日本の輸出企業のためのEU CBAM(炭素国境調整措置)ガイド:2026年の期限、コスト、GX-ETSの扱い

EU炭素国境調整措置(CBAM)が日本の輸出企業に求めることを1ページで解説します。

このページの内容

EU炭素国境調整措置(CBAM、JETROや欧州委員会の和訳では「炭素国境調整メカニズム」)は、2026年1月1日に本格実施期間に入りました。EUの輸入者は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の輸入について、2026年分のCBAM申告書を2027年9月30日までに提出し、CBAM証書を納付します。

日本からEUへのCBAM対象製品(付属書Iのコード)の輸入は、2025年に14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、その86%が鉄鋼です(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。日本のデフォルト値で申告された熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)は、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで計算すると、製品1トン当たり80.20ユーロのコストになります。

日本の輸出企業には、CBAMに基づく法的義務はありません。それでも、検証済みの排出量データを出せない輸出者は、EUの買い手にデフォルト値とマークアップのコストを負わせることになり、価格交渉で不利になります。本ページでは、CBAMが日本の輸出企業に求めること、主要な日程、日本の貿易データとコスト、日本の炭素価格の扱いを整理し、日本語セクションの各ページをご案内します。

キャプション:CBAM証書の義務はEUの輸入者が負いますが、コストの圧力は価格交渉を通じて日本の輸出者に戻ってきます。


CBAMは日本の輸出企業に何を求めますか

CBAMは日本の輸出企業に法的義務を課しませんが、EUの買い手が証書の数を計算するための、施設ごとの検証済み排出量データを事実上求めます。

根拠法は、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)を規定する、2023年5月10日の欧州議会および理事会規則(EU)2023/956」で、2025年10月20日に発効した規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)により改正されています。CBAMは、規則(EU)2023/956に基づき、EUの輸入者に対し、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求める、EU ETSの価格に連動した証書制度です。

CBAMの仕組みを日本の輸出者の立場から整理すると、要点は次の6つです。

  • 義務を負う者:EUの認可CBAM申告者(第3条第17号)、つまりEUの輸入者またはその間接的通関代理人です。日系企業のEU子会社が自ら認可申告者になる場合もあります(JETRO、2026年9月18日)。
  • 対象製品:付属書Iの42項目(鉄鋼15、セメント6、アルミニウム14、肥料5、電力1、水素1)のCNコードに当たる製品です。
  • 50トン基準:電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。
  • 必要な証書数:体化排出量から無償割当調整を差し引いた量で、ベンチマークを上回る排出量はマークアップ分も含めて全額が証書の対象です(第31条)。
  • データがない場合:輸入者は実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値に、2026年10%、2027年20%、2028年以降30%(肥料は毎年1%)のマークアップを加えて申告します。
  • 輸出者にできること:CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)への登録、モニタリング計画の作成、認定検証機関による検証、排出量報告書のサマリー(16項目)の提供です。

輸出者向けの全体像はCBAM輸出者ガイド、制度そのものの解説はEU CBAMの解説にまとめています。


CBAMの主要スケジュール:2023年から2034年まで

日本の輸出者が押さえるべき最も重要な日付は、2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限である2027年9月30日です。

2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。日本の輸出者が2026暦年(1月から12月)に出荷した製品のデータは、この申告に使われます。主な日程と根拠条文は次の表のとおりです。

日付 内容 根拠
2023年10月1日~2025年12月31日 移行期間(四半期ごとのCBAM報告書のみ、支払いなし) 第32条
2025年10月20日 規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則)の発効(官報掲載は10月17日) 規則(EU)2025/2083
2026年1月1日 本格実施期間の開始 第36条第2項(b)
2026年3月31日 暫定的な輸入継続のための認可申請の期限(経過済み) 第17条第7a項
2026年10月5日 2026年第3四半期のCBAM証書の価格を公表(1 CO2換算トン当たり82.32ユーロ) 第21条第1a項
2027年1月から 検証報告書をCBAM登録簿で発行(欧州委員会の発表、2026年8月24日) 欧州委員会
2027年1月1日 CBAM係数が95%に低下、証書価格が週次に移行 指令2003/87/EC第10a条第1a項、第21条第1項
2027年1月4日 2026年第4四半期のCBAM証書の価格の公表予定 第21条第1a項
2027年2月1日 CBAM証書の販売開始(共通中央プラットフォーム) 第20条第1項
2027年3月31日 最初の四半期末の証書保有義務の確認日 第22条第2項
2027年9月30日 2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限 第6条第1項、第22条第1項
2027年10月31日 余剰証書の買い戻しの請求期限 第23条第1項
2027年11月1日 2026年分として購入した証書の抹消 第24条第2項
2028年1月1日 川下製品への対象拡大の適用開始(提案、法律ではありません) COM(2025)989
2034年から CBAM係数の適用なし(無償割当調整の終了) 指令2003/87/EC第10a条第1a項

2027年から、認可申告者は各四半期末に、その暦年の初めから輸入した製品の体化排出量の50%以上に相当するCBAM証書を口座に保有する必要があります(第22条第2項)。算定には第31条の無償割当調整が考慮されます。2026年の輸入には四半期末の保有義務はありません。

CBAM証書は、2027年2月1日から、設立地の加盟国が共通中央プラットフォームで販売します。年ごとの詳しい流れはCBAMのタイムライン、証書の購入、保有、買い戻しの仕組みはCBAM証書の解説で説明しています。


日本からEUへのCBAM対象製品の輸入:2025年の数字

EUが2025年に日本から輸入したCBAM対象製品は14億4,820万ユーロ、85万8,614トンで、EU域外からの輸入に占める日本のシェアは金額ベースで1.30%(22位)、数量ベースで0.72%(24位)です。

2023年の24億4,810万ユーロ、190万4,514トンから、金額で41%、数量で55%減っています。分野別の内訳は次の表のとおりです(ユーロスタット(Eurostat)Comext DS-045409、2025年(2026年10月12日抽出))。シェアは免除対象国を含むEU域外輸入に占める割合、順位はEU域外の輸出国の中での順位です。

分野 2023年 金額 2025年 金額 2025年 数量 2025年 シェア(金額/数量) 2025年 順位(金額/数量)
CBAM対象製品の合計 24億4,810万ユーロ 14億4,820万ユーロ 85万8,614トン 1.30%/0.72% 22位/24位
鉄鋼(第72類・第73類、鉄鉱石を除く) 22億1,790万ユーロ 12億4,590万ユーロ 80万9,223トン 2.04%/1.40% 13位/16位
うち第72類の完成品 17億7,650万ユーロ 8億810万ユーロ 74万8,767トン 3.19%/2.37% 10位/11位
うち第73類の製品 4億3,400万ユーロ 4億2,580万ユーロ 5万1,354トン 1.58%/0.51% 11位/18位
うち粗鋼と半製品 170万ユーロ 730万ユーロ 6,221トン 0.13%/0.06% 19位/20位
うち銑鉄、合金鉄、直接還元鉄 560万ユーロ 470万ユーロ 2,881トン 0.15%/0.05% 28位/30位
アルミニウム 2億1,920万ユーロ 1億9,500万ユーロ 4万2,260トン 0.64%/0.46% 23位/29位
うちアルミニウムの塊(7601) 80万ユーロ 210万ユーロ 122トン 0.01%/0.00% 43位/49位
うちアルミニウム製品 2億1,840万ユーロ 1億9,280万ユーロ 4万2,139トン 1.39%/1.50% 14位/13位
セメント 660万ユーロ 480万ユーロ 5,701トン 0.45%/0.04% 19位/23位
肥料 440万ユーロ 250万ユーロ 1,431トン 0.03%/0.01% 35位/35位
水素 3,000ユーロ 0ユーロ 記載なし(金額のみ掲載) 0% なし
電力 0ユーロ 0ユーロ 0 MWh 0% なし

金額は10万ユーロ単位で四捨五入しているため、内訳の合計が一致しない場合があります(アルミニウム:丸める前は1億9,496万9,143ユーロ)。2024年の合計は18億6,080万ユーロ、152万9,170トンでした。

鉄鋼が2025年の日本のCBAM対象製品の金額の86%、アルミニウムが13.5%を占め、セメント、肥料、水素、電力はわずかです。品目別に見ると、日本は電磁鋼板を含む合金鋼板(CNコード 7225、金額ベースのシェア11.31%、4位)、幅の狭いステンレス鋼板(CNコード 7220、3位)、合金鋼線(CNコード 7229、3位)で、金額ベースでEUの上位供給国に入っています。

熱延鋼板(CNコード 7208)の数量は、2023年の134万1,700トンから2025年の34万6,721トンへ74%減りました。一因と考えられるのは、EUが2025年9月26日に日本産を含む熱延鋼板に課した6.9%から30%の確定反ダンピング関税です(欧州委員会通商総局、2025年9月26日)。ただし、統計だけでは因果関係を証明できず、反ダンピング関税はCBAMのコストではありません。

これらは貿易統計であり、CBAM申告の数値ではありません。財務省貿易統計の対EU輸出額は評価方法の異なる別の統計です。品目別の詳細はCBAMと日本と日本の鉄鋼輸出とEU CBAMで解説しています。


日本産製品のCBAMコスト:2026年と2030年の試算

日本のデフォルト値で申告された熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)は、2026年の輸入で製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書が必要となり、2026年第3四半期の公式価格82.32ユーロで計算すると製品1トン当たり80.20ユーロです。

計算式は、証書数=max[0,特定体化排出量-無償割当調整-第9条の炭素価格分]×質量です(規則(EU)2023/956第31条、実施規則(EU)2025/2620付属書)。無償割当調整は、CBAM係数×部門横断補正係数(CSCF)×ベンチマークで、部門横断補正係数は2026年から2030年まで100%です(実施決定(EU)2026/1862)。

2026年のCBAM係数は97.5%で、これは無償割当のうち維持される割合です。必要な証書数は、体化排出量から無償割当調整(CBAM係数×部門横断補正係数×ベンチマーク)を差し引いて求めます。ベンチマークを上回る排出量は、マークアップ分も含めて全額が証書の対象です。CBAM係数は2027年95%、2028年90%、2029年77.5%、2030年51.5%と下がり、2034年からは適用されません(指令2003/87/EC第10a条第1a項)。

熱延鋼板の計算は次のとおりです。2.100 × 1.10 = 2.310、無償割当調整 0.975 × 1.00 × 1.370 = 1.33575、差し引き製品1トン当たり0.97425枚のCBAM証書、2026年第3四半期の価格82.32ユーロで製品1トン当たり80.20ユーロです。これは、無償割当調整を差し引く前の190.16ユーロの42%に当たります。

日本の主要な輸出品目について同じ計算をした結果を、次の表に示します。デフォルト値は実施規則(EU)2025/2621付属書I(実施規則(EU)2026/1740により差し替え)の日本の表の「総排出量」、ベンチマークは日本の表に記載されたルートのColumn Bの値(実施規則(EU)2025/2620付属書第5.3項)です。計算は2026年11月4日に当サイトの計算ツールで行いました。

製品(CNコード) 日本のデフォルト値(tCO2e/t) 2026年(マークアップ10%) ベンチマーク(ルート) 2026年の証書数(製品1トン当たり) 2026年のコスト(製品1トン当たり) 2030年のコスト(製品1トン当たり)
半製品(7207 11 14) 2.100 2.310 1.364(C) 0.9801 80.68ユーロ 166.91ユーロ
熱延鋼板(7208 51 20) 2.100 2.310 1.370(C) 0.97425 80.20ユーロ 166.65ユーロ
無方向性電磁鋼板(7225 19 90) 3.530 3.883 1.488(C) 2.4322 200.22ユーロ 314.68ユーロ
ボルト・ねじ(7318 15 42) 2.800 3.080 1.364(C) 1.7501 144.07ユーロ 241.82ユーロ
アルミニウムの塊(7601) 0.360 0.396 0.091(L) 0.307275 25.29ユーロ 34.67ユーロ
アルミニウムの板(7606 12 99) 1.730 1.903 0.148(L) 1.7587 144.78ユーロ 178.86ユーロ

tCO2e=CO2換算トン。2030年の列は、同じデフォルト値と価格(82.32ユーロで一定)に、マークアップ30%とCBAM係数51.5%を当てはめた数値です。実施規則(EU)2025/2620の前文第10項は2027年以降の輸入品についてベンチマークの更新を予定しているため、2027年以降の数値は目安です。

熱延鋼板のコストは、同じ価格82.32ユーロで比べると、製品1トン当たり2026年80.20ユーロ、2027年100.31ユーロ、2030年166.65ユーロと上がります(2027年以降はベンチマーク更新の可能性あり)。ボルト・ねじの1.7501枚は、経済産業省の「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)の2026年の数値1.750と一致します。

貴社の製品と数量に応じた推計は、CBAMコスト計算ツール(英語)で確認できます。規則(EU)2025/2621および2025/2620の公式デフォルト値とベンチマークに基づく推計です。拘束力のある数値は貴社のCBAM申告書に記載される数値です。デフォルト値の仕組みはCBAMのデフォルト値、計算の手順はCBAMの計算方法で説明しています。

キャプション:実施規則(EU)2025/2621のマークアップは2026年10%、2027年20%、2028年以降30%で、検証済みの実排出量を提供する意味は年々大きくなります。

他の供給国との比較:日本の位置づけ

日本の熱延鋼板のデフォルト値2.100 tCO2eは、韓国の2.118、トルコの2.428、中国の3.187、インドの4.280より低く、米国の1.400より高い水準です。

EUのCBAM対象製品の輸入額、熱延鋼板(CNコード 7208 51 20)を2026年にデフォルト値で輸入した場合のコスト、国内の炭素価格の状況を、主な供給国で比べると次のとおりです。

原産国 2025年のCBAM対象製品の輸入額(シェア、金額順位) 熱延鋼板のデフォルト値 2026年のコスト(製品1トン当たり) 国内の炭素価格と第9条
中国 170億8,820万ユーロ(15.4%、1位) 3.187 178.63ユーロ 全国排出量取引制度(2025年3月に鉄鋼、セメント、アルミニウムへ拡大、無償割当)、未承認
トルコ 108億3,270万ユーロ(9.7%、2位) 2.428 109.90ユーロ 排出量取引制度規則が2026年8月27日に施行(2026年から2027年の試行期間は全量無償割当)、未承認
インド 52億9,860万ユーロ(4.8%、6位) 4.280 277.60ユーロ 炭素クレジット取引制度(原単位型)、未承認
韓国 41億1,720万ユーロ(3.7%、8位) 2.118 81.83ユーロ K-ETS(2015年から、鉄鋼は第4期も全量無償割当)、未承認
米国 38億9,790万ユーロ(3.5%、9位) 1.400 16.81ユーロ 連邦レベルの制度なし
日本 14億4,820万ユーロ(1.3%、22位) 2.100 80.20ユーロ GX-ETS(2026年4月から義務化、無償割当)、未承認

輸入額:Eurostat Comext、2025年(10万ユーロ単位で四捨五入)。コスト:実施規則(EU)2025/2621および2025/2620、2026年第3四半期の価格82.32ユーロ、2026年11月4日計算。炭素価格の状況:2026年11月4日時点、出典はICAPと各国当局(詳細は各国のページ)。

日本のコスト面の優位は、トルコ、中国、インドに対しては大きく、韓国とはほぼ同水準です。この比較はすべてデフォルト値によるもので、この優位は検証済みデータがなくてもEUの買い手のコストに反映されます。デフォルト値では、日本の電炉メーカーの製品も日本の表に記載された高炉・転炉法(ルートC)の値で評価されます。日本のデフォルト値より排出量の少ない施設がその差をコストに反映できるのは、検証済みの実排出量を提出した場合だけです。

キャプション:主要な供給国のCBAMの影響を、EUへの輸出量と国内の炭素価格の状況で比較した図です。


日本の炭素価格はCBAMの第9条で控除されますか

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。

第三国で支払われた炭素価格の控除(第9条)に関する実施規則案は2026年5月13日に公表され、意見募集は2026年6月10日に締め切られましたが、2026年11月4日時点で採択されていません。どの国の炭素価格もまだ認められていません。控除の対象は実際に支払われた炭素価格に限られ、リベートなどの補償は差し引かれます(第9条第1項)。

日本の主な炭素価格制度と、第9条との関係は次の表のとおりです(2026年11月4日時点)。

制度 価格と対象 状況 CBAMとの関係
地球温暖化対策のための税(温対税) CO2 1トン当たり289円、化石燃料全般(環境省) 2012年10月1日から段階導入、2016年4月1日に最終税率 鉄鋼、コークス、セメント製造用の輸入特定石炭は免税で、高炉とセメントの排出の大部分を占める石炭には課されていません
排出量取引制度(GX-ETS) 直接排出量が前3年度平均で10万トン以上の事業者(経済産業省) 2026年度(2026年4月から2027年3月)から義務化 鉄鋼とセメントはベンチマーク方式の無償割当(ICAP)。欧州委員会の日本語ガイダンスは「無償割当はリベートとみなされる」と説明しています
化石燃料賦課金 化石燃料の輸入者などにCO2量に応じて課金 2028年度から、未施行 2026年と2027年の輸入については控除を主張できません
東京都・埼玉県の排出量取引制度 主に大規模な建物と事業所 東京都2010年、埼玉県2011年 CBAM対象製品にはほとんど関係しません

まだ答えの出ていない論点は、次の3つです。

  • 欧州委員会がGX-ETSを実際に支払われた炭素価格として扱うか、無償割当分をどう評価し、排出枠の価格をどう証明するか(JETROも2026年9月18日に同じ論点を挙げています)
  • 日本の年度(4月から3月)を、CBAMの暦年(1月から12月)にどう対応させるか
  • 上流で課され燃料価格に転嫁される温対税や化石燃料賦課金が、施設の事業者が支払ったものとみなされるか

欧州委員会は2027年から国ごとにデフォルト炭素価格を定めることができ、デフォルト値で申告する場合はこれを参照して控除を請求できます(第9条第4項)。日本についてはまだ定められていません。証拠書類は申告者と第三国の当局から独立した者が認証し(第9条第2項)、申告書を提出した年(または提出すべきであった年)の後4年目の終わりまで保存します(第9条第3項)。

英国はGX-ETSを英国CBAMの適格炭素価格制度の暫定リストに載せました(2026年8月27日)。EU CBAMの扱いとは別です。条文の解説は第9条の炭素価格控除、控除額の考え方はCBAMの炭素価格控除にあります。


CBAMニュースレター(英語)

英語のニュースレターです。CBAM証書の価格アラートと重要な規制の変更など、CBAMに関する最新情報を毎週お届けします。スパムは送りません。配信はいつでも停止できます。

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日本の輸出者がEUの買い手に提供すべきデータ

EUの輸入者がデフォルト値を避けるには、製品を生産した施設ごとの検証済みの特定体化排出量のデータが必要です。

事業者の排出量報告書のサマリーは16項目で(実施規則(EU)2025/2547付属書IV第1.2項)、2026年8月14日のガイダンス第3号による3文書の構成で英語により提供します(同実施規則第10条第4項)。移行期間中の任意様式だったコミュニケーションテンプレートは、この構成に置き換えられました。欧州委員会は同じ日に、EU域外の事業者向けのクイックガイド(ガイダンス第2号)と6つの分野別ガイド(第5a号から第5f号)も公表しています。

施設の識別情報として、EUの買い手に渡す項目は次の5つです。

  1. 生産会社の正式名称と施設の所在地
  2. 施設のUN/LOCODE(国際的な地点コード)
  3. 小数点以下6桁の地理座標(経度と緯度)
  4. 登録済み施設の場合、CBAM登録簿の固有の施設識別番号
  5. CBAMデータの問い合わせに対応する施設の担当者

対象となる排出量と温室効果ガスは、分野によって次のように異なります。

分野 直接排出量 間接排出量 対象ガス
鉄鋼 対象 対象外(凝結させた鉄鉱石 CNコード 2601 12 00 を除く) CO2
セメント 対象 対象 CO2
アルミニウム 対象 対象外 CO2、PFC(CF4、C2F6)
肥料 対象 対象 CO2、N2O
電力 対象 該当なし CO2
水素 対象 対象外 CO2

直接排出量のモニタリングには、実施規則(EU)2025/2547付属書II第B.2項の2つの方法があります。計算に基づく方法は標準法(第B.3.1項)またはマスバランス法(第B.3.2項)を使い、測定に基づく方法(第B.6項)は排ガスの濃度と流量を連続測定します。N2Oは測定が必須で、移行期間に2024年末まで認められた他制度の算定方法は使えません。

セメント、肥料、凝結させた鉄鉱石では、生産に使った電力の間接排出量も必要です。排出係数は実施規則(EU)2025/2621付属書IIの国別の系統係数で、発電施設との直接の技術的接続や電力購入契約がある場合は例外です(規則(EU)2023/956付属書IV第6項)。複雑な製品では、前駆体の体化排出量も別に報告します。詳しくはCBAMのデータ要件(輸出者向け)とCBAMの体化排出量をご覧ください。


事業者用ポータル(O3CI)と検証

CBAM登録簿内の事業者用ポータル(O3CI)は、EU域外の施設事業者が排出量データを一度登録し、検証を受けたうえで、EUの買い手各社と共有するための場です。

O3CIはCBAM登録簿の一部で、EUログイン(EU Login、二要素認証が必要)でアクセスします。事業者は、製品を輸入する認可申告者に検証済みのデータを開示でき(第10条第7項)、買い手は自社のEORI番号を事業者に伝え、CBAM登録簿の自社用モジュールでデータを取得します。登録は任意で、報告書を買い手ごとに直接送ることもできます。手順はCBAM事業者用ポータルで説明しています。

検証は、実排出量で申告する場合に必須で(規則(EU)2023/956第8条第1項)、デフォルト値での申告には不要です。CBAM検証機関を認定できるのはEU加盟国の国家認定機関だけで、委任規則(EU)2025/2551に基づき、EN ISO/IEC 17029:2019に照らして認定します。施設が初めて検証を受ける年には現地訪問が必要です(実施規則(EU)2025/2546第2条から第4条)。

国家認定機関の登録簿で確認できる認定は、2026年10月13日時点で5件です。EmiCert S.A.(ギリシャのESYD)、Bureau Veritas Italia S.p.A.、RINA Services S.p.A.、SGS ICS Italia S.r.l.(いずれもイタリアのAccredia)、Intertek Certification AB(スウェーデンのSwedac)で、日本の法人は含まれません。2026年10月23日時点で、欧州委員会の認定検証機関リストは未公表です。

日本の検証機関は、域外からの申請を受け付ける7つの国家認定機関のいずれかに申請します(欧州委員会の状況表、2026年10月21日)。GX-ETSの登録確認機関やGXリーグの登録検証機関であることは、CBAMの検証資格になりません。最新の一覧はCBAM認定検証機関、検証の流れはCBAMの検証(輸出者向け)にあります。


日本の輸出者がとれる5つの対応

日本の輸出者がCBAMにとれる対応は5つあり、最も早く効果が出るのは、デフォルト値を下回る実排出量を検証付きで提供することです。

5つの対応の内容は次のとおりです。

  1. 検証済みの実排出量を提供する。 実排出量が日本のデフォルト値とマークアップの合計を下回る施設は、初年度から買い手のコストを下げられます。検証費用は施設1か所、報告期間1回当たり5,000ユーロから5万ユーロで、施設の複雑さと検証機関の所在地によって変わります(検証事業者の提示額に基づく市場推計で、欧州委員会の数値ではありません)。
  2. 脱炭素に投資する。 電炉法への転換、セメントの混合材比率の引き上げ、アルミニウム製錬の陽極とPFCの排出削減は、CBAMの負担を構造的に下げます。投資期間は3年から10年で、CBAM係数が急減する2029年から2030年より前に実現するほど効果が大きくなります。
  3. 第9条の控除を目指す。 国内で実際に支払った炭素価格の書類を整え、承認を後押しします。2026年11月4日時点で、どの国の炭素価格も認められていません。
  4. デフォルト値を受け入れる。 初年度から最もコストの高い選択肢です。合理的なのは、排出量がデフォルト値以上の施設や、EU向けの数量が検証費用に見合わない場合に限られます。
  5. EU以外の市場に振り向ける。 英国では、5部門を対象とする別の税制度である英国CBAMが2027年1月1日に始まります。カナダは2026年10月12日時点で国境炭素調整を制定しておらず、米国の外国汚染料法案(S.1325)は2025年4月8日の提出以来、上院財政委員会にとどまっています(2026年10月12日確認)。

英国が2026年10月16日に公表した鉄鋼の試算税率はCO2換算トン当たり9.69ポンドで、納税義務は生じない参考値です。対応ごとの時間軸と費用は輸出者のCBAM戦略、排出削減の選択肢はCBAMと脱炭素で解説しています。算定や検証の支援事業者の紹介は、CBAMの相談窓口から無料で依頼できます。


日本語セクションの全ページ一覧

日本語セクションは、輸出者向けガイド、分野別ガイド、法令と実務、制度の解説、貿易、日本の6つのグループで構成されています。

各グループのページと内容は、次の表のとおりです。

輸出者向けガイド

ページ 内容
CBAM輸出者ガイド EU域外の輸出者にとってのCBAMの全体像、データ、ポータル、対応策
日本の鉄鋼輸出とEU CBAM 日本の鉄鋼製品別のコスト、デフォルト値、輸出者の対応
アルミニウム輸出者のCBAM アルミニウムの塊と製品の体化排出量、ルートK・L、輸出者の対応
セメント輸出者のCBAM クリンカーとセメントの排出量、間接排出量、輸出者の対応
肥料輸出者のCBAM アンモニア、尿素、硝酸の排出量とN2O、輸出者の対応
CBAMのデータ要件(輸出者向け) 排出量報告書のサマリー(16項目)と3文書の構成
CBAM事業者用ポータル O3CIへの登録、データの登録と共有の手順
CBAMの検証(輸出者向け) 認定検証機関の選び方、現地訪問、検証報告書
CBAMのデフォルト値(輸出者向け) 国別デフォルト値とマークアップが輸出価格に与える影響
CBAMと脱炭素 排出削減の投資と、CBAM係数の引き下げスケジュールとの関係
輸出者のCBAM戦略 5つの対応策の費用、期間、リスクの比較

分野別ガイド

ページ 内容
CBAMの対象分野 6分野、付属書Iの42項目、分野ごとの排出量の範囲
CBAM鉄鋼部門ガイド 鉄鋼15項目、生産ルート、前駆体、川下製品
鉄鋼のCBAMベンチマーク ルートC・D・E別のColumn AとColumn Bのベンチマーク
高炉・転炉法(BF-BOF)とCBAM 高炉・転炉法の体化排出量とデフォルト値
鉄鋼のCBAM計算 鉄鋼製品の証書数の計算手順と計算例
鉄鋼のCNコード 第72類と第73類の対象CNコード
電炉法(EAF)とCBAM スクラップ電炉法とDRIを使う電炉法の排出量
CBAMアルミニウム部門ガイド アルミニウム14項目、一次・二次ルート
アルミニウムのCNコード 第76類の対象CNコード
アルミニウムの間接排出量 電力の間接排出量が証書の対象外である理由
アルミニウムのPFC CF4とC2F6の算定とモニタリング
CBAMセメント部門ガイド セメント6項目、直接・間接排出量
セメントクリンカーとCBAM クリンカーの排出量と前駆体としての扱い
セメントのCNコード 対象のCNコード(2523など)
CBAM肥料部門ガイド 肥料5項目、CO2とN2O
アンモニアとCBAM アンモニア(CNコード 2814)の排出量とベンチマーク
肥料のCNコード 対象のCNコード
尿素とCBAM 尿素(CNコード 3102 10)の排出量と前駆体のアンモニア
CBAM水素部門ガイド 水素(CNコード 2804 10 00)の扱い、50トン基準が適用されないこと
グリーン水素とCBAM 再生可能電力による水素の体化排出量
グレー水素とCBAM 天然ガス改質による水素の体化排出量

法令と実務

ページ 内容
CBAM対象製品リスト 付属書Iの全CNコード
CBAMの計算方法 証書数の法定の算定方法と計算例
CBAMの体化排出量 直接・間接排出量、単純な製品と複雑な製品
CBAMのデフォルト値 実施規則(EU)2025/2621のデフォルト値とマークアップ
CBAMのデータ要件 輸入者が申告に必要とするデータ
CBAMの検証 検証の要件、合理的保証、現地訪問
CBAM認定検証機関 国家認定機関が認定した検証機関の一覧
CBAM証書の解説 証書の価格、購入、保有、納付、買い戻し、抹消
第9条の炭素価格控除 第9条の条文と実施規則案
CBAMの炭素価格控除 控除額の計算と必要な書類
CBAMの迂回防止 第27条の迂回行為と対応
CBAMとスクラップ 鉄スクラップ(CNコード 7204)が対象外であることの意味

制度の解説、貿易、日本

ページ 内容
EU CBAMの解説 制度の目的、仕組み、EU ETSとの関係
CBAMのタイムライン 2023年から2034年までの日程
規則(EU)2025/2083(CBAM簡素化規則) 50トン基準、9月30日の期限などの改正点
川下製品への対象拡大 提案COM(2025)989と三者協議の状況
世界の炭素国境調整 英国CBAMなど、EU以外の制度との比較
WTO紛争DS639 ロシアによるWTO提訴とパネル設置(2026年9月25日)
CBAMと日本 日本の貿易データ、デフォルト値、GX-ETSと第9条
日本向けCBAMコンサルタント 日本の輸出者を支援する事業者の一覧

CBAMに関する日本語の公式情報

CBAMについて日本語で公式情報を発信しているのは主に経済産業省とJETROで、EUによる日本語の公式文書は、移行期間向けの欧州委員会ガイダンス1点だけです。

規則(EU)2023/956と実施規則はEUの24の公用語でのみ公表され、日本語の正文はありません。主な情報源は次のとおりです。

  • 経済産業省 GXグループ 地球環境対策室:「炭素国境調整措置」ページ(最終更新2026年6月1日)を公開しています。簡素化の部分は2025年2月の法案段階の内容で、採択後の規則(EU)2025/2083とは申告期限や買い戻しの上限などの数値が異なります。
  • 経済産業省(委託事業):「ねじ・ボルト等におけるEU-CBAM用算定ガイドライン 第3版」(2026年3月)を公表しています。収集すべきデータ、検証のQ&A、2026年から2034年までの証書数の計算例を収録しています。
  • JETRO:特集「EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の動向と各国の反応」、算定実務マニュアル(2026年3月)、特集記事(2026年9月18日、10月27日)を発信し、貿易投資相談の窓口も設けています。
  • 欧州委員会:「EU域外の施設事業者のためのCBAM実施に関するガイダンス文書」の日本語版を公表しています。内容は移行期間のもので、拘束力はありません。

2024年2月のJETRO「基礎編」は規則(EU)2025/2083による改正前の内容で、申告期限、四半期の保有割合、買い戻しの上限は改正後の規則で確認する必要があります。2026年11月4日時点で、日本の輸出者向けのCBAM専用の補助金は、経済産業省とJETROの資料には見当たりません。

川下製品への対象拡大は日本にどう影響しますか

川下製品への対象拡大は欧州委員会提案(COM(2025)989、法律ではありません)で、適用開始を2028年1月1日としています。

対象品目数は欧州委員会案が約180、理事会案が約200、欧州議会案が約457(推計)で、いずれの案も鉄鋼とアルミニウムの製品に限られ、化学品や樹脂は含まれていません。2026年10月20日の第1回三者協議(トリローグ)では全体合意に至らず、第2回は2026年11月30日と報じられています。

JETROは2026年9月18日、電力中央研究所の分析として、提案された川下製品のコードが日本の対EU輸出の5.0%を占め、現在のCBAM対象製品の2.9%を上回ると紹介しています。特に影響が懸念される品目は、自動車用変速機とその部品です。詳しくは川下製品への対象拡大をご覧ください。


よくある質問

CBAMは関税や炭素税ですか?

CBAMは関税でも炭素税でもありません。CBAMは規則(EU)2023/956に基づく証書制度で、EUの輸入者に、輸入品の体化排出量に応じたCBAM証書の購入と納付を求めます。 負担は製品の価格ではなく体化排出量で決まります。2026年の輸入にはEU ETSのオークション価格の四半期平均が適用され(第21条第1a項)、週次価格は2027年の輸入からです。

日本の輸出企業にCBAMの法的義務はありますか?

日本の輸出企業にCBAMの法的義務はありません。CBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の義務は、EUの認可CBAM申告者、つまりEUの輸入者またはその間接的通関代理人が負います。ただし、検証済みの排出量データがなければ、EUの買い手はマークアップ付きのデフォルト値で申告し、その追加コストを購入価格の引き下げとして輸出者に求めるか、データを提供できる供給者に切り替えます。

最初のCBAM申告の期限はいつですか?

2026年分のCBAM申告書の提出とCBAM証書の納付の期限は、2027年9月30日です(規則(EU)2023/956第6条第1項、第22条第1項)。この申告に使う証書の販売は2027年2月1日に始まり、以後は毎年9月30日が前年分の期限です。

CBAM証書の価格はいくらですか?

2026年第3四半期のCBAM証書の価格は1 CO2換算トン当たり82.32ユーロで、2026年10月5日に公表されました。第1四半期は75.36ユーロ(2026年4月7日公表)、第2四半期は75.28ユーロ(2026年7月6日公表)です。第4四半期の価格は2027年1月4日に公表される予定で、最新の数値はCBAM証書の価格トラッカー(英語)で確認できます。

年間50トン以下の輸入にもCBAMは適用されますか?

電力と水素を除き、輸入者ごとに暦年の累積正味重量が50トン以下であれば義務が免除されます(第2a条、付属書VII第1項)。免除は税関申告で申告する必要があります。50トンは1回の出荷ではなく、すべてのCNコードを合計した1年間の量です。

CBAM証書を納付しなかった場合の罰金はいくらですか?

納付しなかったCBAM証書1枚につき、EU ETSの超過排出罰金(インフレ調整前で1トン当たり100ユーロ、欧州消費者物価指数で調整)と同額の罰金が科されます(第26条第1項)。罰金を支払っても証書の納付義務は残ります(第26条第3項)。認可申告者でない者には、その3倍から5倍(インフレ調整前で300から500ユーロ)が科されます(第26条第2項)。

GX-ETSで支払った炭素価格はCBAMで控除されますか?

2026年11月4日時点で、日本の炭素価格はEU CBAMの第9条で認められておらず、控除の実施規則も案の段階です。GX-ETSの排出枠は鉄鋼とセメントについてベンチマーク方式で無償割当されており、欧州委員会の日本語ガイダンスは、排出量取引制度では無償割当をリベートとみなすと説明しています。英国がGX-ETSを英国CBAMの暫定リストに載せたこと(2026年8月27日)は、EU CBAMの扱いとは別です。


データ出典:規則 (EU) 2023/956 · 規則 (EU) 2025/2083(オムニバス)· 実施規則 2025/2621 · EEX経由のEU ETSデータ。法的助言ではありません。