、焼成粘土などの混合材でクリンカーを置き換えるか、キルンの排ガスに二酸化炭素回収・貯留(CCS)を導入するかのどちらかです。クリンカーの算定の詳細はCBAM クリンカーの体化排出量で説明しています。

国別の値のない原産国からグレークリンカー1,000トンを2026年に輸入する場合、デフォルト値1.410にマークアップ10%を加えた1.551で申告します。無償割当調整はCBAM係数97.5%×ベンチマーク0.666=0.64935で、差し引き製品1トン当たり0.90165枚のCBAM証書、1,000トンで901.65枚となり、82.32ユーロで約7万4,224ユーロです。

日本産で同じ計算をすると、0.850 × 1.10 = 0.935、無償割当調整0.64935を差し引いて製品1トン当たり0.28565枚、1,000トンで285.65枚となり、82.32ユーロで2万3,514.71ユーロです。どちらのコストも、マークアップが上がりCBAM係数が下がるにつれて毎年増えます。

2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です。必要な証書数は、体化排出量から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引いて求めます。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。

クリンカーは単価の低い製品です。EUが2025年にEU域外から輸入したクリンカーの平均単価は製品1トン当たり56.01ユーロで(Eurostat Comext DS-045409、2025年、金額÷数量)、「その他の国・地域」の値での2026年のCBAMコスト74.22ユーロは、その約1.3倍に当たります。

キルンの技術の比較や国別のデフォルト値を含む部門全体の説明は、CBAM セメント部門ガイドにあります。算定方法は実施規則(EU)2025/2547に定められています。


CBAM ポルトランドセメントのCNコード:2523 21 00と2523 29 00

ポルトランドセメントのCNコード 2523 21 00(白色)と2523 29 00(その他)は、EUが2025年にEU域外から輸入したクリンカー以外のセメント約709万トンのうち約649万トンを占めます。

内訳はその他のポルトランドセメントが約577万トン、白色ポルトランドセメントが約72万トンです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。これとは別に、クリンカーが約715万トン輸入されました。

ポルトランドセメントの輸入で押さえるべき点は、次の5つです。

  • 白色ポルトランドセメント(2523 21 00):鉄やマンガンの少ない高純度の石灰石を使い、クリンカー比率は95%から100%で、体化排出量はクリンカーとほぼ同じです
  • その他のポルトランドセメント(2523 29 00):CEM IからCEM Vまでの種類を含み、実排出量ではクリンカーの含有量が体化排出量を決めるため、正確な申告が必要です
  • 直接排出量と間接排出量:キルンの燃焼と脱炭酸による直接排出量に加え、電力消費による間接排出量も価格の対象です。鉄鋼では直接排出量だけが対象です
  • トルコ産:トルコにはグレーポルトランドセメントの独自の値がなく、「その他の国・地域」の1.440(2026年のマークアップ込みで1.584)が適用されます。トルコのセメント業界団体Türkçimentoは会員のグレークリンカーの排出量を1トン当たり0.88 tCO2と報告しています(業界団体の数値で、検証済みの実排出量でもデフォルト値でもありません)。マークアップ込みのクリンカーのデフォルト値1.551は、その値より約76%高い水準です
  • 日本産:グレーポルトランドセメントには独自の値0.890があり、2026年は製品1トン当たり0.32965枚、27.14ユーロです。白色ポルトランドセメントは「-」のため「その他」の1.450が適用され、0.757475枚、62.36ユーロです

デフォルト値のマークアップは、2026年の10%から2027年に20%、2028年以降は30%に上がります。輸出者が検証済みの実排出量を提供し、EUの輸入者がその値で申告すれば、このマークアップは完全に避けられます。出荷量が多いほど、経済的な利点も大きくなります。

日本からEUへのポルトランドセメントの輸出は、2025年に2523 29 00が3,240ユーロ、6.7トンで、2523 21 00はデータセットに記録がありません(Eurostat Comext、2025年)。日本の輸出者にとって重要なのは、次に説明する2523 90 00です。


アルミナセメントとその他の水硬性セメントのCNコード:2523 30 00と2523 90 00

アルミナセメント(2523 30 00)とその他の水硬性セメント(2523 90 00)が、CBAMのセメントのCNコードの残る2項目です。

アルミナセメントは部門で最も高いデフォルト値を持ち、「その他の国・地域」の表で2.030 tCO2e/tです。日本の値は1.940で、2026年は製品1トン当たり1.434925枚、118.12ユーロです。ベンチマークは2026年から2027年が0.717、2028年から2030年が0.686です。

2523 90 00には、スラグセメント、過硫酸塩セメント、ポゾランセメントが含まれます。混合材の割合が高くクリンカー比率が低いため、実排出量はポルトランドセメントより低く、1トン当たり約0.40から0.65 tCO2です(クリンカー含有量はおおむね5%から64%、概算でデフォルト値ではありません)。

実排出量で申告する場合、クリンカーとセメントの比率は、実施規則(EU)2025/2547に基づく事業者の検証済み排出量報告書から取ります。デフォルト値で申告する場合は、比率にかかわらず、セメント1トン当たりの国別のデフォルト値が適用されます。

混合セメントやクリンカー比率の低い水硬性セメントを扱うEUの輸入者には、実際のクリンカー含有量を反映した検証済みの実排出量を入手するメリットがあります。デフォルト値の代わりに検証済みの値を申告すれば、削減したクリンカーの分だけ申告する排出量が下がります。

輸入者が1暦年に輸入するCBAM対象製品の正味重量が、すべてのCNコードと原産国の合計で50トン以下であれば、CBAMの50トン基準(英語)による免除の対象になります。電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項、規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)による改正)。免除は税関申告で申告する必要があります。

日本からEUへのセメント輸出は、ほぼすべてがCNコード 2523 90 00です

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象のセメントとクリンカー479万8,244ユーロのうち、99.9%にあたる479万2,908ユーロがCNコード 2523 90 00の製品でした。

EU域外からのセメント輸入全体に占める日本のシェアは、金額ベースで0.45%(第19位)、数量ベースで0.04%(第23位)です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。JETROも2026年9月18日の記事で、日本のセメント(クリンカー含む)の対EU輸出を480万ユーロとしています。

EUの日本からのセメント輸入を、CNコード別に2023年から2025年まで並べると次のとおりです(Eurostat Comext、2023年から2025年)。

CNコード 製品 2023年 2024年 2025年 2025年のEU域外輸入に占める割合(金額/数量)
2523 10 00 クリンカー 17ユーロ、0トン 0ユーロ、0トン 1,590ユーロ、0.1トン 0.00%/0.00%
2523 21 00 白色ポルトランドセメント 記録なし 記録なし 記録なし なし
2523 29 00 その他のポルトランドセメント 824ユーロ、0トン 2万60ユーロ、23.4トン 3,240ユーロ、6.7トン 0.00%/0.00%
2523 30 00 アルミナセメント 9,720ユーロ、0.2トン 2,800ユーロ、0.4トン 506ユーロ、0トン 0.00%/0.00%
2523 90 00 その他の水硬性セメント 662万3,584ユーロ、8,522.9トン 661万268ユーロ、8,283.2トン 479万2,908ユーロ、5,693.7トン 8.49%/1.12%
合計 セメントとクリンカー 663万4,145ユーロ、8,523.1トン 663万3,128ユーロ、8,307.0トン 479万8,244ユーロ、5,700.5トン 0.45%/0.04%

数量の「0トン」はデータセットの値です。焼成カオリン質粘土(ex 2507 00 80)は、CN8桁で焼成していない粘土と区別できないため、表に含めていません。

CNコード 2523 90 00では、日本は金額ベースでボスニア・ヘルツェゴビナ、ウクライナ、チュニジアに次ぐ第4位、数量ベースで第7位です。日本産の平均単価は製品1トン当たり約842ユーロで、同コードのEU域外平均の約111ユーロの約7.6倍です(金額÷数量、2025年)。

EUの統計は製品名を示さないため、この高単価の製品がどの特殊セメントで、CN10桁でグレーと白色のどちらに当たるかは、個社のデータで確認する必要があります。日本産の2025年の数量5,693.7トンを2026年にデフォルト値で輸入したと仮定すると、すべてグレーなら1,626.41枚、約13万3,886ユーロ、すべて白色なら4,629.97枚、約38万1,140ユーロです。

製品1トン当たりに直すと、グレーで23.51ユーロ、白色で66.94ユーロで、日本産の平均単価約842ユーロの約2.8%と約8.0%に当たります。クリンカーでは「その他の国・地域」の値でCBAMコストが単価を上回るのに対し、日本の高単価の特殊セメントではコストの比重が小さく、差を生むのは主に10桁の分類と検証済みデータの有無です。


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焼成カオリン質粘土(ex 2507 00 80)はCBAMの対象ですか

焼成カオリン質粘土(CNコード ex 2507 00 80)はCBAMの対象ですが、焼成していないカオリン質粘土は対象外です。

「ex」は、CN 2507 00 80のうち焼成したものだけが付属書Iの対象であることを示します。焼成粘土はクリンカーの代替材料として使われ、その体化排出量は、セメントの前駆体として最終製品に引き継がれます。

日本の表のこの行は「-」で、「その他の国・地域」のデフォルト値0.280(直接排出量0.210、間接排出量0.070)が適用されます。マークアップ込みの値がベンチマークに基づく無償割当調整を下回るため、デフォルト値で輸入する焼成粘土に必要な証書数は、2026年から2029年まで0枚です。

2030年にはCBAM係数が51.5%に下がり、製品1トン当たり0.02101枚、価格を82.32ユーロで一定とすると1.73ユーロになります。2034年からは無償割当調整がなく、0.364枚、29.96ユーロです。2027年以降の輸入品では、ベンチマークが更新される可能性があるため、これらは目安です。

EUの統計では、CN 2507 00 80全体(焼成していないものを含む)の日本からの輸入は2025年に1万4,827ユーロ、14.4トンでした(Eurostat Comext、2025年)。焼成したものの量は統計からは分かりません。


セメントのCNコードは実務でどう確定しますか

CNコードの正確な分類は、CBAMのセメントの輸入で最初に確認すべき点です。

CNコードの誤りや排出量の過少申告は、管轄当局の審査で是正されることがあります(規則(EU)2023/956第19条)。是正の結果、納付すべき証書が不足していた場合は、納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項)。罰金を支払っても証書の納付義務は残ります(第26条第3項)。

セメントの輸出入でCNコードを確定する手順は、次の6つです。

  1. 6桁のHSの項を特定します:商業インボイスと製品の技術資料で、2507(粘土)か2523(セメント)かを確認します
  2. 8桁のCNの号に広げます:クリンカーは2523 10 00、白色ポルトランドセメントは2523 21 00、その他のポルトランドセメントは2523 29 00、アルミナセメントは2523 30 00、その他の水硬性セメントは2523 90 00です
  3. 10桁でグレーか白色かを確認します:2523 10 00と2523 90 00では、TARICコードの末尾(10が白色、90がグレーを含むその他)でデフォルト値とベンチマークが変わります。日本産の白色は「その他の国・地域」の値になります
  4. 第68類の製品でないことを確認します:プレキャストコンクリート、繊維強化セメント板などは付属書Iの対象外です
  5. クリンカー比率の出所を確認します:実排出量で申告する場合、クリンカーとセメントの比率は事業者の検証済み排出量報告書から取ります(実施規則(EU)2025/2547)。製品仕様書は根拠になりません。デフォルト値では、比率にかかわらずセメント1トン当たりの国別の値が適用されます
  6. 50トン基準を確認します:暦年に輸入したCBAM対象製品の正味重量を、すべてのCNコードと原産国について合計し、50トンを超えるかどうか、つまり認可CBAM申告者の資格が必要かどうかを判断します

日本の輸出者は、手順2と3の結果をEUの買い手と書面で共有しておくと、申告の段階での食い違いを防げます。輸出者側の対応全体はセメントのEU CBAM(輸出者向け)で説明しています。

キャプション:ロータリーキルンで石灰石をクリンカーに変える脱炭酸工程のCO2排出が、CNコード 2523 10 00の輸入者のCBAM証書の義務を決めます。


日本産セメントのCNコード別コスト:2026年、2027年、2030年

日本の表の値でデフォルト値を使う場合、製品1トン当たりのコストは2026年にグレーの製品で23.51ユーロから27.14ユーロ、アルミナセメントで118.12ユーロです。

日本産をCNコード別に、2026年、2027年、2030年に輸入した場合の製品1トン当たりのコストは、次の表のとおりです(価格は82.32ユーロで一定、当サイトの計算ツール、2026年11月4日計算)。

製品(CNコード) 適用されるデフォルト値(tCO2e/t) 2026年(マークアップ10%、CBAM係数97.5%) 2027年(20%、95%) 2030年(30%、51.5%)
焼成カオリン質粘土(ex 2507 00 80) 0.280(「その他」) 0ユーロ 0ユーロ 1.73ユーロ
グレークリンカー(2523 10 00 90) 0.850 23.51ユーロ 31.88ユーロ 62.73ユーロ
白色クリンカー(2523 10 00 10) 1.370(「その他」) 55.11ユーロ 68.16ユーロ 110.19ユーロ
白色ポルトランドセメント(2523 21 00) 1.450(「その他」) 62.36ユーロ 76.06ユーロ 118.76ユーロ
グレーポルトランドセメント(2523 29 00) 0.890 27.14ユーロ 35.83ユーロ 67.01ユーロ
アルミナセメント(2523 30 00) 1.940 118.12ユーロ 135.57ユーロ 178.53ユーロ
グレーの水硬性セメント(2523 90 00 90) 0.850 23.51ユーロ 31.88ユーロ 62.73ユーロ
白色の水硬性セメント(2523 90 00 10) 1.490(「その他」) 66.94ユーロ 80.95ユーロ 123.55ユーロ

部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。CBAM係数の根拠は指令2003/87/EC第10a条第1a項です。2027年以降の輸入品ではベンチマークが更新される可能性があるため、2027年と2030年の数値は目安です。

他の原産国のグレークリンカー(2523 10 00 90)の2026年のコストは、韓国(0.920)が29.85ユーロ、エジプト(1.270)が61.55ユーロ、アルジェリア(1.280)が62.45ユーロ、中国(1.390)が72.41ユーロです。トルコ、ベトナム、タイは「その他の国・地域」の1.410が適用され、74.22ユーロです(同じ条件で計算)。

貴社の製品とトン数での推計はCBAM計算ツールで確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。国別の値の仕組みはCBAMのデフォルト値で説明しています。


日本の炭素価格はセメントのCBAMコストを下げますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)に関する実施規則案は2026年5月13日に公表され、2026年11月4日時点で未採択です。セメント製造用の輸入特定石炭は石油石炭税と地球温暖化対策のための税(温対税)が免除されているため(経済産業省の令和9年度税制改正要望)、キルンの主な燃料である石炭には温対税が課されていません。

排出量取引制度(GX-ETS)は2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化され、セメントにはベンチマーク方式で無償割当が行われます(ICAP)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「排出量取引制度の場合、無償割当はリベートとみなされる」と説明しています。論点の詳細はCBAMの炭素価格控除をご覧ください。


CBAMのセメントの輸入者と輸出者が知っておくべきこと

セメントのCNコードに関するよくある質問

セメントクリンカー(2523 10 00)は常にCBAMの対象ですか

CNコード 2523 10 00に分類されるセメントクリンカーは、規則(EU)2023/956付属書III第1項に掲げられていない第三国からEUの関税領域に輸入される場合、CBAMの対象です。付属書III第1項は、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを原産とする製品と、5つの地域(ビュージンゲン、ヘルゴラント、リヴィーニョ、セウタ、メリリャ)を原産とする製品を除外しています。

トルコ、アルジェリア、ウクライナ、エジプトなど、EUへの主なセメント供給国はこの一覧に含まれず、日本も含まれません。

CBAMは生コンクリートやプレキャストパネルに適用されますか

CBAMは、生コンクリート、プレキャストパネル、その他のセメントを含む第68類の製品には適用されません。規則(EU)2023/956付属書Iの対象は、完成したセメントまでのセメント製品そのものに限られます。川下製品への対象拡大に関する欧州委員会提案(COM(2025)989、法律ではありません)は、2026年10月20日の第1回三者協議(トリローグ)で全体合意に至らず、2026年11月4日時点でも提案の段階で、欧州委員会、理事会、欧州議会のいずれの案でも対象は鉄鋼とアルミニウムの製品だけです。

クリンカーと混合した水硬性セメントでは、CBAMのコストはどれくらい違いますか

デフォルト値では差は小さくなります。国別の値のない原産国のグレークリンカー(2523 10 00)はデフォルト値1.410で、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで製品1トン当たり74.22ユーロです。グレーの水硬性セメント(2523 90 00)は1.370で、70.60ユーロです。ベンチマークはどちらも0.666です。日本産では、グレークリンカーとグレーの水硬性セメントはどちらも0.850で、23.51ユーロです。

検証済みの実排出量では、差はクリンカー比率に従います。クリンカー30%の混合セメントの体化排出量は、クリンカーの体化排出量の約30%に自らの粉砕による排出を加えたものとなり、前駆体のクリンカーに係る無償割当調整も同じ割合で小さくなります。

セメントの輸入にCBAMが適用されるかを決める基準はありますか

セメントの輸入の義務を決める基準は2つあります。1つ目は、輸入者が1暦年に輸入するCBAM対象製品の正味重量が、すべてのCNコードと原産国の合計で50トンを超えるかどうかです。50トン以下の輸入者は免除の対象で、税関申告で免除を申告し、認可CBAM申告者の資格もCBAM証書の納付も必要ありません。

2つ目は、輸入者が認可CBAM申告者の資格を持っているか、または2026年3月31日までに申請して暫定的に輸入できる状態にあるかどうかです。資格のないまま50トンを超えて輸入した場合、第26条第1項の罰金の3倍から5倍(インフレ調整前でCBAM証書1枚当たり300から500ユーロ)が科されます(第26条第2項、第2a項)。

セメントでは、デフォルト値と実排出量のどちらでCBAMのコストが低くなりますか

どちらが低くなるかは規則で一律に決まるものではないため、輸入者は両方を試算する必要があります。デフォルト値では、付属書Iの値に2026年10%、2027年20%、2028年以降30%のマークアップを加えて申告し、Column Bのベンチマーク(グレーセメントで0.666)に基づく無償割当調整を差し引きます。マークアップ分はすべてベンチマークを上回るため、証書価格が満額で適用されます。

実排出量では、検証済みの排出量を申告し、Column Aのベンチマークと前駆体のクリンカーに基づく調整を差し引きます。検証済みの排出量がデフォルト値とマークアップの合計を下回る輸出者にとっては、マークアップが上がるにつれて、第三者検証に投資する経済的なメリットが大きくなります。

日本のセメントメーカーにCBAMの義務はありますか

日本のセメントメーカーにCBAMの法的義務はなく、CBAM証書の購入、申告、納付の義務は、EUの認可CBAM申告者(またはその間接的通関代理人)が負います。ただし、EUの買い手はデフォルト値を避けるため、施設単位の検証済みデータとCN10桁の分類を求める場合があります。日本のメーカーは、CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)に施設のデータを登録し、検証を受けたうえで、複数のEUの買い手と共有できます。

セメントの輸入者と輸出者のための関連資料

CBAM証書の購入、認可CBAM申告者の登録、四半期末の証書保有義務を含め、税関申告から2027年9月30日が期限の年次のCBAM申告までの義務は、セメント輸入者のCBAM対応(英語)で説明しています。2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。

トルコ、エジプト、アルジェリアなど、EUの買い手に輸出するEU域外のセメント生産者は、CNコードの分類にとどまらず、価格と競争力についての判断を迫られます。日本の輸出者向けには、検証済み排出量の報告、デフォルト値の影響、第9条の控除の可能性をセメントのEU CBAM(輸出者向け)で、手続きをCBAM 事業者用ポータルで説明しています。

CBAM証書の価格について、2026年の輸入にはEU ETSのオークション価格の四半期平均が適用されます(第21条第1a項)。週次価格は2027年の輸入からです。デフォルト値で申告する輸入者は、2026年に第三者検証済みのデータを提出する必要はありません。検証は実排出量で申告する場合だけ必須です(第8条第1項)。ただし、デフォルト値のマークアップは2028年まで段階的に上がり、検証済みデータとの差は広がります。

日本の制度と相談窓口はCBAMと日本にまとめています。算定や検証の支援事業者の紹介はCBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。